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【コミカライズ1巻 3月27日発売】【Web版】奈落の底で生活して早三年、当時『白魔道士』だった私は『聖魔女』になっていた  作者: tani
第六章 混血の姫と六妖刀編

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神桜島大決戦 其の三

体調不良等で更新が遅れましたので、本日は二本更新します。(長くなったので、分割しただけですが……)


作品タイトルに宣伝として入れましたが、奈落の底のコミカライズ第一巻が、来週3月27日木曜日に発売します!


Amazon等で予約できますので、手に取っていただけると幸いです。

また、メロンブックス、ゲーマーズでは店舗特典イラストがあります。


 とりあえず、一回深呼吸を挟んで落ち着きましょう。

 

 ──えっ? なぜ神桜麗月がここに?


 雰囲気的に彼女は私が戦った神桜麗月とは別人であることは確かです。


 神桜麗月が二人いることに関して驚きはしましたが、信じられないってほどではありません。おそらく、もう一人の私という前例があるからでしょう。


「リリィ嬢を負かした方より弱そうだし、ひとまず捕まえて縛り上げるか? 子供の姿だから気は進まないが」

「よ、弱そうとは無礼だぞ! 今はちょ~っと力を失っているだけで、本当は貴様らなんて簡単に蹴散らせるのだからな!」

「よし、なら力を取り戻す前にやっちまうか」


 デオンザールが小さい神桜麗月に近付きます。

 デオンザールが近付いても、神桜麗月は魔術を行使したりする素振りはみせず、ただただあたふたしています。


「まままま、待て! 余は敵ではない! 貴様らの味方だ!」

「そう言って、俺たちを油断させるつもりなんじゃねぇか?」

「ち、違う! 余は本当に敵じゃないもん!」


 若干涙目になって必死に訴える神桜麗月。

 あっちの神桜麗月は神様って感じでしたが、こっちの神桜麗月は見た目通りの子供って感じですね。


 嘘を吐いているわけではなさそうですし、何より子供の姿だと可哀そうに思ってしまいます。


「デオンザール、拘束は無しです」

「いいのか?」

「危害を加えるつもりなら、私たちの前に現れる必要はないですし、今頃『聖魔女の楽園』は壊滅状態です」


 私は神桜麗月のもとへ行こうと立ち上がりましたが、戦いのダメージが残っているせいで、足に力が入らず──


「っと、危ないわよ」

「ごめんなさい。ありがとうございます」


 転びそうになったところをフォルネに支えてもらい、そのまま神桜麗月のもとまで肩を貸してもらいました。


「神桜麗月、私はあなたを信じます」

「おお! 貴様は信じてくれるか! 余は嬉しいぞ!」


 無邪気に喜ぶ姿を見ると、ますます子供っぽく感じます。私はこっちの神桜麗月の方が好きですね。


「というか、貴様の身体……。なるほど、余の魔術をまともに受けたか。信じてくれた礼に治してやりたいところだが、実は魔力がほとんどなくてな。貴様の魔力を少し使わせてくれるなら治せるぞ」

「本当ですか!? 私の魔力なら、いくらでも使っていいので、是非お願いしたいです」

「では、早速始めるとしよう」


 神桜麗月は私の右手に触れると、体内を流れる私の魔力が右手に集まっていくのを感じます。不思議と暖かくも感じますね。


「こんなもんか。どうだ、痛みはあるか?」


 治療が終わったようですが、先程まで身体に残っていた痛みが嘘のように消えています。むしろ、神桜麗月と戦うよりも元気になっているような気がします。 


「大丈夫です。ありがとうございます。なんか、今魔術を使ったら普段よりも威力が出そうな気がします」

「神が扱う術は、良くも悪くも人体に影響を与えるからな。神の術で傷を癒せば、神の祝福を受け、逆に傷を負えば、神の呪いを受ける。神の呪いは同格──つまり、同じ神でなければ、どうしようもできない」


 だから、私が受けたダメージは、グラたちの『治癒魔術』でも治せなかったわけですか。


 これは良い情報ですね。あっちの神桜麗月と戦う際は、彼女の魔術をまともに受けてはいけない。

 まあ、被弾ゼロというのは難しい……というか無理な話でしょうけど。最後に受けた魔術を再び使われたら、受ける以外に選択肢はないですし。


 ちなみに、魔力が少ない神桜麗月は、私の魔力に神性と呼ばれるものを付与し、自身の魔力に変換したことで、私の傷を治したそうです。


「そんじゃ、リリィのダメージも回復したし、対神桜麗月戦に向けての作戦会議と行こうぜ」

 

 本人を前に作戦会議というのは変な感じですが、当の本人は作戦会議に乗り気なようで。


「うむ。必ず余を討ち、余は余の力を取り戻す!」

「その前に片付けておくことがあるんちゃう?」


 ここから作戦会議というところで、ツバキが私たちに言います。


「片付けておくことって何だよ」

「うちかて、今の状況を一刻も早うどうにかしたいと思てる。けど、その前になんで神桜麗月さまが二人いてるのかやら、そもそもこうなった原因やら、そっちの方も気にならん?」


 確かに、この状況をどうにかしたい気持ちが強すぎました。作戦会議よりも、まずこっちの神桜麗月についても話を聞いた方がいいですね。


「それなら余も話を聞きたい奴らがいるぞ。何が目的で余を目覚めさせ、あんなことをしたのか聞かねばならない。奴らもここへ逃げ込んだみたいだし、話はそいつらを連れてきてからにしよう」

 

 神桜麗月が目覚めたのは、あの濃霧が発生した後のことです。

 濃霧の影響で島外の街に行くことはできないし、もし異界の関係者であっても、ミューファス同様、異界に戻ることは出来ないはず。


 神桜島から脱出できないという想定外が起こり、そうなると自分も命の危険があるため、一般人を装って『聖魔女の楽園』に避難した、といったところでしょうか。 

 

 騒動の元凶がいるという話が出た時は、その元凶が濃霧を発生させたかもと思いましたが、ここに避難しているということは、違うのでしょう。


「居場所はわかるんですか?」

「そいつらの魔力を覚えているからな。ただ、何度も言っているが、今の余は力の多くを失っている。暴れられても困るし、力のある付き添いが欲しい」

「そういうことでしたら、グラ、フォルネ、お願いできますか?」

「かしこまりました」

「仕方ないわね」


 グラとフォルネは神桜麗月についていき、テントを後にします。

 綿密な作戦会議は全員が揃ってからすることにしたので、三人が戻ってくる間、私は『覇千砕』に少しでも魔力を溜めるとしましょう。


「なあ、リリィ。何してんだ?」

「もし戦闘中に魔力切れになった時、即座に回復できるように、前もって杖に私の魔力を溜めているんです」

「ほーん。だったら、良いものがあるぞ」


 オウキさんは小さい袋を取り出し、中に入っている物を私に見せてくれました。大きさは2~3センチくらいで、真っ黒な球体ですね。


「これは?」

「魔力が全回復する丸薬だ」

「えっ!?」

「オウキ、それやと説明不足や」

「ん、そうだったな。厳密には、魔力の回復速度を何十倍にも引き上げる丸薬。全回復するまでの時間は、マジで一瞬だぞ」


 そ、そんな便利なものがあるなんて……。でも、魔力が一瞬で全回復するという上手い話には、当然裏があるのでしょう。


「で、副作用は?」

「魔力量が多い奴ほど、身体に負荷がかかるが、痛みで悶え苦しむなんてことはねぇ。まあ、連続で何個も飲んで死んだ奴はいるが、それは単にそいつが用量を守らなかった馬鹿だったって話だ」

「リリィはんの魔力量だと、一日二つ、無茶して三つってとこやな。それ以上は止めといた方がええ。ちゅうわけで──はい」


 ツバキから丸薬が三つ入った小袋を受け取りました。


「一応渡しとく。ようさん入れると、ある分だけ使いそうだから、三つだけや」


 数が限られているので、使いどころを考えないといけませんね。

 今の私の魔力残量は、杖に魔力を溜めて続けて、ちょうど2割を切ったくらい。残りの魔力を『覇千砕』に込めても、まだまだ溜められます。

 

 神桜麗月が帰ってくる前に、急いで残りの魔力を全て『覇千砕』に込めると、魔力切れで目眩がします。いつになっても、これには慣れませんね……。

 しかし、ここで倒れている暇なんてありません。私は受け取った小袋から丸薬を一つ取り出します。


「あっ、そうだ。そいつは噛まずに飲み込んだ方がいいぞ。噛んでも効果はあるが、めちゃくちゃ苦いからな」


 どのくらい苦いのか少し興味はありますが、今回は止めておきましょう。

 

「──ッ!」


 丸薬を噛まずに一飲みすると、効果がすぐに現れます。

 消費した魔力が、本当に一瞬で元通り。

 オウキさんの言う通り、身体への痛みとかはありません。もし、これ以降の服用も痛みがないなら、連続で使おうと考えるのも無理ないですね。

 

「戻ったぞ~」 


 魔力が全回復し、引き続き『覇千砕』に魔力を込め続けていると、神桜麗月たちがテントに戻ってきました。


 しっかり今回の騒動の元凶を連れてきたようですが、その連れてきた人物というのが、予想外の人物でして……。

 

「あ、あなたたちは……」

「リリィの知り合いか?」

「い、いえ、知り合いというほどでは……」

「ど、どうも~。ゴルディームのカジノぶりだね」

「チッ……」


 神桜麗月たちが連れてきたのは、ゴルディームのカジノで私をルーレットの場所まで案内してくれた従業員さんと、遊んでいたルーレットのディーラーさん。 


 二人は双子の兄妹でしたよね。初めて会った時と雰囲気が別人ですが、向こうからカジノのことを言ってきたということは、私の知る二人で間違いない。


「あなたたちが神桜麗月を目覚めさせた……」

「そうだね」

「何が目的でこんなことを……」

「悪いけど、俺たちも詳しいことは聞かされていない。俺たちは命じられた通りに、やることをやっただけさ。まあ、帰れなくなったのは聞かされてなかったけど」


 彼の発言が噓ではないのなら、あの霧を発生させたのは、彼らでもないことが確定。あの霧の謎は依然として解決しないまま。


「ふむ。貴様らに命じた奴が、どんな奴か知らんが、こうなることを知っていたのなら、貴様らは駒として使い捨てられたのかもな」

「黙れ! じいじが私たちを使い捨てるなんてことしない! 何も知らないくせに、適当なことを言うな!」


 神桜麗月の言葉に激昂するディーラーさん。そのまま襲い掛かってくる勢いだったため、後ろにいたグラに倒されて取り押さえられますが、彼女の目は神桜麗月を強く睨みつけています。


「そういえば、二人の名前を聞いてませんでした」 

「それなら、まず自分から名乗るべきじゃないの?」

「そうでしたね。私は──」

「ああ、大丈夫。君の名前は知っているよ、リリィ・オーランドさん。俺はクアトール。こっちの反抗的な妹はクイン」

「ちょっ! クアトール、何勝手に──」

「では、クアトールさんに聞きますが、あなたたちに神桜麗月を目覚めさせるように命じたのは、誰ですか?」


 クインさんでは無視されるのが目に見えているので、まだ話が通じるクアトールさんに問うことにしましたが、はっきりとは答えてくれないでしょう。

 

 しかし、私の予想に反し、クアトールさんは私の質問に、しっかり答えてくれて、彼の口から出た名前の人物とは面識がありました。


「君も会ったことがあるよ。確か……テルフレア、だっけ? 俺たちは、ウーノじいちゃんに命じられて、ここへ来た」

「ウーノさん……ですか?」


 あのおじいさんは、アルゴギガース復活に関わっていた。

 アルゴギガースの力を得たカルロスさんも死ぬ間際に「あのじいさんと、関係者には気をつけろ」みたいなことを言ってました。


 何か企んでいるとも言っていましたが、アルゴギガースと今回の件に共通していること。もしかして──


「……私が神桜島へ来なければ、こんなことにはならなかったのでしょうか……」


 どちらも、私が訪れたことで起きた事件です。テルフレアの時も、今回も、私のせいで大勢の人に迷惑を──


「そんな顔すんなって」


 感情が顔に出ていたのか、オウキさんは私の頭に優しく手を置き、笑顔でそう言います。


「テルフレア? ってとこで何があったのか俺は知らん。でも、もしこうなることを事前に知ってたとしても、俺はお前に会いたかったぞ。ツバキから話を聞いて、ずっと会いたいって思ってたからな」

「オウキさん……」

「何もかも全てコイツらが悪いんだから、お前が落ち込むことなんて一つもない! 本音を言えば、コイツらをぶん殴りたいが、戦力として働いて責任を取ってもらわなきゃな」

 

 そうですね。オウキさんの言葉で元気が出ました。

 今は落ち込むだけ時間の無駄です。そんなことする暇があるなら、目の前の問題を片付けないと。


「良かったね、クイン。追い出されるかと思ったけど、彼らのために働けば、生かしてくれそうだ」 

「戦力としてあの化物と戦って死ぬかもしれないけどね。というか、いい加減起こしてくれない? 力も強くなってる気がするんだけど」

「…………」

「グラ、私なら大丈夫。今は少しでも戦力が欲しいので、なるべく怪我はさせないでください」


 クインさんを押さえつけていたグラの目が本気だったので、やらかす前に声をかけておきました。

 グラは素直に私の言うことを聞き、押さえつけていた力を緩めます。 


「……私でよかったですね。これが私ではなく、バエル様だったら、既にあなたの腕の一本は折れていたはずですから」

「そう。なら、そのバエルっていうのがいないことに感謝しないとね」


 拘束されているとは思えぬ態度に、グラは不愉快な思いをしてるでしょうが、ここは我慢してもらいましょう。


「ところで、俺からも一つ聞きたいんだけど、そこの神様についてだ。どうして神様が二人いるんだい?」


 それは私たちも聞きたかった話。

 騒動の原因は判明したので、次はなぜ神桜麗月が二人いるのかという謎を、彼女自身の口から明かしてくれました。 

 

「貴様らは余を目覚めさせる時、供物として多くの魔物を捧げたが、同時に妙な道具を使ったな? あの気味の悪い漆黒の球体だ」

「ああ。あれは簡単に説明するなら、心の中の邪悪な部分を増幅させる魔道具だ。俺たちは邪悪な心に染まった状態の神桜麗月を望んでいた」

「なら、貴様らの望み通りにはなっているぞ。あれは紛うことなき邪悪に染まった余だ。まあ、余は余でも、余の心身を侵食した影響で生まれた別人格の余だが」


 そして、その別人格の神桜麗月の力が、瞬く間に手に負えないほど増大し、このままでは完全に飲まれて消えるだろうと、大部分の力を手放し、何とか消えずに済んだらしいです。 

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奈落の底で生活して早三年、当時『白魔道士』だった私は『聖魔女』になっていた4
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