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【コミカライズ1巻 3月27日発売】【Web版】奈落の底で生活して早三年、当時『白魔道士』だった私は『聖魔女』になっていた  作者: tani
第六章 混血の姫と六妖刀編

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神桜祭

 オウキさんは霧禍と炎衆の将軍たちと霧について話しましたが、両国とも同じように霧の存在には頭を抱えていました。

 この非常事態に、三国は神桜島に住む者たちのために手を取り合い、調査を行うことになりましたが、あれから特に何か進展があったわけでもなく……。


 私の方からも『聖魔女の楽園』から調査員を出して協力していますが、島内と海上に霧に関係のありそうなものは見つかっていない。

 

 幸いにも、霧の方まで近づかなくても漁は出来るので、海産物の確保は問題なくできます。


 また、霧より外からこちら側へ入れるかどうかは判明しました。


 結論から言うと、可能です。


 この数日の間に、何隻か流門に入港しています。話によると、霧禍と炎衆の港も同様だそうです。

 船客は全員無事。ただ、島外の街にへ戻れないと聞き、パニックに陥ったり、漁師さんたちと揉めたりしていたと聞いています。


 霧の外へ出ることはもちろん、連絡も出来ない状態なので、島外から来た人たちは神桜島へ来て、ようやくこちらの現状を知ることができますからね。


 霧を見て引き返した船も当然いるでしょう。オウキさんは、この時期にしては入港した船は少ないと言ってましたし。


 ただ、何としてでも神桜島に行きたい人はいた。

 前にツバキたちとの会話で出ていましたが、年に一度開かれる神桜島での祭り──神桜祭というものが、もう近々始まるからです。


 霧の件はありますが、神桜祭は通常通り開かれるとのこと。

 毎年神桜祭を楽しみにしている島民や神様への奉納の儀も兼ねているそうで、中止になることはないと。

 最初から中止の話はなかったですが、もしこれで中止になったものなら、島外から来た人からは反感を買うことになってたでしょうね。

 


 さて、例年通り開催されることになった神桜祭。

 巨大な桜から少し離れた場所に祭りの会場があり、そこでイベントが開かれたり、屋台が出るみたいです。その準備のために、人が多く出入りしています。

 

 オウキさんからは「せっかくだから、この島にはない食い物の屋台でも出したらどうだ?」と提案されました。

 食べ歩きをメインとした感じでしたので、歩きながらでも食べやすいものを何品か考えて出店することにしました。

 

 出店に伴い、当日は私も手伝いをしようかと思ったのですが、私には祭りを楽しんでもらいたいと屋台を担当する『聖魔女の楽園』の子たちに言われてしまい……。

 かといって、何もしないわけにはいきませんから、今日は差し入れも兼ねて様子を見るために、現地へやってきました。


「こうして見ると、余計に大きく感じますね……」


 大和からでも十分大きいなと思っていましたが、近付くと更に迫力がありますね。見上げ続けると首が痛くなっちゃいます。


 改めて巨大な桜に圧倒されつつ、屋台通りの方へ。

 もうすぐ祭が始まりますから、皆さん一生懸命準備をしています。

 木材や屋台の骨組みの運搬をされているので、邪魔にならないように気をつけながら、私たちの屋台を探します。


「えっと、確かこの辺に──」

「リリィ様ではないですか!!」


 作業している悪魔族たちの一人が私に気づき、走って近付いてきました。


「準備の方は順調ですか?」

「はい。九割近く完成しております。我々は余所者ではありますが、勝負事ということであれば、全身全霊で挑み、必ずや優勝してみせます」


 神桜祭は三日間行われるのですが、いくつかあるイベントの一つに、三日間の屋台の売り上げを競うイベントがあるようで、最終日に売り上げが一番の屋台は表彰されるみたいです。


 優勝した屋台には賞品や賞金も贈られるため、ここへ来るまでに見かけた人たちの大半は本気の目をしていましたね。

 

 そういうイベントもあるので、うちも屋台を出すのなら当然優勝を狙うと、みんな張り切っているわけです。


 うちは、神桜島にはない料理を出します。

 おそらく初めて見る料理ですから、興味があっても手に取ってもらえるかが勝負のカギ。

 私は祭りを楽しめたらそれでいいのですが、みんな本気で優勝を狙っているようですし、やはり宣伝も兼ねて手伝った方がいいのかも。 


「──っと、そうでした。これ、差し入れです」


 私はサンドイッチが入った容器を渡します。

 理由があって、人数分に小分けした容器を渡したので数は、まあまあありますね。


「こ、これは……?」

「お昼用に作ったサンドイッチです。味は普通なので、あまり期待しないでくださいね」

「も、もしかして、これはリリィ様が?」


 その通り。このサンドイッチは私が作りました。みんな頑張って作業しているんですから、これくらいはしないと。

 でも、私の料理の腕は正直言って、普通です。不味くなければ、特別美味しいというわけでもない。


 小分けにした理由は、私が作ったから。

 分けずに大きなかごに入れ、私が作ったと言って渡せば、取り合いで喧嘩に発展するかもしれなかったので。それを避けるために、平等に小分けにして人数分用意しました。


 まあ、秘密にして渡せばよかった話ですが、こうした方が彼らも更にやる気を出すでしょうと、バエルが言ったので……。

 

「まさかリリィ様の手料理が食べられるなんて……。あっ、も、もしバエル様にバレたら──」

「大丈夫ですよ。バエルには私から言ってますので」


 そういうと、彼は安堵した表情を見せます。

 もし差し入れを渡したことを、バエルに言わず、そのことをバエルが知った日には、彼らは悪魔界へ一時強制帰還することになっていたでしょう。

 

 そうならないように、先にバエルに話したわけです。でも、話した上で嫉妬していました。

 だから、バエルの分もサンドイッチを作りましたが、ちゃんと食べたのでしょうか……。

 喜んで受け取ってくれましたが、バエルのことだから「もったいなくて食べられない」とか言ってそうです。

 

「ありがとうございます。みんなにも渡して大切にいただきます」

「確か『聖魔女の楽園』と行き来できるように、マナフィールの分裂体がいましたよね。もし足りなかったら、余ったサンドイッチが厨房の方にもありますから、彼女に言ってください」


 悪魔は私に礼をして現場に戻っていきました。

 さてと。差し入れも無事渡しましたし、この後はどうしましょうか。


 もう少しだけ、ここを見て回るか。それとも『聖魔女の楽園』に戻るか。大和へ行って、ツバキたちとお喋りするのもいいですね。


「おい」


 この後の予定をどうするか悩んでいると、私の腰をつんつんと叩かれます。

 聞き覚えのある子どもの声に振り返ると、そこには──


「ランくんじゃないですか」


 まさかの妖刀──轟獣・桜嵐牙こと、ランくんがいました。

 

「うむ。あの日以来だな」

「そ、そうですね。ランくんはどうしてここに?」

「もうすぐお祭りが始まるからな。その下見に来たわけだ」


 ランくんは見るからに神桜祭を楽しみにしている感じです。

 

 一応、使い手の決まっていない妖刀はダンジョン等に封印されているという話になっているようです。

 しかし、思い返してみれば、試練が始まる前の選定の儀で、私たちの前に姿を変えて、ランくんは現れました。

 となると、封印されていると言われていますが、実際は割と自由に出入りできる?


 そこのところどうなのか、本人に直接聞いてみると、戦闘能力が皆無の分身体ならダンジョンの出入りは問題ないとのこと。


「あっ。あと、仕切り直しになった試練について、日程を決めたから知らせるためにも来た。試練は祭りが終わった二日後にする」

「祭りが終わった二日後ですね。オウキさんたちには私から伝えておきますよ。ランくんは霧禍と炎衆に伝えに行ってください」

「頼んだ。ところで──」


 何かを探すようにキョロキョロとランくんは周りを見回します。


「今日はサフィーいないのか?」

「サフィーですか? 今の時間は……たぶんグラ──えっと、サフィーの師匠と一緒に修行中ですね」

「そうか……」


 私がそう言うとランくんは露骨にガッカリします。もしかして──


「サフィーと一緒に祭りを見て回りたいんですか?」

「そ、そうじゃ──なくない……。……うん、お祭りは何回か来たことあるけど、ずっと一人だった。一人でも楽しいけど、周りを見ると友達とかと一緒で、一人よりずっと楽しそうだった」

「ランくん……」

「サフィーは初めて出来た友達だから、一緒がいいなって……」

 

 ランくんは少し照れながら言います。

 自分は妖刀だからと、度々頑張って威厳ある姿を見せる子ですが、根はやはり子供。でも、子供であることが悪いことではありません。

 

 せっかくの祭りなんですから、今まで一人で寂しかった分、ランくんには楽しい思い出を沢山作ってもらいましょう。


(サフィー、今いいですか?)

(休憩中だから、だいじょうぶ~。リリィさま、どうしたの?)


 私は念話でサフィーに話しかけます。


(もう少しで祭りが始まりますよね)

(うん! アヤメちゃんと一緒に行くって約束したんだ! すごく楽しみ!)

(実は今ランくんが私のところにいて、ランくんがサフィーと一緒に祭りに行きたいと)

(ランくんが!? ランくんとも一緒に行きたい!)


 念話越しでも喜んでいるのがわかります。サフィーにとっても、ランくんは良い友人ですからね。


(わかりました。ランくんに伝えておきます)

(うん! あっ、もう休憩時間終わりだ。リリィさま、また後でね!)


 そして、サフィーはグラとの修行に戻りました。


「今サフィーと話をしましたが、サフィーもランくんと一緒に祭りに行きたいと言ってましたよ」

「ほんと!?」

「はい。ただ、たぶんアヤメも一緒だと思いますが大丈夫ですか?」

「そ、そっか……」


 おや、アヤメが一緒だと都合が悪いんですかね。

 まあ、サフィーと一緒に祭りに行きたいと言ってたわけですし、もしかしたら二人きりが良かったのかも。


「アヤメが一緒だと嫌ですか?」

「そういうわけじゃない! アヤメとも友達になりたいくらいだよ! けど……アヤメとも仲良くなったら、ボクはアヤメを相棒に選ぶかもしれない……」


 妖刀の試練という名目で候補者を募り、その試練はダンジョン内で自分を見つけるという内容だった。


 妖刀が自分の相棒を決めてもいいとは思いますが、試練の内容が内容のため、自分の気持ちで選ぶわけにはいかないと、ランくん自身よく理解しているのでしょう。


 うーん。だからといって、やっぱり祭りには行かないというのは違うと思うんですよね。ランくんだって、祭りが楽しみで下見に来ているわけですし。

 

 公平を期すために、他の候補者も一緒に祭りを見て回って仲良くなるのが、一番良いとは思いますが、向こうの都合が合うかわかりません。

 サフィーは性格的に問題でしょうけど、他の子たちが、ほぼ初対面の人たちと一緒に祭りを楽しめるかどうか不安なところもある。

  

 そうなると、取るべき選択は──


「ランくん。神桜祭の時だけは、友達と一緒に祭りを楽しむことだけを考えればいいと思いますよ。それはそれ、これはこれというやつです」


 年に一度の祭りですよ? 悩んで楽しめなくなるくらいなら、一旦忘れちゃいましょう。せっかくの祭りなのに、楽しめなければ元も子もないですからね。


「祭りはサフィーたちと楽しむ。ただし、妖刀の試練の時は必ず平等に。ランくんが試練の内容を決めたんですから、誰が相棒になっても、ちゃんと受け入れてください」

「……うん。わかった、そうする」


 個人的には、サフィーとも友人なので、ランくんの相棒はアヤメになってほしいですが、私の我が儘を聞いてもらうわけにはいきません。だから、アヤメには頑張ってもらわないと。


「じゃあ、ボクは霧禍と炎衆に試練の話をしに行くから」

「はい。では、祭り当日に。待ち合わせは、ここの中央広場でいいですか?」

「うん。朝の9時くらいで」

「わかりました。サフィーたちに伝えておきます」


 そして、ランくんは私の前から姿を消しました。


 私はもう少し会場を見て回りましょうかね。

 その後は『聖魔女の楽園』に戻って、サフィーに待ち合わせ等の話をして、アヤメやオウキさんたちに妖刀の試練についての話をしましょう。








 


「さあさあ! いよいよ残り時間も、あとわずか! 両者共に最後の追い込みです!」


 これといったトラブルもなく、無事に開かれた神桜祭。

 初日は屋台を巡ったり、武芸を見たり、和楽器なるものの演奏を聞いたり、私も祭りを楽しんでいました。

 ちなみに、うちで出している屋台ですが、思いのほか盛況で昨日の中間売り上げ発表では、3位になっていましたね。


 そして、今日は神桜祭2日目。

 2日目のイベントの一つに大食い大会があって、これにデオンザールが参加しているので、私も観戦しています。


「デオンザール、頑張ってください!」

「んぅ~!」


 私が声をかけると、デオンザールは右腕を上げて応えてくれます。

 大食い大会は制限時間内に、一般女性の握り拳くらいのおにぎりをどれだけ食べられるかの勝負。

 

 デオンザールは現在一、二を争う状況です。

 そして、デオンザールと競っている相手というのが──


「おおっと、ここでオウキ様が一歩リード!! 稀に見る接戦ですが、このまま突き放して、今年も勝利を勝ち取るのかぁ~!?」


 どうやらオウキさんは、毎年この大食い大会に参加しているようで、今のところ負けなしだそうです。

 ただ、今回は他の挑戦者たちは脱落していますが、デオンザールとは良い勝負をしています。


 時間が迫るなか、喉に詰まらせないようにしつつも急いで食べ続ける二人。

 私は無理ですけど、タルトなら大食いですし、彼女も良い勝負が出来そうなんて思いながら、デオンザールを応援して観戦します。


 そして、決着の時が来ました。


「ここで時間切れです! 集計の結果、大変僅差ではありましたが、今大会の優勝者は、去年に引き続きオウキ様です!」


 残念ながら、デオンザールは一歩及ばず。しかし、かなり善戦しましたよ。


「くぅ~、負けちまったかぁ」

「いい勝負だったぜ、デオンザール。初めて負けるかと思ったからな。そうだ、お前酒もいけたよな? どうだ、夜は飲み勝負ってのは」

「おっ、いいぜ。その勝負、受けてやる! 次は俺が勝つからな!」

「そうこなくっちゃな!!」

「「ガッハッハッハッハ!!」」


 常人なら、お腹いっぱいで動けないはずなのに、二人はまだ余裕があるのか、握手をして笑い合ってます。似た者同士、仲良くやれているようですね。


「あっ、リリィさま! ここにいたんだ!」


 大食い大会が終わると、後ろからサフィーが声をかけてきました。

 アヤメとランくんも一緒で、三人お揃いの狐の面を頭につけています。他にもいろいろ手に持ってますね。


 ちなみに、祭りを楽しむために欠かせないもの──そう、お金についてです。


 アヤメはオウキさんたちから、お小遣いを貰っています。

 サフィーは、彼女が自分で狩った魔物を私が受け取り換金しているので、実は結構お金は持っています。まあ、私が毎回少し多く渡しているのもありますが。


 ただし、子供の頃から大金を手にして豪遊しては教育上よろしくないので、その辺の管理はグラが引き受けてくれました。


 そして、ランくんですが、彼はお金を持っていません。今まで開かれた祭りも買い物はせずに、ただ見るだけだったとか。


 私は、それを聞いて何もしない冷たい人間ではありません。


 ランくんには私の方から、お小遣いを渡すことにしましたが、タダで受け取るのに渋っていたので、サフィーと同じように魔物の素材を換金することで、お金を渡すことにしました。

 

「リリィさま見て見て、おそろい~」

「すごく可愛いですね。似合ってますよ」

「そうだ、向こうに美味しそうなものがあったの。リリィさまも一緒に行こ?」


 サフィーからのお誘いです。断る理由はありません。

 

「わかりました。一緒に──」


 ──誰しも、これから起こることを予想できるはずもなく、愉快な祭りは、唐突に終わりを告げる。


「な、なんだッ!?」


 突如響き渡る轟音。

 いったい何が……。何かが空から落ちてきたようですが。


「リリィさま……」

「巻き込まれた人がいないか確認しに行きましょう!」


 私は急ぎ現場へ向かいました。

 当然、現場には人が集まり、騒然としていましたが、屋台に落ちただけで、運悪く巻き込まれた人は居なさそう。


 しかし、私は心から良かったとは思えませんでした。なぜなら、落ちてきた正体というのが──


「ペディストル!?」


 そこにはボロボロになったペディストルが……。

 またバエルといつもの喧嘩をしていたのかと思いましたが、それなら『聖魔女の楽園』でやればいい話。わざわざこんなところでやる必要はない。

 それに、いくらバエルでも、ここまでペディストルを痛めつけるようなことはしません。

 

「や、やあ、リリィ……。祭り、楽しんでるかい?」

「いったい何があったんですか!?」

「一応、これは分身体だから安心してくれ。けど、かなり不味い。とんでもないのが出てきた。迅速に排除しようと、僕とバエル、そしてバエルが無理にバラムも連れ出したが、全員やられた」


 バエルとバラム──悪魔界の王が二人も揃ってやられた? ペディストルもいたのに?

 

「もうすぐここも──いや、下手をすれば、この島全てが戦場になる。島の連中を助けたいなら、ひとまず『聖魔女の楽園』に避難させるべきだ」


 それほどまでの脅威が迫っているんですか……? 

 でも、それらしき魔力は感じません。かといって、ペディストルが嘘を吐いているわけでもない。


「リリィ! 何があった!」

「おい! ペディストルじゃねぇか!? なんで、そんなボロクソにやられてんだ!?」


 遅れてオウキさんとデオンザールが駆け付けます。

 

「オウキさん、今すぐこの場にいる人たちを全員『聖魔女の楽園』に避難させます。ただ、私の力だけでは皆さんを説得できません。オウキさんの力を貸してください」

「よ、よくわからんが、わかった。とりあえず避難させればいいんだな」

「デオンザール、サフィー、アヤメは『聖魔女の楽園』への扉を作ってください」


 しかし、オウキさんの力を以てしても、全員が信じてくれるわけではなく、特に霧禍や炎衆の人たちは話を聞いてくれません。


「どうする、リリィ……」

「……仕方ありません。少々強引ですが、投げ飛ばしてでも『聖魔女の楽園』に送ります」

「というか、俺も状況がよくわかってないんだ。何が起きるってんだ?」

「それは──」

「ふむ。余への供物が減ったな。ここへ来るまでは、もっとあったはずだが……もしや貴様らの仕業か?」

 

 背後から聞こえた声に身体が反射し、距離を取った私は無意識に杖を取り出し構えていました。オウキさんも同じです。


 視線の先には、胸元が露出されている着物を身に纏う艶麗な女性が。

 呼吸を忘れて魅入ってしまうほど美しい桃色の瞳。惚れない男性などいないだろうと思わせるほどの美貌の持ち主。


 ……でも、すごく変な感じです。 

 魔力を感じない。いや、感じ取ることが出来ない?

 そして、ただそこに立っているだけだというのに、息苦しくなるような圧。まるで、自分よりも遥かに高次元の存在が目の前にいるような。


 本能が、アレは危険だと告げています。

 おそらくですが、ペディストルたちは、アレにやられたのでしょう。


 雰囲気的に黙って帰ってくれる感じではない。

 この圧倒的な格上を相手に身体が強張るような感覚……オルフェノク地下大迷宮で生活し始めた時以来です。


 アレとは戦ってはいけないと本能が訴えていますが、後に起こりうる被害を考えると、そうも言ってられない状況。覚悟を決めないといけないようです。

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奈落の底で生活して早三年、当時『白魔道士』だった私は『聖魔女』になっていた4
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