急激な成長の正体
新年あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
もしかしなくても、あの赤髪の人が『憤怒の魔王』のオウキさん。そして、オウキさんの後ろからぴょこっと顔を出している女の子が娘のアヤメですね。
「おかえり、オウキ。アヤメも」
「おう。それで──」
赤髪の人は座っている私と目が合うと近付いて来て、目線を合わせるようにしゃがみます。
「お前さんがゼルドラドが言ってたリリィ・オーランドか?」
「は、はい、そうです」
「思ったより小さいんだな」
「アンタの図体がデカいだけや。リリィはん、もう察してると思うけど、そこにいるのが『憤怒の魔王』であり、大和の将軍のオウキや」
「オウキだ。名前くらいはゼルドラドから聞いてるだろ? よろしくな」
差し伸べられた大きな手を取り、握手に応じます。
改めて、この人が『憤怒の魔王』オウキさん。
額には鬼人特有の白い角が二本。筋骨隆々で野性味のある方ですが、かといって乱暴者という雰囲気はなく、接しやすい優しい感じの方。
もちろん『魔王』と呼ばれるだけあって、強者特有の雰囲気みたいなものは感じます。しかし、今のところ『憤怒』とは、かけ離れた印象ですね。
「ゼルドラドが話してたが、何でもめちゃくちゃスゲェ魔術をたくさん使えるんだってな。下手したら『魔王』に匹敵するかもしれないって言ってたぞ」
「そんなことはないですよ。私はまだまだ未熟者ですから」
バエルは「よくわかっていますね」みたいな感じで頷いていますが、私が『魔王』に匹敵するわけないじゃないですか。
まあ、私だって日々成長していますので、昔に比べれば強くなってますが、本気を出した『魔王』に勝てるほど、思い上がってはいません。
「なあ、あとで手合わせしないか? ゼルドラドが実力を認めてるし、聞けばエルトリアに修行をつけてもらったんだろ? どんだけスゲェか、俺もこの目で見てみたいからな」
手合わせですか。アカツキさんも同じこと言ってましたよね。
ここにいる人は好戦的な人が多いかもしれません。もしくは、アカツキさんやオウキさんが例外なだけなのか。
「期待に応えられるかわかりませんが……。ただ、ここへ来る前に、アカツキさんにも同じことを言われて、先に約束をしてしまったので、それが終わった後なら」
「何!? アカツキのやつめ……。まあ、俺が迎えに行けって命令したわけだし……。しゃーない。先約があるなら、順番は守んねぇとな」
「オウキ、リリィはんを困らせたらあかんよ。それより、こっちの紹介もせんと。ほら、アヤメ。挨拶しなはれ」
緊張してるのか、単に恥ずかしいのか。
今度はツバキの後ろに隠れてますね。こういう時は私の方から挨拶した方がいいでしょう。
「はじめまして。私の名前はリリィ・オーランドです」
私が名乗るとゆっくりとツバキの隣に座るアヤメ。
ツバキの艶のある白髪と、オウキさんの燃えるような赤髪が混ざった、綺麗な桃色の髪。
額には先端が仄かに赤みがかった白い角。まだ子供だからなのか数は異なりますが、ツバキと同じ狐の尾が四本。
二人の特徴的な部分が、しっかりと受け継がれているので、誰が見ても二人の子供だってわかりますね。
「え、えっと……アヤメ、です」
「普段はもっと元気がええんやけど、自分よりも遥かに強いやつが、ようさん居って緊張してるみたいや。堪忍してな」
まあ、うちの従魔たちは、私から見ても強いですからねぇ。本来のステータスは、私よりも優れている子たちですし。
九尾と『魔王』という強者たちに育てられたアヤメなら、従魔たちの実力も、ある程度は図れるはず。
今後自分がこの人たちと一緒にやっていけるのかという不安。
それに、アヤメはツバキの代わりとして私の旅に同行します。子供の自分が母親の代わりになれるかという不安も強く感じているでしょう。
「大丈夫ですよ。アヤメも、慣れるまで時間はかかると思いますが、彼らがアヤメをいじめるなんてことはないので、安心してください。絶対にないと断言しますが、もし仮にそんなことがあるようなら私が説教しますから」
「は、はい、です……」
ああ言ったものの、そう簡単に緊張は解れるわけないですよね。
アヤメには、もう少しリラックスしてほしいですが、何かいい方法は──あっ、自分と同じくらいの子供がいれば、少しは緊張も解れるのでは?
うちにも、ちょうどアヤメくらいの子がいるじゃないですか。
実力だって申し分ないし、それどころか、まだまだ成長期です。彼女ならアヤメともいい友達関係になれるでしょう。
「アヤメに紹介したい子がいるので呼びますね」
ということで、私は念話を使って『聖魔女の楽園』からサフィーを呼び出しました。
「リリィさま、来たよ~」
「紹介します。この子はサフィー。今うちで一番で成長している期待の従魔です。サフィー、この子はアヤメ。これから私たちと一緒に旅をする仲間ですから、仲良くしてください」
「うん! サフィーだよ。アヤメちゃん、よろしくね」
「あ、アヤメです。よろしくです……」
アヤメの緊張は依然として残っていますが、先程と比べたら全然マシ。雰囲気的にも問題なさそうですね。
アヤメも同い年くらいの子がいると精神的にも今後楽でしょうし、サフィーもサフィーで、どちらかというと、今まではバエルやグラたちといった大人と接する機会の方が多かった。
別にそれが悪いというわけではないですが、やはり自分と近しい存在が居た方がいいでしょう。お互いがお互いを高め合うライバルのような関係にもなれますしね。
「ねえねえ、リリィさま。ここすっごく広いね」
「お城の中ですからね」
「お城!? お城なら、もっと広い部屋とかあるのかなぁ?」
「気になるなら、アヤメと一緒に探検してきてもええよ?」
私もまだ全てを見て回っていないので一緒に行きたいところですが、私は大人なので、あとで探検するとして。今はその気持ちを胸の奥にしまっておきます。
「えっ、でも母上……」
「せっかくできた友達やねんから仲良うせんと」
「ともだち……」
「私の方からも、お願いします。このままだとサフィーが一人で探検に行っちゃうかもしれないので」
「じゃあ、私が案内するです!」
サフィーが手を差し出し、それをアヤメが少し照れながらも取り、手を繋いで広間を後にします。
何というか、微笑ましい光景ですね。二人の姿を見ると、自然と口角が上がってしまいます。
「いやぁ、よかった。アヤメには同い年くらいの友達がいなかったからな。友達ができて何よりだ」
「そうなんですか?」
「将軍の娘ってのも理由にあるだろうが、妖刀に認められるために、ほぼ毎日修行してるから友達を作る機会がな。アカツキたちは友達というより、兄や姉って感じだし。同い年くらいの友達は、あのちっこいのが初めてだ。ツバキも安心だろ?」
「そうやなぁ。最初は少し驚いたけど、似た者同士、仲良うなれるはずや」
アヤメもサフィーと似た境遇だったみたいですね。
それにしても、似た者同士? その言葉に私は疑問を抱きました。
「あの、似た者同士というのは?」
「うちの種族は妖狐族。妖狐族っちゅうんは、基本的に尾が一本。うちみたいな複数本、尾を持った者は稀な存在や。そして、尾を九本持った妖狐族は、九尾という“幻獣種”に区分される」
通常とは異なる特異的な能力を持って生まれた珍しい魔物は、幻獣種と呼ばれることがあります。
当然、数は少ないため、出会うことは困難。
もし、魔物だから従魔にしたいと幻獣種を探し、運よく見つけられたとしても、その特異的な能力によって返り討ちにされるだけ。
向こうから寄ってこない限り、従魔契約は難しいでしょう。まあ、幻獣種の方が主と認めてくれないと契約自体、無理なんですが。
「そして、うちの血ぃ引いてるから、娘のアヤメも幻獣種に区分されてる」
「しかも『魔王』の血も引いてるから、潜在能力は計り知れねぇぞ」
「アヤメが幻獣種なのはわかりました。でも、似た者同士という意味が未だに……。サフィーは幻獣種ではありませんよ?」
しかし、次のツバキの言葉に私は自分の耳を疑いました。
「幻獣種と大して変わらない“聖獣”なんてものいるけど、あの子って聖獣やん? まあ、少し変とは思たし、どんな縁があってリリィはんの仲間になったかは知らへんけど、確か……“ブルーフェンリル”だったか。その子供と違うんか?」
ちょっと待ってください。サフィーがブルーフェンリル?
フェンリルという魔物は知ってますよ。アルファモンスで見たエルトリアさんが従魔として従えていた黒いモフモフの正体はフェンリルでしたし。
サフィーの毛色は青でブルーフェンリルなら、エルトリアさんの従魔は毛並みは黒かったので、ブラックフェンリルと呼ばれる魔物ですかね。
って、今はそんなこと、どうでもよくて!
フェンリルは、とても珍しい魔物で滅多に見ることはできない魔物。
聖獣も珍しく、幻獣種と呼ばれても、おかしくないくらいの存在で、姿を見せた情報があれば、冒険者ギルドで騒ぎになるほど。
だからといって、討伐しようなんて考えるのは、ごく少数。
向こうから手を出してこない限りは、戦わず穏便に済ませるというのが、冒険者ギルドの方針と聞いたことがあります。
それでも、お馬鹿さんはいるものです。
フェンリルの素材は当然価値はあるでしょうが、フェンリルは並の冒険者であれば、いくら束になっても勝てない相手。聞いた話ではドラゴンとも互角に渡り合える個体も存在したと。
しかし、最近急成長しているサフィーですが、彼女はブルーフェンリルではありません。
サフィーはグレートウルフが人化した珍しい個体ですが、出会った時に『鑑定』した時も、前にステータスを確認した時も、サフィーのステータスにフェンリルという表記は何処にもありませんでした。
このことをツバキに伝えましたが──
「いや、あの子は間違いなくフェンリルや。幻獣種や聖獣特有のオーラみたいなもんがあるからなぁ。生まれたてみたいに、オーラが弱弱しいのは引っかかったけど」
「……では、サフィーはグレートウルフからフェンリルに進化した、とか?」
でも、それなら直近の『鑑定』結果でフェンリルと出るはず……。何だったら、変化があれば、サフィーの方から言って来てもおかしくない。
「それはねぇな。幻獣種や聖獣ってのは、進化してなるもんじゃねぇ」
と、オウキさんが言います。
私の知らない情報で、幻獣種や聖獣というのは、最初からその種として生まれ、これに例外はないらしいです。
ちなみにアヤメの尾は四本ですが、それはまだ子供で尾が生えていないだけで、幻獣種の九尾であることは間違いないと。
最初から九尾として生まれるのなら、原初の九尾はどうやって生まれたのか。普通の妖狐族から生まれた突然変異体とか?
こういう疑問は考えても答えが見つからないので、とりあえず、これ系の話は突然変異で生まれたということにしておきましょう。
進化の話に戻しますが、魔物は進化はしても退化はしないとのこと。
フェンリルだったサフィーが何らかの理由でグレートウルフに退化したという線はないわけです。
「先程、オーラがどうとか言ってましたが、それって具体的には……」
「魂に宿る力……って言えばええんかな。リリィはんやオウキみたいな常軌を逸した力を持つ者や、うちみたいな希少な種族のオーラは、他とは明らかに違う。うちはそういうの一目見てわかるんや」
ツバキの中でも、私は『魔王』クラスの強さがあるようです。
と、それはさておき。
ツバキは従魔の中でも魔力感知に長けていると『聖魔女の手記』に書いてありましたね。オーラの違いとやらは、おそらくそれが関係しているのでしょう。
しかし、これは今一度サフィーのステータスを確認したいですね。もしかしたら、私が見逃していただけかもしれませんし……。
サフィーを呼び出そうにも、今はアヤメと一緒にお城探検の最中。楽しい時間を邪魔するわけには──
「ただいま~!」
いかないかなと思っていたところに、ちょうどサフィーたちが戻ってきました。
「早かったですね。まだそんなに時間は経ってないですけど」
「やっぱりリリィさまと一緒に探検したいなって思って戻ってきた。アヤメちゃんもね、リリィさまと一緒がいいって」
「それなら少しサフィーに聞きたいことがあるんですが、いいですか?」
「聞きたいこと? なになに~」
サフィーに今一度ステータスを見せてもらいます。
ツバキも一緒に確認しましたが、やはりサフィーのステータスにフェンリルの表記は何処にもありません。
「ステータスがどうかしたの?」
「最近サフィーは急激に強くなったじゃないですか。それで、もう一度サフィーのステータスを見たいなって」
「そうだったんだぁ。師匠たちにはまだまだ敵わないけど、強くなったでしょ?」
「ええ。……もう一つ、サフィーに聞きたいんですけど、他に何か身体の変化みたいなものとかありました? ちょっとしたことでもいいんです」
変化があれば、師匠のグラから報告があるはずなので、おそらく変化はないと思いますが、一応本人に聞くことに。
「うーん、ないかなぁ。あっ、でも……」
「何かあるんですか?」
「師匠にも言ってないんだけどね、すっごく強くなった日から変な夢を見るの。でも、その夢は夢じゃないみたいな、場所も知らないはずなのに、知ってるような……。うーん……身体が覚えてる感じ……?」
自分でも不思議そうにサフィーは話を続けますが、どうやらサフィーが見る夢は一度ではなく、何度も見ているようです。
基本的に場所は森の中。登場人物はサフィーだけでなく、青髪の人や青毛のオオカミがいる。ちなみに、サフィー自身は人ではなく、オオカミの姿とのこと。
初めは夢に出てくる人物たちの言語を理解できなかったようですが、今はほんの少しだけ理解できるみたいです。
そして、理解できる言語にはフェンリルという単語がありました。
まさかとは思います。でも、もしかしてサフィーが見た夢というのは──
「……前世の記憶……?」
「……なるほど。今のサフィーの話、そしてリリィ様が異界人から聞いたという魔物についての話から考えると、その可能性もゼロではないですね」
「……サフィーは元々異界に住んでいたフェンリルだった……?」
昔、オルフェノク地下大迷宮で出会った異界人の話。
魔物は死後、肉体は残らないが、魂はもう一方の世界へ行く。
こちらの『勇者』や『魔王』に殺された魔物は魂が強化されて、より強い個体でもう一方の世界に復活するとも話してましたね。
サフィーの前世がフェンリルだと仮定して──
サフィーは異界でフェンリルとして生きていた。
しかし、何らかの理由で亡くなり、魂がこちらの世界へやってきて、サフィーは新たな肉体を得た。
「…………」
でも、そうなると一つ疑問が。
ツバキたちの話からサフィーは生まれた時からフェンリル。だというのに、サフィーを『鑑定』した時はグレートウルフだった。
「…………はん……」
その原因は?
──たとえば、新たな肉体を得たばかりで、実力がフェンリルと呼ぶに相応しくなかったから、とか?
フェンリルは聖獣──他の魔物よりも遥かに強い存在です。
今までは魂の力に耐えきれない肉体だったから、ある程度成長するまでフェンリルの力は封じられていたという風にも考えられるかも。
であれば、サフィーのステータスが急激に伸びたのも納得できます。
前にアドルたちと行ったダンジョンでレベルが上がり、ひとまず魂の力に耐えきれる肉体に成長した。
ツバキが「生まれたてみたい」と言ったのも、ようやく力に耐えきれる器になって制限が解かれつつあるから。
いやでも、先程は前世がフェンリルだと仮定しましたが、そもそも向こうの世界で亡くなり、こちらの世界で同じ魔物に生まれることって可能なのでしょうか?
考えすぎて頭から湯気が出そう……。でも、気になることは、他にもたくさん──
「リリィはん!」
「は、はい! なんでしょう!!」
「声かけても返事せんかったから」
「ああ、すみません。ちょっと考え事を……」
考えることに夢中で自分の世界に入っていたみたいです……。
ひとまず、この件は後でじっくり考えることにしましょう。
「ところで、さっき前世とか異界とか言うとったけど……」
「えっと、オウキさんは異界関連の話を他の『魔王』から聞いたりしてませんか?」
ちょっと考えて首を傾げるオウキさん。
反応を見る限り、オウキさんは異界関連の話は存じてないようです。
異界人に命を狙われているわけですから、他の『魔王』から異界の話を聞いていたらツバキにも話しているでしょう。
「実はですね──」
ツバキとオウキさんには異界関連を話をざっくりと話しました。
もう一つの世界が存在するなんて信じられない話で、ツバキも最初は半信半疑でしたが、真剣な話で嘘を吐く理由もないと信じてくれました。
それに対してオウキさんですが、話は聞いていましたが、終始何か思い出すような感じでしたね。
そして、一通り話し終えたところで──
「あっ、思い出した。前にゼルドラドが異界人がどうだの言ってたな。そういえば、エルトリアも異界人に命を狙われているから一応気をつけろって」
……どうやら、異界の話は知ってたみたいですね。忘れていただけで。
「まったく……なんで自分の身に関わる話を忘れるんや。この馬鹿」
「悪い悪い。けど『魔王』の命が狙われてるなら、そろそろ俺のところにも来そうだな。その異界人っていうのは、俺たち『魔王』でも苦戦するほど強いのか?」
「いえ、そういうわけでは。『勇者』は不安がある人もいますが、オウキさんや他の『魔王』は問題ないかと。それに以前、エスメラルダという、元々こちら側の世界にいた人から聞いたんですが、異界人との戦いで『勇者』と『魔王』が死ぬことはないそうです」
ダンジョンでエスメラルダと話した内容もオウキさんたちに話しました。
先程の一件があったので、単に忘れているだけかもしれませんが、オウキさんはゼルドラドさんとエスメラルダが姉弟関係であることは知らない様子。
それについては私から言う必要はないと判断して伝えないことに。もしかしたら、あえてゼルドラドさんは話さなかったのかもしれないですし。
「なるほどなぁ。真実を知らされていない異界人たちも、ある意味気の毒だな。俺たち『魔王』や『勇者』は死なないっつっても、異界の奴らは死ぬ可能性があるかもしれねぇわけだし」
「それは、確かにそうですね」
エスメラルダも、こちらの『勇者』と『魔王』は死なないと言ってましたが、異界人たちのことは何も言ってませんでした。
「一番は異界人にも、この話をして真実を知ってもらうことですが、敵対している世界の人の言葉を素直に信じてもらえるかとなると……」
「難しい話だよな。まあ、襲ってきたら襲ってきたで返り討ちにしてやればいいだけの話さ。俺は誰にも負けるつもりはねぇからな」
そう自信満々の決め顔でに言うオウキさんでしたが──
ぐぅ~~
と、大きな音が部屋の中に響きます。
このお腹の音はオウキさんの方から。何というか、少し格好がつかない形になりましたね。
「そういや、アヤメと修行してそのまま帰ってきたんだっけか。んじゃ、難しい話は一旦終わりにして、俺は──いや、昼には少し早いが、お前たちもどうだ? 食文化が違うから、ここでしか食えない料理が食えると思うぞ」
「いいんですか? 神桜島に来てから私の知らないものが多くて、ここの料理についても気になってたんです」
異国の料理。特に、城主に出される料理なんて街では食べられませんからね。
今から凄く楽しみです。もちろん後で街の方にも行って何があるか見て回りますが。
「ツバキ。調理場を見学することは可能ですか?」
「ええ、まあ。出来ると思うけど。バエルも料理するん?」
「『聖魔女の楽園』の料理人たちに教えるためです。あなたの代わりにアヤメが同行するとなれば、故郷の料理の味が恋しくなるでしょうからね」
「『聖魔女の楽園』……? はぁ……リリィはんたちには、まだまだ話を聞かなあかんそうやなぁ……」
そういえば、ツバキにはまだ『聖魔女の楽園』を見せていなかったですね。まずは、そちらを先に済ませた方がいいかもしれません。





