ギャンブルの街 ゴルディーム
途中ステータスが出てきますが、読み飛ばしてオッケーです。
シュナーベルを出発し、私たちは大和へ到着──はしておらず、大和がある“神桜島”行きの船が出る“ゴルディーム”という街に滞在しています。
ゴルディームでは宿を利用しています。
もちろん『聖魔女の楽園』で休めば、お金はかからないですが、やはり街の雰囲気を、より楽しむには現地の宿を利用するのが一番です。
──っと、ここで少し話が変わります。『聖魔女の楽園』と従魔たちについてです。
基本的に私は好きにさせているので、『聖魔女の楽園』で進めている計画等はバエルから聞く以外、報告書を読んで知ることが多いです。
今後住人が増え、それに伴い、子供も増える可能性も考え、『聖魔女の楽園』に学校を建てる計画とか、何か他にもいろいろ。任せっきりでいいのかと度々思いますよ……。
あとは、各軍の戦力をまとめた報告書とかもありましたね。私が命名した崩天魔龍団、機械守護兵団、黒装悪魔兵団も順調に育ってきているようです。
戦力で言えば、あのダンジョンで修行をしていたサフィーと、従魔契約を交わしたペディストル。
まずサフィーのステータスですが、ダンジョンで修行する前のレベルは92、基礎ステータス値は平均1万程度でした。それが修行を経て──
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《個体名》 サフィー 《性別》メス
《称号》 〝聖魔女の従魔〟〝第二十五の最上級悪魔の弟子〟
《ステータス》 《基礎±補正》
レベル 143
生命力 4万5211《2万5211+2万》
魔 力 5万8402《2万3402+3万5000》
持久力 4万9113《2万9113+2万》
攻撃力 5万3334《2万6834+2万6500》
防御力 4万4660《2万2160+2万4500》
精神力 6万1017《2万1517+3万9500》
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所持スキルに変化はなかったですが、基礎ステータス値の爆発的な伸び。
思わず二度見したくらい。一度深呼吸をし、目を擦って再び見ても、この数値に間違いはなかったです。
短期間でレベルを50も上げた努力は称賛に値するものです。しかし、この基礎ステータス値の伸びは異常。
このまま同じ、もしくは更に伸びるかもしれないという期待はありつつ、いずれサフィーに追い抜かされないか不安な気持ちもありますね。
ただでさえ、優秀な従魔たちばかりなのに、サフィーまで私を超え出したら、数日立ち直れないかも…。
このことについては、レベル上げに同行していた保護者兼、師匠であるグラに聞きましたが、どうやらレベルが120を超えたところで、基礎ステータス値が異常に伸び出したそうです。
サフィーの見た目は獣人族と変わりませんが、実際はグレートウルフという魔物で、しかも稀に見る人化した個体。
爆発的な伸びは、サフィーが特殊な個体だからと思いますが、他に似たような事例の子がいないので、憶測でしか話せません。
次にペディストル。彼とは正式に従魔契約を交わし、私の従魔になりました。
従魔になったことで、ペディストルのステータスも確認することになりましたが、タルトやバエルたちと同じもう一人の私の従魔ですから、サフィーほど驚きはありません。
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《個体名》 死の最上級精霊 ペディストル
《名前》 ペディストル 《性別》 オス
《称号》〝精霊界の王〟〝死を司る精霊〟
〝知識を探求せし者〟〝魔道を極めし者〟
〝聖魔女の従魔〟
《ステータス》 《基礎±補正》
レベル 1,091 【5,776】
生命力 30万8552《16万7052+14万1500》
【87万618《72万9118+14万1500》】
魔 力 38万1348《22万7848+15万3500》
【91万7679《77万9179+13万8500》】
持久力 24万1891《10万5891+13万6000》
【84万191《70万4191+13万6000》】
攻撃力 24万6902《10万3402+14万3500》
【91万1167《76万7667+14万3500》】
防御力 28万9884《14万8884+14万1000》
【84万2211《70万1211+14万1000》】
精神力 36万7072《21万9072+14万8000》
【83万9623《70万6623+13万3000》】
スキル
『生命力・魔力・持久力自動回復』『消費魔力激減』
『物理・魔術威力上昇』『多重障壁自動発動』
『獄炎魔術』『氷獄魔術』『暴風魔術』『地烈魔術』
『神雷魔術』『聖光魔術』『暗黒魔術』『崩壊魔術』
『召喚魔術』『空間魔術』『死滅魔術』『治癒魔術』
『状態異常付与魔術』『全属性・状態異常耐性』
『覇気』『覇者』『支配者』『魔力感知』『鑑定』
『隠密』『隠蔽』『悪食』『魔闘法』『分身体』
『五感強化』『長文詠唱破棄』『並列・多重詠唱』
『状態異常付与成功・思考加速・治癒効果上昇』
『聖魔女の恩恵』『精霊王の加護』『死の加護』
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もう驚きはしませんが、さすがはもう一人の私の従魔。元々のステータスは相変わらずの高いです。
昔と比べたら私の基礎ステータス値は大幅に伸びていますが、それでも従魔契約を交わす度、基礎ステータス値が私と同数値にまで落ちるのが申し訳なく感じます。
ただ、ステータス値の減少は知っていたようですが、今一度ペディストルに、この話をしたんですが──
「別にいいよ。従魔契約しないとバエルがうるさいし、いざとなれば『死滅魔術』があるから、大抵の敵には勝てるし」
と、言ってくれました。彼なりの気遣いなのかも。
確かにペディストルが持つ『死滅魔術』は強力で、所持している者は少ない魔術です。理由は、かなり希少な属性だから。
あと、単純に危険視されるのもあります。
大雑把に言うと使えば、相手を簡単に殺せる魔術です。犯罪者が『死滅魔術』を手に入れて悪用すれば──そんなのは考えずともわかるでしょう。
しかし、危険ですが、この魔術を獲得すること自体は禁止されていません。
要は刃物みたいなものです。日常生活に役立つ便利な道具として使うか、人を殺す恐ろしい道具として使うか。
使い手次第で、善と悪にも転がる。まあ、こう言ってしまうと『死滅魔術』だけではなく、大半の魔術に当てはまりますが。
従魔契約により、私も『死滅魔術』を使えるようになりましたが、使うことはないでしょう。
また、ペディストルが持つ『精霊王の加護』やら、一部スキルも使えるようになり、私のステータスは強化されています。
特に『分身体』は、かなり使えますよね。ペディストルの戦いを見て戦闘はもちろん、それ以外にも役に立ちそう。
さて。これ以上、話が脱線するわけにはいかないので、ここまでにして。
話を戻して、私は今ゴルディームという街に来ています。
この街に来た理由は、神桜島行きの船に乗るためだったのですが、運が悪く次の船は一週間ほど先になるとのこと。
すぐに向かうことができないのは残念ですが、ゴルディームを観光する時間が一週間も出来たと考えれば、悪くはないでしょう。
また、バエルの情報では、ゴルディームはギャンブルの街とも呼ばれているそうで、中央区には大規模なカジノがあるとか。
カジノには行ったことありませんが、一攫千金を夢見てカジノに行く冒険者もいるみたいです。
しかし、やっていることはギャンブル。ハマりすぎた結果、負けを取り返そうとして破産する者もいるとバエルは言ってましたね。
恐ろしい場所ですが、滞在期間が一週間もあります。
人生経験ということで一度行ってみるのもいいかもしれません。貯金には十分余裕がありますし、使いすぎなければ破産することはないでしょう。
「それじゃあ、行きましょうか」
「キュイキュイ!」
身支度を済ませた私はタルトと一緒に宿を出ます。他のみんなは既に街を見て回っているはずです。
サフィー、グラ、フォルネは、まだ見ぬスイーツを求めて。
アモンは、シルファさんが「武器屋や鉱石店を見に行きたい」と言っていたので、荷物持ちと護衛役で同行するよう頼みました。
シルファさんは『鍛冶師』で、アモンも物造りとか好きですからね。夢中になって帰りが遅くならないかが心配です。
逆に、誰かに絡まれたり、事件に巻き込まれたり──なんて心配はしていません。だって、シルファさんに同行しているのは、最上級悪魔ですからね。
次にバエルですが、私たちと一緒に来るのかなと思っていましたが、ゴルディームでしか販売していない珍しい茶葉を手に入れるために別行動をしています。数時間もすれば合流するでしょう。
あとの従魔たちは『聖魔女の楽園』で待機。
デオンザールはおそらくまだ寝ているでしょうし、マナフィールはゴースト系の魔物だから難しい。
バラムはわかりきっていましたが、一応念話で声をかけました。返答は予想通りのものでしたよ。
ペディストルも誘ってみましたが「疲れるからパス」と言われ、断られてしまいました。
そのことでバエルと言い合いをしていたようですが、もう見慣れた光景でしたので、これからは仲裁に入らず放置することに決めました。
宿を後にして、特に目的もなくブラブラと歩いて、気になったお店に入ったり、ちょっとした好奇心で大通りから裏路地の方に逸れてみたり。
こうやってタルトと二人だけで街を見て回るのは、セルビス以来ですね。アルファモンスに上陸してから、家族とも呼べる仲間がたくさん増えましたし。
「いろいろ見て回って大通りに戻ってきましたね」
この辺で気になるものは見ました。
あとは、話によるとゴルディームには、スキルの書を取り扱う店があるみたいなので、次はそこへ行ってみましょうか。
というのも、実は前々から「あったら便利だなぁ」と思うスキルがあって。
実際にあるかは不明ですが、もしあれば、私の固有魔術の欠点を補える可能性があります。可能性があるというだけで、確実に補えるというわけではないですけど。
ただ、スキルの書は使うだけで、スキルを獲得できる便利アイテム。当然そんなものは高価に決まっています。
ましてや、私が求めているスキルは、魔道士だけでなく、他の『職業』も欲しがるようなもの。仮にあったとしても、購入は難しいでしょうね。
それでも、行って確認するのは無料です。
そうと決まれば、早速行動。
親切なことに、すぐ近くに地図案内板があったので、そこへ向かいます。
「えっと、今いるのはここだから──」
「はぁ、困りました……」
地図を見ながら、お店の場所を探していると、右隣で呟く声が。
「──ッ!?」
その声に反応して右をチラッと見ましたが、声の主を見た瞬間、私の身体は驚きのあまりビクッとなりました。
私が驚いた理由は、声の主の容姿。
身長は私ほどで、髪はローブのフードを被ってよく見えませんが、おそらく黒色の髪。声色から女性だと思います。
そして、その女性が纏っているローブの色。
白色の模様がアクセントとして入った、黒を基調としたローブ。
更にその女性の表情は顔全体を隠す白い仮面によって見ることはできない。
世界は広いわけですし、街に黒いローブと仮面をつけた人だって一人や二人、いても別におかしくありませんが……。
「待ち合わせ場所に行くには、ここを──」
……いやいや。変に警戒し過ぎですよ、私。
容姿が似ているというだけで、この女性があのダンジョンで遭遇した黒いローブと同じなわけないじゃないですか。
とりあえず困っているみたいですし、話を聞いてみましょう。
「あの、どうかしましたか?」
「あっ、実は連れとはぐれてしまって……。お恥ずかしい話、私、方向音痴みたいで……。一応はぐれた時の待ち合わせ場所も決めていたんですが、なかなか辿り着けないんです……」
だから、地図を見て場所を確認していたわけですか。
事情を聞いて、ルクスを思い出しましたよ。
彼も相当な方向音痴ですからね。一人にさせたら何処へ行くかわかりませんよ。ユリウスもルクスの方向音痴には頭を悩ませているみたいですし。
そうなると、この女性も一人にしたら永遠に街を彷徨うことになりそうですね。
お連れの方も今頃この女性を探しているところだと思うので、ここは合流の手伝いをしましょう。
というか、事情を聞いた上で放置するなんて、私にはできません。
「もしよかったら、その場所まで送りますよ? まあ、私もこの街に来たばかりなので、街の全てを把握しているわけではないんですが……」
「いいんですか!? すごく助かります!!」
仮面の女性から待ち合わせ場所を聞くと、どうやらその場所は商業区画方面だそうで、私が行きたかったお店も商業区画にあるので、ちょうどよかったです。
しかし、地図を見た限りでは、今いる場所から北側に真っ直ぐ行けば簡単に商業区画へ行けるんですよね……。辿り着けない方が難しいと思うんですが──
「ところで、その子、従魔ですよね?」
「はい、そうです」
「珍しいドラゴンの幼体……いや、身体の大きさを変えた成竜ですか?」
両手で抱えているタルトを見て、仮面の女性は言います。
私からは何も言ってないのに、タルトを一目見て、それを見抜くとは……。この女性、只者ではない、かも……?
「その通りです。よくわかりましたね」
「フフッ、ただの勘ですよ」
「あの、一つ聞いてもいいですか?」
「? なんでしょう」
聞こうか迷いましたが、どうしても気になってしまったので、私は仮面の女性に聞くことにしました。
「答えたくなければ答えなくていいんですが、その仮面は……」
「ああ、これですか。心配しなくても前はちゃんと見えてますよ。仮面を着けているのは、昔ダンジョンを攻略している時に、顔に酷い火傷を負ってしまって」
「……そうだったんですね」
「しかも、強力な呪いが付与された炎で、どれだけ高度な『治癒魔術』を使っても治らなかったんです。醜すぎて人様には見せられないから、こうして仮面を着けているんですよ」
吹っ切れたかのように、明るく話す仮面の女性ですが、これは聞いてはいけないことだったかもしれません。
「えっと、その……」
「あなたが気にすることではないですよ。でも、冒険者として生きていれば、私のようになってしまうこともあり得ます。だから、こうならないように気をつけて冒険を続けてください。ドラゴンさんも。ご主人様のことは、しっかり守るんですよ」
「キュイキュイ!!」
その後、若干空気が重くなった空気を仮面の女性が別の話題で変えてくれたり、ゴルディームのおすすめスポットを聞きながら待ち合わせ場所へ向かうこと20分。
「あっ、カムイさん!」
無事に待ち合わせ場所に到着しました。
お連れの方を見つけた仮面の女性は、その人の元へ走ります。
カムイさんと呼ばれた方ですが、歳は20代後半くらいの細身の男性。一本にまとめた藍色の髪が背中の中くらいまで伸びています。
にしても、この人……かなり強いです。直感というか、雰囲気でわかってしまいます。
それに、腰に差している一本の刀、でしたか。うまく言えませんが、とにかく嫌な感じがします。正直に言って、敵対したくない……。
「いやぁ、合流できてよかったです。このまま合流できなかったらどうしようかと──痛っ!」
合流できたことに喜ぶ仮面の女性ですが、それを見るなりカムイさんは女性の頭にチョップを食らわせます。まあ、仕方ないと言えば仕方ないですが……。
「あれほど離れるなって言ったよな」
「……はい。ごめんなさい……」
カムイさんに怒られて仮面の女性はしょんぼりしてます。
「で? そっちの人は?」
「私をここまで案内してくれた方です」
「そうか。連れが迷惑をかけた。何か礼を──」
「いえ、私もこっちに用がありましたし、気にしなくていいですよ」
「そう言われてもな……」
「本当に気にしなくて大丈夫ですから。では」
長引くと余計に気を遣わせてしまいそうだったので、私の方から退散することにしました。
さて、仮面の女性も無事に待ち合わせ場所まで案内できたことですし、スキルの書を取り扱っている店に行きましょう。
遠くなっていくリリィの後ろ姿を見つめる二人組。
「──自分の目で直接見た感想は? 下手くそな芝居までして見に来て満足か? 何から何まで、お前が用意した台本通りに進んでいるというのに」
「そんなことないです。大筋は変わりませんが、多少は脱線したりしてましたよ。まあ、あの日から念入りに準備してきたんです。失敗は絶対にあり得ませんが」
女は仮面の奥で静かに笑った。
そんな彼女をカムイは横目で見る
「そうか……」
「というか、下手くそな芝居だなんて酷いですね。個人的には名女優並みの演技だったと思いますけど。それに、あのチョップは何ですか」
「フッ。文句があるなら、次はもっといい演技をするんだな」
仮面の女の発言にカムイは鼻で笑って言う。
仮面の奥で不服そうな表情を浮かべる仮面の女だが、ここで言い争っても無駄だと大きく息を吐いて、話を切り替える。
「では、私は満足したので戻ります。あなたは予定通り、神桜島へ向かってください。いいですか、計画のために──」
「わかってる。アレを最大限利用してから核を持ち帰ればいいんだろ。面倒だが、俺たちにしかできない仕事だからな」
「頼りにしてますよ、カムイ。あなたが動くまで時間はたくさんありますし、それまでは久しぶりの故郷で過ごす時間を楽しんでください」
そう言って仮面の女性はその場から霧散するように消えた。
周囲にいる者はそれを見ても誰も気に留めない。まるで、最初からその場に仮面の女性が存在していなかったかのように。
「──楽しめだってよ、カムイ」
「…………」
「気乗りしねぇか? 俺は楽しみだぜ。妖刀たちに会えるかもしれねぇからな」
そして、リリィが仮面の女性を待ち合わせ場所まで送り届けている時。
単独で行動していたバエルは、予想だにしなかった人物と出会っていた。
「な、なぜ、あなたがここに……」
「その、いろいろ聞きたいことはあると思いますし、いきなりのことで混乱していると思いますが、まずは──久しぶりですね、バエル。元気にしてましたか?」
「リリィ、様……」
自分の用事を済ませ、リリィと合流しようとしたバエル。
しかし、そんなバエルの前に現れたのは、自身を悪魔界から呼び出し、共に旅をし、リリィの力になるように命じて別れた、薄汚れた白いローブを纏うもう一人のリリィだった。
今回は21時に更新でしたが、
ひとまず一月末までは、火曜日と金曜日、20時の週二更新になります。





