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【コミカライズ1巻 3月27日発売】【Web版】奈落の底で生活して早三年、当時『白魔道士』だった私は『聖魔女』になっていた  作者: tani
幕間 皇帝と勇者と魔王と

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追憶 シャーリーンとフィードル

 これはシャーリーンが初めてユニークスキル『輪廻転生(リィンカーネーション)』によって転生した話である。


 当時10歳で死んだシャーリーンは、19歳の新たな肉体で転生する。

 髪色も瞳も身体の肉付きも、何もかもが前世のものとは違ったが、見る影もない故郷の姿や、あちこちにある死体の数々──夢だと思いたい惨状を目にして戸惑いよりも絶望が勝った。


 故郷を失い、帰る場所を失ったシャーリーン。

 彼女は魔物を殺し続けること以外にやり遂げたいという目的もなく、あてもない旅を続けるだけだった。


「えっと、この依頼はパーティーを組むのが推奨とされていまして……」

「……ステータスを見せて上げたでしょ? それでも無理だって言うの?」

「で、ですが……」


 だが、稼ぎもなく旅を続ければ当然資金は減っていく。

 街を転々としていたシャーリーンは、冒険者ギルドで依頼を受けて資金を稼いでいた。憎き魔物も憂さ晴らしで殺せるため、冒険者として働くのも苦ではない。

 

 魔物を殺して手に入れた金ということは、魔物のおかげで生活できているようで気に食わないが、そこは生きるために割り切るしかない。


 そして、初めて転生をしてから4年後。シャーリーンは、とある街を訪れる。

 仕事を求めて冒険者ギルドへ向かったわけだが、受けようとした依頼はパーティー推奨とのことでギルド職員と少し揉めていた。


 端から見れば、生意気でわがままな冒険者なのだが、この時のシャーリーンは、ほとんどの時間を魔物討伐に充てていた。当然レベルは、その辺の冒険者なんかより遥かに高い。パーティーを組んだところで、邪魔になるだけ。


 しかし、ギルド職員が言っていることも理解はできる。単独でのダンジョン侵入は、何があっても全て自分の力のみで解決しないといけないのだから。


 そう理解しているにもかかわらず、シャーリーンは頑なに他の依頼を受けようとはしない。


 今受けようとしている依頼は、難易度が高い分、他のものと比べて報酬金が段違いでいいのだ。諦めて、ちまちまと少ない報酬金の依頼を受けるより、高額の報酬金が発生する依頼を受けた方が効率が良かった。


 それに、パーティーを組めば報酬金を人数で分けなければならなくなる。

 即席のパーティーだと前もって配分を決めていたとしても、突然変なことを言い出して揉め事になるかもしれないし、何より自分の懐に入る金が減る。それでは報酬金が高額の依頼を受けた意味がない。

 

(……パーティーを組む予定はないし、この女を納得させる方法はないかしら……)


 心の中で舌打ちをしながらシャーリーンは考える。

 すると、彼女の背後に冒険者のパーティーが近付いてきた。


 シャーリーンも気配ですぐに気づく。

 顔だけ振り返ると、そこには自分と同じくらいの年齢と思われる紺色髪の青年がいた。見るからに、誰にでも親切に接するような優しい青年──シャーリーンから見た第一印象はそんな感じだ。

 

(──コイツは……無害そうね) 


 女冒険者で一人旅をしていると、冒険者ギルドで絡まれることは度々ある。パーティーの勧誘もあるが、男の冒険者から別の目的で声をかけられる方が多い。


 基本的にパーティーの勧誘は断っているし、別の目的の方はしつこいようなら、二度と同じことを繰り返さないように手荒く対処するのだが、この青年は後者の理由で近づいたわけではなさそうとシャーリーンは感じた。


「取り込み中みたいだし、少し待った方がいい感じかな?」

「あっ、フィードルさん。こんにちは。今日は来るの遅いですね。普段は朝から来ているのに」

「今日は前から依頼されてたラムス迷宮に行こうかなって思って。その準備とかメンバーとの打ち合わせをしてたら遅くなって……」

「そうだったんですか──あっ!」


 と、何かを思い出したのかギルド職員は声を上げた。


「フィードルさん。よろしければ、こちらのシャーリーンさんをパーティーに入れてもらえませんか? 今回だけでいいので」

「? どういうこと?」


 話が見えないフィードルはギルド職員に詳しく話を聞いた。

 ラムス迷宮──今いる街の周辺では、そこそこレベルの高い魔物が出現するダンジョンで、シャーリーンが受けようとしている依頼の目的地でもある。


 このダンジョンに生息する魔物は基本的に集団行動が多いため、単独での挑戦は危険。故に、ギルド職員はパーティーを組むことを推奨している。


 しかし、頑固なシャーリーンはパーティーを組む気はないし、受ける依頼も変えるつもりはない。


 ギルド職員が止めようとするのも無理はない。だが、フィードルは不思議と目の前にいる冒険者は可能なのだろうと直感した。

 とはいえ、問題ないと思うと言っても、状況から察するに許可は降りなさそう。解決するには、ギルド職員の言う通り、パーティーを組むのが手っ取り早いが──


「まあ、リーダーだけど俺の一存で決められないし、メンバーに相談しないといけないからなぁ。そもそも、彼女がパーティーの加入に乗り気じゃないだろうし」

「…………」

「だから、パーティーに加入しないけど、一緒にダンジョンへ向かうっていうのはどうだろう。ピンチの時以外は、君の依頼の邪魔はしないし、報酬金も君一人のものでいい」


 妥協案と考えれば、悪くはない提案だ。

 最良は一人で行って、さっさと依頼を終わらせることだが、ギルド職員の様子では依頼を受けるどころかダンジョンへ行くことさえも難しい。


 自分の邪魔もせず、報酬金も分配しなくていいのなら、ダンジョンへ行くために利用できるものは利用するべきだろう。


「……仕方ないわね。それでいい?」

「あっ、はい。お互いが了承しているのであれば構いません」

「……ところで、他のメンバーは?」

「別件で少し用事もあったから、みんなには先に門の前に行って待ってもらってる」

「……なら、早く行くわよ」

「その前に名前を教えてほしいな。俺はフィードル。フィードル・オルバーン」

「…………シャーリーン」


 差し伸べられたフィードルの右手を一瞥し、握手に応じずに自分の名前だけを言ってシャーリーンは冒険者ギルドを後にする。

 その光景を見ていたギルド職員は、内心で「感じ悪い人だなぁ」と思うが、フィードルはまったく気にしていなかった。


「まあ、少しずつ仲良くなれたらいいか。待ってよ!」







 冒険者ギルドを出て、シャーリーンはフィードルと共に彼のパーティーメンバーがいる街の北門へ向かった。


 北門には既に4人の冒険者が待機していた。

 前衛を務める男剣士と盾役に、攻撃系魔術を使う女魔道士。回復役の女冒険者のバランスの取れたパーティー。

 合流後はフィードルが軽く事情を説明し、シャーリーンはフィードルの時と同様に愛想のない自己紹介をして、目的地であるラムス迷宮へと出発した。


「よし、到着だ」


 そして、出発から3時間ほど。道中は特に何事もなく、出発から3時間ほどでラムス迷宮の入り口に到着。

 ラムス迷宮に到着するまで、フィードルが率いる冒険者たち──主に女の冒険者たちはシャーリーンにいろいろ質問していたが、相変わらずの不愛想な態度で適当に流されていた。



 




「す、すごいわね……」 


 後ろからシャーリーンの戦闘を見ていたパーティーの女魔道士が、倒された魔物の姿を見て声を漏らした。


 倒したのは依頼の魔物ではないが、討伐対象以外の魔物の素材も買い取ってもらうことが可能で、状態がいいものであれば買い取り額も上乗せされる。


 魔物を強く憎んでいるシャーリーンだが、活動資金のことを考えると憎悪に身を任せて雑に倒すわけにもいかない。

 

 故に一撃必殺。素材へのダメージを最小限に抑えながらも、確実に魔物を仕留める技術は、そう簡単には身につかない。


 当然のことながら、動きも洗練されている。常に最善の動きをしていると言っていい。

 この時のシャーリーンは基本的に剣を使って戦っているが、繰り出される剣技はダンジョン内にいるにもかかわらず、動きを止めて見惚れてしまうほど美しいものだった。

  

 ダンジョンで魔物の集団に囲まれたが、ほとんど出番がないまま終わってしまったフィードルたち。


 彼らは自分たちが倒した魔物の回収を済ませた後、シャーリーンが倒した魔物の回収の手伝いをする。

 最初は横取り目的で倒した魔物に手を伸ばしたのだと思うシャーリーンだったが、すぐに自分のところへ持ってきて手伝いであることに気づき、危うく怒るところだった。


「はい。一人じゃ大変でしょ?」

「……手伝っても素材は一つもあげないから」

「わかってるって。それより、シャーリーンって何者? 道中では教えてくれなかったけど、あの戦いぶりを見るとやっぱり気になるのよねぇ。『職業』は『聖騎士』……でも、かなりの種類の魔術も使えるみたいだし、『魔法剣士』の可能性も……」


 ぶつぶつと一人で話し始める女魔道士。

 今まで通り、無視して魔物の回収を続けるつもりだったが、この先、何度も聞かれるかもしれないことを考えると鬱陶しく感じる。


「……ただの『剣聖』よ」


 と、初めてシャーリーンは質問に答えた。

 本来『職業』は12歳で与えられるのだが、当時10歳で死んだシャーリーンは『職業』を与えられていない。


 そのため、19歳の肉体で転生した際に、初めての『職業』である『剣士』が与えられた。そこから魔物を殺し続け、気づけば『剣聖』へ。

 シャーリーンの『職業』は比較的数の少ない珍しいものだ。女魔道士が見せる反応は予想通りのものだった。


「えっ、すごっ……。『剣聖』だったなんて……しかも、女性の『剣聖』なんて見たことないわ」

「……そう」

「でも『職業』で言えば、うちのフィードルだって凄いのよ!? なんたってフィードルは『勇者』なんだから!!」


 女魔道士は自分のことのように自慢する。

 さすがに予想外だ。表情には出ていないが、驚かなかったと言えば嘘になる。


 他人の『職業』など微塵も興味はない。

 だが、さすがに『勇者』というのは、少しだけ、ほんの少しだけ興味を惹かれた。


 一応、事実かどうかシャーリーンはフィードルの方へ視線を向ける。目が合うと、フィードルは頭を掻きながら口を開いた。


「えっと、まあ、彼女の言う通りだよ。でも、街では割と知られているけど、俺はあまり『勇者』だって言いふらしたくないんだよね。俺を側に置いておきたい貴族とか、自分で言うのはどうかと思うけど、『勇者』ってだけで女性が寄ってきて結構苦労するんだよ」

「……モテすぎも苦労するのね」

「あはは……。でも、シャーリーンだってモテてるでしょ? 可愛いから男の人に声をかけられることも多いんじゃない?」

「……こんな愛想が悪い女、可愛くないでしょ」

「そんなことないと思うけど。少なくとも俺はね」

 

 フィードルの笑顔を見てシャーリーンは大きなため息をつき、立ち上がる。

 そして、フィードルたちに顔を見せず歩き始めた。

 

「あれ、シャーリーン? 全部回収してないけど」

「……もう十分だからいいわ。残りはあげる」

「そ、それは嬉しいけど……」

「……別の魔物がいないか見てくる」


 どうしてなのか原因はわからない。

 頬が赤く、熱くなっているような気がする。


 この感情は何なのか。

 一つだけ思い当たる節がある。


 だが、絶対にそれはない……と思いたい。

 お世辞で、あんな言葉は何度か言われたことがあるが、フィードルのは本心で言っているのが何となくわかる。

 だからこそ、それで心が揺らぐなんて、そんな単純な女ではない……と思いたい。


 ひとまず、シャーリーンは今のこの顔を誰にも見せたくなかった。











 シャーリーンがフィードルたちと出会って半年が過ぎようとしていた。

 いつもなら、長くても1カ月ほどで次の街へ向かうのだが、今回は既に半年も同じ街にいる。


 次の街へ行こうと考えたことはある。だが、そうすることはなかった。理由は、自分でもよくわかっている。


「まったく、シャーリーンとフィードルはいつになったらくっつくのよ~。そろそろお付き合いしてもよくな~い? いい加減くっついちゃいなさいよ~」


 ある晩、フィードルのパーティーメンバーの女魔道士とヒーラーに酒場へ来いとシャーリーンは呼び出された。

 やることがあってシャーリーンは遅れて彼女たちと合流したのだが、既に女魔道士は完全に出来上がっていた。で、席に座ってすぐに酔っぱらいに絡まれたわけだ。


「酒クサッ! というか、他の3人は?」


 シャーリーンは半年前と比べて、かなり変わった。

 自分以外の人間には壁を作り、必要最低限の会話で済まそうとしていたシャーリーンが、今では友人のように彼女たちと話している。


「今日は女子だけの飲み会だから野郎どもはいませ~ん!! ほら、シャーリーンも飲みなさ~い!」


 酒を進めてくる女魔道士を呆れた目でシャーリーンは見る。

 同席していたヒーラーも、さすがに飲み過ぎだと女魔道士のために水を頼むが、この話題には興味津々。同じように彼女もシャーリーンに問い詰める。


「それで? 実際どうなんですか? お付き合いする雰囲気になったりしていないんですか?」

「別に交際するとかそういった話は──」

「でも、休みの日は二人で出かけることもあるんですよね? それってデートじゃないんですか?」

「ぐっ……」

  

 最初の頃はフィードルのことを恋愛対象に見てなかった。そもそも自分が誰かに恋をするなんて永遠にないと思っていた。

 それが今ではどうだ。毎日魔物を殺していたのに、休みもなしに働くのは良くないと理由をつけて、休日を満喫──フィードルに誘われて二人で買い物に行くことだってある。最初は断っていたのに。


 そんな生活を送っていたからだろう。

 気づけば半年前まで、ただの誰にでも優しいやつとしか見ていなかった男に恋をして、一緒にいる時間が増えれば増えるほど、相手のことをもっと知りたいと思ったり、その人の魅力等に気づいて、更に好きになっていた。


「そうよ! デートよ、デート!! 何だったら交際もしているわよ! 黙っていて悪かったわね!」


 問い詰められるシャーリーンは、木製のジョッキに入った酒を一気に飲んで、この際だから言ってしまえと若干キレ気味に言った。恥ずかしさで顔が真っ赤になっている。


 だいたい1カ月前のことだ。シャーリーンはフィードルから告白されていた。

 その時には既にフィードルのことを好きになっていたが、シャーリーンには、あのユニークスキルがある。

 仮に交際し、それが長く続いたとして、確実に自分よりも先にフィードルが逝ってしまう。そして、自分は転生を繰り返して永遠に生き続ける。


 だから、シャーリーンは自分のユニークスキルを──自分は死んでも新しい肉体で転生する化け物であることをフィードルに明かした。


「なるほどねぇ。シャーリーンもユニークスキル持ちだったのか。それを聞いてフィードルが言った言葉が「シャーリーンは化け物なんかじゃない。でも、俺が死んでもシャーリーンは生き続けるとなると、ずっと寂しい思いをさせちゃうのかぁ」か。自分よりも他人を優先して考えるのは、アイツらしいわね」 


 酒を飲んで若干酔いが回っていたのもあるが、何度も共に依頼を受けて信頼していることもあり、さすがに詳細までは伏せたが、シャーリーンは彼女たちにも自分の秘密を明かした。こんなこと半年前では、ありえないことだ。


「で、そんなことを言ってたけど、結局お互い相手のことが好きだから付き合った、と。まあ、本当は全員二人が付き合ってることの薄々気づいていたけど」

「はい。お二人は隠していたようですが、何となくそういう雰囲気は出ていましたからね」


 フィードルとは違った反応が来るとは思っていたが、ユニークスキルのことはあっさり流す感じで、それよりも彼女たちは二人の関係がどこまで進んでいるか気になるようだった。


「ねえ。自分で聞くのも変だけど、私のユニークスキルのことで驚いたり、詳しく聞いてきたりしないの?」

「ん~。ぶっ飛んだ能力だなとは思ったけど、ユニークスキルって普通のスキルと違って常識外れの力だからなぁ。そういうのもあるんだ、ってくらい?」

「身近に強力なユニークスキル持ちも一人いますしね」

「そうそう。もしフィードルが普通の冒険者だったら、シャーリーンの話を聞いて椅子から転げ落ちるくらい驚いていたかも」


 なんて笑って言いながら女魔道士は再び酒を飲む。

 フィードルと同じでユニークスキルのことを話しても変わらずに今まで通りでいる彼女たちを見て、シャーリーンは嬉しく思った。

 

 初めての転生であり、検証もしていないため、実際はどうなるかわからないが、ユニークスキルの説明では効果は一度きりというわけではない。

 ユニークスキルがある以上、必ずフィードルたちとの別れがくる。だが、それまでの間でいいから素敵な仲間たちと一緒に旅を続けたい。


「あの、お願いがあるんだけど」

「なに?」

「えっと……何度も断っていたから言いづらかったんだけど、私をあなたたちのパーティーに入れてくれないかしら」


 シャーリーンの言葉を聞き、二人はポカンとした顔で見つめ合う。

 だがすぐに、二人は身を乗り出してシャーリーンに迫った。


「ようやくパーティーに入る気になったのね!?」


 実は、彼女たちが出会ってから半年近く経っているが、同じダンジョンの依頼をそれぞれ受けて、一緒に行くことはあっても、シャーリーンはまだフィードルのパーティーに加入していなかった。

 

「お、同じ街にいる冒険者で交際もしているのに、パーティーを組んでいないっていうのも変な気がするし……。もし、この街を発つことになったら必然的に一緒に行くことになるでしょ……? それならパーティーに入った方がいいと思ったわけで……。それに、こうしてあなたたちと一緒に話すのも楽しいし……」


 もごもごとした話し方で、照れながらシャーリーンは俯いて言う。

 今まで見たことないシャーリーンの姿に愛らしさを感じた二人は顔を見合わせてニコリと笑った。


「だいたい半年ですか。依頼以外でもプライベートで会うことが多かったので、そこまで長かった感じはしませんね」

「ええ。でも、これでようやくシャーリーンも正式に私たちのパーティーの一員ってことか」

「まだ、フィードルさんには言ってませんけどね」

「今まで何度も誘ってきたのよ? シャーリーンから入れてほしいって言ってくれて、フィードルが断るわけないじゃん。大喜びでオッケーするわよ。じゃあ今日はシャーリーンがパーティーに入った記念も兼ねてたくさん飲むわよ! 店員さ~ん!!」


 女魔道士は手を挙げて酒場の店員を呼ぶ。

 もちろん、追加の酒を頼むために呼んだわけだが、やってきた店員はすでに人数分の酒を持っていて、それらをシャーリーンたちのテーブルに置いた。


「あれ? まだ頼んでないけど?」

「あちらの方が店にいる客全員に、と」


 店員が視線を向けた方を見てみると、8人の集団が大騒ぎをしている。

 その中でも一人だけよく目立っていた。

 8人のうち、7人は男の冒険者。シャーリーンは話したことはないが、冒険者ギルドで何度か見かけている。


 しかし、残りの一人。

 男だけの集団には場違いとも言える紅蓮色の長髪の女が、彼らと一緒に酒を飲んでいた。

 7人は冒険者ということもあり、彼女も同じ冒険者なのかもしれない。だが、この街に半年近く滞在しているシャーリーンたちでも見たことない人物だった。


「どうやら、あちらの女性のお客様がゲームに負けたようで、罰ゲームとして客全員にお酒を一杯驕ることになったとか」

「へぇ、結構客がいるのに、全員に驕るなんてお金持ちなのね。おかげで一杯分のお金が浮いてありがたいけど」


 タダ酒に喜びながら女魔道士が別の注文をしているなか、シャーリーンは紅蓮髪の女のことが気になり彼女のことを見ていた。

 すると、視線に気づかれたのか、紅蓮髪の女が振り向き、彼女と目が合う。

 咄嗟に視線を逸らす後、今度は気づかれないように一瞬だけ見たが、紅蓮髪の女は再び楽しく男の冒険者たちと酒を飲みかわしていた。


 これがシャーリーンと『強欲の魔王』カルナ・ヴァーミリオンとの最初の出会いになる。

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