表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ1巻 3月27日発売】【Web版】奈落の底で生活して早三年、当時『白魔道士』だった私は『聖魔女』になっていた  作者: tani
第五章 幼馴染再会編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

156/190

ゲームスタート

新年明けましておめでとうございます。

前回の内容を少し変更しましたが、読み返すほど大きな変更ではないので。

 ここがゲームの会場……。

 階層名の通り、どこを見ても建物はボロボロ。

 瓦礫も地面に散乱していて、お世辞にも人が住める場所とは言える環境ではありません。


 見える範囲で誰もいないということは、バラバラになったと考えていい。

 確認のために『魔力感知』で気配を探してみましたが、ここから離れた場所にいくつかあります。

 しかし、私の『魔力感知』でも範囲に限界があります。

 他の階層と同様に広大なせいで、タルトたちの居場所を全て把握したわけではありません。

 

 今のでわかったのは、タルト、バエル、クオリア、シャルさん、グランドラムさんの5名。

 残りは範囲外にいるのでしょう。

 ただ、この5名とは別の気配も『魔力感知』で引っかかりました。

 ダンジョンの一部をゲームの会場としているため、魔物も普通に生息しているみたいですが、私の言う気配は魔物ではないです。


『あー、あー、全員聞こえるかしら?』


 エスメラルダの声が耳に入ります。

 脳内に直接というわけではなく、声が反響して聞こえているので、魔術か魔道具を使っているのでしょう。


『突然だけど、これからとあるゲームをするわ。あなたたちに拒否権はない。ルールはとてもシンプル。ゲームが始まってから1時間、追手から逃げ切るか、ここの何処かにある転移用魔法陣で下の階層に行くだけ』


 エスメラルダ一人だけで捜索するなら何とかなるでしょう。

 しかし、私たちの敵はエスメラルダだけではないようで……。


『次に追手の数だけど、私もここ全域を一人で探すのは面倒だし、スリルもないと思うから、私以外に人員を5人追加する。だから、あなたたちの明確な敵は全部で6人。容姿は……全部伝えるのめんどくさいから省くけど、私以外は黒いローブを纏っているということだけは教えてあげる』


 ふむ。エスメラルダは当然のこと、黒いローブと遭遇したら敵と考えた方が良さそうですね。

 

『あと、何の話をしているのかわからない人。既にここにいた冒険者たちね。運の悪いあなたたちもゲームの参加者になったから。一か所に集まっているならまだしも、散らばっていて転送も面倒だから強制参加にするので、そこんとこよろしく。まあ、巻き込まれてドンマイ!』


 なるほど。それでタルトたち以外の気配があったと。

 私はエスメラルダが言った言葉を思い出します。


 この街っぽいところにいる奴らの参加は強制じゃなく任意にしてあげる。


 最初からこの場所にいた冒険者については何も言っていない。巻き込む気満々だったのでしょう。

 これは災難としか言いようがないですね。

 幸いにも転移用魔法陣の場所に行けば、第五階層へ避難することはできる。

 あとは、そこへ向かわずともこの街から出てしまえば──


『ちなみに、この廃墟全体には参加者が逃げ出さないように結界が張られているから。残り時間がゼロになれば自動的に消えるけど、結界は私でも壊すのは厳しいくらいの強度だからオススメしないわ。その辺も頭に入れておくことね』


 エスメラルダもそこまで甘くないですか。

 私も考えてすぐに気づきました。

 先程エスメラルダが言ったクリア条件以外で逃げ出すことが可能ならゲームが成り立ちませんし。

 こうなった以上は巻き込まれた人たちは腹を括るしかないと思いましたが、ここでエスメラルダはとんでもないことを言います。


『でも、何も知らずに巻き込まれたのはちょっと可哀そうと思った心優しい私は特別にルールを追加することにしたわ。この廃墟内にいる参加者を3人殺せば、制限時間に関係なく結界の外へ出してあげる』


 参加者の心を揺さぶるルールを追加してきましたね……。

 強制参加の人たちは、パーティーで行動しているはず。

 第4階層に単独で挑む人は、可能性はゼロではなくとも、ほとんどいないと考えていいでしょう。


 彼らも最初は仲間と協力して生き延びようとする。

 でも、仮にエスメラルダもしくは、その仲間に一人殺されたとします。


 そこであえて全滅させずに残りを生かしたら?


 仲間の死を目の当たりにし、身体は恐怖に飲まれ始め、平静を失うことが容易に想像できる。

 そして、ゲームから抜け出す方法はないか考えた時、エスメラルダが言った追加ルールを思い出す。

 極限の状況では、たとえ仲間でも自分以外はどうでもいいと考えることだってある。


 そうならないことを願うしかないですが、ここでルールを追加してきたことを考えると、エスメラルダ陣営が何かしてくることは十分に考えられます。

 加えて、私たちも他の参加者を見つけても不用意に近付けなくなります。私やタルトたちは襲われても守りが硬いので大丈夫でしょうけど。

 

『ルール説明はこんな感じかな。それじゃあ参加者諸君。無事に生き残れるように頑張りたまえ。ゲームスタート!』


 開始の宣言がされると同時に、廃墟中央にある城の上空に数字が浮かび上がっているのが視界に入りました。

 60:00から59:59と数字が減っているため、残り時間を表していることがわかります。

 

 さて、私も動きましょうか。

 エスメラルダには、まだ聞きたいことが山ほどあります。

 彼女に会ったら戦闘は避けられないのはわかっていますが、戦闘の最中でも話を聞くことはできるでしょう。

 まずはエスメラルダを見つけるとして、移動しながら従魔たちとも一度連絡を取ります。


(タルト、バエル、デオンザール。聞こえますか?)

(キュイ!)

(はい)

(おう! 聞こえるぜ!)


 念話は普通に使えますね。

 過去に念話を妨害されたことがあったので、今回も何かしらの手段で通話を妨害されていたらどうしようか考えていましたが、余計な心配に終わってよかったです。

 

 そこから3人に『魔力感知』をしてほしいと頼みました。

 特にデオンザールは私の『魔力感知』の範囲にはいなかったので、彼の情報は非常に助かります。


 そして、3人と情報共有した結果、カリア、ゼルドラドさん、メイリアさんの大まかな居場所がわかりました。

 アドル、ペディストル、ゼペット、マルベリーさんの居場所は、私たち4人の『魔力感知』に引っかからなかったので、居場所はまだわかりません。 


(リリィ嬢、これからどうする?)


 デオンザールが聞いてきたので、時間を無駄にしないために移動しながら彼らに指示を出します。


(デオンザールはカリアと近いので、まずは彼女と合流してください)

(おう、了解した!)

(バエルはクオリアとシャルさんのところへ。二人は一緒ですが、どちらも魔道士です。敵と遭遇して接近戦に持ち込まれると一気に不利になるので、彼女たちのサポートをお願いします)

(かしこまりました)

(タルトは居場所がわからない人たちを探して見つけ次第、一応私に連絡をください。加勢が必要なら助けてあげること。ただし、元の大きさになって空を飛ぶのは、相手に気付かれて狙われるので、その際は十分気をつけるように)

(キュイキュイ!!)


 指示を出し終えたところで念話を切ります。

 そして、同時に私は足を止めました。


 理由は前方に人が立っていたから。

 その人は黒いローブを纏っており、フードを深く被っていましたが、そもそも顔全体を隠せる仮面をつけていたので、素顔はわかりません。

 それでも何かわかることを一つ挙げるのなら、辛うじて白い髪がフードの中から見えるくらい。

 背は私よりも低い。子供──どちらかと言えば、女の子のようにも見えます。


 エスメラルダの言葉が真実なら間違いなく敵ですね。


 適度な距離を保つために、様子を見ながら警戒していますが、こうして対峙している子供の右手に視線が自然と行ってしまいます。


 偽物と思いたいですが、おそらく本物。

 目は上を向き、舌はだらんと出て、切り口からは血がぽたぽたと滴っている男性の頭部。

 髪の毛を鷲掴み、ここまで持ってきたようです。


 私の場所から少し離れた場所に巻き込まれた参加者の気配が3つあります。

 でも、その3つの気配は、まるで呆然と立ち尽くしているかのように、その場から一歩も動いていない。

 となると、子供の持っている頭部から考えるに、始まってわずか数秒で襲撃に遭い、仲間の一人をこの子供にやられた。そのショックで動けないと考えるのが妥当でしょう。

 

 出会ってしまった以上は戦うことになりますよね。向こうはその気で私の前に現れたのでしょうけど。 


「見つけた……見つけた見つけた見つけた──」


 声を聞くに、女の子っぽいです。

 狂ったように同じ言葉を繰り返し、手に持っていた男性の頭部を投げ捨てて、彼女は私に向かって一直線に走ってきます。


 そして、左手に持っていたナイフを私に投げた。

 躱せる速さだったので、横に飛んでナイフを回避。

 その間に彼女は私の目の前まで接近。

 空いていた両手には、私に投げたナイフと同じものを握っており、一心不乱に斬りかかってきます。


「当たれ、当たれッ、当たれッッ!!」


 速度は悪くないですが、単調な動きで容易に回避できます。ここでフェイントをいくつか挟めば、攻撃が当たるかもしれないのに……。


 って、敵を相手に何考えているんですかね、私。


 正直なところ、私はエスメラルダを探したいので、この子に構っている暇はありません。

 ただ、こんな子供相手に戦っていいのか。

 もちろんそんな甘いことを言っている場合ではないことは重々承知です。

 でも、見た目が身体の小さい子供なだけに躊躇している私がいます。

 

 ……いや、違いますね。


 今の私は逃げの言葉を並べて目を背けているだけ。

 私は一度も自分の手で人を殺したことがない。

 だから、たとえ人を殺している敵だろうと、自分と同じ人を殺すのに躊躇いがある。

 

「あっ、当たった!!」


 戦闘中の無駄な思考と躊躇い。

 それが私の動きを少し鈍らせ、彼女のナイフの先が私の頬を掠ります。

 私が展開していた何枚もの障壁は壊れていない。

 ということは、障壁を貫通する攻撃と考えるべき。

 

 非常に厄介ですが、彼女の攻撃は二度と私に当たることはありません。


 ここで気絶させてから厳重に拘束し、見つからなさそうな場所に隠そうとしても、正直あまり意味がない。

 行動範囲が制限されているということは、隠せる場所もこの街の何処かと決まっているということだから。

 私がタルトたちにお願いしたように、エスメラルダたちが『魔力感知』で探せば見つけ出すことも可能でしょう。


 ちなみに、拘束後は捕虜として『聖魔女の楽園』に送って異界の情報を聞き出そうとも考えていましたが、なぜか『聖魔女の楽園』に行けなくなっていました。

 おそらくエスメラルダが言っていた結界が影響しているのかと。

 安全な避難所があれば、そこで時間を潰すことが可能なので、それを考慮して別空間には行けないようになっているのだと思います。

 

 話を戻します。

 あの子を拘束できたとして、それを解く術を持っていないとは言い切れない。

 仲間に見つけられて、拘束を解かれたら再び彼女は参加者の命を狙うことになる。

 実際に参加者の一人が殺されているんです。

 巻き込まれた参加者の生存率を少しでも上げるためには、私が今ここで彼女を殺すしかない。


 アルゴギガースの一件でも「いつかはこんな甘えたことを言っていられない時が来るはず」と思っていたじゃないですか。

 今がまさに、その時なのでしょう。


 頼れる仲間はすぐ側に居ない。

 震える手は杖を強く握り締めて抑えなさい。

 覚悟を決めたのだから直前で躊躇はしない。

 殺した相手を見て、絶対に泣くな、後悔するな。


 そう自分に言い聞かせて杖を構えます。


「──ッ!?」


 私の顔を見たのか、彼女は初めて後退します。

 しかし、すぐに地面を強く蹴り、私に接近してきました。

  

「──【氷結槍(アイスランス)】」


 直線的な動きほど、攻撃は当てやすい。

 回避される可能性も頭の中にありましたが、相手が回避の判断するよりも速く魔術を放てばいいだけのこと。

 先端が鋭く尖った氷の槍は彼女の心臓を穿ちます。

 ぽっかりと空いた胸の穴からは大量の鮮血が。

 彼女は自分の身に何が起きたのか理解する前に、その場に倒れこみました。


「うっ……うぅ……」


 ……まだ、生きているようです。

 でも、彼女に残された時間は、もうほとんどない。

 そのわずかな時間を苦しんだまま過ごすのも辛いでしょう。

 一撃で殺せなかった私にも責任があります。

 私の手で楽に──


「……結局…………運命……。わた…は…失、敗……。…物…には……ない。代わ……、いく………いる……。でも……もっと、生きて、いたかった……」


 その言葉を最期に彼女は息を引き取りました。


 ある意味、私は一つ成長したのかもしれません。

 彼女を見て、私は実感します。

 私は今日、初めて人を殺した。

 わかっていたことですが、人を殺すのは気持ちのいいものではないですね……。

 もちろん魔物を殺す行為は気持ちいいというわけではありませんよ。それは生きるため、強くなるためと割り切っています。


 ……ここにいたら、いろいろ考えてしまいそう。

 ただ、気になったので、移動する前に仮面で隠された彼女の素顔を見ることにしました。


 この時、私は彼女の素顔なんて見ないで進めばよかったのかもしれません。


 うつ伏せになった遺体を仰向けにし、彼女の仮面に手を乗せます。

 そして、そのまま仮面を取ると、そこには目を疑う光景がありました。


「こ、これはいったい……」


 髪の色は真っ白ですが、それ以外の顔のパーツや瞳の色には見覚えがあります。

 いや、見覚えがあるとかそういう話ではないですね。


 ──彼女の顔は幼少期の私とまったく同じだったのだから。








 

 リリィたちの『魔力感知』に引っかからなかったゼペットとマルベリーは同じ場所に転送されていた。

 ゲーム説明が終わるとマルベリーは最初から単独行動をするつもりだったのか、ゼペットに何も言わず歩き出す。


「……ま、待って、ください!」


 ゼペットの呼びかけに立ち止まるマルベリー。

 

「……何?」


 ゼペットとマルベリーは同じダンジョンを攻略する者同士、情報交換も兼ねて何度か話したこともあった。

 故に今の彼女を見て、別人のように感じた。

 光が失ったような冷たい目。

 声色は彼女の口からは聞いたことない低い。

 今のマルベリーは、誰にでも優しく、場の雰囲気を明るくさせるのが得意な印象とは真逆だ。


 しかし、こうなってしまうのも無理はない。

 目の前で仲間が殺された。

 小さな虫を踏みつぶすかのように、簡単に殺された。

 自分は運よく生き残ったが、仲間を殺した奴(エスメラルダ)はまだ生きている。

 復讐するには十分な理由だった。


「……敵はあの女の人だけじゃない。仲間も追加するって言っていたし、他の参加者だって僕たちを殺しに来るかもしれない。一人で行動するのは危険です」

「だから?」

「……アドルたちを探しましょう。まずは合流した方がいいです」


 ゼペットの判断は正しいだろう。

 参加者しているほとんどは敵と考えていい状況。 

 信用できる仲間──アドルやリリィたちを見つけて合流した方が各々にかかる負担も減り、制限時間まで生き残れる可能性は高くなる。


 マルベリーも同じことを考え、何の反論も出さずにゼペットの提案に賛同するだろう。

 ……普段のマルベリーなら。

 今の彼女は復讐しか頭の中にない。

 正常な判断もできていない。

 なぜなら、邪魔をする奴がいれば、殺してでも進むと考えてしまっているから。

 

「時間がないの。彼らを探している暇はないわ。ゼペット君が合流したいなら、一人で勝手にすればいい。私も勝手にやるから」

「…………マルベリーさんの気持ちはわかります。でも、マルベリーさんが復讐を果たしたとしても、殺された人たちは帰ってきません。だから──」


 復讐なんて止めて、殺された人たちの分まで生きましょう。

 そう言おうとしたゼペットだったが、その前にマルベリーに胸ぐらを掴まれ、驚きのあまり声が出なかった。

 そして、面を食らった表情をしているゼペットにマルベリーは怒りの籠った顔で言う。


「気持ちはわかる? 仲間を殺されたこともないゼペット君に何がわかるの!? 知ったような口を利かないで!! 殺された仲間が帰ってこないことだって、あなたに言われなくてもわかっているわよ!!」

「……ご、ごめ……」

『あらら、随分と荒れているねぇ。けどさぁ、その子に怒りをぶつけたって何も解決しないんじゃない? そういうのは復讐相手にぶつけないと』


 二人の会話に割り込むように、声が聞こえた。

 声が聞こえた方を見ると、緑髪の女性──エスメラルダがいた。

 比較的綺麗な建物の屋根の上から二人のやり取りを見ていた彼女は、そこから降りて二人に近付く。

 それを見て、マルベリーはゼペットを離し、代わりに鞘から剣を抜いて強く握る。

 

『硬い硬い。もうちょっとリラックスしないと』


 アドバイスをするエスメラルダだが、マルベリーは敵の言葉など聞く気がない。

 それ以前に、復讐相手が目の前にいるのにリラックスなど出来るわけがない。

 だが、先程のような感情任せに動くことはなかった。

 ゲーム開始早々に訪れた、復讐を果たすチャンス。

 マルベリーは殺意を絶やさぬまま、冷静にエスメラルダの動きを観察する。


『ゲームを始める前に約束したし、相手してあげるから、かかってきなさい。ちなみに、本来のステータス値だと強すぎとゲームにならないと思ったから、今の私は能力値低下の装備とかで、それなりに弱体化している。頑張ればあなたの望み通り、私を殺せるかもよ』


 先制攻撃は譲るつもりなのか、エスメラルダは動き様子を一切見せない。

 舐められていると思いつつも、マルベリーはエスメラルダのその余裕を利用することにした。

 

 しかし、攻撃を仕掛けようとした時、マルベリーは自分の足が濡れていることに気づいた。

 この状況で足が濡れる要素なんてない。

 視線をエスメラルダから外すわけにはいかなかったが、それでも気になったため、ふと自分の足を見ると、両足の膝下付近からには赤い液体が流れていた。


 驚きのあまり重心が後ろに行くとマルベリーは尻もちをつく。

 だが、自分の両足は依然として立ったまま。 

 その光景を脳が理解した時には、マルベリーは激痛が全身を巡り、悲痛な叫びを上げた。


「あ、足が……私の足がぁぁぁぁぁぁ!!」

『まあ、まともに相手するとは言ってないけど。雑魚に構うほど暇じゃないし』

「……うぐぅぅ……」

『はい、これでおしまい。がっつり斬られちゃったし、高度な『治癒魔術』が使えない限り、その足は治せないよねぇ。私を殺すことができなくて残念でしたぁ~』


 エスメラルダは満面の笑みで言う。

 彼女は自分の口から先制攻撃を譲るとは言っていない。

 ゼペットたちの前に現れた時点で、既に攻撃は仕掛けられていた。

 だが、二人はそれに気付いていないし、仮に気付いても、どんな手段を用いて仕掛けたのかわからないだろう。


『──っと、自分でやっておいてあれだけど、このまま放置したら出血多量で死んじゃうから、傷口だけは塞がないと。まだ死なれたら困るのよね』


 エスメラルダが指を弾くと『治癒魔術』を使用したのか、マルベリーの傷口が淡く光り、出血が止まった。

 そして、マルベリーに興味を失ったエスメラルダはゼペットに近付く。

 ゼペットは自前の魔法銃を構えたが、力の差を理解したのか、震えて狙いが定まらない。

 結局撃てないまま、エスメラルダはゼペットの前に立ち、彼の構える魔法銃にそっと手を乗せた。


『怖がらなくていいわ。私が君を殺すことはない』

「……えっ?」

『ねぇ。突然だけど、もしこの世界の『勇者』や『魔王』みたいな、強い力を手に入れることができるって話があったら、どう思う?』


 不敵な笑みを浮かべるエスメラルダは後ろから抱き締めるようにゆっくりとゼペットの背後に回り、彼の耳元で囁いた。


『君は選ばれたの。これを使えば君はまだまだ強くなれる』


 そう言ってエスメラルダがゼペットに見せたのは、神聖帝国マリアオベイルを襲撃して手に入れた9枚あるカードのうちの一枚だった。

本当は去年のうちに、あと数話更新したかったですが、色々用事やら年末の掃除やら、第五章完結までの流れを考えたりしていたら、あっという間に時間が過ぎていました……。

次話更新まで期間が空きがちな作者ですが、今年も応援よろしくお願いします。


あと、第五章についてですが、現時点の予定では残り4~5話ほどで終わります。(多分。もしかしたら、1話くらい増えるかも)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★書籍版公式ページはこちら!! 書籍、電子書籍と共に12月9日発売予定!

奈落の底で生活して早三年、当時『白魔道士』だった私は『聖魔女』になっていた4
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ