ダンジョン攻略説明会
「初めて説明会に参加する方はこちらで~す! まずはこちらで身体検査を行いま~す! ご協力いただけない場合は参加できませんので、ご理解のほどよろしくお願いしま~す!」
騎士のような鎧を着た女性が呼びかけをしています。
身体検査は訓練所が王城に併設されており、この説明会に乗じて危険物等を持ち込む、なんてことも考えられるからでしょう。
それなら別の場所で行えばいいのではと思いますが、説明会に参加する人は現時点でも多いため、この様子なら最終的には結構な数になるでしょう。広さを考えるなら、この場所が一番いいのかも。
「説明会なんてめんどくさいことする必要があるんかね。普通に行かせろよって話だよな」
「まあまあ。ルールなので守らないと」
「そうですよ。あなたみたいな脳筋には説明会に参加したところで半分以上は聞いていないと思いますが、参加しないと挑むことができないんです。黙ってついてきなさい」
「キュイキュイ!!」
身体検査の待ち時間にそんなやり取りをする私たち。
昨日急遽『聖魔女の楽園』にいる実力者を集め、誰がダンジョン攻略に参加するか会議を行いました。
攻略組は早々に決まります。
私、タルト、バエル、デオンザールの4名です。何気にこの4名でダンジョン攻略をするのは初めてですね。
もう一つの組はサフィー、グラ、アモン。
そして、最後の一人は私の従魔ではなく、新参者ではありますが、その強さは私もよく知っていて認めています。
「みんなと協力して素材集めを頑張ってくださいね、アルゴ」
「了解しました、グランドマスター」
サフィーと同じくらいの体格で、綺麗な薄緑色の長髪に紫色の瞳を持つ、まるで人形のような少女。
彼女の名前はアルゴ。またの名を古代兵器アルゴギガース。
そう。あのアルゴギガースです。
ちなみにステータスはこんな感じ。
───────────────
《名前》 古代兵器アルゴギガース
《個体名》 アルゴ
《ステータス》 《基礎±補正》
レベル 396
生命力 12万3213《7万8213+4万5000》
魔 力 10万8991《6万3991+4万5000》
持久力 10万6200《6万1200+4万5000》
攻撃力 13万3134《8万1134+5万2000》
防御力 12万2356《7万7356+4万5000》
精神力 10万7811《6万2811+4万5000》
スキル
『生命力自動回復』『魔力自動回復』
『物理威力上昇』『空間魔術』『治療魔術』
『物理・魔術・状態異常耐性』『魔力感知』
『鑑定』『隠密』『隠蔽』『魔闘法』
『五感強化』『破壊者』『古代兵器の加護』
───────────────
生まれた時からこのステータスみたいです。さすがアルゴギガース……。
ちなみに、レベルはめちゃくちゃ上がりにくいとか。その代わり、1つレベルが上がると各ステータス値はかなり上昇するみたい。
それにしても、まさかテルフレアを恐怖に陥れた怪物が、こんな美少女になるなんて思いもしませんでしたよ。
アルゴは古代兵器アルゴギガースを素材にしてバエルが造った人工魔物というやつです。正式名称は不明ですが、とりあえずそう呼んでいます。
話は軽く聞いていましたし、『聖魔女の楽園』にある軍団の一つ──機械守護兵団にはアインス、ツヴァイ、ドライといった機械人形がいて、彼らもバエルの手によって造られたのでそこまで驚きはありませんでした。
アルゴは私のことをグランドマスターと呼びます。
理由はバエルが生みの親であることからマスターと呼ばれ、私はそのマスターよりも上の立場だからグランドマスターと呼ぶそうです。
ちなみに呼び名の候補には、バエルが私を神と崇めていることから、ゴッドマスターなんてものありましたが、さすがにそれはどうかと思ったので、今のグランドマスターに落ち着きました。
素材集め組はアルゴを含めたこの4名。
サフィーが若干心配ですが、グラからレベル上げも兼ねて同行させたいとお願いされたので、どこまで強くなるか楽しみでもあります。
何かあっても、最上級悪魔のグラとアモンがいます。アルゴもまだ成長途中とバエルから聞いていますが、何せ元々はアルゴギガース。特に問題ないでしょう。
それから身体検査を無事に終えた私たちは訓練所へと進みます。そこには多くの冒険者たちがいました。
他には傭兵っぽい方や、私と同じ従魔連れの方もいますね。ただ、私ほど大勢の魔物を従えている方はいません。
さて、説明会までまだ時間がありますね。
といっても、ここから離れるわけにもいきませんし、時間が来るのをただただ待つしかなさそうです。
「おっ! 貴様は昨日のチンピラ共と喧嘩していた奴ではないか! 瞬時に料理を消し炭にしたあの魔術、なかなかのものだったぞ!」
全員とダンジョン攻略について話そうと考えていると、後ろから声をかけられました。
振り返るとそこには私よりも背の低い男の子が。
ツンツンとした黄髪に濃緑の瞳。ゆったりとした白のズボンに、上裸にコートを羽織っているだけの寒そうなファッション。
子供に見えますが……ここにいるということは、ダンジョン攻略に挑むということですよね。
「えっと、どちら様でしょうか? どこかでお会いしたことがありましたっけ?」
「いや、昨日の晩、冒険者ギルドの酒場に我も居ただけで、こうして直接話すのは初めてだ! ここにいる奴らは正直期待外れの強さだが、貴様とその配下は結構できそうだな! 時間があれば一度手合わせしたいものだ!」
「で? あなたはいったい何者ですか? リリィ様が名を聞いているのです。さっさと答えなさい」
バエルが男の子を睨んで言います。
おそらく私に対する彼の態度が気に入らなかったのでしょう。
しかし、バエルに睨まれているというのに男の子はまったく怯んでいません。むしろ嬉しそうに笑みを浮かべています。
「いいだろう。そんなに聞きたいのであれば教えてやる! 聞いて驚け! 我はこの世界に君臨する7人の『魔──」
「やっと見つけた! 勝手にいなくならないでくださいよ!」
意気揚々と自己紹介をするつもりの男の子でしたが、遠くから走ってやってきた眼鏡をかけた銀色長髪の女性にコートの襟を掴まれます。
「申し訳ありません! この方が皆さまにご迷惑をかけなかったでしょうか?」
「だ、大丈夫ですけど……」
「それならよかったです。それでは、この方にちょっと説教をしないといけないので失礼します。行きますよ」
「わ、わかったから! 襟を引っ張るな!」
銀髪の女性がコートの襟を引っ張りながら男の子を連れていきます。
いえ、男の子なんて可愛いものではないのかも。
自己紹介は途中で遮られてしまいましたが、彼は「この世界に君臨する7人の『魔──」と言っていました。
さすがに気になったので、彼には悪いですが『鑑定』で確認してみます。
──────
《名前》ゼルドラド・ヴァン・バルトハルト
《性別》 男性 《年齢》『鑑定妨害』《職業》『鑑定妨害』
《職業》『鑑定妨害』
《称号》『鑑定妨害』
《ステータス》『鑑定妨害』
《スキル》『鑑定妨害』
──────
名前と性別以外、妨害されて何もわかりません。まあ、私も周りの人から勝手に『鑑定』を使って見られてもこんな感じですが。
こうして妨害されるということは、私より格上ということ。
それに、おそらく彼は自分を『魔王』と言いかけましたよね。であれば『鑑定』の対策もしているでしょうから、見られなくても納得できます。
しかし、なぜそんな人がダンジョン攻略に?
同じダンジョンに挑むのであれば、再び会う機会もあるはずなので、その時にでも聞いてみましょうかね。
その前にエルトリアさんに聞くのもありかも。最近は連絡していなかったですし、久し振りに声も聞きたいです。
「時間だ。これより説明会を始める」
厳かな声が耳に入ります。
訓練所内に設置されていた台。
その上に立っているのは三人の騎士。
右にいるのは先程、説明会や身体検査について呼びかけをしていた女性の騎士。
左には耳が尖った中性的な顔の騎士。肌の色は褐色で、特徴的な耳から種族はダークエルフだとわかります。
そして、その間に立つのは灰色長髪の男性。この人が三人の中で最も立場が上の存在でしょう。
「私はシュナーベル王国騎士団団長のグランドラム・アザーだ」
「団長自ら説明かよ……」
「そこ、私語は慎め」
ほとんど聞こえないくらいの声で話していた冒険者を鋭い目つきで黙らせるグランドラムさんという男性。一瞬で空気が張り詰めます。
「時間は有限だ。ほとんど何も知らない貴様らに件のダンジョンについて説明するが、少し考えれば猿でもわかるような、くだらない質問で説明を遮らないように。質問は一度自分の頭でよく考えてからしろ」
うーん、この人のことあまり好きじゃないかも。何というか、私たちを下に見ている感じ?
確かに、一度自分で考えることも大切ですし、それで解決することもありますが、あんな風に言わなくてもいいと思います。
「相変わらず団長は冷たいというか、そんなんだから団員たちに避けられるんですよ? もう少し優しくした方が団員たちも接しやすいですって」
「馬鹿なことを言うな。団長はこのままでいいんだ」
「やれやれ、ここにも冷たい人が一人。みなさ~ん、質問等があれば私が答えるので、遠慮なく聞いてくださいね~!」
更に空気が張り詰めて、この場にいる冒険者たちは黙っているため、グランドラムさんの横にいる騎士たちの声が余計に響きます。
「二人も私語は慎め」
「申し訳ありません」
「はーい」
グランドラムさんは懐から小さな円形のものを取り出し、それを確認すると軽く溜め息を吐きました。
「予定より少し時間が押してしまったな。これ以上、無駄に時間を使いたくないため、場所等の説明は省く。まず、件のダンジョンは第4階層にまで到達。そして、2日前にようやく第5階層に繋がる魔法陣を発見した。よって、現在は第5階層にて次の魔法陣の捜索を行っている」
クオリアの話では、第5階層に繋がる魔法陣を探すのに、かなり時間がかかっているようなことを言っていたので、第6階層に繋がる魔法陣も同じくらい時間がかかりそう。
「だが、第5階層に生息する魔物は第4階層の魔物よりも強力だ。ただそれ以前に、実力が不足している者であれば、第2階層で魔物に食われることも考えられる」
「そ、それくらい強いってことですか?」
一人の冒険者が恐る恐る手を上げて質問します。
「貴様らが遭遇したこともないだろうレベルの魔物も当然生息している。参考までに現時点で確認できている魔物のレベルを教える」
例のダンジョンに生息する魔物のレベルは──
第1階層で39~64
第2階層で76~110
第3階層で124~155
第4階層で161~198
第5階層で202~233
という感じみたいです。
この時、私はこう思いました。
あれ? 意外とそうでもない……。
グランドラムさんが脅すように言っていたので、もっと高レベルの魔物が出現するのかと思っていました。
いやでも、私が異常なだけで十分レベルは高いですよね。
魔物によって高ステータスを持っている個体もいますし。それが高レベルならとんでもない怪物になります。
これなら魔法陣の捜索に時間がかかるのもわかりますね。
階層が深くなれば魔物のレベルも上がる。そうなると余裕をもって捜索できる者も少なくなりますし。
(なんか、微妙だな……)
(ええ。リリィ様の経験値になるには弱すぎですね)
一応私語は慎めと言われているので、念話でそんなやりとりをバエルたちがしています。どうやらバエルたちも私と同じ感想を抱いていたようです。
「だが、現時点と言ったように魔物も成長する。たまたま確認できなかっただけで、今言った最大レベルを超える魔物が出現することも可能性としてはゼロではない。出会ってしまったら運が悪かったで済ませるしかないな」
そして、遭遇した場合は立ち向かわず無事に生き残ることができるか、自分の運にかけるしかない。
私もオルフェノク地下大迷宮生活一年目では、よく自分の運にかけていましたね。そう考えると私ってかなり運がいいのでは。
それからもうしばらく説明が続きました。
私たちは一通り説明が終わるまで大人しく聞いてきます。
「ダンジョンについての説明はここまでだ。私の隣にいるマルベリーが答えると言っていたため、何かあれば彼女に聞くように」
「は~い、何でも聞いてね~」
「では、次に簡単なテストを行う」
そう言ってグランドラムさんが【異次元収納箱】から取り出したのは綺麗な水晶玉です。
「これは触れた者の実力を測る魔道具と思ってくれていい。今から参加者全員に触れてもらい、出た結果で各々に適した階層を伝える」
「あ、あの……ステータスを見せるだけで済むのではないのでしょうか」
「中には詳細なステータスを知られたくないものもいるだろう。それを考慮した上でこの魔道具を使うことにしている」
「な、なるほど……」
「それに、貴様ら全員のステータスを一々確認するほど我々も暇ではない。これを使えば瞬時にわかる」
すると、グランドラムさんが持っていた水晶玉が鮮やかな赤色に光ります。
「このように魔力を込めると発光する。色は上から順に赤、橙、黄、緑、青、紫。実力がない者だと紫に光る。その場合、第1階層でのレベル上げを勧める。逆に赤く光れば、現在攻略中の第5階層に挑んでも問題ない」
「勧められた階層より下へ行ってはいけないのでしょうか」
「我々は結果を見て、その者に適した階層を勧めているが、別に無視しても構わない。為す術なく魔物に殺されたいと希望しているのであれば、好きにするがいい」
「や、やめておきます……」
「そうか。他に質問はないな。では時間もない。これより三か所に別れてテストを行う」
集った参加者たちが三方向に別れます。
それぞれの場所にはグランドラムさん、マルベリーさん、ダークエルフの騎士の方がついています。
普通は空いているところを見て並ぶと思うんですが、圧倒的にマルベリーさんの場所が人気で人が多いです。
そして、一番空いているのは仁王立ちしているグランドラムさんの場所。ほとんど人がいません。
ダークエルフの騎士さんもグランドラムさんほどではないですが、並んでいる人は少ないです。まあ、この二人と比べるとマルベリーさんの方がいいですよね。
さてさて。私たちはどこへ並びましょうか。
マルベリーさんのところは、混んでいるので止めておきましょう。あの様子だとかなり時間がかかります。
ダークエルフの騎士さんは……素材集め組に行ってもらいましょう。
私たちはもう誰も並んでいないグランドラムさんの場所に行きます。
「おい。あの子、団長の列に行く気だぞ」
「マジかよ。あんな怖そうな人の列に並ぶなんて無理だぜ。結果が悪かったら何言われるかわかんねぇし」
「それに比べたらマルベリーちゃんの方がいいよな。結果が悪くても優しく励ましてくれそう」
なんて話し声を聞きながらグランドラムさんのところに到着します。
目の前には先程見た水晶が4つ並んでいます。私たちも4人なので、並んでテストをするのにちょうどいいです。
ただ、ちょっと不安なことが一つ……。
「ほう、貴様以外全員従魔か。どうした? 魔道具に早く触れろ」
「いえ、この水晶って魔力の込めすぎで壊れたりしないですよね?」
そう言うとグランドラムさんは僅かですがピクリと反応します。
「過去に何度か壊れたことがあると話に聞いているが、実際にこの目で見たことはない。自信があるというならやってみろ」
魔道具を無駄にしないためにも、ステータスを見せれば早い話だと思いますが、やってみろと言われたのであれば、やってみせましょう。
私たちは各々目の前にある水晶玉に触れます。
すると、あら不思議。
水晶玉は一瞬発光しましたが、すぐに砕け散りました。
いや、何も不思議ではないですけど。こうなることは薄々気づいていたから、あんな質問をしたわけですし。
しかし、おそらく貴重な魔道具。それを4つも壊した。
いやいや、やっていいと言われたからやっただけ。私は悪くない。
そう思いつつも恐る恐るグランドラムさんの顔を見ます。
「フッ。本当に壊すとはな。壊れた魔道具については気にしなくていい。私が許可したのだから全責任は私にある」
と、笑わなそうなイメージのグランドラムさんが口角を少しだけ上げてそう言います。
とりあえず怒られなくて良かった。
……ん? でも待ってください。
私たちが壊したということは、素材集め組の方も……。
私の予想は正しく、ダークエルフの騎士さんの列に並んでいた素材集め組もちょうどテストが終わったみたいで、水晶玉は三つ砕け散っています。
そして、水晶玉を壊したのは私たちだけではないみたいで──
「ガッハッハ! すまんな! うっかり壊してしまった! というか、お前も我の側近なのだから、我と同じように破壊してみせろ!」
「無茶言わないでくださいよ。赤色に光っただけいいじゃないですか」
マルベリーさんの列に並んでいたゼルドラドさんという方も水晶玉を壊したみたいです。まあ、彼なら出来て当然というところもあります。
「この様子だと第6階層には予定より早く到達できそうだな」
こうしてテストも終わり、素材集め組とも合流しましたが、一名元気がありません。
その一名とはサフィーです。
素材集め組の方は水晶玉が三つ壊れました。
壊したのはグラ、アモン、アルゴの3名。サフィーだけ壊せなかったのです。
「みんな壊せたのに、サフィーだけできなかった……」
涙目で俯きながら言うサフィー。
これは水晶玉を壊すテストじゃないんですけどね。
でも、他のみんなはできて、自分だけできなかったとなると、すごく悔しいですよね。その気持ちはよくわかります。
そんなサフィーを元気づけるためにも目線を合わせて彼女に言います。
「サフィーはサフィーのペースで出来るようになればいいんです。シルファさんに新しい武器を造ってもらいましたし、それを使って今以上に強くなりましょう」
サフィーは背負っている大剣を降ろして大事そうに抱えます。
青い刀身の片刃大剣。名を『蒼獣牙』と言います。
攻撃力の補正数値プラス6,500と今のサフィーにはちょうど良い武器です。
「うん! サフィー、頑張る!」
涙を拭い、元気よくサフィーは言います。
サフィーは強い子です。グラの修行もずっとついてきていますし、努力もいっぱいしている。この先もっと強くなるに決まっていますよ。
その後、ダンジョンに挑戦できる許可証を貰い、これにて説明会は終了。
ダンジョンへの挑戦は明日にして、今日はゆっくり休むことにしましょう。
話の流れにもよりますが、今後は出来る限り、主要キャラのステータスは登場した回に記載していきます。
(※文字数が普段より多くなることがありえますので、その時はご了承ください。出てきたらその部分だけ、サッと読み飛ばしても構いません)
既に登場した主要キャラはステータスが完成次第、追記します。その際は、追記場所等を含め、最新話のあとがきにて報告します。





