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【コミカライズ1巻 3月27日発売】【Web版】奈落の底で生活して早三年、当時『白魔道士』だった私は『聖魔女』になっていた  作者: tani
第五章 幼馴染再会編

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出発の時 王都シュナーベルへ

前回が異常に長かったので、今回はいつもより短めです。

「数日間、修行相手をしてきましたが、同じ『勇者』でも、まだまだユリウス殿の方が何もかも数段上ですよ。せめて一撃くらいは当ててみせてください」

「くっ……うおぉぉぉぉ!!」


 気合を入れてバエルに迫るアドルですが、あっけなく返り討ちに遭っています。


 リーロンに帰ってきてから一週間。冒険者活動からも離れ、久し振りに心からゆっくりのんびりできた一週間でした。

 まあ、本当に何もしていなかったというわけではないですが。魔術の練習とか、日課のトレーニングは一日たりとも休んでいません。


 で、なぜアドルがバエルに挑んでいるのか。

 あの宴が終わった次の日。私はアドルたちがあの日、オルフェノク地下大迷宮に挑んでからどこまで成長したのか気になったのです。

 そこで翌日、模擬戦を行いました。

 結果は決して悪いとは言いませんが、改善した方がいい点がそこそこあった。良く言えば、伸びしろがあるということ。

 そこで、技術面を重点的に伸ばすようバエルにお願いしました。もちろんアドルも了承済みです。むしろ、この提案をした時は自分からお願いしてきました。


 そこから、かれこれ一週間が経ちましたが、アドルはまだバエルに一撃も当てられていないみたいです。

 とはいえ、これは仕方ないことでしょう。

 相手は最上級悪魔のなかでも王と呼ばれる存在。ユリウスですら、バエルと勝負して本気を出させることはなかったので、アドルなら不可能に近いと思います。


 ちなみにユリウスですが、4日ほど前にマリアオベイルへ戻りました。

 戻った理由としては、どうやらマリアオベイルが何者かに襲撃されたとか。被害はかなり大きいものと聞きました。

 通信用魔道具でその報告を受け、ユリウスは急遽戻ったわけです。帰還用の魔道具を持っていたようで、リーロンを発った日には到着しているはず。

 マリアオベイルにはルクスもいるので心配ですが、今は無事を祈ることしかできません。


 話が脱線しました。

 特訓しているのはアドルだけではありません。

 カリアはデオンザールと特訓。二人とも似たような性格だからか、結構気が合うみたいです。

 ゼペットは魔法銃を軸とした戦い方。

 しかし『聖魔女の楽園』で同じ戦い方をする者がいません。

 それで少し困っていましたが、最近アモンが魔法銃で遊んでいたのを思い出して、ゼペットのことは彼に任せることにしました。


 残りのクオリアとシャルロットさんですが、彼女たち二人は私がつくことに。

 提案しておいて私だけ何もしないというのも申し訳ないですし、魔術なら私でも教えられることがありますので。


「リリィさん、おはようございます。今日もよろしくお願いします」

「おはよう、リリィ。今日はどんな魔術を教えてくれるの?」

「おはようございます、シャルさん、クオリア」


 シャルロットさんとは、この一週間で愛称で呼ばせてもらえるほど仲良くなりました。まあ、最初からそう呼んでいいって言われていたんですけどね。

 クオリアも、今となっては昔のように接してくれています。私たちがバラバラになる前の日常が戻った感じで嬉しいです。


「今日は複合魔術を重点的にやろうかなと。シャルさんは……『治癒魔術』は教えることがないので『聖光魔術』ですね」

「私もリリィさんみたいに、いろいろな属性の魔術が使えたら、もっと皆さんの役に立てるのになぁ」


 と、ため息を吐いて肩を落とすシャルさん。

 そんな彼女の姿を見て、クオリアが元気づけるように口を開きます。


「シャルのおかげで助かっているところが今までたくさんあったんだから、そんなこと言わないの。それに、シャルは『聖光魔術』だけに専念できるでしょ? 専念できるってことは、それだけ極めることができるってことよ」

「『聖光魔術』は『治癒魔術』と違って種類が多いですから。今日は今までより難易度が高くて強力な魔術を教えます」

「わ、わかりました。頑張ります!」


 二人の魔術はこの一週間で一通り見ているので、シャルルフォーグ学院で知った魔術や私が独自で作った魔術を教えていきます。

 魔術に長けた『職業』ということや、元々のセンスがいいこともあり、吸収していくスピードはかなり速い。こちらとしても教え甲斐があります。


 ただ、特訓は特に問題なく進んではいますが、強いて言うのであれば、より多くの魔術が使えるように、魔力量を増やしたいところ。

 まあ、これに関しては全員に言えることですね。

 異界人との戦いに限ったことではないですが、魔力だけでなく、全体的にステータス値を伸ばしておきたい。


 そういえば、今のアドルたちはどこでレベル上げをしているのか。

 今になって気になったので、特訓を終えた後、掻いた汗を流すために『聖魔女の楽園』にある温泉に向かい、そこで聞くことにしました。

 ちなみに、最初に温泉へ案内した時にはクオリアから「いつでも入れるなんて羨ましすぎる……」と言葉を漏らしていましたね。


「ふぅ……。やっぱり温泉は最高ねぇ……。生き返るわ」

「はい。露天風呂、最高ですぅ……」

「クオリアもシャルさんも毎回言ってますよね、それ」

「本当のことだから仕方ないじゃない」

「ところで、今更ですが、クオリアたちはどこでレベル上げとかしているんですか? やっぱりオルフェノク地下大迷宮?」


 私が聞くとクオリアは首を横に振ります。


「あそこの攻略は一旦中止しているわ。今は別の場所。まあ、レベル上げというよりかは、命令を受けて調査しているって感じだけど」

「命令、ですか?」

「シュナーベルの王様から直々に命じられているんですよ」


 王様直々の命令だったら断れませんね。

 おそらくアドルが『勇者』だから、ということに関係があるのでしょう。

 そして、クオリアは別の場所について教えてくれます。


「半年くらい前だったかしら。シュナーベルの近くでダンジョンが発見されたの。空間拡張のせいで、一つ一つの階層があり得ないくらい広大。今は第5階層に続く転移用魔法陣を探しているわ」


 半年で第4階層までしか到達出来ていないと考えると、私が想像している以上に広大なのでしょうね。もしかしたらオルフェノク地下大迷宮以上かも。


「何の話してるの? 私も混ぜて!」


 クオリアから聞いたダンジョンについて考えていると、カリアが泳いでこちらにやってきました。 


「行儀悪いわよ、カリア」

「クオリアの言う通りです。ここでは別にいいですけど、他のところでは控えてくださいね」

「はーい。で、何の話?」

「あのダンジョンの話よ」

「ああ、あのダンジョンね。また攻略の時間がやってくるのかぁ。別に嫌じゃないんだけど、広すぎて大変なんだよねぇ。シャルもそう思わない?」

「そうですね。稀に見る広さですから」


 カリアは何度も挑戦しているから通じていますし、些細なことなのかもしれませんが、私は少し気になったので三人に聞いてみます。


「みんな、あのダンジョンって言ってますけど、オルフェノク地下大迷宮みたいに正式名称ってないんですか?」

「それがないんだよ。冒険者たちは「超巨大ダンジョン」とか適当に呼んでいるけど。ただ、ダンジョンの名前がない代わりに、各階層に名前があるんだよね」

「そうなんですか。珍しいですね」

「だよねぇ。けど、次の階層に行ったら別のダンジョン? ってくらいガラッと雰囲気が変わるし、各階層に名前があるのも納得できるんだよ。ダンジョンの雰囲気は……話で聞くより実際に見た方が早いかも」


 なるほど。それを言われてしまうと見に行きたくなりますね。

 次の目的地は決まっていません。

 マリーが通う学院もあって、もともと興味はありましたし、ダンジョンにも行ってみたいので、次はシュナーベルに行くことにしましょう。

 






 それから3日後。

 いよいよ出発の日がやってきます。

 お母さんたちには旅を続けることを伝えています。

 最初はあんなこともあったので、反対されるかなと不安でしたが、二人は反対の言葉など一切言わずに了承してくれました。

 

 出発はマリーやアドルたちも一緒。

 私たちを見送るために多くの村人たちが門の方まで来てくれます。


「気をつけてね。あと、月に一回は難しいと思うから時間がある時──いや、甘やかしちゃ駄目ね。月に一回は必ず手紙を送ること。わかった?」

「うん、届くのに時間がかかるかもしれないけど、忘れずにちゃんと送る」


 すると、お母さんは私の身体を優しく抱き締めます。


「本当に、気をつけてね。疲れたり、辛くなったら、いつでも帰ってきなさい。その時はリリィの大好物を作ってあげるし、話もたくさん聞くからね。お母さんたちは、どんな時でもリリィの味方だから」


 その言葉を聞いて泣きそうになりましたが、ここで泣くとお母さんももらい泣きしてしまうかもしれませんし、離れたくない気持ちが強くなる気がするので、ぐっと我慢します。

 お母さんが私から離れるとお父さんが私の頭に手を乗せます。

 お父さんの顔を見ると、涙は流していませんでした。見送りの時も泣くと思っていたんですが……。


「冒険者として旅を続けるんだ。辛く苦しいことがあることを、父さんも冒険者だったから知っている。でも、それだけじゃないよな。いろいろな街に行って面白いものを見たり、出会いがあったり、旅をしているからこそ、得られるものもたくさんある。リリィの人生なんだから全力で楽しむんだぞ。そして、帰ってきた時に父さんたちに話してくれ。楽しみにしているからな」

「うん、約束する」


 次に帰ってくるまでに、一日では語りきれないくらいの土産話を用意しようと決めた私なのでした。

 マリーにもお母さんたちから「勉強頑張るように」と言葉をかけられたり、アドルたちも両親と話し、それが終わると出発です。


「「「行ってきます!!」」」


 全員声をそろえて出発──しようとしたのですが、空気を読めていないのはわかった上で、アドルたちに聞きます。


「ところで、シュナーベルまで徒歩で行くんですか?」


 私はタルトがいるので、背中に乗せてもらって空を少し飛べばシュナーベルも見つけられるでしょうから、時間はかかりません。

 マリーも魔力充電式二輪駆動がある。それに乗ればシュナーベルまであっという間でしょう。

 でも、アドルたちは?

 帰ってくる時は商人の馬車に乗せてもらって来たんですよね。シュナーベルへ戻るのにリーロンから馬車なんて出ていませんし。


「……そうだ」


 と、アドルがボソッと言います。

 徒歩以外の戻る手段を考えればいいのに、と思いましたが、実は手段がないわけではないみたいです。

 どうやらその手の魔道具を持っているみたいで、それを使えば一瞬でシュナーベルへ戻れるとか。

 それを使えばいいのでは? 

 と、聞いてみたんですが、その魔道具は使い捨てで、しかも値段が驚くほど高い。緊急時以外は使わないように決めていると。事情があるなら仕方ないですね。

 

 そうなるとアドルたちには『聖魔女の楽園』に行ってもらって、私がタルトに乗ってシュナーベルへ向かった方がいいでしょう。

 さすがに全員が乗れるほどタルトの背中は大きくないですし、待機所があるなら使った方が良いに決まっている。


 タルトを呼んでアドルたちに『聖魔女の楽園』へ行ってもらおうとした時、隣にいるマリーが一つ提案してきました。


「じゃあ、これに乗って行く?」


 マリーは【異次元収納箱(アイテムボックス)】から割と大きめな黒い長方形の塊を出します。

 見たところ、車輪が四つついているので乗り物なのだろうとわかります。そして、かなりの重厚感。外からの生半可な攻撃は通じ無さそうな見た目です。

 

「マリー、これは?」

「うーん、厳密に言うとちょっと違うけど、お姉ちゃんに見せた魔力充電式二輪駆動の四輪版って感じかなぁ。二輪があるなら四輪があってもいいよねって思って、試行錯誤しながら造ってみたの。一応ちゃんと動くから安心していいよ」


 マリーは自分の『職業』が凄いからと言っていましたが、そういう発想ができて、実際に造ろうと行動するマリーも十分凄いと思います。

 そして、私が思っていることはお母さんたちも同じようで──


「リリィはとんでもないステータスになって帰ってきたし、ユリウスは聖騎士長って立場だし、マリーはあんなもの造れるようになっているし……。うちの子たち、いったいどうなっているの?」

「確かに優秀過ぎるというか、何というか……。でもまあ、俺たちの子供だし、胸を張って誇れる自慢の我が子たち、それでいいんじゃないか?」

「そう、ね。そういうことにしましょう」


 お父さんにそう言われて納得するお母さん。

 そんな二人を見ていると、マリーがこちらを見ていることに気づきます。これは、何か私にお願いをしたい感じですね。


「ただ、これにはちょっとだけ欠点があって……二輪の方でお姉ちゃんは知っていると思うけど、これも魔力で動くんだ。けど、燃費がめっっちゃくちゃ悪くて……。だから、魔力の方はお姉ちゃんにお願いしたいなって」

「私にですか」

「まあ、正直に言うと、私の魔力量じゃ長距離は走れないから、お姉ちゃんの魔力を借りて長距離を走ってみたいんだよね。改良するためのデータを取るのも兼ねて。……ダメ、かな?」


 マリーは首を傾げて可愛らしくお願いしてきます。

 こんな風に妹に頼まれたら断れないのが私です。

 私の魔力量なら問題ないでしょうし、いつも空を飛んで向かっているので、たまにはこういうのもいいでしょう。


「いいですよ。好きなだけ使ってください」

「やったぁ! お姉ちゃん、大好き! じゃあ、お姉ちゃんは運転席の隣ね。アドルにぃたちは後ろの席に乗ってね」


 私たちは四輪車に乗り込みます。

 そして、マリーから一つの腕輪を受け取ります。

 腕輪からハンドル付近にかけて一本の線が繋がっており、これを通して魔力を送ることができると説明されました。

 ちなみに、二輪の時みたいにハンドルからでも魔力を送れるようですが、今回は私が運転するわけではないので、その設定は切っています。


 腕輪を手首につけて準備完了。今度こそ本当に出発です。


「それじゃあ、行くよぉ~!」


 マリーの言葉と共に四輪車が動き出します。

 燃費がめちゃくちゃ悪いと言っていましたが、確かに短時間にしてはそれなりに魔力を吸っていますね。このペースだと、常人ならあっという間に魔力切れです。

 

「お姉ちゃん、大丈夫?」

「はい。これくらいなら全然問題ないです」

「さっすが! じゃあ、このまま事故が起きないように安全運転でシュナーベルへ向かうよ!」


 そんなやり取りをしながら私たちはマリーの運転で王都シュナーベルへと向かうのでした。

そう遠くないうちに、リリィたちのステータスをまとめたものを投稿したいなという“願望”。

(前にもこんなことを書いた記憶が……。空いた時間でちまちまと書いていますが、ステータスって話を書く以上に時間と労力がかかるんですよね……。必死に頑張っています)


次回更新は明後日11月15日(火)の午後8時です。

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奈落の底で生活して早三年、当時『白魔道士』だった私は『聖魔女』になっていた4
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