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【コミカライズ1巻 3月27日発売】【Web版】奈落の底で生活して早三年、当時『白魔道士』だった私は『聖魔女』になっていた  作者: tani
第四章 シャルルフォーグ学院・新任教師編

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祭りの始まり

本日2本投稿。こちらは2本目になりますので、1本目を読んでいない方はそちらからお読みください。

 あれから日が経ち、今日からお祭りが始まります。

 生徒たちもこの日のためにいろいろと準備をしてきましたし、先程少しだけ様子を見に行きましたが街の方もかなり賑わっていました。


 ただ、結局メアリ先生は今日まで一度も学院に戻ってきませんでした。今は何処にいるか誰にもわかりません。

 メルファストさんにはあの村でのことは伝えてあります。もちろんユリウスとルクスにも。神聖帝国騎士団(ロイヤルナイツ)の方々や街の警備隊にも伝わっているでしょう。


 ただ、ノエルさんを除いた生徒たちにこのことは伝えていません。

 というのも、頑張って学院祭の準備しているところに余計な不安を与えたくなかったからです。生徒たちは「メアリ先生は忙しくてまだ学院に戻れない」と思っています。ノエルさんは『勇者』ですので万が一に備えて情報は共有しています。


 もしメアリ先生が戻ってきても異界人という可能性は大いにあるので油断はしないようにしましょう。


 さて、そろそろ本題に入ります。

 これから忙しくなりますよ。クラスの出し物の手伝いがあって私も戦力に含まれていますからね。


 午前はメイド喫茶、午後は執事喫茶。

 着替えに関しては『衣装交換(ドレスチェンジ)』があるので特に問題ありません。やはりこの魔術を作って正解でした。


 そして、今は学院祭の開催宣言は既に終わっており、各自教室等で出し物の準備中。女子生徒は着替えが終わっていますが、男子生徒はまだ終わっていないので彼女たちはその手伝いをしています。


 私は先程も言ったように着替え用の魔術があるので時間はかかりません。なので、手が空いている私は食材や調理器具などの最終チェックをやります。


 初日でどれくらい人が来るかはわかりませんが、食材は午前と午後を合わせても十分余裕があるので大丈夫でしょう。


 調理器具は入念に。

 これは学院の行事。衛生面で問題を起こせば最悪これ以降学院祭が行われなくなるなんてこともあり得ます。この代で終わらせないためにも気をつけないといけません。


 確認が終わると同時に生徒たちの準備も終わったようなのでそちらに向かうとメイド服を着た生徒たちがいました。


 カティさんたちは似合っていますね。元々可愛いですが、更に可愛さが増していますよ。

 男子生徒は……今のところアースリィ君とセルマーク君が犠せ──接客の方を手伝ってくれるようですね。当日になって恥ずかしくなってきたのかもじもじしています。


 しかしまあ、2人とも男子生徒とは思えないほど可愛く仕上げられましたね。女子生徒と間違えられてもおかしくないですよ。


「2人とも似合ってますから自信を持って頑張りましょう」

「……今更後には引けないし、恥じらいなんて捨ててクラスのために頑張るか」

「その意気ですよ」

「じゃあそろそろ学院祭が始まりますし、気合を入れるためにもリリィ先生から何か一言お願いします」

「では。やるからには全力で! どのクラスよりもいい成績を残して私たちがご褒美をもらいましょう!」

「「「おぉ────ッ!!」」」


 拳を上げてやる気十分な生徒たち。

 学院祭は3日間。その1日目が始まります。









 現在の時刻は午前10時30分。

 学院祭が始まってから1時間ほどが経過しました。


 シャルルフォーグ学院の学院祭は毎年レベルが高く、多くの人たちが訪れるそうです。噂によると今年は去年よりも多いとか。

 まあ、そんなことは措いといて。

 気になる私のクラスの出し物なんですが……

 

「ただいま待ち時間が40分ほどとなっております!!」


 教室の外には長い列が出来ています。

 まさかこんなことになるとは思っていませんでしたよ。最初の30分なんて全くと言っていいほどお客さんは来ていませんでしたからね。


 理由としては上級生の出し物に客が流れていたようです。1年生の出し物は気が向いたら覗きに行こうという感じだったのでしょう。

 学院祭に訪れた方たちがどう思おうと勝手です。しかし、せっかく準備してきたのにこのままでは生徒たちが可哀そう。


 そこで私が一肌脱いだわけです。

 といっても、宣伝のために校内を歩き回っただけですけど。お客さんが来ないなら呼べばいいだけです。


 当然注目はされました。声も何度かかけられましたね。


 でも今回はそれが目的です。

 声をかけてくれた方にメイド喫茶のことを教えたり、こちらから声をかけたりして、私が帰るころには数名のお客さんが来てくれていました。


 ここまでくれば、あとは丁寧な接客と美味しい料理を提供するだけ。

 この日のためにたくさん練習してきましたから不安なことはありません。

 来てくれたお客さんは大変満足した様子でしたよ。メイド喫茶のことも宣伝すると言ってくれましたし。


 その結果が今に繋がっているんですけどね。

 ただ、これはこれで少しまずいことになっているというか……。


「客が多いのはいいことだけど、これは流石に想像以上じゃない?」

「厨房の方もいつ限界が来るか……」

「かといって、接客の方を増やすわけにはいかないよね。調理する方が減るわけだし、提供が遅れちゃう」

「仮に増やそうとしても化粧するのに時間がかかるから余計遅れる。どうにか頑張るしかない」

 

 生徒たちもこの状況を理解しているようです。

 こうなったら仕方ありません。初日ですが秘密兵器を投入します。


「グラ、フォルネ、出番です!」


 私は急いで着替えを行う控室に行って『聖魔女の楽園』からグラたちを呼び出します。

 呼び出しに応じてこちらに来たグラたちは既にメイド服を着ていました。


「まさか本当に手伝うことになるとはね……」

「そんなこと言って、しっかりメイド服を着ているじゃないですか」

「こ、これはその……あれよ! 一応はご主人様から渡されたものだし!? 着ないとバエルにグチグチ言われると思ったから!? 仕方なくよ、仕方なく!!」

「と、フォルネは言っていますけど?」

「可愛い服を貰って嬉しそうにしてましたよ。あと実際に着て鏡に向かってポーズもしていました」

「ちょっ、余計なこと言わないよ! というか、なんで知ってるの!?」


 顔を真っ赤にしてフォルネは怒ります。

 可愛いところありますねぇ、フォルネは。照れ隠しで怒る姿に思わず頬が緩んでしまいます。

 と、そんな呑気なことを言っている場合ではありませんでした。今こうしている間にも生徒たちは頑張っています。


「やることは簡単。接客と注文を取ったら厨房に伝える。それだけです」

「わかりました。緊張はしていますがリリィ様の役に立つため、一生懸命頑張らせていただきます」

「本当はだるくて面倒だけど仕方な──」

「今日も含めて3日間手伝ってもらうことになるかもしれませんが、終わったら好きなものを好きなだけ買ってあげますよ。フォルネだったらスイーツですかね」

「よしッ、気合入れていくわよ!! グラもしっかり働きなさい」


 と、フォルネは部屋を出ていきました。

 なんというか、物で簡単に釣れてしまうフォルネが心配になりますよ……。まあ、知らない人にはスイーツを買ってあげると言われてもついていかないと思いますけど……。


「あのリリィ様、先程言っていたことですが……」

「好きなものを好きなだけ買ってあげる話ですか? 流石に限度はありますけど、日頃お世話になっていますし、これくらいはしないと。グラは何か欲しいものはありますか?」

「では、剣を一振り……」

「剣ですか。でも、グラにはバエルから貰った剣がありますよね?」

「言葉が足りませんでした。私のではなくサフィーのです。そろそろちゃんとした武器を持たせた方がいいと思って。リリィ様から貰ったとなれば大事にするでしょうし」


 自分ではなくサフィーのためですか。

 それくらいなら別に頼まなくても用意するんですけどね。厳密に言えば私以外が。私は剣を造れませんので誰かに頼まなければいけません。


「わかりました。あてがあるので私の方から頼んでおきます」

「本当ですか!? ありがとうございます!」

「さあ、いつまでも喋っているわけにはいきません。私たちもいきましょう」


 ちなみに、厨房にも『聖魔女の楽園』から何名か助っ人が入っています。

 私が『聖魔女の楽園』にいる時に料理を作ってくれる悪魔たち──ではなく、調理係の中でも修行中の子たちです。


 ここでプロレベルの子を連れてくると生徒たちが作るものと味に差が生まれてしまいます。だから生徒たちと同じレベルの子たち連れてきました。


 ところで部外者が手伝っていいのかどうか。

 ちゃんとメルファストさんから許可を貰いましたよ。


 人数の少ないクラスは申請すれば人数を増やしても問題ないというルールがありました。もちろん条件はありますけどね。


 まずは学院内の誰かの関係者。グラ、フォルネ、厨房を任せた子たちは全員私の関係者ですから条件はクリア。


 次に人数。一クラスは最大30人で構成されているのでそれ以上にはならないこと。これも守っているのでクリアです。


 最後にその道のプロは呼ばないこと。先程も触れましたが、生徒とプロでは全てにおいて大きな差があります。あくまでも生徒たちの出し物というわけですからプロに任せてはいけません。


 この3つのうち、どれか一つでも条件を満たしていなければ学院祭の最後に発表される順位から除外されます。


 最後のプロについては、プロの基準は事前に調べるので問題なければお手伝いに参加できます。基本何でも出来るバエルだったら多分駄目でしたが、グラたちは大丈夫でした。そういえばバエルは手伝いが出来なくて残念そうにしていましたね。


「リリィ様、かなり繁盛していますね。まあ、リリィ様が自ら接客しているのですから当然と言えば当然ですが」


 バエルの残念そうな顔を思い出していたら、案内されたのか椅子に座っているバエルが私に声をかけてきました。

 何しているんですかと思いましたが、お手伝いできないから客として来たのでしょう。バエルも暇なんですかね。

 と、それよりバエルは一人で来たわけじゃなかったみたいです。


「お久しぶりですね、リリィさん」

「お久しぶりです、カリーナさん。元気そうで何よりです。今日は一人で来たんですか?」


 バエルと一緒にいたのは以前テルフレアでお世話になったカリーナさんです。

 まさかカリーナさんがバエルと一緒にいるなんて予想できませんよ。バエルも『念話』で私に連絡するくらい出来たはずなのに……。さては私を驚かせようと内緒にしてましたね。


「本当はお父様やエドガーと一緒に来る予定だったんですけど、リリィさんに早く会いたくて先に来ちゃいました」

「そうだったんですね。でも、バエルと一緒だとは思いませんでしたよ」

「途中でカリーナ殿を見つけたので私の方から「リリィ様のメイド姿を見に行きませんか」とお誘いしました」

「本当に可愛くてお似合いですよ。それに生徒たちも可愛いです。これなら長時間並んでも来る価値はありますね」


 どうやらかなり評判がいいみたいで、待ち時間がかなりあるというのにほとんどの人が並んで待ってくれているそうです。

 あとは目新しさがあるからという理由もあるみたい。まあ、メイド喫茶なんて発想は普通出ませんよね。

 さて、カリーナさんとは話したいことが山ほどありますが、今は仕事中ですので後にしましょう。




 それからは何だかんだで順調にいき、気が付けば午前の部が終わる時間になっていました。

 午後からはメイド喫茶から執事喫茶へ変わります。


 しかし、お客さんはまだまだいます。午前は男性客の方が多かった。教室の外に並んでいる人たちもメイド姿を見たい理由もあって並んでくれているのでしょう。


 それなのに時間だから執事喫茶に変えるのは少し申し訳ない気がします。最悪の場合、列を抜けて帰ってしまう可能性もありますね。

 

「先生、提案があるんですけど」

「ノエルさん」

「ここで執事喫茶に切り替えたら男性客が離れると思います。かといって執事喫茶を楽しみにしている客もいると思うので、メイドの数を減らして減らした分、執事を入れるのはどうでしょうか。それなら男性客も離れず、女性客も増やすことができるはずです」


 私も同じことを考えていました。

 この状況だと完全に切り替えるよりもメイドを何名か残しておいた方がいい。予定とは異なりますが、状況を見て最良の判断をするのも大事です。このことは私の方からメルファストさんに伝えておくとして。


 来て頂いた方々には私から事情を説明します。

 説明した後でもしかしたら反論が出るかもと思っていましたけど、みなさん快く納得してくれたので助かりました。


 アースリィ君とセルマーク君以外の男子生徒が今度は接客へ。アンリさんとフィリアさんは厨房。それ以外の女子生徒たちは引き続きメイド姿で接客をしてもらいます。

 私もこのままメイド姿で接客する予定でしたが、せっかく執事服も用意してくれたんですから着ないと勿体ないですよね。


 今度は執事姿で頑張るぞ。

 と、執事服に着替えて気合を入れ直していたら──


「リリィ先生は学院内を見に行ってきていいですよ」

「えっ、でも、一人でも人がいたほうが……」

「3日間あるとはいえ、先生は今回の学院祭が最初で最後だろ? 俺たちからすれば少しでも多く楽しんでほしいんだよ。強力な助っ人もいるし、心配しなくても大丈夫だ」 


 そういうことならとみなさんには悪いですけど、宣伝も兼ねて少しだけ学院内を見て回ることにしました。

 こうしてしっかり他のクラスの出し物を見るのは初めてです。レベルが高いというのも頷けます。

 それからしばらくは自由に行動したり、話しかけられて私のクラスの出し物の宣伝をしたり。

 十分楽しみましたし、生徒たちに任せっぱなしというのも少々罪悪感があるのでそろそろ教室の方へ戻ろうとした時、私は遠くに一人の女性を見つけました。


「あれは……」


 後ろ姿で顔まではわかりません。

 でも、あれは間違いなく──。


 見失わないように必死で追いかけ、辿り着いた場所は今は誰も使っていない空き教室。アースリィ君たちがいる教室からはかなり離れています。


 それにしても、あれだけ賑やかだったのに、ここは気持ち悪いくらい静かで人の気配もありません。ちなみに途中から誰ともすれ違っていません。


 違和感はありますが、そんなことよりこの扉の先にあの人がいる。

 扉をゆっくり開けるとそこには──


「ふふっ。こんにちは、リリィ先生」

「……メアリ、先生……」

「学院祭、楽しんでいますか? 私はですね、全然楽しくないですよ。こんな行事、ぶっ壊してやりたいくらいです。まあ、これから実際にやるんですけどね。学院祭は楽しくないですけど、これから何が起こるかもわからずに呑気に過ごしている奴らの悲鳴が聞けると思うと楽しみで仕方ありません」


 不気味な笑みを浮かべるメアリ先生。

 目の前にいるのは私の知っているメアリ先生ではありませんでした。

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奈落の底で生活して早三年、当時『白魔道士』だった私は『聖魔女』になっていた4
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