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【Web版】奈落の底で生活して早三年、当時『白魔道士』だった私は『聖魔女』になっていた  作者: tani
第一章 オルフェノク地下大迷宮脱出編

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勇者一行の正体……何となく察し……

 いやいや、おそらく聞き間違いでしょう。

 アドルなんて名前は探せば世界の何処でもいるはずです。

 偶然、偶然『勇者』と名前が一致していた。

 幼馴染みを囮にして逃げるような男に『勇者』の素質があるわけないです。


「アドルっつうと、あの〝アドル・ロッゾ〟か? 確か王都に仕えている『剣聖』に初めて弟子入りを認めさせたとか」

「そうそう。当時はまだ『剣聖』の足元にも及ばなかったが今では張り合えるほどになっているらしい」


 ……いや、まだです。まだ信じません。


 アドル・ロッゾという名前は幼馴染みパーティーのリーダーでしたよ。

 でもそのアドルと『勇者』アドルが同一人物であるとは限らないじゃないですか。

 この世には絶対同姓同名の人もいることですし。


「他にも『黒魔道士』クオリア・コーネルが『魔女』。『重装騎士』カリア・トーラスが『聖騎士』。『射手』ゼペット・ルルランが『狙撃手』に。どれも上級職業だぜ。更にはそいつらも各々弟子入りして『勇者』に引けを取らない存在らしい」

「何でも知ってるんだな。知りすぎてて逆に気持ち悪いぐらいだぞ」

「こんなの冒険者だったら一般常識に決まってんだろ。お前は少しぐらい勇者一行に興味を持て」 


 なるほど、一般常識ですか。

 私は外界から隔離されていたので仕方ありません。


 そんなことよりもです!

 私は衝撃的な事実に軽い目眩が起きてふらつきそうになりましたよ。


 さすがにここまできて同一人物じゃないとは言えません。


 アドル・ロッゾ

 クオリア・コーネル

 カリア・トーラス

 ゼペット・ルルラン


 この名前を聞いて今でも別人だと思い込むほど私は馬鹿ではありません。


 間違いなく勇者一行はアドルたちのことを指しているのでしょう。


 つまりはこういうことです。


『剣士』アドル・ロッゾ→『勇者』アドル・ロッゾ

『黒魔道士』クオリア・コーネル→『魔女』クオリア・コーネル

『重装騎士』カリア・トーラス→『聖騎士』カリア・トーラス

『射手』ゼペット・ルルラン→『狙撃手』ゼペット・ルルラン


 誰だって三年もあれば変わるでしょう。

 しかし、それでも変わりすぎでは?

 いったい私がいない間、彼らに何があったのでしょうか。


 おじさんはアドルたちが弟子入りしたと言ってましたか。

 アドルは王都にいる『剣聖』……でしたっけ?


 確か『剣聖』も上級職業の一つです。

 剣の道を極め、数多くの試練を乗り越えることによって成れる職業。

 アドルは『剣士』だったので『勇者』というよりは『剣聖』の方がイメージしやすいですね。

 ただ『剣聖』と呼ばれて鼻高々にしている姿を想像すると少し腹が立ちます。

 まあそれ以上の上級職業である『勇者』なのですから調子に乗ってること間違いなしです。


 クオリア、カリア、ゼペットもアドル同様に有能な師匠の下で修行を積み重ねていたのでしょう。

 努力は認めます。冒険者として生きるなら強さも求めるのは必須ですから。


 しかし、話を偽って周囲に同情を求めているのは許せないですね。


 俺たちのために自分から犠牲になって?


 何を馬鹿なことを言っているのですか。

 あの時、私の持久力の低さを利用して囮にしたアドルたち。

 その振り向きざまに見せた表情は笑っていましたよ。

 

 まあ、戦力外通告されたのに最後の冒険をしたいからと頼んだ私も悪いですけどね。

 アドルたちはその時から万が一のことを考えて私を囮にする作戦を考えていたのでしょう。


 結局、幼馴染みの絆なんてその程度の物なんですよ。

 人間生き延びることを最優先にしますから。

 そのためであれば幼馴染みの命さえも利用して生き延びる。

 

 えっ? 彼らを憎んでいないのか?

 

 そうですね……。

 憎んでいないと言えば嘘になります。私はあの日死ぬかもしれなかったですし。

 けどアドルたちのお陰で今の私がいますしタルトにも出会うことが出来ました。


 感謝は……当然したくありませんが、そこまで強く憎んでいるわけではありませんよ。

 まあ、実際に遭遇したら憎悪が強くなってアドルたちに何するかわかりませんけど。


 ──冗談ですよ。

 私だって鬼ではありません。

 今や有名となった勇者一行を殺したりとか、復讐みたいなことをするつもりはないです。


 せいぜいやってもアドルたちの生命力を1割までじわじわ削るぐらいですよ、ふふっ……。


 あら、いけません。私の黒い一面が出てしまったようです。

 

 そういえば、アドルたちは相変わらず回復役──つまり『白魔道士』をパーティーに入れずに冒険を続けているみたいですね。ポーションだけでもやりくりしているのでしょうか。

 

「ああ、それとな。勇者のパーティーには他に『聖女』がいるんだ。『聖女』は高位の治療魔術以外にも光魔術の上位──聖光魔術も使えて勇者一行を支えているんだぜ。しかも絶世の美女ときたもんだ」

 

 へぇ、『聖女』ですか。

 高位の治療魔術に聖光魔術で勇者一行を支えている。

 なるほどなるほど。

 役に立たないと捨てた私を忘れて、役に立つ『聖女』様をパーティーに加えた、そういうことですね。


 それでは私が今思っていることを言いましょう。


 あんな幼馴染みを囮にすることすら厭わないパーティーに加入したその女性はいったい誰なんですか!?!?


 おじさんは絶世の美女とも言ってましたね。

 どうせアドルなんかは『聖女』様に見惚れて鼻の下でも伸ばしてるでしょうねッ!!


 何と言うか、自分でもわかりませんが無性に腹が立ちます。

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奈落の底で生活して早三年、当時『白魔道士』だった私は『聖魔女』になっていた4
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