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【コミカライズ1巻 3月27日発売】【Web版】奈落の底で生活して早三年、当時『白魔道士』だった私は『聖魔女』になっていた  作者: tani
第四章 シャルルフォーグ学院・新任教師編

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話を終えて

 ユリウスの話は一通り終わりました。 


 ユリウスとルクスの戦い。

 結果はルクスの勝利に終わりましたが、個人的にはユリウスに勝ってもらいたかったところもあります。やはり自分の弟ですので。


 しかし、ルクスのおかげでユリウスは正気に戻った。だから魔物であるバエルを見ても駆除しようとはしなかった。


 これに関してはルクスに感謝しないといけません。他の神聖帝国騎士団(ロイヤルナイツ)の方もルクスのおかげで元に戻ったみたいです。


 魔物を全て敵と認識しないのであれば、私の友人たちを紹介するのも兼ねて、時間がある時に『聖魔女の楽園』へ案内するのもいいですね。きっとユリウスは驚くと思います。

 そんなことを考えているとユリウスは私に聞いてきました。


「ところで姉さん。確認しておきたいんだが、母さんたちに生きていることは手紙とか何かでちゃんと伝えているんだよな?」

「ああ……それはですね……」

「……まさか、伝えていないのか?」


 正直に「出していません」と答えるとユリウスに怒られました。


 当然です。怒られても仕方ありません。

 家族は今も私が死んだと思っています。

 その知らせを聞いて悲しんだでしょう。たくさん涙を流してくれたのでしょう。


 安心させるためにも手紙の一通くらい出しておけば良かったと思います。

 けど、私にも理由があったのです。その理由を【異次元収納箱(アイテムボックス)】の中に入れていた封筒の束を出してユリウスに説明します。


「これは……?」

「家族宛ての手紙、ですよ」

「あるんだったらなんで……」

「当時はアドルたちに私が生存していることを知られないように、私は地上に出てすぐにこの大陸へ向かいました」


 私が生きていることで、アドルたちが強くなる妨げをしたくなかったからという理由でしたね。


「ただ、自分でも家族よりも冒険を優先するなんて本当に酷い姉ですよね。でも、私だって生きていることくらいは手紙で伝えないとって思ったんです。けど……」

「……けど?」

「……3年前に死んだと思った娘から手紙が来ても、訳がわからなくて困るのではないかと。私が悪いのは変わりないですけど、すぐに会いに行ける状況でもなかったですし……」

「確かに、手紙を出してもいたずらと疑われる可能性が無くはないか。でも、母さんたちなら姉さんの手紙を読めば本物かどうかわかると思うぞ」 


 私もそう思いました。読み書きを教えてくれたお母さんなら私の字を見ればすぐにわかると思います。


「本当に、悪いと思っています。そして、一刻も早く私が生きていることを伝えるべきだとも。ユリウスにもこうして再会できました。だから明日にでも手紙を出そうと──」

「なら俺も手紙を書いて一緒に出す。要らぬ心配だろうが、その方が信じてもらいやすくなるだろう。母さんたちから手紙は貰っているが、最近は忙しくて手紙を出せていないからな。ちょうどいい機会だ」

「じゃあ私も新しく書くので書き終わったら一緒に出しましょうか」

「ああ。一番は帰って顔を見せることが出来たらいいんだが……まあ仕方ない。けど、近いうちに一度俺と一緒に帰るからな。嫌だと言っても無理やり連れていくぞ」


 そんなこと言いませんよ。どんな顔して会えばいいのかわからないところもありますけど……。

 近々実家に帰るのはいいとして、家族の誰かが病気になったりしていなかったか気になったのでユリウスに聞いてみます。


「お母さんたちは元気にしていますか?」

「病気になったとかは一切なく元気に暮らしてるみたいだぞ。ああ、あと“マリー”が去年に【王都シュナーベル】の学校に入学した。入学時から成績優秀で学年トップらしい。あいつからも手紙が送られるが、自慢話ばかりだ」


 マリーとは私の妹である“マリー・オーランド”のことです。

 歳は5つ離れているので今は13歳──もうすぐ14歳ですね。


 マリーは学生ですか。しかも成績優秀。

 弟は神聖帝国騎士団(ロイヤルナイツ)の聖騎士長。妹は学校で学年トップ。

 2人の姉として鼻が高いですよ。マリーは更に成長するのでこれからが楽しみでもあります。


 ただ、そこの学校は結構有名で学費もかかるはずだったと思いましたが、「使うことがあまりないから」とユリウスが出しているそうです。

 あと仕送りもしているとか。弟がやっているのに姉は何もしないなんて、あってはならないことなので私もすることに決めましたよ。幸い、私にも使いきれないほどのお金がありますので。


 マリーの話が出たのでついでに。

 13歳になったのですから当然既に自分の『職業』が授けられています。


 今の私とユリウスの『職業』は、一応学院の図書館で調べても一切記されていなかった『聖魔女』とこの世界で7人しか存在しない『勇者』。簡単に言えば、よくわからない『職業』と選ばれた者にしか与えられない『職業』。


 まさかとは思いますが、マリーまで凄い『職業』を……。

 無くはない話だと思いながらユリウスに聞いてみると──


「マリーの『職業』は『錬金術師』だ」

「『錬金術師』ですか。それは予想外でした」


『錬金術師』について、ざっくり説明するなら、素材と魔力さえあれば武器やポーションなどの薬を生産することができる『職業』です。


「そうそう、前に手紙で「“魔力充電式二輪駆動”っていうのを作ってみた」とか書いてあったな。どうやら古い資料を読んで作ったらしい」


 雰囲気的にうちのアモンが好きそうですね。何だったらバエルも興味があるかも。そのうち自分たちでも作ってしまいそうな気がしますよ。

 

「『錬金術師』って凄いんですねぇ」

「まあ、それはそうなんだが……」

「どうかしたんですか?」

「はっきり言うといろいろとやらかしているらしい。日常生活に便利なものとか興味があるものを作るのは全然いい。ただ、やり過ぎるのも時に自分の首を絞めることになる。周りから少しは自重しろと注意を受けているみたいだが、それについての文句も手紙に書いてあったな」


 確かに、マリーの功績が世界中に知れ渡ったら引き入れようとする国が出てくる可能性も考えられると言えば考えられますか。

 無理矢理連れていかれるなんてことも。そんなことが起こってしまえば私は黙っちゃいませんけどね。それはユリウスも同じでしょう。


 そうならないためにも自重はしてほしいですが、マリーの好きなようにさせてあげたいという気持ちもあるので複雑です。

 とりあえず、今は作りたいものは公にせずに隠れて作っているみたいなので心配はしなくていいとのことです。



 さて、ユリウスとまだ他にも話をしたいことがありますが、日も落ち始めていますし、一度学院に戻って生徒たちの様子も見に行かないといけません。一応今の私は教師ですので、そこはしっかりしないと。


 カフェを後にして私は学院へ戻ります。

 ユリウスも利用する予定の宿が学院の方にあるそうなので途中まで一緒に行くことになりました。


「そういえば、ユリウスは何か用事があって来たんですよね。ルクスには秘密って言われましたけど……」

「上からの命令でな。だから、今から話すことは俺がうっかり口を滑らせてしまったってことにしてほしい」

「わかりました。私はユリウスがうっかり口を滑らせてた話を偶然聞いてしまったということにします」

「実はだな……こんなこと言っても信じられないと思うが、この世界とは違う別の世界が存在するんだ。それで、ここに別の世界から来た侵略者の反応があったから可能なら捕えろと命令を受けた。って、やっぱり信じられないよな。俺たちがいる世界とは別のもう一つの世界があるなんて……」

「信じますよ。というか、そっちの世界の人と話したこともありますし」


 裏世界の住人は『勇者』と『魔王』の命を狙っている。

 つまりルクスとノエルさん、そしてユリウスの命も狙われているということです。エルトリアさんもですね。付け加えるならアドルも。


 結局『勇者』と『魔王』を殺したところでユニークスキルは次の後継者に渡るので意味ないんですけど、それを説明したところで「じゃあ殺しません」とはならないでしょう。


 だから、殺されないように強くなってもらいたい。

 ユリウスとルクスは大丈夫でしょうけどね。ルクスの実力は知っていますし──何だったらユリウスの話を聞くに更に強くなっているみたい──ユリウスも負けて終わる子ではないです。きっとその時よりも力をつけています。


 ただ、本人が問題なくともエルトリアさんの時みたいに関係者から攻められることもありますからね。注意喚起は必要でしょう。

 周りの人たちのことも気にかけるように伝えようとした時、ユリウスがその場で立ち止まっていたのに気付きました。


「姉さんは会ったことがあるのか?」

「ええ。1人は戦ったこともありますね」


 そう答えるとユリウスは絶句していました。

 ユリウスが追っているのが裏世界の住人なら協力した方がいいと思ったので、エルトリアさんのこととか軽く話してあげました。


「姉さん、この後時間あるか? もっと詳しく話を聞きたい」

「仕事も残っていないので生徒たちを帰した後なら大丈夫ですよ」

「助かる。はぁ、それにしても姉さんが『魔王』の一人と繋がっていて、異界人の一人と話したことがあって、更にそいつとは別の奴と戦って勝っている。まったく、俺からすれば、そっちの方が予想外だったよ。あと、姉さんがそこまで強くなっているのもな。まあ、そのおかげで情報が手に入るんだけど」

「大した情報は持っていませんけどね。でも、ユリウスの力になれるなら私は嬉しいですよ」

「本当に助かるよ。じゃあ──」

「ユリウス聖騎士!」


 走って私たちのところへやってきたのは神聖帝国騎士団(ロイヤルナイツ)の一人でした。肩で息をしているところを見るにかなりの距離を走ったのでしょう。

 

「何かあったのか?」

「じ、実はその……今日の宿の件で……」


 話を聞くと、どうやら利用する予定だった宿が、どこも満室だったとか。

 ユリウスは最悪野宿も考えていたようですが、長旅で溜まった疲労を野宿で回復させるのは厳しいでしょうし、仕事で来たなら次の日にも影響が出るでしょう。

 解決策は何かないか──なんて考えなくても大丈夫。ここは、お姉ちゃんに任せてください。 


「バエル、客人用に建てた家がありましたよね」

「はい。いつでも使えるよう掃除は隅々まで行き届いております」

「では、ユリウスたちを招待するので一度『聖魔女の楽園』に戻って準備をするように伝えてください。私は用事が終わったら──そういえばアースリィ君たちは何度か来てますが、セルマーク君たちもまだ招待したことがなかったですね。明日は学院も休みですし、せっかくなのでみんなでご飯を食べましょうか」

「かしこまりました。すぐさま準備するよう伝えに行って参ります」


 バエルは『聖魔女の楽園』へ戻りました。

 きっとお祭り騒ぎになるでしょうけど、たまにはいいでしょう。楽しいことはいいことですからね。


「とりあえず今日の宿はどうにかなるので大丈夫ですよ。あと今日の夜ごはんもこちらで用意しますので、そこもご心配なく」

「『聖魔女の楽園』? っていうのは?」

「それは見てからのお楽しみです。あとで迎えに行くので適当に時間を潰していてください」


 ユリウスと別れた私は学院に戻って生徒たちと合流。ノエルさんも戻っていたので無事に買い出しは終わったようです。


 その後、下校時間となり今日の学院祭準備は終了。この後の予定を生徒たちに聞いても特に何もないようだったので、そのまま生徒たちを連れてユリウスたちを迎えに行きます。


 そして、ユリウスたちとも合流して『聖魔女の楽園』へ。

 アースリィ君たちは何度も来ているので見知った光景ですが、それ以外の人たちからすれば異様な光景でしょう。だって、住人の全てが今のところ魔物ですからね。戸惑うのも無理ありません。


「姉さん……俺はもう何から突っ込んでいいかわからないよ」

「これも後で説明しますから。とりあえず、まだ食事の用意が終わっていないようなので軽く施設を紹介していきますのでついてきてください。特にルクスは迷子にならないようにしっかりついてきてくださいね!!」

「わかってるって。心配しないで!」


 不安だから心配してるんですよ!

 まあ、街の外に出ない限りはどうにかなると思うので大丈夫ですか。


 私はユリウスたちを連れていろいろ案内していきます。

 正直、私も知らない間に増えている建物があって確認しながら歩いていますが、そうしている間にも目的地の一つである木造の建築物に到着しました。

 

神聖帝国騎士団(ロイヤルナイツ)の皆さんはこちらを利用してください。それと、あとでご案内しますけどここから少し離れたところに温泉もあります。長旅でお疲れでしょうから宜しければそちらも是非」

「温泉!? 温泉があるんですか!? やったぁ!」


 と、予想以上に喜んでくれたのは神聖帝国騎士団(ロイヤルナイツ)の中でも女性の方々。

 こうして喜んでもらえると私も嬉しいですね。作ったのは私じゃないですけど。何だったら知らぬ間に出来てましたし。


 ちなみに、当然のことながら男女は別ですよ。女性の入浴時間の際はちゃんと警備もつけます。とはいえ『聖魔女の楽園』の住人で、のぞきをするような人はいないでしょう。いるとすれば神聖帝国騎士団(ロイヤルナイツ)の男性くらいでしょう。ユリウスが許さないと思いますけどね。

 

 それから少しして、バエルから準備が出来たと『念話』で連絡が来たので街の中心へやってきました。

 周りを見るとたくさんの料理が乗った大きなテーブルがいくつもあります。腕によりをかけて作ったのでしょう。いつも以上に美味しそうに見えます。


 さて、目の前に料理が並んでいるというのに誰も手をつけようとはしません。

 理由は何となく予想できます。

 きっと私待ちなのでしょう。


 せっかくの暖かい料理が冷めてしまっては美味しさも半減してしまうので、ここは手短に挨拶をして食べましょうか。

 バエルから木で造られたジョッキを受け取り、みんなの前に立ちます。ちなみにジョッキの中に入っているのはリンゴのジュースです。


「突然の提案だったのにここまで準備してありがとうございます。アースリィ君たちのことは知っていると思いますが、今日はその他にも私の生徒や友人、弟のユリウスや仲間の方たちもここへ招いていますので是非とも仲良くなってもらえたらなと。では、長々と話しても料理が冷めてしまいますから、みんなでいただきましょう」


 これで一先ず私の仕事は終わりです。

 ユリウスたちにも「遠慮せずに食べてください」と言ったのですが、どうやら魔物が作った料理に抵抗があるみたいで。アースリィ君たちは普通に食べているんですけどね。少し前までは魔物は全て敵と思っていたんですから仕方ないですか。


 ちょっと残念だな、と思っているとユリウスがテーブルにある料理を別皿にのせて食べ始めました。それに続くようにルクスも。

 

「うわっ、美味しい! これも! こっちも! どれもお店レベル──いや、それ以上だ。リリィはこれを毎日食べれるなんて羨ましいなぁ」

「確かにルクスの言う通りだな」

「そ、そんなにですか……?」

「ああ、食べないのは勿体ないぐらいだ」

「ユリウス聖騎士長がそこまで言うのなら……」


 そう言うと他の神聖帝国騎士団(ロイヤルナイツ)の方々も料理を食べてくれました。


 一口食べるとさっきまでとは別人と思えるほどテーブルにある料理に夢中です。

 美味しそうに食べてくれるのを見ると作ったのは私じゃないのに嬉しいですね。


 それからは美味しい料理や住人たちが用意してくれた余興などで盛り上がりながら楽しい時間を過ごし、神聖帝国騎士団(ロイヤルナイツ)の方々とここの住人たちはあっという間に打ち解けていましたよ。

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奈落の底で生活して早三年、当時『白魔道士』だった私は『聖魔女』になっていた4
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