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【コミカライズ1巻 3月27日発売】【Web版】奈落の底で生活して早三年、当時『白魔道士』だった私は『聖魔女』になっていた  作者: tani
第四章 シャルルフォーグ学院・新任教師編

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杖職人のもとへ

 久し振りのシャルルフォーグ学院。

 私は報告書を提出するのに何度か戻ってきているので久し振りではないんですけどね。久し振りと感じているのは生徒たちの方です。


 休日なので生徒たちは少ないですがそれでもチラホラといます。中には同じ1学年の生徒もいてEクラスの生徒たちを見ている様子も。1か月半も学院にいなかったからでしょう。

 そして更には──


「おいおい、学院の底辺共が帰ってきたのかよ。せっかく雑魚の空気がなくなっていい気分で学院生活を送っていたのにな。また元通りだよ。みんなも最悪だよなぁ」

「セルマーク……」


 Aクラスのセルマーク君と他の生徒たち。

 ノエルさんは一緒ではないようですね。前みたいに図書館で勉強しているのでしょうか。もしそうなら休日なのに偉いですね。


 それにしても相変わらず口が悪い。他の生徒たちも賛同していますし、Eクラスに対しての態度は変わっていないようですね。まあ、Eクラスの成長ぶりを見ていないのだから当然と言えば当然ですが。見たら少しは態度も変わりますよ。


 しかし、堂々と正面から悪口を言うセルマーク君たちには注意しないといけませんね。

 私はAクラスの生徒たちに注意しようとしましたが、その前にアースリィ君が歩き出してセルマーク君の前で止まります。


「何だよ、落ちこぼれ。僕に何か用か?」

「俺の友達を侮辱するのは止めろ」

「はぁ? 雑魚に雑魚って言って何が悪い。合宿だか何だか知らないけど、少しは強くなったからって調子に乗るなよ。何だったら今ここで勝負するか? 無様に負かして合宿でやったことは全て無駄だったって証明してやるよ」

「……先生、みんな、行こう」


 そう言ってアースリィ君は再び歩き出しました。Eクラスの生徒たちも何も言わずアースリィ君について行きます。


「逃げるのか!?」

「お前と勝負するのは今じゃない。合同授業の時だ。そして、俺はそこでお前に勝って侮辱した俺の友人たちに謝ってもらう。その代わり、俺が負けたらお前の言うことを何でも聞いてやるよ」

「勝つのは僕だ。お前は負ける。負けても無かったことには出来ないからな。覚悟しておけよ」


 Aクラスの生徒たちはその場から去る時、特にセルマーク君は不機嫌そうな表情をしていました。

 とんでもない約束をアースリィ君はしてしまったわけですが大丈夫なのでしょうか。もし負けてしまったら……。


 いや、負けてしまった時のことを考えるのは止めましょう。アースリィ君の勝利を信じていないということになると思いますし。


 それに、アースリィ君なら大丈夫。自信に満ち溢れている顔を見れば心配など不要です。


 さて、こうして帰ってきましたが、残念なことに私はまだ仕事が残っていますので今日はここで解散です。


「この間のダンジョン攻略で手に入れたお宝は私の方で換金して皆さんに渡しましたが、皆さんのお金とはいえ、くれぐれも散財しないように。貯金することも大切ですからね」

「「「はーい」」」

「あと、明日からは通常通りの授業に戻りますので遅れないように。特にベル君」

「わ、わかってるよ……」


 私は街に向かう生徒たちを見送ってから合宿での様子の報告をしに学院長室へ向かいます。

 ちなみに、街へ行くなら途中で別れても良かったのではと思うでしょうが、生徒たちが気を遣ってくれて学院まで一緒に来てくれたのです。なんて優しい生徒たちなのでしょう。

 




 翌日。

 久し振りに教師寮の自室のベッドで寝ましたが『聖魔女の楽園』のベッドと比べるとどうしても……。


 決してここのベッドが悪いというわけではありませんよ。改めて『聖魔女の楽園』で作られたベッドの質が高かったなと感じただけです。


 Eクラスの生徒たちも同じことを思っているかもしれませんね。特にベル君とかは熟睡できていないかも。

 だからといってベッドを変えるわけにはいきませんし。そうなれば全生徒の分を変えなければ不公平じゃないですか。


 私のだけなら……とも考えましたがここは厳しく行きましょう。でも偶然、私が居ない間に変わっていたら仕方ありませんよね。『聖魔女の楽園』にいる誰か──おそらくバエルになるかと──が私を気遣ってしてくれたことですし。


 そんなことを考えながら身支度を済ませ、食堂に行って朝食を食べ終えたら職員室に向かって仕事の始まりです。

 まあ、仕事と言っても私の担当は変わらず午後の授業だけなので特別何かやることがあるわけでもないです。


 何処かの教室にお邪魔して授業を受けに行くのも考えましたが、バエルが話していた杖職人の方も気になります。


 昨日はメルファストさんのところに行って日が暮れるまで話をしていたので行けなかったんですよね。

 合宿のことはもちろんのこと、固有魔術についても。


 1か月半もあれば少しは進んでいるのではないかと。

 実をいうと一応形にはなってきているんですよね。術式も私以外理解できないものになっていると自信をもって言えますし。


 ただ、形になっていてもまだまだ完成には程遠いというのが事実。

 完成には膨大な知識が必要なのです。故に1か月半という短期間で完成させるのはまず不可能。もしかしたら生きている間に完成しない可能性も。


 我ながらとんでもない固有魔術を作ろうとしたなと思いましたよ。お披露目はまだ先になりそうですね。


 話を戻しますが今日は午後の授業が終わっても時間があるので行ってみます。

 その後1か月半ぶりにAクラス担任のワーナー先生が私に色々と言っていましたが、正直真剣に聞いても意味がありませんので重要そうなこと以外は聞いているふりをしてやり過ごします。


 時間になると教室の方へ向かいましたが、構ってほしいのか知りませんけどこれってお互い時間の無駄ではないですかね? 

 まあいいです。とりあえず私もEクラスの教室に行って授業を受けたり、図書館で固有魔術のための知識を得たり、午後の授業が始まるまで有意義な時間を過ごしましょう。






 それから午後の授業も終わって私は街の方へ向かいました。

 杖職人さんがいるのはシャルルフォーグでも特に大きな鍛冶場だそうです。


 何でもそこではあらゆる武器や防具を造っているそうで、お客さんの要望に合わせて造ってくれることも可能だとか。その分、費用がかかったり材料もこちらで用意しないといけない場合があるみたいですが。


 ちなみに鍛冶場にはバエル、アモンを連れて向かっています。バエルは事前に場所を調べてくれたのでその道案内のため。アモンは自身の依り代を改造したり、何か一人で作っているみたいなので同じ物造りとして息が合うのではないかと思ったからです。


 一応フォルネもいましたが街を見て回りたいと言い出したのでグラとサフィーを呼び、お小遣いを上げて後は自由にさせました。問題を起こさないようにと約束しましたし大丈夫でしょう。今頃はスイーツを食べたり洋服を見て選んだりしていると思いますよ。


 というか、私もどちらかと言えばそっちのグループなのでは? 

 でも今回は私の武器が目的で鍛冶場に行くわけですから本人がいなければ駄目でしょう。女子でのお買い物はまた別の機会にでもします。


 さて、学院から出発して歩くこと20分。

 ようやく目的地に到着しましたが確かに大きい2階建ての建物です。


 中に入ってみると1階は武器をメインに売っており、2階はどうやら防具がメインのようです。そして1階の奥が関係者以外立ち入り禁止の鍛冶場になっているみたいですね。


 用があるのは鍛冶場の方なんですが、従業員さんに聞けば杖職人さんを呼んでくれるでしょう。

 ということで従業員さんに声をかけて事情を説明すると奥の方に行って鍛冶師さんと一緒に戻ってきました。


 な、なかなかに迫力のある強面な男性です。昔のは私なら臆しているかも。体格はデオンザールほどではありませんが、大きく筋骨隆々で身長も180センチは余裕でありますね。

 

「君か、杖を造ってほしいっていうのは」

「はい。今日はそのために来ました。お金もありますし、材料も必要なら取ってきますので頼めないでしょうか?」

「……残念だが造るのは俺じゃない。頼むなら俺の娘にしてくれ」 

「娘さん、ですか?」

「特別だ。ついてこい」


 そう言われて私は男性の後ろをついて行きます。

 ちなみにこちらの男性が現れてから終始お客さんが騒然としていましたが、まあ気にすることでもないでしょう。


 ついて行くと一つの大きな部屋に到着し、そこでは金属を打つ音があちこちで響き渡っています。音漏れしないのかなと思いましたが、そこは魔術で防音しているようです。


 それにしても熱い。金属を熱するための炎のせいなのか黙っているだけでも汗が出てきます。


 バエルやアモンは大丈夫そうですね。悪魔族って汗を掻かないのでしょうか。というかそれ以前に機械の依り代なので発汗機能がない限りは汗を掻きませんね。


「"シルファ"。お前に客だぞ」

「ああ? オレに客?」


 男性が声をかけたのは一人の女性。

 俺の娘と言っていましたが口調は男性っぽいです。自分のことをオレと呼んでいましたし。


 でも間違いなく女性です。声色は完全に女性ですが、それ以上にその二つの大きなお山が女性だと物語っていますからね。ちょっとだけ羨まし──じゃなかった、仕事に影響しないんですかね。


 とりあえずそれは一度措いておくとして。


 クリーム色のショートヘアーに褐色の肌。下はちゃんとズボンを履いているとして、上がほぼ布一枚なのは大丈夫なんでしょうか。うっかりお山がこぼれてしまうということもあったり……。

 

「客ってこのガキんちょか?」

「俺からすればお前もガキんちょだがな。それに、相手は客なんだからそういう言い方は止せ」

「ったく、わかったよ」

「悪いな。こんな男ばかりの環境で育ったもんだから性格や喋り方もそっち側になってしまったんだ。体だけは女らしくなってるんだがな」

「うるせぇ。こんなもん邪魔でしかねぇよ。まあいい。それでオレに用があるってことは何か武器を造ってほしいってことか?」

「この子はお前に杖を造ってほしいと言っている」


 その瞬間、シルファさんの表情が険しくなりました。気まずい空気も出ています。


「オレはもう杖を造らねぇって決めたの知ってるだろ」

「ああ」

「仕事の邪魔だからさっさと連れて帰ってくれ」

「どうしても、駄目ですか?」

「駄目だ。自分で言うのもあれだが、オレが造る杖は性能が高すぎて手にした者を壊す。でも杖以外ならそんなことはない。だからこうして杖以外を造ってる。わかったらさっさと帰れ。それか別の奴に依頼しろ」

「別な方と仰いましたが、それならこれと同等の杖を造ってくれる方はこの場に居るのでしょうか?」


 私は【異次元収納箱(アイテムボックス)】から『月光の魔道神杖』を取り出します。


 そして、一応見てもらった方がいいと思ったので、昨日『聖魔女の楽園』にある工房に寄って、修復を頼んでいた『宵闇の魔道神杖』を一度返してもらい、それもシルファさんに見せました。あとは私の戦闘スタイルも教えておきます。


 シルファさんは杖をしばらく見つめ、そして手に持っていた道具を置いて初めて私と向き合いました。


「黒い方は白い方と比べて装備時の補正数値がかなり低いが、この二本の杖を使って戦ってたんだろ? となると性能の差が大きければ戦闘に支障が出るだろうから、折れた杖は白い方と同等のものだったと考えられるか。それで、アンタが欲しいのは折れた黒い杖の代わりになるもの。確かにこの街でこのレベルとなるとオレしか造れないな」

「だったら……」

「悪いがそれでもオレは造らねぇ。そう決めてんだ」

「なら、造ってくれるまで頼み続けます。私の杖を造ってください」


 私はシルファさんに頭を下げてお願いします。


「頭を下げたって変わら──」

「シルファ、昔から言ってるだろ。()()()()()()()()()()()()()()()()。あいつだってそう言うさ」

「……親父。でも、あれは……いや、少しだけ、考える時間をくれ……」


 そう言うとシルファさんは鍛冶場から出ていきました。

 あの日のことというのが気になったのでシルファさんのお父さんに可能なら聞かせてほしいとお願いしました。


 すると、詳しく話してくれて、シルファさんが杖を造らなくなったのはシルファさんのお母さんが亡くなったことが関係しているみたいです。


 どうやら10年ほど前にこの近くで魔物が大量発生する事件があったそうで、シルファさんのお母さんは二人と違って『黒魔道士』でその討伐に向かった。その際シルファさんから1本の杖を受け取った。

 その時渡した杖も他の鍛冶師たちが造るものより高い性能だったようですが、シルファさんのお母さんであれば十分使いこなせる性能だったとか。


 しかし、次々と増えていく魔物に苦戦していた。

 ここからは真実かどうか明らかになっていませんが、魔物を一掃するためにシルファさんの杖を使おうとした時、突如杖が暴走して魔物を全て討伐。しかし、その代償にシルファさんのお母さんは命を落としたそうです。


 残ったのはシルファさんのお母さんに渡した杖だけ。そしてその杖を『鑑定』した結果、性能が渡した時よりも格段に上昇していたのです。

 性能が上がった理由は不明ですが、それが原因でシルファさんは杖を造らなくなってしまった。


 話を聞き終えて杖を造ってほしいと頼むべきではなかったと後悔しています。

 もちろんシルファさんの杖で死ぬかもしれないということではありません。杖のことで昔のことを思い出させてしまったからです。


 知らなかったなんて言い訳でしかありません。

 自分勝手で非常に申し訳ありませんが、杖の件は断っても大丈夫ですと伝えようと決めた時、シルファさんが鍛冶場に戻ってきました。


「あの、シルファさん。私……」

「……造ってやるよ」

「えっ?」

「だから造ってやるって言ってんだよ。さっき一人で考えてた時、母ちゃんが親父と同じことをオレに言った気がした。もういないけどそんな気がしたんだ……」


 そしてシルファさんは私の目の前に立ちます。大きなお山が目の前に……なんて空気の読めない発言は口にはしません。胸の内に留めておくだけにします。


「アンタ、名前は?」

「り、リリィです」

「リリィ。オレがアンタの杖を造ってやる。ただし、オレの造る杖は馬鹿みたいに性能が高い。見せてくれた杖なんて余裕で超える。扱い切れずに死んでも責任は負わねぇが死んだら一生恨んでやる。わかったか? というかわからなくても死なないと約束しろ。それが出来ないなら杖は造らねぇ」

「わかりました。約束します」

「なら良し。で、杖のデザインとかはあるのか? デザインがあった方がこっちも造りやすいからな」

「あります。ちょっと待ってください」


 私は【異次元収納箱(アイテムボックス)】から造ってほしい杖の絵を描いた紙を取り出します。こう見えて絵のセンスはあると思うのでシルファさんでもしっかりイメージを掴めると思いますよ。


 しかし、パッと見てシルファさんはすぐに紙を筒状に丸めてそのまま私の頭を叩きます。


 バエルに見せても褒めてくれましたし、実際シルファさんも絵は上手いと褒めてくれました。ですので叩かれたのは絵が下手くそだったからというわけではなく──

 

「おい。まさかこれ全部造れって言ってるわけじゃないよな。()()あるうちの1つを造れってことだよな」

「3本全部造ってくれたら嬉しいですけど無理なら1本に決めます」

「ッ! ここで無理だって言ったら負けた気がするから望み通り全部造ってやるよ。ただ、この1本は杖じゃなくてどっちかって言うと槍じゃないか?」

「ああ、それは巨人族をモチーフにしてみたから他より大きいんです」


 残る2本はドラゴンと悪魔をモチーフにしています。

 私が造ってほしい杖とは従魔たちの特徴が入った杖です。


 タルト、バエル、デオンザール以外にも3人の従魔がいるようですし、その子たちの分を造ってほしいと思いました。しかし私は彼らを見たことがありません。それにこの状況で「あと3本あります」なんて言ったら確実に怒られますから止めておきましょう。


 その後、素材や費用のことを詳しく話し合って正式に杖を造ってくれることが決まりました。

次回はおそらく合同授業。


次回更新は11月9日か10日を予定しております。

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奈落の底で生活して早三年、当時『白魔道士』だった私は『聖魔女』になっていた4
― 新着の感想 ―
[気になる点] こちらの記述について、 「私は【異次元収納箱アイテムボックス】から『月光の魔道神杖』を取り出してシルファさんに見せました。」 2022/04/28の設定変更(折れた杖を「月光」から…
[一言] この作品は好きだけどこのパートは正直好きではないな早くクズ教師とセルマーク筆頭としたAクラスはさっさと退場してほしい。生理的嫌悪感が半端じゃない。 杖絡みの話は面白かったけど。
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