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【コミカライズ1巻 3月27日発売】【Web版】奈落の底で生活して早三年、当時『白魔道士』だった私は『聖魔女』になっていた  作者: tani
第四章 シャルルフォーグ学院・新任教師編

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強化合宿の始まり

 合宿前日の夜。私はメルファストさんに呼び出されました。


「リリィ先生が提案したEクラスの強化合宿がいよいよ明日から始まるね。最初は合同授業の話を聞いて驚いたけど、お互い合意しているのだから私が口を挟むつもりはない。それに何より、EクラスがどうやってAクラスに勝つのか個人的に楽しみだから」

「メルファスト学院長はEクラスが勝つと思っているんですね」

「学院長なら公平に両方を応援するべきなんだろうけど、私個人ではEクラスを応援している。これは秘密にしておいてね」


 秘密にしておいてと言われて言いふらすような私ではありません。特に今のことをワーナー先生の耳に入ったら面倒なこと間違いなしなので尚更です。

 

「それはそうと、リリィ先生が見せてくれたあの街も驚いたね。魔物が暮らしているのはまだ理解できるけど、建築や農業までしているとは思わなかった。Eクラスの生徒たちにもまだ見せていないんだろう? きっと私以上に驚くだろうね」


 何処を拠点に合宿しているのか把握していないと困ると思いましたからメルファストさんには事前に『聖魔女の楽園』へ案内しています。

 あまりの発展ぶりに驚いていましたが、それは私もです。私が知らないうちにどんどん発展しているんですよね……。逆に次はどうなっているのか楽しみになってもいます。

 一応王様のような立ち位置にいますが完全に丸投げ状態。もう好き勝手にやってくださいと伝えています。そのせいもあるのか各区画の状況などの報告書も日々増えていく一方ですが、彼らにそう伝えた手前文句は言えません。


 生徒たちに出す予定の料理を振舞ったり、彼らの寝場所や魔術の練習場として使う荒野を見せたり。

 一通りメルファストさんに案内を済ませると「これなら問題ない。むしろ、ここで生活した方が生徒たちも成長するのでは?」と感想を頂きました。そう言ってもらえて嬉しかったですね。


 ちなみに合宿期間中の座学についてですが、それに関しても問題はありません。ここには優秀な人材がいますからね。


 あっ、当然私のことではありませんよ。私には生徒たちに勉強を教えるほど知識はありません。あったら生徒たちと一緒に授業を受けてないです。


 優秀な人材というのは察しの通りバエルです。博識なバエルなら生徒たちに勉強を教えることも可能でしょう。

 しかし、教師ではないバエルが生徒たちに教えられるほどの技量があるのかメルファストさんはわかりませんので、メルファストさんを相手に軽く授業のようなものをしたわけですが──

 

「彼の授業は素晴らしいものだった。おそらく学院にいる教師の中で一番と言えると思うね。是非とも我が学院に欲しいところだが、リリィ先生の従魔だから離れ離れにするわけにもいかない。ここは潔く諦めよう」


 と、今でもバエルの授業を絶賛するほどです。 

 生徒たちの単位は特別にバエルの授業でも貰えるようにしてくれるそうです。その代わり、私も必ず参加して授業中の様子などをまとめて後日報告書を提出しなければいけません。それが無ければ単位は貰えません。


 ただ、私も授業を受けるつもりだったのでその心配も不要でしょう。たとえ生徒の誰かがサボっていてもちゃんと噓偽りなく報告しますよ。


「メアリ先生もEクラスの担任だからついて行っても構わないと伝えたが、彼女は「きっと何も出来ない。それなら自分のやるべきことをする。しばらく会えないのは寂しいけど立派になって帰ってくるのを待っている」と言っていた。あとリリィ先生には「生徒たちのことをよろしくお願いします」と言っていたよ」

「帰ってこようと思えばいつでも帰ってこられるんですけどね……。でも任されました。今までより何倍も強くなって帰ってくるとメアリ先生には伝えてください」


 そして、私は学院長室を後にします。







 

 朝6時頃。私はEクラスの生徒たちを校門前で待っていました。

 前もって集合時間は伝えているので大丈夫だと思いますが、万が一まだ寝ていたら起こしに行きましょう。いやでも、それなら最初から一人一人迎えに行った方が早いのでは……。

 いや、今更ですね。それにやる気のある彼らなら寝坊なんてしないでしょう。

 それから3分ほど待っているとEクラスの生徒たちの姿が見えました。6人全員いるので誰も寝坊していません。


「「「リリィ先生、おはようございます」」」

「はい、おはようございます。皆さん遅れずに来て安心しました」

「本当は約1名寝坊しそうになっていましたが、何とか起こして連れてきました」


 カティさんがそう言うとベル君は大きなあくびをしていました。

 きっと約1名というのはベル君のことでしょう。前は私の朝練に来ていましたが本当は朝が苦手ですからね。


「それで、リリィ先生は結局今日まで何処で合宿するか教えてくれなかったけど、流石にもう教えてくれるよね。こんな朝早くに集合だって言うからもしかして遠い場所?」

「いえ、すぐそこですよ。歩いて1秒です」


 私の言葉を理解できない生徒たち。

 歩いて1秒で着くなんて言われても理解できませんよね。だってそんな時間だと1、2歩しか進めません。


 私が出した謎に頭を悩ます生徒たちをしばらく見続けるのもいいですが、時間もないので早速出発しましょう。


 右手の平を前に出して『聖魔女の楽園』に続く魔法陣を作成。何処に繋がっているのかわからない生徒たちですが私が手招きし、大丈夫だと言って連れていきます。


 魔法陣を抜けた先には『聖魔女の楽園』があります。

 しかし、出たところは街の中央だったのですが、まさかの住民全員が片膝をついて私たちを待っていました。


「「「リリィ様、おはようございますッ!!」」」


 生徒たちの挨拶とは比べ物にならないくらいの声量です。まあこの数が一斉に挨拶するとこのくらいの大きさになりますか……。


 生徒たちもびっくりしてますよ。いや、これは目の前に魔物がこんなにいるからでしょうか。それとも魔法陣を抜けた先に街があったから? どちらにせよ、言葉に出せないくらい驚いているのは確かです。


 それにしても、朝から全員集合とは……。


 練習でもしたのかと思わせるような挨拶。違いますね、きっと練習したのでしょう。提案したのは……何となく予想はつきますね。


 さて、まずは何から片付けていきましょうか。

 とりあえず魔物たちの方に説明しておきましょう。


「えぇ、皆さんおはようございます。おそらくその様子だと既に知っていると思いますが、今日から少しの間ここにいる彼らも『聖魔女の楽園』に住むことになりました。彼らは私が教師をやっている学院の生徒です。道に迷ったり、困ったことがあったら声をかけてくると思うのでその時はちゃんと対応してあげてください」

「「「かしこまりましたッ!!」」」


 うん。やはり声量がとんでもない。

 それはさておき、私が言わなくても対応してくれると思いますが念のためお願いしておきます。


「皆さんも、何かあれば遠慮なく彼らに言ってください」

「は、はい……」

「……リリィ先生って凄いを通り越してよくわからなくなってきた……。たくさんの魔物に慕われて、なんか街もあって、何なの?」

「同感……」

「さて、挨拶も済ませましたし、荷物も移動の邪魔になるのでまずは皆さんが使う部屋に案内しましょうか」


 魔物たちは各々自分の持ち場に戻り、私たちは街で一番立派な建物へ向かいます。といっても私の家なんですけどね。


 外観は真っ白で綺麗。内装もいい感じに仕上がっていて高級感のある家具が数多く置いてあります。でもこれらは全て手作りなんですよ。お店で高値で売られていてもおかしくありません。


 男女が隣同士だと何か問題が起こるかもしれないので、男子生徒は東側、女子生徒は西側にある大部屋を使ってもらいます。ちなみに私の部屋は別の場所にあります。


 先に行っても部屋の構造は変わらないらしいのでどちらでもいいですが、女子生徒の大部屋から紹介しましょう。


 扉を開けるとそこには高級宿のような部屋が広がっていました。私も実際に見るのは初めてだったのでこんな風になっていたとは知りませんでした。


 女子生徒たちはベッドに乗ったり、あちこち部屋の中を見てみたりと大はしゃぎです。男子生徒諸君、女子生徒の部屋を見られるのはこれが最初で最後ですよ。まあ先程も言ったように部屋の構造は同じみたいですけど。


「ふかふかだぁ!! 絶対いい夢見られる!」

「ベッドの上で飛んだらめちゃくちゃ弾むよ!!」

「リリィ先生が用意してくれたんだからはしゃぎすぎて壊したら駄目よ」

「そんなこと言ってぇ、本当はカティもベッドの上で飛んでみたいんでしょ?」

「それは、その……」

「他のベッドでやるのはお店側の迷惑になりますが、ここのは簡単に壊れないように作られているので多少なら大丈夫ですよ」


 ベッドは特にこだわりました。睡眠は大事ですからね。

 制作にあたって私から結構注文しましたけど、それ以上の代物が出来ています。


 もちろん素材も上質なものを使っています。ですが、いいものを作るのに出し惜しみなんてしていられません。そのおかげで今のベッドがあるんです。


 自分の部屋に戻ったら私もベッドの上で飛んでみようと思いながらも、男子生徒の大部屋に移動して、その後は食堂にて朝食を取ります。


「ここでの生活を続けていたら学院の生活が物足りなくなりそうだな。俺なんてあのベッドで寝たら絶対寝坊する自信がある」

「ならベル君のベッドだけ別のものにしますか?」

「そ、それだけは勘弁してくれぇ。ちゃんと朝起きるから」

「ふふ。ベル君は自力で起きるみたいなので寝坊しそうになってもオーグ君とアースリィ君は起こさないでくださいね。一回でも寝坊したらベッドは変えます」

「「わかりました」」 

「クソォ……。お前らが頼りだったのに……」


 そんなやり取りをしながら朝食を食べ終えた後は勉強の時間です。

 ここが学院ではないとはいえ、平日は学院で決められた時間に則って動いていきます。


 別室へ移動し、バエル改めバエル先生の授業を受けます。

 事前に教材を渡しているので内容は理解しているでしょう。ただ、やり過ぎて他の生徒よりかなり先に進んでしまった、なんてことにならないようにメルファストさんには通常2か月でどれくらい進むのか予め聞いています。


 今のところ、そこで終わらせるか少し先に進むくらいでいこうと思っています。時間が余れば過去にやった部分の復習などにしましょう。


 さて、早速授業を始めてもらおうと思いましたが、室内には生徒たち以外にも何人かいます。私と一緒に授業を受けるために来たのでしょうか。


 そして、私の隣にはサフィーが座っています。

 前よりも少し成長している気がします。いっぱい食べて、いっぱい運動しているからでしょう。でもサフィーにはまだ早いかなと思うんですけどね。


「サフィー、今日の修行はないんですか?」

「お昼ご飯食べてちょっと休憩してからやるってししょーが言ってた。それまでは自由だからリリィ様と一緒にいる」


 そう言って私のローブを軽く握るサフィー。

 すっかり言葉も流暢に話せるようになって成長したなと思いましたが、まだまだ甘えん坊さんみたいですね。


 優しく頭を撫でるとサフィーはニッコリ笑います。

 物凄く可愛くてもっと撫でてあげたいところですが、ここはぐっと我慢します。ちょっとだけ勉強しづらいので授業が終わるまで隣で静かにお絵描きをしてもらうことになりました。

 

 それからはバエル先生の授業を受け、時間もあっという間に流れていき、お昼になりました。

 こうして授業を受けてみるとメルファストさんの言う通りバエルが一番わかりやすい授業をしていましたね。教師に迎え入れたい気持ちもわかります。

 

「では皆さんは食堂に戻ってお昼ご飯を食べてください。サフィーもグラとの修行、頑張ってください」

「うん!!」

「先生はお昼ご飯一緒に食べないの?」

「私は午後の授業のために準備をしなければいけませんので。先に伝えておくと、午後の授業はとあるダンジョンへ行きます。そのことを頭に入れておいてください」

「「「ダンジョン……」」」

「ああそれと、お昼ご飯を食べ終わっても時間があると思うので自由にしててください。もし必要なら街の案内役を──バエル、頼めますか?」

「お任せください」

「では必要ならバエルに声をかけてください。それでは行ってきます」


 急に人前に現れても見られたら驚かれるだろうからと出た先は教師寮の自室です。そこからタルトに乗って目的地へ向かいます。


 向かった場所というのは『紫霧の古城』というダンジョン。

 下調べの際にタルトに乗って上空から見たことがありますが、森の中には不自然と思えるボロボロのお城があって、名前の通り紫色の霧がお城を囲むように広範囲に広がっていました。


 紫色の霧と聞くと毒のイメージを持ちましたが、毒によるダメージはありませんでした。

 しかし、その霧には方向感覚を狂わせる効果があるのか徒歩で行くにはかなり厳しい。私も途中で迷いました。


 でも上空に出ればその影響は受けないみたいなので、空から直接向かえば何も問題はありません。

 そうしてダンジョンに一度侵入してEクラスの生徒たちでも倒せる魔物かどうか確認し、最終的にここを選びました。


 タルトに『紫霧の古城』の門へ降りるように指示をして、そこで『聖魔女の楽園』へ繋がる魔法陣を作ればいつでも生徒たちを呼び出すことができますが、お昼休みの時間はまだ残っているのでちょっとだけ挨拶しにいきますか。

 


 それからしばらくして私は『聖魔女の楽園』に戻ります。

 生徒たちも準備は出来ているようなので彼らを連れて再び『紫霧の古城』へ行きます。行ったり来たり大変ですね……。


「ここがダンジョン?」

「そうです。皆さんはここにいる魔物と戦ってレベルを上げてもらいます。心配しなくても皆さんが倒せるレベルですよ。さて、中に入る前に皆さんに言っておくことがあります」


 生徒たちを見ましたが臆している様子はないですね。

 私は生徒たちに3つのことを告げます。


「一つ目は基本的に私は戦闘に参加しません。これはあくまでも皆さんのレベル上げです。魔物と遭遇しても私抜きで戦ってください」

「はい」

「二つ目は何が起きても慌てないこと。慌てて行動すると尚更不利な状況になる場合もあります。冷静に考え、判断し、最善だと思う行動をしてください」

「わかりました」

「最後に、勝てないと判断したらすぐに逃げること。生徒同士の模擬戦と違って魔物は皆さんの命を容赦なく狙ってきます。逃げるのは恥ずかしい事ではありません。死んだらそこで終わりですかね。まあでも、その時は私が対処するので皆さんが死ぬようなことは絶対にあり得ません」


 以上のことを告げて『紫霧の古城』へ入ります。

 私は一度入っているのでどんな雰囲気なのか知ってます。中は暗いので女子生徒は特に怖いと感じるかもしれませんね。


 先頭を生徒たちに歩かせ、私は後ろをついていっていますが、不気味だと感じながらも全員で周囲を警戒しています。


 そして、生徒たちの前に3体のスケルトンが現れます。

 出現したスケルトンはそんなに強くありません。ダンジョンの中には強力な個体もいますが、今は生徒たちの方が有利です。普段通り魔術を使って倒せているので順調にレベルを上げられるでしょう。


 それから20分が経過しました。

 お互いのレベルを確認しつつ、次は誰が経験値を得るか決めながら戦っている生徒たち。決めている間も警戒を怠らず隙がありません。 


 予定よりも少し早いですが、この様子ならそろそろ()()()()に進んでもいいですね。


「リリィ先生、次は向こうを探索──あれ?」

「アース、どうしたの?」

「……リリィ先生が、いない……」

書籍版第一巻、好評発売中 第二巻もAmazonにて予約開始!

(唐突な宣伝です……)

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奈落の底で生活して早三年、当時『白魔道士』だった私は『聖魔女』になっていた4
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