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【コミカライズ1巻 3月27日発売】【Web版】奈落の底で生活して早三年、当時『白魔道士』だった私は『聖魔女』になっていた  作者: tani
第四章 シャルルフォーグ学院・新任教師編

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合宿前日

「今日は明日に備えて午後の授業をお休みします。忘れ物がないか最後の確認を済ませたり、寝不足で参加しないようにしっかり休息を取って下さい」

「それはわかりましたけど……合宿は何処でやるんですか? そろそろ教えてくれてもいいんじゃないですか?」

「場所は当日までのお楽しみです。皆さんが心配しなくても寝る場所もありますし、美味しいご飯も出ます。野宿になったりしないので大丈夫ですよ。あと、必要なものがあれば出来る限り用意しますので私に言ってくださいね。では今日も授業頑張ってください」

 

 合宿開始もいよいよ前日にまで迫ってきました。

 Aクラスの一件から1週間が経過し、あれからEクラスの生徒たちも一層真剣に授業に取り組んでいるため順調に成長しています。


 動きの基礎はある程度出来ていましたが更に磨きがかかって良い感じになっています。初めて魔術を見せてもらった時に伝えたことも徐々に出来てきているので合同授業の時までには間違いなく間に合うでしょう。


 あとはステータス値を上げるためのレベル上げ。

 シャルルフォーグ学院から少し距離はありますが、この1週間で良さそうな場所を見つけたのでそこを利用する予定です。もちろん出現する魔物が生徒たちでも倒せるか事前に確認しています。

 

 さて、今日は生徒たちにも伝えた通り午後の授業はおやすみです。


 1週間もあれば私の実力を知る機会も多く、他の教師たちから授業の補佐をお願いされたりします。

 事前に今日の授業をおやすみにすることは教師たちに知られていたので補佐をお願いされていましたけど、申し訳ない気持ちで断りました。


 教師なので仕事やその手伝いをするべきなのはわかっています。しかし、私にもやることがあるのです。期限があるとはいえ教師となった私が生徒たちへの授業を断り、私情を優先するのは自分でもどうかと思いますが……。


 でもちゃんとメルファストさんから「無理を言ってこちらから頼んだのだから、たまには自分のことを優先して構わない」と許可は貰っています。学院長から許しが出たので大目に見てもらいたいですね……。


 授業の補佐を断った手前、午前の授業を受けに行きづらいので今日はそれもお休みです。

 そうなっては暇になる──というわけでもないです。

 時間はたっぷりありますから今まで少ししか見て回れなかった図書館へ行って調べ物ができます。


 早速学院内にある図書館に来たわけですが、相変わらずの本の多さです。確か150万冊ほどあると言っていましたか。


 とりあえず見て回って面白そうな本があれば手に取って読んでみます。


 っと、その前に。


 図書館に入るとすぐに司書さんがいるので受付で署名し手続きを済ませます。この手続きをしないと図書館内を自由に見て回れません。


 ちなみに、内容次第では出来ないものもありますが、本を借りる時もここで手続きをします。勝手に持ち出すのは禁止です。

 ただ、【異次元収納箱(アイテムボックス)】を使える者だとそれに入れて手続きせずに持ち出すことも可能だと思うでしょう。しかしそこはしっかりと対策しています。


 本一冊一冊には魔術が施されているようで、受付で手続きを済ませていない本はたとえ【異次元収納箱(アイテムボックス)】に入れたとしても図書館を出た瞬間に元あった場所に戻ってきます。


 前に気になったので司書さんに聞いてみましたがそんな風になっているとは思ってもいなかったので驚きました。しかもそれらは全てメルファストさんがやったとか。150万冊を一人で……。流石は学院長だと尊敬します。


 メルファストさんって十分凄い人だとは思っていましたが、それを遥かに超えるくらい凄い人なんですよね。

 職業の恩恵もあってか武術も魔術も出来るようですし、様々な知識を持っている。たまに魔術学科やそれ以外の学科に行って授業を行っているとも聞きました。是非ともその授業を受けてみたいところです。

 そうだ、メルファストさん関連で言えばもう一つ。


 今日のお休みを利用して図書館に行くと伝えると許可証を貰いました。


『学院の図書館には、"生徒や教師などが誰でも自由に閲覧できる本"、"学院長と教師が閲覧できる本"、"学院長のみが閲覧できる本"の3種類存在する。リリィ先生には私のみが閲覧できる本がある部屋への入室を特別に許可しよう』


 学院の図書館には全部で3つの部屋があるそうで、それぞれに1種類ずつ本がまとめられているみたいです。中が広く、探す時間もあまり無かったので知りませんでした。


 それにしても、メルファストさんのみが閲覧できる本なのだから相当貴重なものに決まっているはずです。それを私なんかが見てもいいのか疑問に思いました。


 私が実は悪人で書かれている内容を悪用するかもしれませんよ、と言うと「リリィ先生はそんなことしないと思うし、何より信頼しているからね」と返されてしまいました。


 信頼していると言われては裏切れません。それ以前にそんなことするつもりは一切ないんですけどね。

 司書さんに許可証を見せると驚いていました。まあ普通は許可が出ないと思うので、いきなりこの許可証を見せられるとそういう反応になりますよね。


 手続きも無事に終わったのでここからは読書の時間です。






 時間が過ぎるのはあっという間です。

 気が付けば午前の授業も全て終わりお昼になっていました。時間を忘れるくらい集中していたのでしょう。


 Eクラスの生徒たちは今日の授業も終わったので今頃寮に戻ったり街に行って買い物をしているかもしれませんね。

 学院長のみが閲覧できる本というのを中心に色々な本を読みましたが、お腹も空いてきたので一先ずここで終了しましょうか。


 持ってきた本を元の位置に戻し、まだ読んでいる途中の本や気になったけど手に取らなかった本は借りましょう。


 お昼にもかかわらず静かな場所で勉強をしたいのか生徒が数名図書館へ訪れています。

 偉いなと思いつつも私は受付に行って本を借りるための手続きを済ませようとした時、Aクラスのノエルさんと偶然出会いました。勉強道具を持っていたのでノエルさんも勉強しに来たのでしょう。


「ノエルさん、こんにちは」

「……リリィ先生、こんにちは」

「今から勉強ですか? 余計なお世話かもしれませんが休憩も大事ですからね。ちなみに私は集中しすぎて頭が爆発しそうです」

「……そう、ですか……」


 冗談を言ったつもりなんですが、いまいち反応が悪いような気がします。失敗したかもしれませんね。

 このままの空気だと気まずいので何か話題を──


「えっと……良かったらお昼ご飯一緒に食べませんか? って、ノエルさんは勉強しに図書館に来たんですよね。今のは忘れてください」

「いえ、私で良ければ……」

「それじゃあ勉強頑張って──えっ? いいんですか?」

「私も先生と少しお話がしたいので……」

「で、では図書館でうるさくするわけにはいけないので何処か別の場所に行きましょうか」


 というわけで、ノエルさんには少し待ってもらってから私たちは学院の外に行き、適当に落ち着ける場所を見つけます。


 ノエルさんはお昼ご飯を持参していないようですので私のを分けましょう。私から誘ったのもありますし。


 今回のお昼ご飯はサンドイッチです。野菜やお肉が挟まれたものやフルーツを使ったものなど種類が豊富でどれも美味しそう。これらは30分ほど前に私のために『聖魔女の楽園』で作ってくれて【異次元収納箱(アイテムボックス)】に入っていました。


 遠慮せずに食べていいと勧めるとノエルさんはサンドイッチを一つ手に取り口に運びます。

 

「……今まで食べたサンドイッチの中で一番美味しいです」

「満足してもらえてよかったです。それで、私と話がしたいと言っていましたが──」

「Eクラスの生徒たちは順調に強くなっていますか?」

「ええ。近いうちにAクラスと互角に戦えるくらいにはなると思いますよ」

「そうですか、()()()()()()()()()


 良かったというのは同学年の生徒が強くなり始めたからでしょうか。


 でも、合同授業で模擬戦を行うと聞かされているはずです。強くなられて当日苦戦するよりも成長せずにそのままで居てもらったほうが都合がいいのではないでしょうか。


 そんなことを考えているとノエルさんが続けて言いました。


「Eクラスには何としてでもAクラスに勝ってほしいです。だから先生は彼らをAクラス以上の生徒に育ててください」

「もちろんそのつもりではいますが、どうしてそこまでEクラスに勝ってもらいたいんですか? ノエルさんはAクラスですよね」

「私は合同授業の模擬戦なんてどうでもいいんです。当然勝敗も。ただ、いい加減Aクラスは日頃の行いを反省するべきだと思っています。Aクラスは自分たち以外の生徒や、もしかしたら一部の教師も見下している。セルマークなんかは特に。先生も知っていますよね」

「まあ、この前のあれを見たら……」

「あれはきっとワーナー先生の教えが悪い。教師がああなら生徒もそれに染まってしまいます。正直な話、優秀な教師だと言われているみたいですし、私も授業をしてもらってお世話になってはいますが、卒業後のことを考えると他人を見下す考えを植え付けられた生徒はずっとそういう考えしかできないと思うのでワーナー先生は辞めさせるべきだと思っています」


 ノエルさんの言いたいことは理解できます。


 教師だけがあの態度なら本当に辛うじてですけど許せたかもしれませんが、生徒にまで移ってしまうのは非常によろしくない。ノエルさんの言う通り生徒たちのためならワーナー先生を辞めさせるのも視野に入れるべきかもしれません。


「ただ、それは私たち生徒が団結してその考えを否定すればいいだけの話だったとも言えるかもしれません。だけどそれを否定せずワーナー先生の思惑通り自分より弱い生徒を見下すように変わってしまった。そのせいで今は完全に調子に乗っています。だから自分よりも弱いと勝手に決めつけた生徒に負けて一度しっかり反省してほしい。これがEクラスに勝ってもらいたい理由です。まあ負けてもセルマークは反省するとは思えませんね。言い方は悪いですがあれは根本的に腐ってますから」


 セルマーク君に対してなかなかに辛辣な言葉を言いますね。そう言われるほどのことをしているのは事実みたいですので仕方ないのかもしれません。

 ノエルさんの言葉はまだまだ続きます。


「自分より強い人なんて世界中にたくさんいる。だけどセルマークはその人たちを無意識に除外して自分が一番だと思い込んでいます。ちなみにですが彼、自分で無かったことにしているみたいですけど実は入学初日に私に挑んで返り討ちにされているんですよ。自分が一番みたいな雰囲気を出していますけど、本当はクラスの中ですら一番じゃないんです」

「でも、前にノエルさんとセルマーク君が勝負しているところを見たことがあるんですが、その時は互角だったように見えましたよ」

「勝ったら面倒なので手加減しているんですよ。あの日勝った時だって声を荒げながら訳のわからない難癖つけてきたので、別に学年の一番に興味もないですし、平穏な学院生活を送るためならと当時は適当に言い訳して次から手加減した方がいいと判断しました。まあ、うざいので徹底的にやってやろうかとも思いましたが、『()()』が攻撃する暇も与えずに相手をただ一方的に痛めつけるのも絵面的にどうかなと思っているところもありますね。私が『勇者』だってことを知っているのは学院長だけなので気にすることでもないかと思いますが」


 なるほど。…………って、ん? 今ノエルさんは何と言いました? 

 思わず聞き返して見ると──


「リリィ先生は言いふらすような人ではないと思うので言いましたが、こう見えて私の職業は『勇者』──ユニークスキル『勤勉』を持つ『勇者』です。ワーナー先生には学院長が上手いことやっているそうで知られていません。きっと知られたら贔屓されますよ」


 聞き間違いとかではないようですね。

 ノエルさんが『勇者』ですかぁ……。


 一応生徒の名前を覚えるためにAクラスの生徒の資料を見てみましたが、そんなことは一切書かれていませんでした。知っているのがメルファストさんだけというのも公にしていないからということですか。


 ノエルさんの元々の職業は『黒魔道士』だったそうです。それが中等部時代のある日、突然『勇者』になっていた。アルファモンスで出会ったルクスと違ってアドルと同じ職業が突然変わってしまったタイプですね。


 ちなみに、ユニークスキル『勤勉』についても少し聞いてみると、どうやらそのスキルは戦闘のみならず勉強することで経験値を得ることが出来るみたいです。前に言っていたノエルさんの言葉も理解できました。


 それにしても、メルファストさんといい、ノエルさんといい、私のことを信用しすぎではないでしょうか。まあ悪い気はしませんけど……。

 とりあえず勇者であるなら私はノエルさんに伝えなければいけません。


「ノエルさん。いずれノエルさんはその職業が原因で命を狙われることになると思います。いきなりこんなこと言われても理解できないと思いますけど殺されないためにも今以上に強くなってください。私からのお願いです」

「せ、先生がそう言うならよくわからないけど信じます。でも、言われなくても私はもっと強くなりますよ。あの人の隣で戦えるようになりたいという目標があるので」

「あの人? 憧れの人とかですか?」

「はい。私と同じ『勇者』で、しかも同い年。その人とは一回だけ会ったことありますが、セルマークとは比べ物にならないほどに優しくて強くてカッコイイ人でした」


 ノエルさんと同じ年となると15か16歳ですか。

 私の知っている『勇者』はアドルとルクス。どちらも18か19歳になっているので違いますね。私の知らない別の『勇者』ということですか。

 

「そういえば、私の職業を先生に明かしたのにはもう一つ理由があって、その人とリリィ先生の──」

「「「リリィせんせー!!」」」


 遠くの方から声が聞こえたので見てみるとEクラスの生徒たちがいました。手を大きく振って私を呼んでいます。

 

「私のことは気にせず行ってください」

「でも今何か言いかけていませんでしたか?」

「別に気にしなくて大丈夫です。それより、Eクラス──いえ、全ての人間に言えることですが、たとえ今は弱くてもそれはまだ才能が開花していないだけで強くなれる可能性は絶対にあると私は思っています。私が言うと嫌味に聞こえるかもしれませんが……彼らには頑張ってと伝えておいてください。応援しています」

「嫌味ではないことくらい私がわかっています。彼らには強くなりたいという強い意志があります。心配しなくてもAクラスを倒せるくらい強くなりますよ」


 さて、明日より始まる合宿。

 最後までついてこられるかなんて心配はありません。

 そして、この合宿が終わった時、きっと多くの人が驚くことになるでしょう。

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