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【コミカライズ1巻 3月27日発売】【Web版】奈落の底で生活して早三年、当時『白魔道士』だった私は『聖魔女』になっていた  作者: tani
第一章 オルフェノク地下大迷宮脱出編

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出発してから早一週間

 地上に向かう旅も一週間が経過しました。


 私たちは【オルフェノク地下大迷宮】197階層まで登ってきています。これで折り返し地点を突破しました。

 自分でも想定より、かなり早いペースだと思います。

 一日で20~30階層──私の場合、下から上へ向かっていることもあり、魔物は弱くなっていく一方なので、多い時は40階層近く一気に登った時もありましたね。


 その間の思い出話の一つや二つあるのか?


 いいえ、ないですけど。

 強いていえばアイススケートが楽しかったぐらいです。あとは大して山も谷もない普通の探索でしたよ。


 ですがここにきて朗報です!


 実は今ですね、人間がいるのですよ。しかも四人。

 私は気付かれないように物陰にこそこそと隠れて遠くから観察しています。


 下層は強敵──私にしたら大したことない──もいます。しかし、中層辺り197階層にもなれば訪れるパーティーの一つはあるのでしょう。

 彼らの目的は200階層のフロアボスを攻略するのが目的でしょうね。一応鑑定でステータスを見てみます。

 

 えっ? 勝手に人のステータスを鑑定していいのか?


 まあ、常識的に考えて控える方がいいでしょうね。

 私が今からやることは個人情報を盗み見る行為ですから。

 でもステータスを見られないようにしたり偽装したりする方法はいくらでもありますよ。

 それに控えた方がいいと言っても、自分のステータスを勝手に見るのも冒険者業界ではよくあることです。そういう対策をしていない方も悪いと思いますよ。


 で、もう既にあの人たちのステータスは鑑定し終えました。


 ここまで辿り着いたのですから相当高いステータスであることは薄々気付いていました。

 レベルは平均で170ぐらい。ステータスもこの階層付近であれば油断しなければ問題ない数値かと。


 パーティーのバランスも取れていますね。

 役職を見るに前衛二人に後衛二人。ですが残念ながら『白魔道士』はいないようです。回復はポーションに頼っているのでしょう。

 ポーションは『白魔道士』がいなくても生命力を回復できる便利なアイテムですが、効力が高いものだとそれだけ値段が張るので十分な資金がない限りはオススメ出来ません。

 このパーティーは結構稼いでいるのでしょうね。


 さてさて、鑑定と考察を終えたところで──


 久し振りの同族ですよ。

 ここ三年間は魔物の顔しか見ていなかったので何かこう……かなり感動しています。

 

 どうしましょうか。このまま話し掛けてみましょうか。

 しかし、話題を考えずに突っ走るのも駄目ですね。挨拶して話題がなければ気まずい空間になります。


 こんにちは。調子はどうですか?


 一見普通すぎる会話文ですが一番安全でもありますね。

 冒険者たるもの情報交換は必須ですのでここから話を広げていけばいいと思います。


 よし、そうと決まれば早速あの人たちの前に出て──


 とここで彼らの前に私ではなく魔物が現れてしまいました。

 なんてタイミングの悪い……。ここで私が出ていったら注意が魔物から逸れてしまう可能性があります。

 それでパーティー全滅にでもなったりしたら私は責任を取らなければいけません。

 ここはじっくりとタイミングを窺いましょう。


 現れたのは体長五メートルほどの大きな蜘蛛です。

 昔の私なら気絶していたかも。

 実は私、泳ぎ以外にも虫が苦手なんですよね。

 標準サイズなら耐えられますし、今も辛うじて克服はしましたがそれでもまだ苦手です。    

 あの大きさの虫は気持ち悪くて全身の毛が逆立ちます。今の私でこうなのですから昔の私は泡吹いて倒れているでしょう。

 

 その蜘蛛は『タイラントポイズンスパイダー』と言います。

 鑑定で確認したところステータスも【オルフェノク地下大迷宮】中層の魔物に相応しい数値です。

 私なら気持ち悪くて最大火力の魔術をドカンと一発放って終わらせますがあの人たちはどう戦うのでしょう。


 タイラントポイズンスパイダーは彼らに向かって糸の塊を放ちます。

 それを散開して回避。あの糸は粘着性があるようなので捕まれば恰好の的になります。


 結構イケメン──職業は『剣士』の上位職業である『聖騎士』である男性がタイラントポイズンスパイダーの胴体目掛けて斬り込もうとしています。


 私なら安易に近付かず遠距離攻撃等で様子を見ますがね。


 それに気付いたタイラントポイズンスパイダーは口から紫色の液体を放出します。

 間違いなく毒液でしょう。

 イケメンの男性は回避するも腕に毒液がかかり、その部分の鎧が溶け始めます。

 毒への耐性はあるようなので皮膚がほんの少しだけ溶ける程度で済みましたが案の定『毒状態』になってます。

 

 男性は一度距離を取って解毒ポーションで回復します。

 その間に他の人たちは遠距離から攻撃を仕掛けます。

 後衛に攻撃の矛先がいかないようにもう一人の前衛が毒液に注意しつつ引き付けています。


 最初からそうしていれば良いものをと思いますが、何事も経験です。私も何回も試行錯誤して倒せなかった魔物を倒したことがありますので。


 そして、20分の激闘を経て彼らはタイラントポイズンスパイダーを見事討伐することが出来ました。

 

 討伐出来たことはとても喜ばしいことですが、これで200階層のフロアボスを討伐できるのか少々不安になります。

 まあ、魔物との相性もあるのでタイラントポイズンスパイダーの方が強敵だった、なんてことがあるかもしれませんね。


 さて、戦闘が終了したところで声をかけようと──思いましたがやめておきましょう。


 何故やめたかというと理由は色々ありますが、一番は私の存在ですね。

 四人でやっと倒せた魔物が生息している場所に私一人だけ──タルトがいるので一人ぼっちではないですが──いるのはあまりにも不自然。

 しかも彼らが今一番深い場所にいます。ここまで来れる実力があるなら有名なはず。

 なのに自分たちが知らない人間が一人急に出てきたらまず怪しむでしょう。


 警戒されるのも私としては嬉しくないですし、疲弊しているところに更なる緊張感を与えるのは精神的に良くないので今回はやめようという判断です。


 人との会話はもう少し上の階層に行ってからにしましょう。上の階層にもパーティーはいるでしょうし、ソロで活動していてもちょっと強い冒険者で通るはずです。

 

 そういうわけでここから去ることにします。

 ではまた、縁があったらお話出来るといいですね。

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奈落の底で生活して早三年、当時『白魔道士』だった私は『聖魔女』になっていた4
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