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【コミカライズ1巻 3月27日発売】【Web版】奈落の底で生活して早三年、当時『白魔道士』だった私は『聖魔女』になっていた  作者: tani
第四章 シャルルフォーグ学院・新任教師編

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ワーナーからの提案

 教師生活の朝は早い。

 毎朝5時に起床し、身支度を済ませます。


 その後は教師寮を出て目的地にジョギングしながら向かいます。肌で感じる風は少しだけ冷たくもありますが、私はこういう朝に吹く風も好きですね。


 生徒たちが学院に登校するにはまだ早い時間です。きっと今も夢の中にいるのでしょう。

 それでもジョギング中に何人かの生徒を見かけました。中には声をかけてきてくれた生徒もいたり。


 彼らは朝練をするために朝早くに起きているそうです。やる気があっていいですね。かくいう私も朝練をするために早く起きているんですが。


 そして、体も温まったところで目的地に到着しました。

 目的地というのは第二演習場です。何かとここにはお世話になっています。


 メルファストさんから事前に許可を貰って利用しています。教師とはいえ無許可で利用するのはどうかと思いましたからね。


 さて、私がここへ来たのは当然朝練をするため。

 といってもその内容は魔術ではなく近接戦です。


 魔術の練習も大切ですよ。エルトリアさんと比べたら私もまだまだ。慢心している暇はありません。

 しかし、今の私には魔術より近接戦の技術を向上させるべきだと思いました。


 理由は私が慣れていないから。

 前々から練習はしていますが魔術と比べるとどうしても劣っています。それでも一般の魔道士よりは出来ると思いますが。


 近接戦の練習相手はバエルです。

 私は『聖魔女の楽園』からバエルを呼び出します。

 バエルは私と違って眠りません。夜が来ようとずっと起きています。睡魔に襲われたり、労働で疲れたりもしないようなので基本的には『聖魔女の楽園』でずっと活動しています。


「リリィ様、おはようございます。本日もお美しいですね」

「あ、ありがとうございます……」

「ところで、私が用意したその服は如何ですか? お渡ししてからしばらく経ちましたが、着心地や機能性に問題があったりなど、些細なことでも宜しいので何かあれば何なりとお申し付けください」


 少し前にバエルから服をプレゼントされました。それが今着ている服です。

 近接戦の練習では拳を振るったり蹴りを放ったりと普段のローブ姿ではかなり動きにくい。そのため新しく動きやすい服装を用意してもらいました。


 スポーツウエアという服です。ちなみに髪は一本に縛っています。やはり髪型が変わると印象が変わるなぁ、と自分で思いましたね。


 上に羽織るものがあるとはいえ、脱いだらお腹やおへそがチラッと見えるので少し恥ずかしい気もしますが、物凄く動きやすので気に入っています。


 でも耐久性の方は障壁等があるので問題ありませんがこれで本格的な戦いをするのはちょっと……って思いますね。

 その辺のことをバエルに伝えると──


「なるほど。ではリリィ様の要望に応えられるものを作るように伝えておきます。あとリリィ様のステータスでは今のものだと補正数値も無いに等しいのでそこもどうにかしましょう。ただ、通常の素材だとお望みの代物が作れないと思うので【異次元収納箱(アイテムボックス)】にある素材を使うことになりますがよろしいですか?」

「構いませんよ。好きに使ってください」


 私の【異次元収納箱(アイテムボックス)】にある魔物の素材は従魔間で共有できるようになっています。たまに覗いてみると身に覚えがない素材が入ってたりします。


 それらはどうやら最上級悪魔たちが『聖魔女の楽園』の外に出て集めたものみたいです。


 私の従魔になった彼らは自由に『聖魔女の楽園』を出入りできるので気分転換も兼ねて外に出ているのでしょう。グラから「サフィーには私以外とも戦わせるために魔物と戦わせています」と報告も受けていますし。


 話は脱線しますが『聖魔女の楽園』の現状についてです。

 シャルルフォーグ学院に来てから2週間が経ち、教師生活も慣れるまで色々と大変でして落ち着いたら増やせると思いますが、現状では週に一度顔を出しに行っています。


 それでこの前『聖魔女の楽園』に行ったわけですが、私の予想を遥かに超える発展ぶりに言葉を失いました……。

 だって、いつの間にか村が町になっていたんですからね。言葉を失いますよ。


 地面は土から石畳に変わっていました。建物も仮拠点だったのか乱雑に建てられていましたが、今では綺麗に並んで建っています。ちなみに技術レベルもかなり上がっていて建物も以前とは比べ物にならないくらい立派になっていましたよ。


 更にはお店まで出来ていましたからね。飲食店とか洋服店とか。

 この前遭遇したタイラントワーム──"ターム"と名付けた子ですが、その子に農業区画を任せてからは良い土が出来て農作物が美味しく育っているようです。


 その農作物を使って飲食店を経営しています。実際食べてみましたが個人的にはプロ顔負けの料理で美味しかったです。


 しかもそれらは全てバエルが連れてきた中級悪魔たちが作ったのですから驚きです。洋服も別の悪魔ではありますが作っているようです。


 明日辺りに顔を出そうかと思っていますが、前回以上に発展しているかもしれませんね。それはそれで楽しみです。


 しかし、普段から頑張っている彼らには何かご褒美も考えないといけません。

 前に来た時にバエルから現状の報告書をたくさん貰いましたが、その中にご褒美の件でいい案があったような気がします。あとで確認しておきましょう。



 それでは話を戻してバエルとの近接戦闘の練習を始めたわけですけど、相変わらずバエルは強いです。


 ステータスは然程変わらないというのに本気では無いことがわかります。これが経験の差というものでしょう。私も結構な場数を踏んできたんですけど、それは基本的に魔術のみの戦いですからね……。


 アドバイスを受けながらも何とか一撃食らわせようと頑張りますが軽々と躱されたり、簡単に攻撃を流されたりとまったく歯が立ちません。


 それから一撃も入れることができまずに20分が経過して一旦休憩を挟みます。

 正直まだまだやれますが、焦ってもいいことはありませんし、一度動きやバエルからのアドバイスをおさらいするためにもこの時間は必要です。


 バエルから受け取った水を飲みながら休憩していると第二演習場に二人の生徒がやってきました。

 カティさんとベル君です。


 私が朝練をしていることは生徒たちも知っています。

 教えることは授業でちゃんとやりますが、本人たちが望むのであれば来てもいいですよと伝えていました。 

 他の生徒も来ることはありますけど、今日はカティさんとベル君の二人だけ。カティさんはほぼ毎日来ていますが、ベル君は朝が苦手なようなので珍しいですね。


「先生、おはようございます」

「カティさん、ベル君、おはようございます。二人とも早起きですね。今日は二人で一緒に来たんですか?」

「いや、カティとは偶然そこで会ったんだが……それより先生。その、目のやり場に困るというか……出来れば上に何か着てほしいなと」


 汗も掻いて暑かったので上を一枚脱いでいましたが、体のラインがはっきりわかりますし、何より生地が薄いですからね。男の子には少々刺激が強いかも。


 カティさんとベル君は何やら言い合いをしていましたけど、まずはベル君の指摘を受けて脱いでいた上着を着ます。


「お見苦しいものを見せてしまって申し訳ないです」

「そんなことないですよ。先生スタイルいいですし、それでいて魔術も凄いし、教え方もわかりやすいし、同じ女性としてとても尊敬してます」

「あはは……そう言われると嬉しいですね……。では時間も限られているので朝の特別授業を始めましょうか」


 それからは朝7時までカティさんとベル君に授業を行います。この時間を過ぎてしまうと私もカティさんたちも朝食に遅れてしまいますので注意が必要です。


 短い時間ですが二人に色々教えていきます。

 そして、時間が来ると二人に課題を伝えて今日の朝練は終了になります。


 午後の授業は伝えた課題に二人は取り組んでもらって、その間に今日朝練に来なかった生徒たちの授業を行う。これが今のところの流れです。

 




 カティさんとベル君と別れたあとは急いで教師寮に戻り、自室で魔術を使い掻いた汗を拭いて綺麗にします。お風呂も考えましたが、お湯を張るにも時間がかかります。それに長々と入っている時間もありません。


 綺麗になったところで食堂に行って朝食を食べます。

 朝はしっかり食べないと頑張れませんからね。まあ食堂で出されるご飯は美味しいのでいくらでも食べられます。


 その後は忘れ物がないかを確認して教師寮を出発。

 生徒たちと挨拶を交わしながら、途中でカティさんやミーシャさん、サリーさんの女性生徒三人組と会って一緒に学院に向かいます。


 三人と別れた後は職員室で朝礼が始めるまでゆっくりします。この時に飲むミルクココアが気持ちを落ち着かせるんですよねぇ。


 このミルクココアは『聖魔女の楽園』で作られたものです。私が美味しいと言ってから毎日【異次元収納箱(アイテムボックス)】の中に用意されています。

 子供っぽいとか思われそうですが私は気にしません。だってこのミルクココアが好きなのですから。

 

 朝礼も終わり、私の授業は午後からなのでどの授業に見学へ行こうか悩んでいると一人の教師に声をかけられます。


「リリィ先生、少しよろしいですか?」


 出ましたよ、ワーナー先生です。


 ワーナー先生は何かと私に絡んでくるんですよね。「そろそろEクラスの生徒に教えるのも辛くなってきたのでは?」とか「普段は私が行っていますが特別に私のクラスの生徒たちに授業をしても構いませんよ」とか。


 果たして今日はいったい何を言いに来たのやら……。


「ええ、大丈夫ですよ。でもワーナー先生が私と話して授業に遅れてしまうと生徒たちも困るのではないですか?」

「手短に話すので問題ありません。それで早速本題に入りたいのですが、近いうちにAクラスとEクラスの二クラスによる合同授業を行いませんか?」

「合同授業、ですか……」

「そうです。Eクラスの生徒にとってはAクラスと同じ場で授業出来たらいい刺激になるでしょうし、Eクラスの生徒もリリィ先生の素晴らしい授業のおかげで()()()力をつけているようじゃないですか。ちょっとした試合を行ってAクラスの生徒に底辺(した)から上がってくるかもしれないという緊張感を与えたいのですよ。これはお互いの生徒のためだと思いませんか?」


 合同授業を行うにしてもAクラスならBクラス、EクラスならDクラスのように普通は実力が近いクラス同士でやるものではないんですかね。


 それをAクラスとEクラスでやるとは……。

 確かにいい刺激にはなるかもしれませんが、緊張感が欲しいのであればBクラスとやればいいのでは? Eクラスでは実力差を改めて知って心を折られるかもしれない。


 まあ、あの子たちならその心配は必要ないと思いますけど、万が一のことを考えると簡単には引き受けられませんね。


「その返事はいつでもいいですか?」

「日程の調整もしたいので出来れば早い方がいいですね」

「わかりました。では今日中にでも返事をします」

「いい返事が来ることを願っていますよ。それでは」

「ああ、ワーナー先生。私からも一ついいですか?」

「なんでしょう?」

「もしよろしければワーナー先生の素晴らしい授業を見学したいなと思いまして。可能なら担任をなさっているAクラスの授業がいいですね。その時にでも先程の件の返事をしますよ」

「いいですよ。Aクラスの授業は4時限目です。ただ、生徒たちに迷惑をかけてほしくないので遅れないようにしてくださいね」


 その後私は何も言わずに笑顔でワーナー先生を見送りました。

 さて、Eクラスの1時限目の授業はメアリ先生でしたね。他の先生なら迷惑になると思いますがメアリ先生であれば事情を話せばわかってくれるはず。 


 急いで私はEクラスに向かいます。

 途中でメアリ先生と合流し、最初の10分だけ時間をくださいと頼んだ結果、快く了承してくれたので良かったです。今度何かメアリ先生にお礼をしましょう。


 Eクラスの教室に入ると生徒たちと目が合います。

 普段ならここで彼らの座る席の方へ向かいますが今日は違います。そのまま教壇に上がり、彼らの前に立つと驚いた様子で私を見ていました。


「あの、今日は先生が授業をするんですか?」

「いいえ、違います。今日は少し相談があってきました。時間はそんなにかからないので安心してください」

「それで相談というのは?」

「実は先程Aクラスと合同授業を行わないかとワーナー先生に提案されました」


 そう言うと彼らは騒然とし始めます。

 それもそのはず。普通はこんな提案はありえない。


「いつやるとか聞いていないんですか?」

「詳しい日時はまだ……。流石に明日とか明後日ではないと思いますけど。とりあえず日時は一度おいておくとして、合同授業をやるかどうかは皆さん次第です。提案されただけなので皆さんが嫌だと言うのであれば断ることも可能ですよ」

「けど、そうしたらワーナー先生に色々言われるんじゃないの?」

「あの先生の性格的に絶対言うよね」

「まあその辺は言われても私が気にしなければいい話なので。それでどうしますか? ワーナー先生はちょっとした試合をすると言っていたので模擬戦は間違いなくやることになるでしょう。それでも合同授業をしますか?」

「俺は合同授業をしたいです!!」


 真っ先に答えたのはアースリィ君でした。

 

「模擬戦になったら当然勝ちたいけど、今はまだ無理だ。でも自分がどれだけAクラスに通用するか確かめられるチャンスでもある」

「アースが言うなら仕方ないな。よっしゃ、俺も合同授業をやるに一票入れるぜ」

「僕も最近は多属性を生かした戦い方をいくつか思い浮かんだんだ。相手がAクラスなら試してみる価値はある」

「ベル君、オーグ君……」

「まったく、男連中はどうしてこうなのかねぇ。まあでも、最近はおかげさまで強くなった気もするし、もしかしたらがあるかもしれないから私も賛成ということで」

「バエル様に鍛えて貰ったんだもん、勝てなくてもいいところまではいけるはず。その後バエル様に教えてもらえればいいよね」

「ミーシャさん、サリーさん」


 サリーさんが頬を赤らめながらバエルのことを様付けで呼んでいるのは一旦無視しましょう。


「リリィ先生、今回の合同授業の件ですが全員賛成ということですのでワーナー先生にはそう伝えてください」

「本当に、いいんですね?」

「「「はい!!」」」

「わかりました。では、合同授業の日が来るまで可能な限り皆さんを鍛えます。やるからには勝ちましょう」

「「「よろしくお願いします!!」」」


 ただ、すぐに合同授業の日が来ると流石に時間が足りません。

 でも私がワーナー先生の提案に乗ったのですから代わりにこちらのお願いを聞いてもらうことも出来るはず。だいだい2~3か月ぐらいあればいいです。


 時間が確保できたと仮定して、次に必要なのは場所。


 それに関しては最適な場所があります。魔術の練習場所はたくさんありますし、実戦形式をお願いする相手など迷ってしまうくらい居ます。合宿を行うのもアリですよね。


 さて、そうなればこちらも準備しておかないといけません。

 ワーナー先生の授業に間に合うように時間を確認しながら私は『聖魔女の楽園』へと向かいました。

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奈落の底で生活して早三年、当時『白魔道士』だった私は『聖魔女』になっていた4
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