表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ1巻 3月27日発売】【Web版】奈落の底で生活して早三年、当時『白魔道士』だった私は『聖魔女』になっていた  作者: tani
第四章 シャルルフォーグ学院・新任教師編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

104/190

教員採用試験

 演習場へ行くついでに学院内の施設を案内してくれました。

 図書館は150万ほど蔵書があるそうです。入口から中を少し覗いてみましたが、確かに数えきれないほどの本がありました。全部読むのに何年かかることやら……。読みたい本を見つけるのにも苦労しそうです。


 あと、まだ足を踏み入れたわけではありませんけど実験棟というものもあるそうで、好きな分野を更に突き詰めるために生徒や教師が色々と研究するみたいです。興味があるので今度見に行ってみましょう。

 

「そういえば、メルファストさんとウォルフさんはどういうご関係なんですか?」

「昔からの友人だよ。何か特別な関係というわけでもない。たまに飲みに行って愚痴を言い合うような仲さ。これでもお互い大変だからね」

「そうですよね。領主と学院長。大変に決まっていますよね」

「まあ、私よりもウォルフの方が大変だろう。あまり種族の差を口には出したくないが、エルフは人間よりも能力が高い。人間とエルフが同じ仕事をしてもエルフの方が多く量をこなせる。特に頭を使う仕事はね。以前まではウォルフの前で大変だとか言わないつもりだったんだけど「酒の席ぐらいでは本音を言え」と言われちゃってね。そこから愚痴を言い合うようになったかな。──っと、こんな話をしている間にも着いたよ。ここが演習場だ」


 訪れたのは第二演習場という場所でした。他にも似たような場所を何度か見かけましたが今回はここを使うんですね。

 形はドーム状ですが天井を開くことも可能みたいです。そして、ドーム状なので雨天時でも問題ないのでしょう。


 中に入ってみましたが演習場というだけあって広いです。これなら大人数でも利用できますね。

 そして、演習場内には既に何名かいました。 


 私の予想だとおそらく学院の教師なのでしょう。でも、それ以外にもいます。学院の生徒ではないそうですが、試験を受けているようにも見えますね。

 魔術を使い、その結果を採点しているのか教師たちが片手に持っている板に書いているようです。


「あれはいったい……?」

「隠していたわけではないけど実は今日は教員採用試験でもあったんだ。その日に偶然リリィさんが来たからちょうどいいかなって。私一人よりもなるべく大勢に見てもらった方が実力を認めてもらえると思わないかい?」


 確かに一理ありますね。

 学院長であるメルファストさんが直々にお願いしたというだけでも期待はされる。でも実際どうなのかは自分の目で見て確かめないとわからない。


「はい。でも私だけじゃなかったんですね」

「教師が不足しているからね。定期的に冒険者ギルドとか役所に頼んで求人票を出してもらっているんだ。けど即採用というわけではない。当然試験して実力を確かめて合否は後日知らせる。まあリリィさんの場合は私がスカウトしたようなものだから関係ないけどね」


 それでも失望させないために頑張ります。

 メルファストさんがここに来たことに気付いたのか一人の男性教師が駆け足でこちらに来ました。眼鏡をかけていて如何にも出来る教師な感じです。


 しかし、私を一瞬見て鼻で笑われました。初対面の人相手に鼻で笑うなんて失礼な方です。そしてすぐさまメルファストさんの方を見ます。


 少しイラっときましたが、些細なことで怒るような人間ではないので気にしないことにしました。

 それと同時にこの場にもしバエルが居たらきっとこの方は大変な目に遭うのだろうな、と思いました。


『リリィ様を見て鼻で笑うなど無礼にも程があります。あの者には少しお仕置きが必要のようですね』


 あっ、見ていたみたいです……。

 いったい何処から……まあ、私の目を通して見ていたのでしょう。


 とりあえず今回は見逃す方向でお願いするように念話でバエルに頼んでおきました。バエルも私の言うことなので渋々了承してくれました。この方は私のおかげで命拾いしたも同然です。


 命の危険があったかもしれないなんてことを知りもしない男性はニコリと笑ってメルファストさんに話しかけました。


「これはこれはメルファスト学院長。学院長自らこちらに足を運んでいただけるとは。本日はどのようなご用件でしょうか?」

「ちょっと用事があったから寄っただけだよ。ところで"ワーナー"先生。いくら私が来たからって途中で試験官の仕事を投げ出すのは良くないよ」

「申し訳ございません。ですがこれ以上試験をする必要ないと判断したので学院長のもとに来た次第です。一応報告すると今回もこの学院の教師になれるほど優秀な人材はいませんでした。今試験を行っている者もです」


 よくもまあ本人や学院長の前でそんなこと言えますね。

 ワーナー先生、でしたか? 私が学院長なら即刻クビにするところです。


 しかし、教師が不足しているのにここで更に減らしては問題が増えるだけ。だからクビには出来ないというところですかね。


 でも、私が見る限りでは今試験を行っていた人も結構優秀な方だと思います。ワーナー先生がいなければ採用されてもおかしくない。

 ワーナー先生がいなかったら教師の不足問題も解決するのでは? それでもそうしないのには理由があると考えるべきでしょうか。    


「今回の試験も時間の無駄でしたね」

「まあそう言わずに。それに、彼らは私たちのために限りある時間を使って来て頂いたんだ。せっかく試験を受けに来て頂いたのに時間の無駄なんて言うのはあまりにも酷すぎるのではないかな?」

「そ、それは……」

「ワーナー先生の言い分もわかるよ。生徒の質を上げるにはまず教師の質を上げるべきだと君から何度も聞いているからね」

「そうです!! 教える立場の者が優秀でなければ良き生徒に育ちません。だから──」

「もういいよ。今は教員試験の時間。君と口論している時間の方が無駄だ。すぐに持ち場に戻りなさい」

「……ッ! わかりました……」


 ワーナー先生はこちらへ駆け足で来た時とは打って変わって肩を落としゆっくりと持ち場へ戻りました。

 

「済まないね。だがあまり責めてやらないでほしい。彼も学院のためを想ってああ言っているんだ」

「メルファストさんがそう仰るのなら……。でもあの態度だと他の教師たちから嫌われませんか? 私ならあまり関わりたくないと思います」

「リリィさんの言う通り彼を良く思わない教師の方が多い。けど、教師の腕は確かだ。彼は高等部1学年のAクラスの担任をしているんだが、ワーナー先生が担任になってからかなり実力が伸びている。Bクラス、Cクラスでも授業をする時があるが、生徒からも「生徒に対する態度は嫌いだが授業はわかりやすい」と報告を受けている。手放すには惜しい教師だよ」


 性格に難ありでも、一部の生徒や教師から評判が悪くても、使えるものは使うという感じですかね。

 ちなみに少し話は変わりますが、各学年のクラスの数をメルファストさんから聞きました。


 一番上がAクラスで一番下がEクラスだそうです。ということはワーナー先生はDクラスとEクラスには授業を行っていないということです。


 普通に差別は良くないです。教師であるなら平等に教えるのが当然でしょう。生徒の質を上げるなら下のクラスの生徒たちにも授業するべきです。

 でも、あの人の性格から察するに「時間の無駄」と考えているはず。メルファストさんとは違って、ついてこれない生徒は切り捨てるとも考えていそう。


 教師としてどうなのかと思いますが、そういうことなら私にも考えがあります。近いうちに必ず一泡吹かせてあげますよ。


 ワーナー先生があんなこと言ったせいで教員試験に来ていた受験者たちも自信を無くしてしまっています。

 ですが、そこはメルファストさんがカバーします。


 一人一人受験者の手を握って応援の言葉をかけて自信を取り戻させています。これこそ教師の鏡です。ワーナー先生にはメルファストさんの姿をしっかりと見ていただきたい。


 そう思ってワーナー先生の方を見ると受験者たちのことを睨んでいました。羨ましいのですかね。けど自業自得です。

 そして教員試験も順調に終わったところで私の出番です。


 全てが終了したので解散しそうな空気でしたがメルファストさんが全員を呼び止めます。


「ああ、少し待って欲しい。受験者の君たちもだ。君たちにとっても良い刺激になるだろうから」

「そういえば、そこの小娘は先程からメルファスト学院長の隣にいましたね。学院の生徒でも無さそうですし……」

「ワーナー先生。こちらの方を小娘呼ばわりするのは止めておいた方がいいですよ。おそらく私以上の魔術の使い手ですから」

「ご冗談を。この小娘がメルファスト学院長以上とは思えません」

「そう言っていられるのも今のうちですよ。まずは紹介しましょう。期限付きですがこちらは新しくシャルルフォーグ学院で教師をしていただくリリィ・オーランドさんです」

「初めまして、リリィ・オーランドです。この度はメルファストさん──ではなくてメルファスト学院長からお願いされて教師の件を引き受けました。これからお世話になるのでよろしくお願いします」

「め、メルファスト学院長から直々に、ということですか?」

「そうだよ。私の友人の伝手で紹介してもらった」


 それを聞くとワーナー先生が今度は私を睨みます。

 こうなることがわかっていたから止めましょうと言ったのに……。


 実は事前にメルファストさんから「挨拶の時はお願いされたことを強調するように」と言われていました。

 しかし特に深い理由はないようです。強いて言えばワーナー先生のやる気を今まで以上に高めるくらいでしょう。


 絶対メルファストさんは楽しんでいますよ。まあそのうちどういった経緯で来たのかバレると思うのでいいんですけどね。


「ま、まあいいです。しかし! そういうことならこの小娘はさぞ素晴らしい魔道士なのでしょうね! オーランドさんでしたか? 私がこの目であなたの魔術を見て差し上げましょう。そして、しょうもない魔術であればメルファスト学院長の紹介であっても学院の教師は辞めてもらいます!」


 何故この人は上から目線で、しかも勝手に仕切っているのでしょうか。普通はメルファストさんが仕切るところでしょう。

 メルファストさんを見ましたが、全然気にしていないようです。学院長なんですからそこは気にしてくださいよ……。


「学院長の私なら未だしもワーナー先生のような一般教師の独断でリリィさんを辞めさせることはできないけど、そこは一旦措いておいて。とりあえずリリィさんの魔術を見せてもらおうか」

「はい。ではどんな魔術を使えばいいですか?」

「うーん。まずは無難に【火炎球(ファイアボール)】辺りでいこうか」

「わかりました」


 皆さんに魔術を見せるために『月光の魔道神杖』を構えます。

 やはり両手に一本ずつ持っていないのは違和感がありますね。『宵闇の魔道神杖』の代わり、早く見つけないとなぁ……。

 教員試験で使っていたものを的にしていいと言われたのでそこへ目掛けて──


「【火炎球(ファイアボール)】!!」


 私が生み出した()()な炎の球体は的へ一直線に進みます。

 的に直撃した瞬間、演習場内に轟音が響きました。


 炎の球体は全てを燃やし尽くします。隣にある的も巻き込んでいますね。もう的の形など跡形もありません。


 さて、要望通り【火炎球(ファイアボール)】を撃ったわけですが皆さんの反応は──まあ当然のように言葉を失っています。

 とりあえずこのままでは演習場内が燃えてしまうかもしれないので適当に炎を消しておきます。


「なななななな、なんだその威力は! ふざけているのか!?」

「いや、ふざけているも何も私は普通に【火炎球(ファイアボール)】を撃ったつもりなんですが……」

「あれが【火炎球(ファイアボール)】だと!? ふざけるのも大概にしろ! あれはどう見ても──」

「まあまあワーナー先生、落ち着いてください。リリィさん、私は【火炎球(ファイアボール)】を見せてほしいと言ったんだけどね。まさか【爆衝獄炎弾(クリムゾン・ノヴァ)】が出てくるとは思わなかったよ。認められるために張り切ったのはわかるけど」

「いやだから私は本当に【火炎球(ファイアボール)】を撃っただけで【爆衝獄炎弾(クリムゾン・ノヴァ)】を撃ったわけではないです! それに、私が詠唱したの聞きましたよね?」

「確かに……言われてみれば……」


 それからどうにか説明して今のが【火炎球(ファイアボール)】だと納得してもらいました。

 受験者たちも驚かせてしまいました。ワーナー先生の言葉もそうでしたが、これを見て彼らの自信が無くなったらと考えると凄く申し訳ないです。


 でもそこは再びメルファストさんがカバーを。

 受験者たちには「彼女は規格外だから気にしなくていい。世の中にはあんな威力の魔術を使える人もいると知ってもらいたかっただけなんだ」と言っていました。


 何とか説得すると受験者たちは全員帰ってしまいました。

 これ以上自信を失いたくないからと思いましたが、どうやら違ったみたいです。


 今の【火炎球(ファイアボール)】を見て、こんなことしている場合ではないと修行しに行ったようです。メルファストさんの思惑通り良い刺激になったみたいなので良かったのでしょう。 


「さて、観客が減ってしまったが、もう少しリリィさんの魔術を見せてもらおう。次はそうだなぁ……炎繋がりで難易度は結構上がるけど【火炎虎(フレイムタイガー)】なんてどうだろうか」

「【火炎虎(フレイムタイガー)】……ですか?」

「そう。炎の虎を作り出し攻撃する魔術。リリィさんほどの魔道士なら難なく使えると思ったんだけど……」

「…………」


 隠しても仕方ないのでメルファストさんたちに正直に言います。

 私はその【火炎虎(フレイムタイガー)】という魔術を使えません。というかそんな魔術があることすら知りませんでした。


 魔術が使えないのは術式を知らないから。逆を言えば術式さえわかれば少し練習は必要ですけど使えると思います。多分その応用も。


 一応自分で術式を構築して発動させてみようとも考えましたが、動物の形を魔術で正確に造るのはあまりやったことがないのでほとんどの確率で失敗すると思います。大きいのは特に。もし仮に出来てもよくわからないものが生まれるでしょう。

 

「そうだったのか、無理を言って悪かったね」

「いえ、ご期待に沿えず申し訳ないです」

「誰にだって出来ないことはある。もちろん私にもだ。学院の授業では魔術も学べるからそこで学ぶといいさ」

「フッ。結局ただ威力が高いだけでしたか。威力を上げるなら誰だって出来る。まあ所詮はそんなものだろうと思いましたよ」


 せっかくいい感じにメルファストさんが言ってくれたのに全部台無しにしますね、このワーナー先生は。


 なんでも口で言うのは簡単です。じゃああなたは私の【火炎球(ファイアボール)】並みの威力は出せるんですか? もちろんその言い方なら出せますよね。今ここでやってみてくださいよ、と言いたいところですが、こんなことでムキになるほど子供ではありません。

 

「ワーナー先生はどんな魔術が見たいですか?」

「えっ?」

「だから、ワーナー先生は【火炎球(ファイアボール)】では納得できていないようなので他の魔術も見てもらおうかと。ああでも、動物系の魔術は()()出来ませんのでその辺はご理解の程よろしくお願いします。まあ流石にワーナー先生も使えないと言っているのにそれを要求するような大人げない人ではないですよね」


 えっ、ムキになっている?

 それは気のせいです。

 

「フンッ、口では何とでも言えますからね」

 

 その言葉そっくりそのまま返してあげますよ。


「いいでしょう。では複数の属性が合わさった魔術を見せてください。属性の数が多ければ多いほど難しいですが、メルファスト学院長直々に頼まれたあなたなら余裕でしょう。3つ以上の属性であれば認めてあげなくもないです」


 言質は取りましたので本気でやります。

 お題は複合魔術ですか。これはラッキーですね。


 昔、オルフェノク地下大迷宮にいた頃に遊び半分でやったことがあるので失敗はしません。使える属性が増えていますが問題ないでしょう。


「【多重属性星槍マルチエレメントランス】」


 私は10秒ほどかけて一本の槍を造りました。

 名前は適当ですが普通の槍ではありません。私が使える属性全てを合わせた槍です。 


 ただし一本造るのに時間がかかり、実戦では弱点である属性だけを突けばいいだけなので正直ここまで詰め込んでも意味がありません。


 だから利便性が皆無な遊び半分で造った魔術の槍がこんなところで役に立つとは思いもしませんでした。

 

「どうでしょうか。全部で10種類以上使っていますが、これで認めていただけるでしょうか?」

「ししし、仕方ない。み、認めてあげようじゃないか」

「ありがとうございます。それでは今後もよろしくお願いしますね」


 まずは私の勝利です。

 しかし、まだまだワーナー先生との勝負は終わらない気がしますよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★書籍版公式ページはこちら!! 書籍、電子書籍と共に12月9日発売予定!

奈落の底で生活して早三年、当時『白魔道士』だった私は『聖魔女』になっていた4
― 新着の感想 ―
「そういえば、そこの小娘は先程からメルファスト学院長の隣にいましたね。学院の生徒でも無さそうですし……」 学院長のお客に対しての言葉遣いがなっていない。こんな教師を雇っている時点で学院長の良識を疑う…
[良い点] 俗に言う これはメラゾーマじゃないメラだ! ですね
[一言] 教師のくせにケツの穴小っさ…。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ