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舞い落ちる天使-7

 二人の会話に何があったのか分からないが、確実に距離を縮めていた。自然な会話、自然な笑顔に良太達は安心してしまう。



「冬香ってファンタジー信じる派だったか?」



「いや、どちらかと言うと現実派だよな。まあ、現実派だからこそ見たものをそのまま受け入れるのだが」



 さすがにここまでくると男性陣も信じるしかなかった。



「って事は、やっぱり俺の恋を成就させる気なのかね?」



「そりゃ嘘を付く必要も無いし、そうなんじゃないのか?」



「そうか……って事はハーレムルートをリリスが開拓してくれるって事か?」



 冬矢の眉間のシワが深い。そして不快な気持ちにもなっている。



「あのな……別にお前が二股三股かけて刺されようが関係無いが……」



「刺されるの前提かよ!?」



「そんなに器用な事出来ねえだろお前は!King of 不器用は大人しく一人に絞れよ!」



 その一人の人物を冬矢は思い浮かべ、現実に視線を向ける。



「いやー、んな事言われてもなー、数打ちゃ当たる的な」



「当たんねえから心配するな」



「ハーレムでも無理って言うのか!?」



「ああ、無理だな」



 即答であった。



 冬矢は良太との長い付き合いの中で知っている。決してハーレムに身を埋めるような器用な真似が出来ない事を。結局、口だけな事を。



 別に見た目が極端に悪い訳じゃない。口下手な訳でもなく、人付き合いが悪い訳じゃない。性癖が多少特殊だが、まあそれも女性と付き合うに辺り問題にはならないだろう。



 だが、良太は今まで彼女が居ない。



 その理由すら冬矢は知っていた。



「お前、そろそろ現実に目を向けろよ。一目惚れは仕方ないとはいえ、大して会話もせずに勢いまかせで告白とか成功率皆無だぞ」



 好きになって直ぐ告白をしていたからだった。



「それは……だけど抑えられないじゃないか!この気持ちを!」



「キモい言い方してんじゃねえよ!そんなもんお前の気持ちの押し付けじゃねえか!誰がよく知らぬ男の告白なんて受けるかって!」



 そう、駆け引きなど良太には存在しなかった。猪突猛進、自分勝手、それが良太の告白であった。



 こんな忠告など冬矢は幾度となく良太にしている。その瞬間は良太も納得しているのだが、数日後には忘れる鳥頭っぷりだ。



「そろそろ鳥籠が必要か?」



「拉致監禁か!?」



 ガチで監禁した方が世の女性に不快な思いをさせないで済むのでは?と冬矢は思ってしまう。



「お前の人生だから結局はお前の好きなようにしろとしか言えないが……本気で彼女が欲しければ足元を見ろよ。意外とその辺に落ちてるかもしれんぞ」



 遠回しな言い方で最大のヒントを冬矢は出す。



「足元……って、リリスの事か!?さっきまで俺の足元にしがみついていた!俺に天界で奴隷になれと!?」



 冬矢の手が拳を握る。



 良太の顔面に真っ直ぐ伸ばせばどれだけ気分が晴れるだろうか?そんな気持ちを長年持ち続けていた冬矢は、今さらそんな肉体言語では話しはしなかった。



「くたばれ童貞!」



「えっ?ストレートな罵倒?」



 言葉で殴り倒していた。



 そんな二人をリリスと冬香は笑みを浮かべながら見守っている。



「一体、あの二人は何を話しているのやら?」



「仲がいいねー……って言うか仲良すぎない?まさかそういう関係!?」



「あはっ、それは無いよ」



「甘い!このジェンダーフリーな時代、何があってもおかしくない!いや、それも有り!」



「無しですよ」



 一人興奮しているリリスに対し冬香は子供がじゃれあうのを見守る母親の目だ。



「まさか!ちょっと待てよ!この二人が付き合っても、わたしのミッションはクリア?」



「リリスさん?何を考えて?」



 話の雲行きが怪しくなり、冬香も焦りを覚え出す。



「ちょっと待って冬香!今、確認するから」



「えっ?確認ってどこに?」



 冬香の言葉に返事を返す事なく、リリスはどこからかスマホのような物を取り出し、まるで電話をかけるように耳に当てる。



「……あー天使長、ちょっと確認したいのですが、かくかくしかじかで……」



 ドコに誰と通話しているのだろう?そんな疑問を抱く冬香だが、その答えを出すより嫌な予感しかしない事に心がざわついていた。



「はい……はい……ええ、何とも言えぬ空気が……はい……」



 冬香のざわつきは増すばかり。耐えれなくなってきた冬香は通話中のリリスに声をかける。



「あ、あの、リリスさん?」



 冬香の言葉にリリスは関係無いセリフを絶叫する。



「えっ!二階級特進!男同士なら二階級特進ですか!?本当ですか!?マジですか!?」



 さすがに絶叫されたからには良太も気付いてしまう。リリスの怪しげな作戦に。



「ちょっと待てーっ!何が二階級特進だ!?殉職以外で二階級特進など許さん!」



「別に良太に許してもらわんでもいいもん。ほら、いっちゃいな!今なら二人しか見てないから熱いベーゼを!」



「するかーっ!お前の出世の為に人生を捨ててたまるか!」



「あははっ、何をおっしゃいますか。新な門出に乾杯。それにこんなシチュエーションわたしも美味しくて一石二鳥?三鳥?」



「くそっ!こいつは恋の天使でもサキュバスでもねえ!ただの脳内腐った腐天使だーっ!」



「う腐腐腐っ」



「畜生!笑い方まで腐ってやがる!」

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