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舞い落ちる天使-5

「よし!良太を偶然見つけて利用しようとした事は理解した。たしかにチョロいくて利用しやすいのを見切ったのは、さすが天使だと認めよう」



「誰もチョロいとは言って無いぞ!」



「だがな、どんなにチョロかろうが良太は良太だ。コイツの恋を成就させるのは生半可では無い!いや、それも本来はチョロいのだが生半可では無いのだ!」



 そう言いながら冬矢は良太を指さす。



「チョロいのに生半可じゃない?はて?謎掛けかな?」



「それはおいおい、いや、直ぐに分かると思うが……ちなみに聞くが、コイツの恋を成就しなければ天界に戻れないのか?」



「そうだねーロックオンしちゃったから、今さら他の人に変えれないし、そうそう天使が相手をコロコロ変えちゃそれこそビッチだよね」



 意味が違うと思いつつ冬矢は頭を抱える。



「そうか……御愁傷様です」



「どういう意味!?」



「そのままの意味さ……キミが選んだ良太という男の恐ろしさを直ぐに知れるさ」



「まさか……レイプ魔?」



「お前はリアル犯罪者を選ぶような眼力なのかよ!」



 どこまで本気かわからない二人にもて遊ばれる良太であった。



「まあ、何にせよお前が本当の天使なら恋の成就なんて楽勝じゃねえか?よくある設定で恋のキューピッド的な弓矢でサクっと」



 漫画のような設定を軽々と口にする良太に対し、リリスは目線を反らしモジモジと身体を揺らしている。



「えぇ……それはまあ……」



 言い淀むリリスの異変に冬矢だけが疑問を抱く。



(まあ、確かにありがちな設定だけど……それなら、姿を見せずに矢で射れば……)



 などと考えていた。



 そんな考えがまとまる前に冬矢の後ろから声がかけられ、その声に反応し振り向く。



「ちょっと冬矢!コンビニ行くのにどれだけ時間掛かっているの?」



 ちょっと言葉尻はキツイが、声の質は穏やかで優しい声。そんな声を発した人物は……



「あぁ、冬香か?どうした?」



 冬香と呼ばれた女性は、膝下までのジーンズにTシャツというラフな格好だ。バッグなど持っておらず、特に用があって外にいるような感じは無い。



「どうしたじゃないでしょ。遅いから気になっただけよ」



 ツンデレではない、かと言ってデレている訳でもない声色で冬香は冬矢に近寄る。



 肩より少し下まで伸びたロングヘアーは夜風に揺られ少しだけなびいている。そんな髪に街灯が反射して光を帯びていた。



 それはリリスと正反対。



 だが、光を帯びた綺麗さはリリスと同じであった。



 スタスタと気取った歩き方ではなく自然に冬矢の横に立つ冬香。



 ちょうど冬香の歩いて来た方向からは、冬矢と重なって見えなくなっていた良太の姿に気付いてしまう。



「良、良ちゃん?」



「よう、冬香!」



 驚いている冬香を前に、良太はまるで昼間にすれ違った相手に対する挨拶のような軽い返事を返した。



「あれ?冬矢、コンビニに行っただけじゃなかったの?あれ?どうして良ちゃんと?」



「「偶然だ」」



 さすがは腐れ縁。見事にハモった。



「ぐ、偶然って、早く言ってよ!」



 何を早く言えばよいのだろう?そんな疑問と、どうやって早く言えばよいのだろう?という疑問が二人に浮かびあがる。



 驚いた冬香は良太に背を向け顔の辺りを手でサッサッと撫でている。どうやら前髪を気にしているようだ。



 前髪が決まったのか諦めたのかはわからないが、冬香は良太の方へ再び向き笑みを浮かべる。



「こんばんは、良ちゃん」



「おおぅ……」



 さっきの行動が何だったのかが気になり、何ともいえぬ返事を返していた。



「良ちゃん、こんな時間にどうしたの?冬矢に会いに来たってわけじゃ………………!?」



 爽やかな笑みを浮かべていた冬香の表情が一気に曇る。街灯の下とはいえ夜だから気付けないが、その顔色は真っ青になっていた。



「えっ?良ちゃん……その隣のいる……人……は?」



 良太は焦っているような冬香に対し、やはり軽々と言い放った。



「ん?あぁ、コイツ?リリスだって。天使らしい」



「いえ、奴隷です」



「どっ!?」



「キサマ……何って事を言いやがる!」



「あっ、いや、その方が面白いかなって」



「そんな芸人根性はいらん!見ろ!冬香が冬矢の後ろに逃げたじゃねえか!」



 なにやら冬香はリリスを警戒しているのか?向ける視線が疑惑に満ちている。



「また、その視線……慣れるとゾクゾクするわね」



「目覚めたかMに」



 それにしても冬香の疑惑の視線は異常にも思えた。いつの間にかリリスは翼を隠しており、冬香は気付いていないはず。



 髪の色と服装に違和感は感じるだろうが、腰を引きながら威嚇する子猫のようにも見える冬香の視線は良太からしたら、そっちの方が異常であった。



 良太が見てきた冬香のイメージは何事もそつなくこなし、男女共に敵を作らないイメージだ。温厚という言葉がとても似合う。



 なので、この露骨に疑惑に満ちた視線も警戒している姿も初めてみるし、迫力は欠片も無い。



「あのーわたし警戒されてるみたいだけど、その娘は一体誰なのかな?二人はよく知ってるみたいだけど」



 この四人の中で一番誰なのかわからない人物に言われてしまった。



「あぁ、こいつは俺の双子の妹だ」



 そう言われリリスは冬矢の後ろに隠れている冬香に近付き、ジロジロ品定めをするような視線を投げ掛ける。



 冬香は身動き出来ず、蛇に睨まれたカエル状態だ。目にはうっすらと涙が浮かんでいる。



 クルクルと冬香の回りを歩くリリスを二人は見つめるしか出来なかった。



 そして、リリスは冬香の後ろから首筋に手を這わせる。



「ひうっ!?」



「いやん!可愛い声がでたわ!」



「おい、痴女!おさわり禁止だ!」



 傍若無人なリリスの行動に良太はリリスから冬香を隠すように間に割り込む。



「ちょっとあんた!こんな美人が友達の妹なんて人生イージーモードじゃない!」



「お前の言ってる意味が何一つ理解できない!そして、イージーモードならお前が俺に付きまとう意味も無い!」



 正論を吐いた良太だが、リリスの耳には入っていないようだ。



「ふーん……確かに似てるわね。美男美女の双子なんてファンタジーね」



 そう言いながら交互に冬矢と冬香を見つめる。



 そして、良太を見た。



「ぷっ」



「えっ?人を見て笑うなんて失礼千万だな!」



 殺意を抱く気持ちより、精神ダメージが上回った良太であった。

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