スーパーヒーローの苦悩と困惑
第一話 大ピンチ?!大魔王、真の姿を現す
俺は今、後悔している。
俺は今、猛烈に後悔している。
あの時、あの時あんな事さえ言わなければ。
軽はずみなノリで異世界転生なんかしなければ。
あーほんとお空が綺麗だなー。
こんな筈じゃなかったんだけどなー。
ほんとなーなんでこんな事になっちゃったんだろうなー。
とりあえず、状況の把握と整理と現実逃避を兼ねて振り返ってみるかな。
なんやかんやで異世界転生した俺。
念願の異世界でひょんな事から大魔王討伐に向かう勇者に気にいられ同行する。
そして長き冒険の末に辿り着いた大魔王城、更なる激戦を経て大魔王と対峙する俺含む勇者一行。
「グハハハハ!よくぞこの大魔王であるワシをここまで追い詰めた!だが、それもここまでよ!」
なんやかんやで激戦の末に追い詰められた大魔王が笑いだす。
どうやら所謂あれ、第二形態ってやつに移行するつもりのようだ。
お約束とはいえ熱い展開に俺も気持ちが昂るのを抑えられない。
「くっ!気を付けて!凄い魔力が解放されようとしてるよ!」
「なんて凄まじい魔力波動?!こ、これが大魔王の、真の姿?!」
「どんな姿になろうと私達は負けない!みんなの希望を背負っている限り!」
うん、勇者達も気合十分だしいいねいいね。
これこそ最大の見せ場であり盛り上がるところだよね。
そして、俺がいよいよ大活躍するシーンでもある。
ようやく異世界転生して手に入れた力を発揮する初のシーンだよ。
これぞまさにザ・ピンチ!覚醒イベントとしては最高のシチュエーション。
「グハハハハハハ!ミヨ!ワイショウナニンゲンドモ!コレガワシノシンノスガタ!」
おお!大魔王がなんかバキバキ音たてながら巨大化して禍々しい怪物になっていく。
広い魔王城の中一杯に広がって、もう凄いことになっちゃってる。
「な、な、なんて大きさ?!こんな化け物を相手に、勝てるの?」
「弱気になっちゃダメ!決して諦めない!いつだってそうだったでしょ?」
「そうだよ!きっと勝てる!いや、勝たなきゃいけない!私達は!」
勇者達が懸命に大魔法とか合体魔法とか必殺技とか繰り出すけど効いてる様子はない。
真の姿を現した大魔王が大きすぎて強すぎてまったく歯が立たない状況なのだ。
「グハハハハハハハ!サアホロビヨ!オロカナニンゲンドモヨ!カアアアアアアアアアア!」
いいぞいいぞ。これこそ俺の求めたヒーローの前振り。
颯爽と現れて大魔王を成敗するヒーローに相応しい場面。
さて、そろそろ大ピンチだし覚醒しちゃおうかな。
「待てええええい!そうはさせぬぞ!悪の大魔王!」
「ヌウウウ?ナンダキサマハ?サッキカラスミッコデブツブツイッテタザコデハナイカ!キエロ!」
ふふふ、余裕ぶっていられるのも今の内ぞ、大魔王め!
これから俺というヒーローがお前をコテンパンに成敗してくれるわ!
「ダメ!君は戦闘要員じゃないんだから!早く逃げて!」
「危ない!ここはボク達に任せて逃げて!」
「必ず私達が勝つから、信じて!」
いや現に勇者達の攻撃まったく効いてないし。
ここは俺に任せておきなさい。
いざヒーロー参上仕る!
今こそ覚醒!出でよ変身アイテム!
さあ変身ベルト出てこい!
強くてカッコイイ仮面のヒーローに変身だ!
悪の大魔王をヒーローパワーでやっつけてやるぜ!
シュピイイイイイン!
ついに来た。
俺の手が光り、ペンライトのようなものが現れる。
これが俺のヒーロー変身アイテムか!
いよいよ変身だ!
ってあれ?
ベルトじゃないの?
これどう見てもベルトじゃないよね?
ペンライトぽい変身アイテムだよね?
これ使って変身するの?
え?まさかこれ?
もう光放っちゃってるけど?
やばくね?
「グオオオオ?ナ、ナンダコノヒカリハ?!オノレ!サセルカ!シネ!ナニモカモケシトベ!」
あ、これ変身ヒーローはヒーローでも。
違うやつ、俺が思ってたのと違うやつだ。
ピッカアアアアアアアアアア!
ゴゴゴゴゴ!
どんどん光が強くなって。
光に包まれた俺の体が、体が。
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!
大魔王城は轟音をたてて崩壊した。
大魔王の極限究極破壊魔法ではなく。
俺の変身巨大化で。
ちなみに大魔王の極限究極破壊魔法は俺にぽこっと当たった。
ちょっと痒かった。
「まじすみませんでした!ほんとすみませんでした!もう悪い事しません!誓います!ごめんなさい!」
俺の足元で大魔王が土下座して謝っている。
俺から見て子猫サイズの大魔王が泣きながら謝っている。
ええそう、俺の体は全長100m以上の巨大ヒーローになっていた。
「どうか!どうかお願いします!もう心の底から反省しました!完全敗北認めます!すみません!」
どうしてこうなった?
俺が望んだヒーローは光る巨人じゃなくて仮面の方だったのに。
ほんとどうしてこうなった?
「調子こいてすみませんでした!もう魔界の奥に籠って二度と人間界にちょっかいかけませんから!」
ほんとなぜ?
どうしてこうなった?
不本意な形で世界の危機を救ってしまった俺のヒーロー人生はどうなってしまうのか?
こんな世界観に全く合っていないヒーローになるとは夢にも思わなかった。
とりあえず勇者達は咄嗟に掌で包んで助けたけど。
俺は崩壊した大魔王城の瓦礫に座ってとにかく途方に暮れるのであった。
続く




