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プロローグ
彼の目を借りて見る外の世界。干渉のできない、わたしの未来の世界。
そんな世界に、また一つ、花が咲く。
これまで何度も見てきた、鮮やかで、妖艶なほどの────紅の花弁。
歴史を彩ってきたその命の欠片が、また一つ無情に舞う。
気付けばすぐ傍に彼がいた。
「これでよかったのか?」
問いに答えは返らない。ただ、握った剣には、結果の証が纏わりつき、足元に雫として垂れていた。
「本当にこれが、望みだったのか?」
わたしであったならば、或いは……。
そう考えて目を閉じる。
代わりの涙が、そこにいる少女の瞳から零れた。




