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アクトチューン
「その話本当?」
「えぇ。今回もまた、皇帝陛下からの勅命です。引き受けてもらえますか?」
「報酬は弾んでよ?」
「では成功報酬はぼくの方で交渉をしておきましょう」
「ん、お願い」
一介の旅人には分不相応な好待遇へ浸っていた所に来た依頼。今度のそれは、対象の捕縛らしい。
生け捕りが絶対条件。相手が相手故にあたしに話が回ってきた、と言うことだろう。
まぁ話を聞いた時点で引き受ける事は確定していたから別にいい。……と、そこで一つ思いつく。
「あ、そうだ。もしよかったら拘束後の身柄はあたしが貰っていい?」
「……持ち逃げだけはしないでくださるとありがたいのですが」
「しないって。色々話をしたいだけだから」
「それでしたら、恐らくは」
「はいはい。よろしくねっ」
これは俄然やる気が出てきた。お酒も進むってものだっ!
『酔い潰れるなよ?』
『こんなに楽しそうな話、飲まないでいられるかっ』
相棒の声に答えれば、彼は呆れたように沈黙を返すだけだった。




