アクトチューン
「なら彼らはユークレースに?」
「うん。引きとめるのも不自然かと思ってそのまま。……ダメだった?」
「いや、構わないが……。ふむ、と言う事は下手すると偶然とは言え巻き込んでしまったかも知れんな」
「あー……そう言えば始めるって言ってたね。でも大丈夫じゃない? 鍵は一緒だしお姫様もいる。それにほら、目もあるから」
「とは言え不本意な話には違いない。溝が出来てないことを祈るばかりだな」
相変わらず心配性な我らが旗印様は今日も無為に可能性を考える。全部結果論なのに。ここで悩むくらいなら話なんてしてないでその目で確かめてくればいいのではなかろうか?
「とりあえずそっちのことはわたくしにお任せを。《霧伏》の名にかけて、その時まで彼らの監視をするから」
「……前々から思っていたが、気に入ってるのか、その名前」
「どうでもいいよ、そんなことっ!」
どきりとして思わず声を荒げる。
……だってこの名前は、彼にもらったものだから。ようやく少しだけこっちを向いてくれた、その証だから。
だからわたくしはその思いを秘めたまま、誰よりも彼の事を想い成すのだ。それで彼が喜んで、ついでに世界が救われるのなら、それはきっといいことな筈だから。
「それよりも魔篇だよねっ? 今のところ追加情報はない。けど、新しい情報がないって事はそれだけ信憑性があるってことだと思うから。隠される前に早く手に入れてきて」
「ん、そうするよ。邪魔して悪かったね、エレイン」
「……邪魔じゃないし…………」
「……何か言ったかい?」
去り際に、労いか頭を軽く撫でた彼。その手のひらの大きさに、温かさに。小さく零せば、既に歩き出していた彼がこちらに振り返った。
「な、なんでもないっ! さっさと魔篇手に入れて…………終わったら、また来てくれる?」
「……そうだな。寄らせてもらうよ」
「……! うんっ! それじゃあその時は祝勝会だねっ!」
「楽しみにしてる」
優しい微笑みに胸の奥が温かくなる。……大丈夫、彼ならきっと、大丈夫。
…………よしっ。そうと決まればまた仕事だ。まだまだやるべき事はたくさんある。彼の目的が達せられるように、今はただ世界の裏側で霧に紛れ姿を伏せるだけだ。




