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ハッピーエンドの方法  作者: マツダチヨ
2/3

答え合わせの方法

2話目の投稿です。

読んでいただけると嬉しいです。

暗闇の中に目を覚ます。

物語の開幕直後、あまりにもあっけなく閉幕した筈の俺の人生はどうやら奇跡的に続くらしい。

ただ、誰かの人生という物語の脇役にすらなり切れない、

脇役以下の自分に起きた珍事、

正直なところ奇跡の無駄使いとしか言いようが無い。

生き永らえた安堵と、

生き永らえてしまった失望の入り混じった、

何とも絶妙な気持ちを抱きつつ身体を起こす。


そこで違和感に気付く。

痛みを全く感じ無いのだ。

いくら奇跡が起きたのだとしても、

車にぶつかって無傷な筈が無い。

混乱してきた頭を落ち着かせる為、

一つ深呼吸をし考える。


考えろ、

読み解け、

俺の唯一の取り柄は読み漁ってきた本から得た知識量だけなのだから。


平凡な主人公が事故に遭い死ぬ、

しかし生き返るなり転生するなりして不思議な力を得る物語なんて腐る程読んできたではないか。


…そもそも主人公って器じゃないじゃん、俺。


「そこまで慌て無いのですね、面白くない」


自慢の知識量によって自爆、

意気消沈する俺の後ろから声がかかる。

自分の世界に浸っていた中に現れた他人の存在に、

うわっと声を上げて振り返る。


「あ、その反応はすこし面白いです」


口角をすこし上げ、退屈そうに笑うのは丸眼鏡をかけた痩せぎすの男。

暗闇の中、

スポットライトが当たっているかのように痩せぎすの男と、男が座る椅子、テーブルが照らされている。


「あの、どちら様でしょうか…?」


正体不明の男に至極当たり前な質問を投げかける。

もちろん敬語は忘れ無い、

初対面の人間に対する礼儀くらいは持ち合わせている。


「おや、理解不能な状況下においても他者に対する礼儀は忘れ無い、感心します。」


男は感心するように軽く拍手をして見せ、

どこからかペンと手帳を取り出して何かを書き記す。


「そうそう、先程あなたは自分が生きていると思っていたようですが、残念ながら不正解です」


ペンを走らせていた手を止め、

思い出したように話し始める。

右手の人差し指を立て、

意味深な声色で、

すこしの間を空けて、

男は言う。


「あなたは死にました!」


「あ、やっぱりそうでしたか」


混乱の原因、違和感が解消されて落ち着きを取り戻す。


「え、それだけですか?」


すこし焦る男と


「いや、まあ死んで当然の状況でしたから」


落ち着いた表情の俺。


死を宣告して焦る者と、

死を宣告されて落ち着く者、

立場と様子が正反対の2人が対峙する、

奇妙な空気感。


「そ、そうですよね…」


立てた人差し指をそろそろと戻し、平静を装う男。

正直なところ、

この男の正体も何となく予想は着く。

ただでさえ非日常的な体験をしてる最中なのだから、

きっとこの男は"あのお方"とかの類なのだろう。

しかし、様式美として聞いておくべきである。

俺は男に再び問う。


「あなたは何者なんですか?」


問われた男は表情を作り直す。

充分な間を空けて答える。


「私は、神です」


「そうですよね」


「えっ…?」


再び奇妙な空気感が辺りを包む。

二度も見せ場を潰された神は動揺を隠せていない。


それにしても俺の身に起きた非日常的な出来事は、

案外と予想の範囲内で進むらしい。


まだハッピーエンドにしようと奮闘していませんね。

早く奮闘させるように頑張ります。

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