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結界のキセキ  作者: かぼちゃ
第一章.旅立ち、そして新天地
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第一話.旅立ち

次の朝、ランスは旅立った。村の人々はみなやさしく送り出してくれた。中には、涙を流すものまでいた。

ランスは、まずは村の裏にある山『マートン山』を越えることにした。この山には、夜に魔物モンスターが表れるらしい。


「マートン山には、魔物モンスターが出るらしいな。ちょっと怖いな…………。いや!こんなことで怖がってるようじゃ大魔王は倒せない!気を引き閉めるんだ!」


そして、ランスは登山を開始した。うっそうと茂る密林が不気味だった。

近くでガサガサという音がした。そして、茂みからなにかが飛び出す。ランスは、驚き声をあげる。


「ぎゃあ!って、なんだヘレナか。ところでなんでこんなところにいるんだ?」


「決まってるでしょ?ランスの計画を止めに来たのよ。さっさと帰りましょ。」


「ヘレナ、僕はもう決めたんだ。絶対に敵討ちを成功させるまで帰る気はない。」


「帰らないなら私も連れていって!私も『七人の賢者』捜しに協力させて。」


これには驚いた。嘘だろうかとは思ったが、ヘレナは本気なのかもしれない。しかし、ランスはヘレナを巻き込みたくはなかった。


「ダメだ。君まで危険な目に遭わすわけにはいかない。僕一人で『七人の賢者』の子孫を捜す。だから、帰るんだ。」


「ふっふーん。ランスは、おバカさんね。忘れたの?」


ヘレナは、先が緩くカールした茶色い髪をくるくるといじりながら得意そうに言う。


「僕は君にバカ呼ばわりされたくはない。それに、何も忘れちゃいないよ。」


「忘れたのね?私が『七人の賢者』の一人メルシャインの血を引いていることを。」


「でも、まだまだ駆け出し魔法使いだろ。それに、結界フォース組むの下手くそなくせに。」


「下手くそなんかじゃないもん!組むのが遅いだけだもん!ランスなんか組もうともしないくせに。」


ヘレナは、顔を真っ赤に染め、ほっぺたを膨らませる。なかなか面白い顔だ。


「僕たち剣士には、魔法は必要ない。だから、結界フォースを組む必要はない。」


「なによ!剣士剣士って、血族のことしか考えらんないの?バカバカバカバカ!」


ヘレナの頬がより膨らんでいく。まるで、頬袋にドングリを詰め込みすぎたリスのようだ。


「バカだと!ヘレナ、君は魔法を使えるのかい?結界フォースを組めても魔法を使わなきゃ意味無いよ。」


「使えるもん!」


「どんな魔法?」


「……………ミルフレイム。」


ヘレナは、少しうつむきながらぼそりと言う。


「ミルフレイムって、赤の結界(レッドフォース)の初級魔法だろ。やっぱり帰るんだ。他のメルシャインの子孫なら捜し出して見せる。」


「なによ!少しは年上を頼ってもいいのよ?」


「年上っていっても一ヶ月だろ。君みたいなおっちょこちょいで魔法もあまり使えない人に頼るより一人の方が安心できるよ。」


「失礼な!あなたの剣術だって言うほど上手くないでしょ!」


またも、リスを連想させる顔でヘレナは言う。ランスは、自分の剣術にはそれなりに自信はある。


「いや、君のよわっちい魔法よりよっぽど信頼できるよ。だから、君は村に帰るべきだ。僕についてきても、危ないだけだよ。」


「よわっちくても魔法は魔法だもん!絶対についていくもん!一人で旅するより、二人の方がいいでしょ?」


「いや、むしろ一人の方が目的に集中できるよ。」


すると、ヘレナはみるみる泣き出しそうな顔になり、


「なに?私が邪魔なの?私なんて必要ないの?」


「いや、別にそこまでは言ってないよ。ただ、危ないから巻き込みたくないって言ってるだけだよ。」


「ひどい!ひどすぎる!ひどいよ…………。」


ヘレナは走り去ってしまった。しかし、村の方ではなく、山の奥の方へだ。これはまずいことになった。

なにしろ、このマートン山は『魔の山』と呼ばれるほど危険なところだ。万が一崖から落ちたりしたら危険だ。

ランスは、必死にヘレナを捜す。

ようやくヘレナを見つけたときには、すでに崖のすぐそばだった。


「ヘレナ!落ちるよ!危ないから、早くこっちに来るんだ!」


「ランス………。きゃぁぁぁぁぁ!」


ヘレナは、バランスを崩し、崖へと落ちそうになる。ランスは、ヘレナの片腕をしっかりと握る。


「手を離して!あなたまで落っこちちゃう!」


「離してたまるか!僕は、君を村に帰らせなきゃならない!だから、君を助ける!」


少しずつ、少しずつヘレナの体が持ち上がっていく。しかし、ランスの足場は崩れ落ち、ランスとヘレナは、崖の下へと落ちていく。

ランスは、ヘレナをかばうようにしながら落ちていく。途中、何度も何度も木に引っ掛かり、体のあちこちが切り傷だらけだ。


落ちたのは水の中だった。正確には池の中だが。

ランスは、持ち前の身体能力で泳ぐことができたが、切り傷に水が染みてすごく痛い。

問題なのは、ヘレナが溺れかけていることだ。ランスは、泳いで救出し、対岸へと登る。


「ペッぺっ!水が…………。わ!ランス、あなた傷だらけよ!しかも、服もあっちこっち破けてるし。ちょっと待って、薬草があれば塗り薬を作れるから。」


ヘレナは、薬草を探し始めた。薬草というものはそんなに都合良く生えているものなのだろうか?


「あった!ランス、早く治るように薬を塗ってあげるから少し待ってね。」


ヘレナは、必要な材料とおぼしき葉っぱや木の実を石で磨り潰していく。そうすると、段々ねとねとした緑色の薬が完成した。


「よぅし、今塗ってあげるからね。動かないでよ。」


「ヘレナって薬を作れたのか。僕は父さんに教えてもらったことで雄一理解できなかったよ。イテテ。」


「まあ、ざっとこんなもんよ!へっぐぢ!」


「そうか、池に落ちたからびちょびちょなのか。風邪を引くといけないよ?ほら、これを羽織って。」


ランスは、先程の落下でズタズタになってしまった上着を脱いで、ヘレナに渡す。


「え?」


「ごめんね。あいにくさっき落ちたせいでズタズタになってるけど、これで我慢してね。」


「ありがと。」


「どういたしまして。それと、こんなとこまで来たら村まで戻るのは難しいと思う。だから、君も僕の旅についてきてもいいよ。薬を作れるなら助かるしね。それに、一人じゃ寂しいからね。」


そうランスが言うと、ヘレナはにこにこと笑いながら、


「ふふふっ。あなたでも寂しいと思うときがあるのね。それなら、一緒にいきましょ。」


「ああ。よろしくな。さてと、また山道を行きますか。」


そして、ランスとヘレナは再び歩き出した。まだ見ぬ町へ向けて。


段々と、太陽が傾き空は橙色に染まっていく。そろそろ足も疲れてきた。


「ヘレナ。今日はもう休もう。疲れただろ?食糧は少しあるから平気さ。」


ランスは、隣を歩くヘレナに聞く。


「ダメよ!魔物が出るならさっさと町に行く方がいいでしょ!だって怖いもの。」


ヘレナは不安そうな顔で言う。確かに魔物が寝てる間に表れれば勝ち目はない。かと言って無理しても、疲れて余計危険だ。


「無理は禁物だよ。今日は休んでまた明日にしよう。」


「そこまで言うなら……………。」


二人は、ランスの持ってきた食糧を少し食べて木にもたれて眠ることにした。



月が空の真ん中に来る頃、ランスは目を覚ます。近くの草むらが、がさがさと揺れる。今度はヘレナではない。

暗闇に隠れ相手の姿がよく見えない。しかし、うっすらと影は見える。その影は、ヘレナの方へ向かっていた。


「起きろ!ヘレナ!何かいる。」


「何かってなによ。起こさないでよ。眠いんだから。」


その影は狼のようなものだった。それは、ヘレナに飛びかかった。


「やめろ!この!」


ランスは、剣を抜き影に切りかかる。しかし、暗闇のせいで狙いが定まらない。ランスが苦戦していると、前に暗闇の中でも認識できるような金色になびく絹の布のような髪を持つ人が表れる。


閃光フラッシュ!」


その人物はあっという間に結界を構築し、魔法を使う。まばゆい光を放つ魔法だ。影は驚いたのか、去っていった。

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