静かなる銀河
静かなる宇宙
わずかな期間、小さな空間で騒乱が起こっても、あっという間の出来事に片づけられるほどに長い時間、
静寂に包まれてきた世界
その世界で再び、やはり小さな空間でわずかに騒がしい時が来ようとしていた。
西暦2708年 太陽系外監視団 冥王星本部
「本部、こちらカイパー3。定期連絡です。担当地区に異常なし。」
「本部、こちらカイパー7。定期連絡です。担当地区に異常なし。」
太陽系外からの脅威を監視している冥王星本部に、太陽系の外郭をなす小惑星帯カイパーベルトの10個
の惑星に置かれた監視基地より次々と「異常なし」の連絡が入ってきた。
「指令、現在のところ全て異常なしです。」
通信士官が監視団本部基地の中央司令室の一番後方に陣取る監視団司令のスティーブ・コバック准将に報告を入れた。
「よし、わかった。そのまま、宇宙軍総司令部に報告を入れておいてくれ。」
コバック准将は、大きなクッションのきいた指令官チェアーに背中をゆっくりと持たれかけさせて指示を送った。
西暦2150年に始まった国際連合の主導による宇宙開発は、地球の全人口増ばかりが理由ではなく食糧難や資源の枯渇問題なども絡み、急激に太陽系内を侵食していったのだが、その裏には科学の発展による移動手段の発達もあった。
地球人にとっては他の星系への野心はなく、太陽系内を最大活動範囲として系外への進出は行っていなかったが、時々、確認報告が入る未確認飛行物体の存在を無視するわけにもいかず、宇宙軍を創設し万が一のことに備えていた。
宇宙軍の創設は太陽系開拓が始まった2150年より60年後の2210年で、火星のコロニー開拓の際に発見された「火星鉱石:マーズライト」は、地球の鉄鉱石の数十倍も耐久力があり、しかし加工性に優れているために、特に宇宙開発には欠かせない宇宙艦船用に多く活用され、それに伴い宇宙軍の軍備に活かされていった。
宇宙軍の総本部は地球の国際連合本部内にあるのだが、総司令部は宇宙軍総司令官山本健太元帥の下、陸・海・空軍本部のすべてが月に置かれていた。
宇宙軍艦隊は海のものと違い艦船がかなりの大型となるために、地上に停泊するのは不可能に近い。軍関係者が地球に戻る場合、月の引力外にある国際宇宙ステーションに艦船が接舷し宇宙ステーションに乗り移り、そこから空間シャトルで月に降り立ち月の空港より地球に向かうのが一般的である。
陸上部隊は、揚陸舟艇を使用して宇宙空間に出て宇宙艦船に収納されるのである。
月の総司令部に対し火星には火星駐屯軍が駐留しているが、それも火星の本星に駐留しているわけではなく、衛星のフォボスに駐屯司令部を置くとともに、もう一つの衛星ダイモスには軍専用の軍需品製造設備の工場を置いてある。また、艦船の簡単な修繕やメンテナンス及び物資の補給は月の宇宙ステーションで行うが、大きな改造や修繕は火星と木星の間にある小惑星帯の5か所に設置された工場や火星の衛星ダイモスで行われる。また、この5か所と別に15か所の合計20か所の惑星には、カイパーベルトと同じように小惑星帯外監視基地が設置されているので、これらの諸設備が揃えられていることもあり、火星と小惑星帯は地球防衛の最終ラインと位置付けられている。
冥王星基地には、戦艦武蔵とカムチャツカの2隻、巡洋艦4隻、駆逐艦3隻、ミサイル駆逐艦3隻、フリゲート艦9隻、潜水母艦2隻と潜水艦4隻が控えると共に本部守備隊として陸軍一個師団と空軍一個連隊の80機が駐留し、各基地には巡洋艦1隻、駆逐艦1隻、ミサイル駆逐艦1隻、フリゲート艦2隻、水雷艇6艇を配置し、また、基地守備隊として陸軍一個大隊と空軍一個小隊等を置いて警備についていた。
突然、けたたましいサイレンとともに赤いシグナルが点滅して通信スピーカーより連絡が入ってきた。サイレンが鳴り赤いシグナルが点滅するのは危機発生緊急連絡しかなく、冥王星基地ができた2420年以来、288年間で初めてのことである。
「カイパー8より緊急連絡。未確認飛行物体がカイパーベルト防衛線に接近中。戦艦級1隻、巡洋艦級1隻、駆逐艦級1隻。距離はレーダー範囲一杯の10,000宇宙キロ。」
カイパー8守備隊長の長内昇陸軍中佐より連絡が入った。
戦艦級などというのは、未確認飛行物体の大きさを地球宇宙軍の艦船と比較して表している。
本部司令室に緊張が走った。
「カイパー8、監視テレビ衛星を発射して相手を視認するとともに、カイパー基地の守備戦隊を発進体制において待機させよ。」と、通信士官を通じてコバックが指示を出した。
その時、副司令官のアレクセイ・ワシリエフ大佐が入ってきた。
「指令、緊急連絡が入ったようですね。」
「あぁ、カイパー8でUFO3隻の接近を確認したようだ。ビデオ衛星を発進させて確認できるように手配した。」緊張した声でコバックが答えた。
「月にも連絡しておきましょう。」
「全通信内容をパラで送るようにしておいてくれ」
「了解しました。」
その時、宇宙軍総司令部山本元帥からの連絡が入った。
「コバック准将。カイパー8からの緊急連絡を確認した。現状を報告したまえ。」
コバックは現状を説明し、ビデオ衛星を発信しその映像が入り次第、総司令部にも映像が流れるよう手配していることを伝えた。
「取り急ぎ、土方利光中将を司令官として火星より戦艦大和を旗艦とし空母2隻を含む艦隊を準備出来次第、そちらに向かわせる。戦闘に入るにもよく見極めたうえで入るようにな。連絡を密にしてくれ。」山本が言った。
「さすがに山本元帥ですね。細かい指示なしに一任していただけたようです。何かあった時に総司令部の指示を待っていたら手遅れになってしまうことをよくお分かりになっていらっしゃる。」ワシリエフ大佐が頼もしそうに言った。
「その代りに責任は重大だ。基地や監視団本部全員の命を預かることになる。難しい判断をすることになる。」コバックは緊張の面持ちで言った。
「こちらカイパー8。ビデオ映像が入りました。見てください。」長内中佐からの連絡である。
「よし、モニターに映し出してくれ」ワシリエフが指示を出した。
その映像を見て全員が息をのんだ。
「なんだ、これは。」
映像には白のような色を基調にした戦艦級の宇宙船と黒のような色を基調にした巡洋艦級が、停止した状態の至近距離の間で艦砲を打ち合っており、白を基調とした駆逐艦級は戦艦級に曳航されながら時々、魚雷を発射する程度でそれも1/3程度が当たるような状態であり、ただ引っ張られている状態と言っても良かった。戦艦級はかなり損傷しているようにみられ、当初は若干だが戦艦級が不利な状況であったが、そこは戦艦級である、見ているうちに火力の差が出てきて巡洋艦級を圧倒しだした。
とうとう、巡洋艦が戦艦から離れ逃走に移りだしたが、戦艦は追うこともせずにゆっくりとカイパーベルト方向へと動き出した。
固唾をのんで状況を見ていた監視団員達は、まずは戦闘状況が終わりそうなことに「ホッ」とした表情になった。
と、同時に指令本部内が大騒ぎになった。
「今のはなんだ?白色のUFOと黒色のUFOとの戦闘だったな。」
「白が勝ったようだが、どちらも最後は艦砲が一基しか動いていなかったようだ」
「後ろの駆逐艦級はただ引っ張られていたみたいだが、動けないのだろうか。」
疑問ばかりだったが、こちらに近づいてきているのは間違いない。
「カイパー8、これから監視団本部よりUFO側に通信を試みる。戦闘態勢を整えて、いつでも飛び出せるようにしておいてくれ。」コバックがカイパー8に連絡をした。
「了解しました。こちらはいつでも発進できます。」回答が返ってくると、「通信士官。UFOに向け通信回路を開け。」とコバックが指示をした。
「通信回路を開きました。言語は全地球語にて翻訳されます。」
うなずいたコバックは一息おいてから話しだした。
「こちらは地球の太陽系外監視団本部。貴艦は現在、地球の管理星域に近づきつつあり、領域侵犯による地球の脅威と捉えられている。速やかに停船して貴艦の所属と接近の目的を通知せよ。なお、先ほどの退去した艦との戦闘行為を確認しており、貴艦が戦闘艦であることは承知しているので、貴艦の返答や今後の行動状況によっては当方の対処が貴艦の希望に合致しないものになる可能性があるので注意されたい。」
UFOがゆっくりと停船した。
「通じたか?」司令室内に再び、疑問符が渦巻いた。
「こちらはムーパ星の者で私は名前をモンターと申す。我々は地球より銀河系の中心部に近いアルカイオス系の第六惑星サンムーパから来た。君たちから言わせるとサンムーパ星軍モンター少将ということになるだろう。我々は地球人と戦闘をする為にここに来たのではない。確認をされておられるだろうが我々の艦は戦闘で傷ついた
艦を曳航しているのだが、その艦を一時、その衛星帯の中に預けておきたいと考えている。もちろん乗務員は連れて帰る。早いうちに輸送船を派遣し回収するつもりである。地球人に修理を頼むつもりはない。ただ、惑星帯の中の一つに繋げておくだけである。既に戦闘できる状況にはないくらいに傷ついており、航行さえも困難な状況であるが、曳航している艦さえも大きく傷ついており曳航して帰れる距離ではないために、ここに安置してゆきたいと考えたわけである。了解をいただきたい。」
回答の通信が入ったが、また、司令室内が、いや、カイパー全守備基地も地球軍総司令部も大騒ぎになった。
コバックはかろうじて気を取り直して「モンター少将、私は地球の宇宙軍、系外監視団司令官のスティーブ・コバック准将である。その英語はどこで教育されたのか?」と聞いた。
「我々は数千年の昔から地球へ訪問していたが、君たちを驚かせるわけにはいかないので、秘密裏に地球を観察していた。英語は地球で一番ポピュラーな言語だと認識している。その内に使う機会がある可能性もあったので言語変換装置に記憶させてあり、その装置を通じて話しているのだ。ちなみに我々は地球人と同じ体型で2本足歩行であり、8本足や昆虫ではないのであしからず。」笑い声に似た声を発しながら答えた。
太陽系内の宇宙軍関係施設のすべてが大騒ぎになった。
「地球人には我々の存在が明らかになったので、改めて訪問団を結成して挨拶に来ることになるだろう。今は、当方の依頼を受けてほしいと思う。地球を侵略するつもりなら、数千年前のまだ地球人が粗末な武器しか待っていなかった時代にできた。」
ここで、最初のショックから立ち直った山本元帥が通信に入ってきた。
「私は地球軍総司令長官の山本健太と申す。まず、貴殿からの依頼の件だが、24時間の時間をもらえるだろうか。地球全体の問題となるので、我々軍部だけの判断で受けられる話ではないのだ。そこは理解をいただきたいが、決して悪いようにはしない。」と、回答するとともに「ところで質問があるのだが、貴殿たちが戦っていた相手は、どういった関係の者たちなのだ?また、我々に対する今後の脅威となるのか。そのあたりをお聞きしたいのだが。」と質問をした。
「そうだな。地球人は「政治家」と言う人種がいて、軍部はその人種の指示を得なければならないのであったな。まぁ、我々も同じようなものだが、いいだろう。待たせてもらおう。さて、我々と戦闘をしていたもの達の件だが、彼らはガリアス星人と名乗っている。我々サンムーパ星系に比較的近いステネロス星系の第三惑星ガリアスにいるもの達で、非常に戦闘的な人種である。彼らは我々や地球人と違い大きな野心を持っており、既に近くの星系の2つの惑星を植民地にしてガリアス星の「食い物」にしている。科学技術能力は我々より劣るのだが、人種が戦闘的であるために戦闘道具は我々並みの科学技術まで来ている。まぁ、地球人もガリアス星人ほどではないが戦闘的人種であるから、戦闘道具もレベルが同じであることを付け加えておこう。ただし、宇宙空間の移動はガリアス星人も地球人も我々より劣っているがね。話が逸れたが、我々にも植民地はあるのだが、地球における火星のような星であり、決して元の住民を排除して侵略したものではないのだが、ガリアス星人は2つ目の惑星を占領したのちに、この我々の植民地惑星ナムトベに侵略してきたのだ。地球時間で言う「2年」程度の惑星間戦争で撃退したのだが、我々もアルカイオス系星域以外での活動は活発にやっているので、再び、我々の植民地星サノスアリカフで戦争を始めてしまったのだ。」と答えてきた。
「では、今後、太陽系にも侵略の手を伸ばしてくる可能性はあるのか?」山本がきいた。
「地球の存在を知れば、その可能性は排除できないだろう。いずれにせよ、我々との戦闘がこの星域で行われたことが分かっているので、彼らが我々を追って再びやってくるのは間違いないだろう。ひょっとしたら、艦隊レベルで戦闘態勢を整えてね。」
「そうなると、君たちの艦船を預かろうが預かるまいが、いずれここにきて我々の存在が分かれば侵略の手を伸ばしてくるわけだな。」山本は考えながら話した。
「で、君たちはなぜ、ここに来たのだ?先の話では我々の星域であるカイパーベルト帯の内の一つの衛星に貴星の艦船を一時、預けてゆくような話であったが、我々に助けを求めるためか?」
「いや、最初は戦闘で損傷した艦船を我々の植民地星に曳航しようとしたのだ。我々は君たちと同じ通常の航法とワープ航法(1~10の段階がある)以外に、まだ、君たちは開発していないハイパーワープ航法という瞬間的にワープの5~8倍の速度で移動する航法を持っているのだが、そのハイパーワープに入る瞬間にガリアス星人の砲撃を受けた為に移動場所がずれてしまったのだ。ハイパーワープ航法は瞬間移動のような航法なので、事前にコースとゴールを設定しておくこととそのコース上に惑星などの障害がないことが条件となるのだが、わずかな計算のズレでとんでもない所に飛んでしまう可能性があるのだ。ガリアス星人が一緒に来たのは、我々の移動時にそのパワーに巻き込まれて一緒に移動してきたか、航跡を追ってきたのだろう。我々がこの空間に着くのとほぼ同時に攻撃してきたために、我々の反撃が遅れてしまい損害が大きくなってしまったので、損傷していた小型艦のハイパーワープが使えなくなってしまった。」
「ふむ。分かった。では、こちらの結果が出るまで、冥王星域の責任者であるコバック准将と相談のうえで停泊場所を決めて待っていてくれ。」山本はうなずきながら話した。
「コバック准将。土方中将が間もなく到着するだろう。これまでの話の内容は土方中将も確認しているだろうが、よく打ち合わせを行っておいてくれ。サンムーパ星人のことはともかく、問題はガリアス星人の件だ。明日になるが、総本部と連絡を取り早急に今後の事とガリア星人の件を詰めていかなければならないな。私の判断では「傷ついたものを助けるのは人間として当然のことである」が、ガリアス星人にその理屈が通るか、が問題だな。」山本は考え込むようにして机に向かった。
続けてコバック准将がムーパ星人に呼びかけた。
「こちらは地球軍冥王星基地だ、モンター少将、そちらから一番近い我々の基地を確認できるか?」
「できている。君たちの言う「カイパー8基地」だな。」即座に返信が来た。
「そうだ。そこの基地の付近に停泊できるか?できれば、我々の監視下に居ていただきたいのだが。」
「わかった。君たちの言いたいことは理解できるので、言うとおりにしよう。我々にはビームアンカーという惑星に艦船を繋いでおく装置がある。それを使用させてもらうが問題はないか。」と、問い合わせてきた。
「ビームアンカーなら我々も使用しているので、問題はない。間もなく、我々の増援艦隊も到着し、監視行動に入ることになると思うが、貴星に疑わしい行動が確認できなければ、我々から攻撃をすることはないので安心されたい。」
「了解した。先ほども言ったが、我々は長く君たちを観察してきており、君達は戦闘的だが、決してガリアス星人のような私利私欲で戦闘をするような人種でないことは解っている。安心して停泊させてもらう。また、何かあれば必ず連絡をするので、君たちも安心してくれたまえ。」ここで一度、通信は切れた。
モニターでは、サンムーパ艦隊がゆっくりと、進みだすのが確認できた。
「長内中佐を出してくれ」コバックは通信士官に声をかけた。
「カイパー8の長内です。」長内は即座に出てきた。
「長内中佐。聞いていたな。」
「はい、山本元帥とのやり取りからすべて聞いておりました。」
「うん。では、サンムーパ艦隊を向かいいれる準備だが、修理や機材の提供は必要ないので、アンカービームの設置場所を指定してやってくれ。艦船の監視は土方中将の到着まで水雷艇2隻でやればいいだろう。こちらからは特に監視する戦隊は派遣しないが、系外監視を特に強化せよ。ガリアス星人の出現が考えられるからな。我々以上に戦闘的なら、サンムーパ星人の味方である、と勝手に判断されて攻撃されるかもしれない。現在のところはあくまでも中立であり、求められればガリアス星人でも我々が退避程度は認める事を認識させる必要がある。」
サンムーパ星の艦船がカイパー8に近づいてきた。
長内中佐はモニターからその様子を見ていたが、サンムーパ星艦船が2隻ともアンカービームを発射し、指定場所に打ち込まれたのを確認すると、サンムーパ星艦船向けに通信を行った。
「こちらカイパー8基地の長内中佐です。ムーパ星モンター少将、応答願います。」
「こちらサンムーパ星モンターだ。長内中佐、暫く厄介になるがよろしく頼む。乗員は当巡洋艦と駆逐艦だ。我々は、地球からの連絡があるまでは艦内や艦上の消火活動以外は修理も何もせずに艦内に留まっておく。了解を得られれば修繕をするつもりだが、君たちの手間をかけるつもりはないので心配はいらない。」
サンムーパ星の艦船は二隻ならんで宇宙空間に停止しているが、艦隊から出ている煙以外の異常はなさそうで、消火活動も少人数が迅速に行っている以外は他に人が出てくるなどの動きもなかった。
地球では、月基地の山本元帥より地球防衛大臣のダグラス・アイゼンハワーを通じてリチャード・マクファーデン大統領に連絡が入り緊急の閣僚会議が招集された。
しかし、閣僚会議はアイゼンハワー地球防衛大臣の独壇場であり、アイゼンハワーの提案にマクファーデン大統領が許可を与える、といった形の形式だけの会議であった。最初はざわついていた会議も、新たに冥王星から送られてきたサンムーパ星艦船の映像を見たアイゼンハワーを含む全閣僚たちは息をのんだまま一言も発せず、オブザーバーとしてビデオ出席した山本の巧みな説明がアイゼンハワーを後押しすることになった。
第一に宇宙間戦争に対する意見が他の閣僚にあるわけもなく、可能な限り平和的に対処しようとする意見の軍部に異論の出るはずもなかったうえに、大統領には山本元帥とアイゼンハワー防衛大臣からの根回しが十分にされており、その意見に賛成の立場から短時間での結論を見ることとなった。
「問題はマスコミ対策ですが、火星防衛線の外にはマスコミを含めて一般市民の興味をそそるようなことはありませんので、暫くは内密で進めようと思います。」と、アイゼンハワーはマクファーデンに具申した。
「いいでしょう。そのサンムーパ星の親善訪問団が来ることになれば、隠し通すことはできませんので、タイミングを見計らって市民にはこれまでの経緯を含めて説明するようにしましょう。しかし、要らぬパニックを起こすことだけは避けなければいけませんので、それまではわれわれ閣僚と宇宙軍の関係部署のみで、基本的には宇宙軍とともに解決の道を探りましょう。現在の心配の種はガリアス星人の動向次第というところで、サンムーパ星人については安心できる状態であるということですね。」とマクファーレンが尋ねると、アイゼンハワーは「そうです。サンムーパ星人はこちらの意向を確認しながら動いておりますし、かなり損傷した艦船できましたので、攻撃を仕掛けてくるとも思えない状態である、との事です。ですから、ことが大きく動くとすればガリアス星人が再来してくることでしょうが、ガリアス星人もいきなりこちらに攻撃をしてくるかはわかりません。サンムーパ星人はその可能性が高いように言っていますが、我々とガリアス星人を近づけたくないから言った詭弁である可能性も考慮しておく必要があります。」
「まぁ、疑いだしたら切りがないが、数千年前から地球を観察していた、とか、いつでも占領できた、等と言っているところを見ると、占領や攻撃をしなかったサンムーパ星人は確かに信用できるようにも思えます。仮にガリアス星人が攻撃を仕掛けてきても戦闘能力が同じ程度なら場合によっては増援でも撃退できるでしょうし、いずれにせよ、警戒を怠らずに進めてください。」
会議はアイゼンハワー大臣と山本元帥の「サンムーパ星人の依頼を断らずにカイパーベルトに滞在させて調査をすると同時に、多少の危険は伴うがガリアス星人の動向を確認する」という思惑通りに終わった。




