■ 第一部 あらすじ・登場人物・用語
ここは第一部流離う翼編のネタバレを含みます。
第一部を読まれてから、読まれることををお勧めします。
【第一部 流離う翼編 あらすじ】
東方の楽園は、遥か昔、人間たちによって起こされた醜悪なる千年戦争に、怒った白き神イヌス・ニルヴァーナが遣わした天使によって下された粛清・終焉の宣告により、生命の育たぬ不浄の大地に覆われた世界。
終焉の宣告が下って千年の時が流れても神の怒りは収まらず、不浄の大地に生きる人々はアーシアンと呼ばれ、千年戦争をおこした大罪人として天使たちに支配され続け、不浄の大地にて常に死と隣り合わせの毎日を送っていた。
アーシアンの中で流離人と呼ばれる今はもう数少ない、不浄の大地の死の大地を旅する一族の生き残りヒロは、3年前ヒロと出会う以前のことは覚えていないという同行者エヴァと共に、一族の掟に従い不浄の大地を、危険な目にあいながらも、何処とも目的を定めずに旅を続けていた。
そんな毎日の中、ある日久々に怪物豚というご馳走にありつく事ができた夜のこと。不浄の大地で野宿する二人の下に、お腹をすかせて遭難していた美しい女性が現れた。
ヒロはハクアリティスと名乗ったその女性を助けることにする。その女性は何とエンディミアンであり、天使の花嫁だったが、その天使から逃げ出すために天使の領域から脱走してきたというのだ。
天使の領域とは、この世界で唯一終焉の宣告を免れた天使たちの住まう街であり、エンディミアンとは天使たちに従ったことで、アーシアンとは違い天使の領域に住まうことを許された人間たちのことであった。しかし、それ故彼らは穢れである不浄の大地に降りることは許されていないはずであった。 (第一話〜第四話)
ハクアリティスの本気を見て取ったヒロは、反対するエヴァを押し切って次の街までハクアリティスを送っていくことにしたが、次の街・アルヴァーナの街まであと少しというところで、ハクアリティスを追ってきた天使・エンリッヒに急襲される。
世界で唯一武装を許された天空騎士団の副師団長という天使の強さは本物で、防戦一方のヒロは窮地を脱するためにも、エヴァとハクアリティスの二人を魔法の指輪だという足跡の指輪を使い、その場から瞬間移動させ二人を逃がし、自身は黒の剣という不思議な力を持つ剣を使い何とかエンリッヒを退けることに成功するが、後からやってきた天使たちにあっさりと捕まってしまう。 (第五話〜第八話)
一方、ヒロに半ば無理やり逃げさせられたエヴァとハクアリティスは、ヒロが指定したサヴィラ街ではなく、天使の領域が間近にある不浄の大地唯一の天使が管理する街・懺悔の街に移動させられていた。
懺悔の街は、天使とエンディミアンがアーシアンを使役することで罪を償えるとして、アーシアンをもはや奴隷同然に扱うという街であった。
ヒロと合流するために乗り物を調達しようと街の中に入る二人だったが、ハクアリティスが天使の花嫁であると知る謎のアーシアンたちによって拉致監禁される二人。その監禁された中でエヴァはヒロの行方を知るアラシという男と会う。 (第九話〜第十一話)
天使に捕まったヒロは、そのまま天使の領域の中にある広大な地下監獄・断罪の牢獄で天使たちから拷問を受け続けていた。
そん中、牢が近い女性ミシアから黒の雷というアーシアン解放軍の話や、ハクアリティスが実は天使長・万象の天使の妻であるという事実を聞いて驚く。
そして監獄から脱出する術が見つからないまま一ヶ月という時が過ぎたある日、ヒロは人体実験を繰り返すという噂のある狂った科学者・Drパルマドールの手により、断罪の牢獄から出ることとなった。 (第十二話〜第十三話)
Drパルマドールに連れられてきたのは、白き神の御許の中にある彼が主たる生態兵器研究所。ヒロはそこで自分が持つ黒の剣のことを聞かれ、ヒロに殴られたことにより激昂したDrパルマドールが差し向けた、アーシアンを人体実験した結果である魔人に襲われる。ヒロはそれを避け、非道を尽くすDrパルマドールを殺そうとしたところを、かつて自分を襲ったエンリッヒとシャオンという天使にそれを遮られる。 (第十四話〜第十七話)
生態研究所からエンリッヒの実家に連れ込まれたヒロは、変装と称した女装をさせられ最高位の天使たちの居城・天近き城を訪れる。エンリッヒたちには会わせたい人がいるといわれていたが、その途中で一人残されたヒロは美貌の片翼の天使・エヴァンシェッドに出会い。胸を騒ぐのを感じたが、その場は気にしないことにする。
その後、戻ってきた二人に連れられた先にいたのは三大天使が一人、明海の天使・サンタマリア。彼女は盲目であるが、人の心を読めるといってヒロを動揺させた。彼女はヒロに黒の剣を返し、これが黒の武器という神殺しの黒き神の力の源であり、ヒロと黒の剣に力を貸して欲しいと願い出た。
ヒロはそれを保留しようとしたところを、突如現れた黒い影に腹部を貫かれて重症を負う。 (第十八話〜第二十一話)
ヒロと会えないまま時間がたつばかりでイライラしていたエヴァであるが、そんな彼とハクアリティスの元に、エンシッダと呼ばれるエンディミアンらしき人物が訪れ、ハクアリティスが喜ぶ様子にエヴァはハクアリティスの脱走劇が狂言であることを知り、彼女が夫の気を引くためにこれを計画したことに怒った。
しかし、アラシにそれを押さえつけられたまま、エヴァは一人エンシッダに拉致監禁された場所から外に出される。そしてエンシッダとの会話の中で、エヴァは今まで思い出すこともなった自分の事を全て思い出し、還るべき場所に戻ることを決めた。 (第二十二話)
エンシッダに連れられるまま、天近き城に訪れたエヴァは三大天使が一人、大地の天使・ラインディルトに引き渡され、そしてエヴァの戻るべき場所である天使長、万象の天使・エヴァンシェッドに見えることとなる。
エヴァは最果ての渓谷の戦いの際に、エヴァンシェッドが黒の剣によって切り落とされ、封印され続けられていた彼の片翼であったのだ。
エヴァは自分が再び彼の翼として戻る代わりに、ヒロを助けて守るという契約をエヴァンシェッドを結ぶが、その時ヒロが黒の影に刺されいる場面を目にして、そこに駆け出す。 (第二十三話)
ヒロは何とか黒い影のとどめの一撃を黒の剣によって退けることに成功し、サンタマリアを逃がし、応援をよんだエンリッヒたちに助けられ窮地を脱する。
しかし、そこに現れたエヴァとエヴァンシェッドを見て取り乱すヒロ。ヒロはエヴァの正体もエヴァンシェッドとの関係も知っていたのだ。
しかし、エヴァは逃げろというヒロの言葉を聞かず、ヒロに今までの謝罪と感謝、そしてヒロへの気持ちを残してエヴァンシェッドの翼に戻る。
完全なる力を取り戻したエヴァンシェッドは、契約の通り襲い来る黒い影からヒロを守る。
ヒロはエヴァを失った失意を胸に秘めたまま、エヴァンシェッドのとった行動に混乱するのであった。 (第二十四話)
【登場人物】
ヒロ(アーシアン)
流離人と言われる何処にも定住せず放浪し続ける一族らしいが、自身も今は亡き家族しか同族に出会ったことはないらしい。
しかし、黒の剣など普通の人間が持っているはずのない不思議な力を持つ道具などを、先祖から受け継いでおり、本人は知らなかったようだが、サンタマリアの話から自分が黒き神に忠誠を誓った黒の一族であることを知る。
黒髪・黒い瞳を持ち、いつも憮然とした表情の裏で、悶々と色々悩み多き苦労人で、女子供など、自分より弱いものは放っておけないお人好しな性格。
エヴァンシェッド(天使)
天使一族の中の長・万象の天使。銀髪、紫の瞳の絶世の美男子で純白の翼を持つ。
しかし、最果ての渓谷の戦いの際に、黒の一族によって翼の一つを切り落とされ、長きに渡り失い続けていたが、ヒロの同行者であったエヴァがその翼を具現化した姿であったために、再び元の姿を取り戻すこととなった。
片翼であったために飛べない翼の天使と呼ばれ続けているが、本当の名は別にある。
その翼であったエヴァは感情豊かで子供な性格であったが、本体であるエヴァンシェッドは優しげな様子をしているが、底知れない恐ろしさを感じさせる部分も併せ持つ。
エヴァとヒロを守る契約を結ぶ。
サンタマリア(天使)
三大天使の一人、明海の天使。生まれつき目が見ず、変わりに心の中を見る能力を持つ。
蒼い翼を持ち、背は高く、長い紫がかった髪に、瞳は常に閉じられている三大天使という名のわりには、ヒロは普通な容姿だと感じている。
黒の武器をもつヒロに、天使に力を貸すように頼む。
ラインディルト(天使)
三大天使の一人、大地の天使。本編に描写はないが、赤い翼に、赤髪、黄色の目を持つ知的な美男子。
また、天使一族の総意を決める機関・世界の円卓により、エンディミアンの管理を任されている人物。Drパルマドールの魔人研究などとも関係が噂される。
エンリッヒ(天使)
天空騎士団第一師団、副師団長の肩書きを持つ大鎌を操る。
アッシュグレイのつんつん頭に、青の瞳、青みがかった翼を持つ天使だが、その服装は奇抜で妙なしゃべり方をし、いつも気味の悪い笑みを浮かべているため、ヒロには悪魔のような天使と称されている。
Drパルマドールに何か思い入れがあるようだが、それはまだ分からない。
両親と十二人の弟と妹がいるらしいが、現在実家に残っているのは下から5人の子供たちだけで、後はエンリッヒを始め皆独立している。
シャオン(天使)
エンリッヒと同じく、天空騎士団第一師団に所属している。
ヒロの持つ天使に対する清廉なイメージを壊した人物で、妖艶で豊満な体を持つらしいが、あまり詳しく描写すると彼女に訴えられるので、ご想像にお任せする。
ただ、赤い翼を持つことだけは第十八話より察することができる。
ハクアリティス(エンディミアン)
ヒロを巻き込んだ発端となったエンディミアンの女性。
『天使の花嫁』と呼ばれるエヴァンシェッドの妻であり、契約者であるために人間ながら700年も生き続けている。
彼女の脱走劇は実は天使から逃げ出したいわけではなく、夫エヴァンシェッドの気を引くためだったことは分かっているが、今後どのような動きをするかは未知数。その身は黒の雷に捕らわれたままである。
アラシ(アーシアン)
黒の雷のリーダーの若者。独身。エヴァ曰く、毛むくじゃらの熊男。
アーシアンの解放のために戦っているらしいが、エンディミアンであるエンシッダに傅き、ハクアリティスを人質としてではなく、客人として扱っているなど、彼の行動には謎が残る。また、ヒロにどうしても聞きたい事というのも、今だ謎のままである。
Drパルマドール(エンディミアン)
生態兵器を専門とする狂った科学者と噂される人物。
アーシアンを人体実験した結果、生態兵器魔人の研究進める人物。
相当な変人で、『ちみは、ちみは馬鹿だね!』などと、君の事を『ちみ』といったり、何度も言葉を繰り返す口癖がある。
エンシッダ(エンディミアン)
好青年という言葉をそのまま体現させたような人物だが、エヴァはその姿があまりに嘘っぽいために彼の冷たい裏の顔も垣間見るなど、大きな二面性を持つ人物。
黒の雷のアラシと接触しているかと思えば、三大天使ラインディルトと接触があるという謎の多きエンディミアン。
黒い影(黒の一族)
本編ではほとんどまだ語られていない人物。
ヒロはその言動から、恐らく同じ黒の一族ではないかと検討をつけている。黒の武器らしき、黒く染め上げられた槍を持ち、ヒロが人間離れしていると称するほどの身体能力を持つ。
サンタマリアが話していた、ここ最近天使の領域で起きている天使殺しの下手人ではないかと目されているが、何故ヒロを襲ったのか、はたまたどうやって天近き城に入り込んだかなど、謎が多く残る人物。
【地名・建物】
東方の楽園<サフィラ・アイリス>
かつてはその名の如く美しい楽園のような大地だったが、千年前終焉の宣告により死の世界へと姿を変えた。
不浄の大地<ディス・エンガッド>
東方の楽園のほとんどを占める生命の育たない、岩と砂しかない死の荒野。
天使の領域<フィリアラディアス>
死の世界である東方の楽園に残った、天使たちが住まう最後の楽園。高い白壁に覆われ外からはその中は何も分からない。
守護天使の白壁
天使の領域を囲む、天高く聳える白壁。
白き神の御許<イア・ルマンヌ>
天使の領域にある、天使の超高層都市。
天近き城<フェデス・ジグロア>
白き神の御許の最上部にある天使たちの城。天使の中でも、最高位の天使たちが住まう。
断罪の牢獄<エヴィラ・アメンド>
天使の領域の巨大な地下牢獄。
生態兵器研究所
エンディミアンの狂った科学者Drパルマドールが所長を務める、白き神の御許の下層部分にある魔人研究が行われている不気味な研究所。
懺悔の街
天使の領域のすぐ傍にある、不浄の大地で唯一の天使と人間が混在する街。人間たちが天使に罪を懺悔するためにある街とされている。
西方の魔境<シェストリア>
世界の果てによって交流はないが、東方の楽園と隣り合わせにあるとされる、別の大地。
世界の果て<レドヴァガンナ>
幾重にも重なりあう大地を区切ると言われる強固なる結界。
【神】
白き神<イヌス・ニルヴァーナ>
最高神の片割れ。次々に黒き神によって神が殺されることに危機感を覚え、天使たちに力を与えたとされている女神。
現在は、東方の楽園の唯一神とされている。
黒き神<ウ・ダイ>
最高神の片割れ。その昔、世界に不干渉の掟をやぶり、人間たちに力を与えたために千年戦争の切っ掛けをつくり、その後、神々を殺して回るという凶行に走ったが、終焉の宣告により力を奪われ、白き神に封印された。
現在は、その姿どころか、その名すら語られていない。
【種族】
天使
色とりどりの翼を持ち、魔力を秘めた一族。不老不死をもつ。
世界の唯一神である白き神に東方の楽園の統治を任され、人間たちを支配している。
長・万象の天使、三大天使を中心として天使の領域の中にすまい、その存在は不浄の大地に住む人間たちには、謎多き種族。
エンディミアン
千年前戦いに明け暮れていたが、白き神に許しを請い、天使たちに保護された人間の総称。人間でありながら天使の領域に住む。
アーシアン
千年前、白き神に従わず戦うことを止めなかったために、天使たちに粛清を下された罪深き人間とされる、不浄の大地に生きる人間の総称。
黒の一族
黒き神に、その力の象徴である黒の武器を与えられた七人の人間たち、叉その末裔の総称。黒き神を封印し、自分たちを西方の魔境に追いやった天使たちを恨んでいるとされている。
流離人
アーシアンの中で定住せずに不浄の大地を放浪し続ける少数種族だが、今はその名が残るのみで、その存在はほとんど確認されていない。
しかし、サンタマリアの話によると、西方の魔境を脱出して、東方の楽園にたどり着くことができた黒の一族の末裔らしい。
【歴史的な用語】
終焉の宣告<ディルト・ヴェネス>
戦いに明け暮れた人間たちに怒った白き神が、万象の天使を使って人間に下した粛清。東方の楽園を一瞬にして死の世界に変えたといわれる。
しかし、サンタマリアの話によると、その実は神殺しである黒き神の一党を、滅するための最終手段だったらしい。
千年戦争
実際千年もの間、戦争が続いていたかは定かではないが、それぐらい長きに渡り続いた人間同士の戦争。終焉の宣告により終わったとされ、アーシアンたちの罪の象徴のような戦争。
サンタマリアの話によると、その裏には、神々の戦いも関わっていたらしい。
最果ての渓谷の戦い
歴史的には謎が多い戦いとされているが、その実は、天使が唯一出兵したといわれる、天使と黒の神一党との戦いだった。
【その他の用語】
天空騎士団<アイッシュグランド>
東方の楽園で、唯一神に武装を許された天使たちの武装集団。
黒の武器<カシュケルノ>
一見すると普通の武器と変わりないが、血で濡らしたり、言霊を唱えることで、その姿を黒く変え、魔力を使うことができる。その力は、黒の一族しか使うことができず、黒き神の力の象徴。
ヒロが持つ黒の剣もその一つ。
魔人<ベルトゥール>
エンディミアン、Drパルマドールが発案したといわれる、人間の人体実験のなれの果て。人間では考えられないような力を持つ。
黒の雷<オルヴァラ>
アーシアンを解放するために活動しているらしいレジスタンス。
こんな所まで読んでくれた方だけに(笑)
【第二部予告】
黒い影によって重傷を負ったヒロは、理由も分からないまま天近き城で手厚い看護を受け、エヴァを失った悲しみと、本人の意思とは関わらず『エヴァンシェッドの男の愛人』などと囁かれることに堪えられなくなり、天使の領域からの脱出を図ろうとする。
脱出する途中で出会ったのは、黒の雷のリーダー・アラシ。
彼との出会いが、ヒロを天使たちの間で垣間見える陰謀と愛憎に巻き込み、そして東方の楽園の全てが恐怖に陥る大きな戦いの引き金となろうとしていた。
「全部、忘れられればいいのにな。」
「黒き神の力が増しておる。我らも戦いに備えねばならぬ。」
「自殺やと?馬鹿いうな!」
「何を犠牲にしてもいい、力が欲しい!」
「エヴァ、私はどうすればいい?」
(以上、第二部予告ですが、あくまで未定なので話は若干変わるかもしれないです。ここまで見ていただいてありがとうございました!では、第二部でお会いしましょう。)