CORD-3:Burning Dark
一年も残り僅か…だというのにまだ三話目だなんて(泣)お待たせ致しました、最新話です!
※グロ・エロ描写がありますので苦手な方は閲覧の際はお気をつけてくださいませ(汗)
-黒雲の隙間から輝く月光の下、二匹の獣が対峙し、静寂を掻き消すかの様な咆哮がこだまする…
『グゥオア゛アアアアアァアアァ゛アァ゛アアアアアアアアアア!!』
『ハッ…ハハハハ…フハハハハハハ!!やっとその姿になったようだなぁ!!ヘラクレスゥウウウウウウウウ!!』
-神嶋御影…否、ヘラクレスの完全に合成魔獣として覚醒した姿と彼の剥き出しの獣性に触発されて犬飼…コボルトは感情を昂ぶらせて口を大きく開き、唾を散らしながら飛び掛かり、二匹は狂った様に取っ組み合いを始める
『グガァア゛アアア゛アアアアアアア!!ガウァアアアアアアアア!!』
『ゴァア゛アアアァア゛アアアアアァ!!ギギィイイイイイ!!』
-コボルトがヘラクレス目掛けて激突すると、両者は相手を掴んだ状態で土煙を上げながら地面を転がり回る
『ギシャアァアアアアアアアア!!ガフッ…フゥ…フゥウウウウ!!』
『グォッ…!?ルォアアァアアアア!!』
『ギャウンッ!?』
-回転が止まるとコボルトはマウントを取り、自身の鋭い牙でヘラクレスの首に噛み付き、肉を食い千切らんばかりの勢いで牙に力を入れる…しかしヘラクレスは力を込めた両腕でコボルトを掴み、振り払うために巴投げの形で思い切り投げ飛ばし、コボルトはそのせいで宙を舞いながら公園の公衆便所の壁に叩き付けられ、背中を強打した…
-だが一度闘争本能に火が着いた野獣は獲物に余裕を見せるということを一切せず、すかさず容赦無い追撃を与える
『ゴァアアアアアアアアアアアアアアア!!』
『ゲボォアァッ!?ブフゥオッ…オゲェアアッ…ヴォエエエエッ!!』
-ヘラクレスは怒号と共に背中から巨大な翅を広げて上空へ飛翔、そして空中から一気に急降下し、強烈な蹴りをコボルトの腹に食らわせた、そのダメージのせいでコボルトは口から血液混じりの嘔吐物を吐き出し、地面を汚い赤で染めた
『ゲェボッ…エフゥ…フゥウウウ…!!なんて奴だ…記憶回路に障害があるとはいえ、やはりヘラクレス…私一人では…来い!!「猟犬部隊」!!』
『『『ワァオ゛ォオ゛オオオオ゛オオ゛オン!!』』』
『『『ヴォアオォオ゛オオ゛オォオ゛オォン!!』』』
-ヘラクレスのあまりにも強大な力の前に自分だけでは勝てないと即座に悟ったコボルトは距離を取って口笛を吹くと、草むらからコボルトと同じ外見…だが、体毛の色は赤ではなく茶色になっているという違いがある複数のコボルト達による戦闘部隊『猟犬部隊』が一斉に飛び出し、統率された動きで陣形を組みながらヘラクレスを取り囲む
『ハッハァアッ!!これで形勢逆転だなぁッ!?各員、ヘラクレスへの攻撃開始ッ!!』
『『『ハッ!!』』』
『『『了解ですッ!隊長ッ!!』』』
-コボルト(犬飼)は自分の部下達の到着により、ただでさえ口が裂けてる様に大きい口を吊り上げながらニタリと笑い、部下のコボルト(ハウンド)達にヘラクレスを攻撃させる
『『『ア゛アァア゛アアアア゛ァアアアォオオオオオオォオ゛オオォオンッ!!』』』
『ガゥアッ!?』
-コボルト(ハウンド)達が吠え出し、素早い動きで何匹かがヘラクレスの腕や足元に組み付いてその動きを封殺、そして拘束役を担当してる者以外は腰や背中などに携帯しているコボルト(犬飼)と同タイプのフレイル『カニスマヨル』や猟刀『ティンダロス』を抜いて振り回したり、噛み付こうと口を開いて牙を剥き出しにして一斉に突撃してくる
『グゥオォオオオ!?』
-如何にコボルト(犬飼)を投げ飛ばす程のパワーを持つヘラクレスといえども一匹・二匹程度ならともかく、それ以上の数が身体のアチコチに組み付いていては振り払う事は不可能…結果、圧倒的な数の暴力を真正面から受ける事となった
『ゲヒャヒャヒャ!!死ねェッ!!』
『いくらヘラクレスでも動けなきゃ怖かねェんだよ!!』
『グブッ!?ゴッ…ガッ…!!』
『ファッハハハハハハハハハ!!いいぞ!キサマら!!次は奴の血肉を喰らえ!!肉の一片、血の一滴も…全部ッ!!残さずッ!!だがすぐには死なすなよ…少しずつ、少しずつ、削ぎ取る様に、気を失う事すら許さずに、な…ヒヒヒヒヒヒヒ!!』
『ククッ…あのヘラクレスの肉を食えるなんて…!!』
『先日食ったあのゴミ臭い浮浪者よりも、味も食感もさぞかし美味そうなんでしょうねえ!!』
-コボルト(犬飼)達はゲラゲラと不愉快極まりない笑い声を響かさせてヘラクレスを徹底的に痛めつけ、これから如何に『喰う』かという話をする、その際に『ホームレス』というワードが出て来た…
『あのゴミ野郎、きっと風呂なんか入ってねえだろうからな…臭過ぎてゲロ吐いちまったよ!』
『ああアレな…正直、「味」はクソ以下だったぜ!!ギャハハハハハハ!!』
-どうやらその口ぶりから、先日ニュースにもなったこの公園で死亡したホームレス・虹野を惨たらしく殺害した犯人は彼らだったようだ、しかしコボルト達は自分達がしでかしたことをまるで子供が虫を潰して遊んだ程度の他愛も無い事ぐらいにしか思ってないのか、笑い飛ばした
-何故ならば、合成魔獣は全てにおいて人間よりも遥かに超越し、優れた存在、ありとあらゆる近代兵器などものともしない屈強な肉体と合成された元になった獣の特殊能力を併せ持ち、地球上の全ての生物の頂点に立つ者…自分達に対抗出来る者などいない生物兵器…新たなる世界の支配者だという絶対的な自信がある
-そしてなにより…合成魔獣から見たら人間など脆く…弱く…全ての点において合成魔獣よりも劣る虫ケラ以下の存在に過ぎない
-故に、たかだかホームレス一匹殺したことに関しては、人間に為り代わって新たな世界を築き上げようとしている支配者からすれば…領地を治める貴族が『自分の領地の自分の領民を殺して何が悪い?』という認識程度の問題、否、最初から問題だとさえ思ってもいないのだ、それこそが選ばれた存在たる自分達に与えられた正当なる権利だと信じて疑っていないのだから…
『『『では…いただきます…ガウッ!!ガウガウッ!!ガァウァアアアア゛アアア゛ア゛アアアッ!!』』』
『グヌッ…!?アガァアアァアアア゛アアア゛アアアアアアッ!!』
-『猟犬部隊』全員、ヘラクレスの頭・顔・首・肩・腹・背中・腕・脚…様々な部位に喰らいつき、牙を食い込ませてその肉を自分の腹に入れ始める、そのためヘラクレスの全身から鮮血が溢れ出し、苦悶の声が漏れる…
『チィッ!なんだこいつの肉!?筋ばってて…硬過ぎて噛み切れねぇよッ!!』
『クソッ!!これ以上歯が通らねぇ!!だったら武器で切り取って…!』
-だが、ヘラクレスの持つ硬質的かつ非常に筋が多い筋肉のせいか、コボルト達は牙を突き立てるだけで精一杯…中々肉を刔ることが出来ずにティンダロスでの切断を決行…と、ここでヘラクレスに変化が…
『なんだコイツ…?全身が赤く…ギャァアアァアアアアアアアァ!!?』
『『『熱ッ…ガァア゛アアアア゛アァアア゛ァア゛ア゛!!』』』
『…い、いかん!!全員奴から離れろ!!』
-突如、ヘラクレスの全身を包んでいた夜闇を思わせる漆黒の甲殻の色がみるみる内に苛烈なまでに燃え上がる太陽の如き赤へと変わり、瞬間…ヘラクレスを拘束していたコボルト達の手の皮や舌などがジュウッ…という何かが焦げる嫌な音と共に焼け爛れてしまった、それを見てコボルト(犬飼)は慌てて彼らをヘラクレスから離れる様に命令した
-どうやらヘラクレスは力ずくでは自分の周りに纏わり付く犬畜生共を引き離す事は無理と判断し、自らの体温を急激に上昇させての発熱で追い払うことにしたようだ
『ウ゛ウウゥウ゛ウ…ヴォア゛ァア゛アアァアアァアア!!』
-ヘラクレスは何を思ったか?なんと自分の胸に自分の手を突き刺したのだ…そしてズブッズブッと胸の肉を刔る音、飛散する血液と同時に取り出した物は彼の身体のどこにそれだけのものが収まっていたのか?ヘラクレスの身長よりも遥かに巨大なカブトムシのツノを模した様なデザインの戦斧型の武器を取り出したのだ
『ヴォオ゛オォオォア゛アアア゛アア゛アアアア!!』
『ひっ…!!や…やめッ…ぢげッ!?』
-ヘラクレスは激吼と共に逃げ遅れたコボルト(ハウンド)の内の一匹に狙いを定め、戦斧を振り、叩っ斬られたコボルト(ハウンド)の身体が右と左に別れ、臓物などと共にその命を散らした
-複数いる内の一匹の敵を殺したらすぐさま次の敵を狙うなどするのが普通だがヘラクレスは違った…
『グルルルル…グァア゛アアア゛アア!!ハフッ…ハフッ…フッ…フゥウウウ…!!』
-何を思ったか?狂気か、錯乱か…ヘラクレスはいきなり先程自分が殺したコボルト(ハウンド)の肉体を引き千切り、内臓などを乱暴に引きずり出し、ズルズル…ピチャクチャ…と汚い音を立てながら『喰った』のだ
-それは最早正気の沙汰ではなかった、今の彼には神嶋御影としての心はカケラも存在していない、有るのはただ一つ…覚醒めたばかりのヘラクレス(ケモノ)としての剥き出しの獣性のみ、彼はただそれに従ってるだけに過ぎないのだ
『ハフッ…フゥウウウ…フハフッ…アグッ…』
(…傷が…あれだけ痛め付けてやって出来た傷が『無くなってる』…コイツ…記憶障害のクセに我々の特性を無意識で理解しただと…?)
-合成魔獣が他者の血肉を喰らう事は単なる趣向やエネルギー摂取のためだけではない、己の身体に取り入れる事で体内の血液や細胞が活性化され、如何なる致命傷でも短時間で容易く塞いでしまうという驚異の特性がある…コボルト(犬飼)は記憶回路の異常を持つヘラクレスが戦いの最中でその特性を学習した事にゾッとした…
(まさか我々は…ええい!何を馬鹿な…有り得ん!!いや、有ってはならんのだッ!!)
-『もしかしたら自分達は今とんでもない奴を敵に回したのでは?』という考えがコボルト(犬飼)の脳裏を過ぎるが瞬時にその不吉なものを頭から削除した
『『『ッ…!?』』』
『ひ…怯むなッ!!怯むんじゃない!!全員でかかれ!!』
『『『は…はひっ…!!』』』
-ヘラクレスの悍ましい捕食光景を前にして、『猟犬部隊』一同に戦慄が走り、身を震わせてその狂気に飲まれそうになるがコボルト(犬飼)の声でなんとか正気に戻り、武器を構える
『『『この野郎ォオオオ゛゛オォオ゛オオオ!!』』』
『『『ガウァア゛アア゛アアア゛アアアア!!』』』
-猟犬種特有の俊敏な動きで一気に迫り、全方向に展開しての一斉攻撃に打って出た『猟犬部隊』、ヘラクレスは食事を済ませたか、コボルト(ハウンド)の残骸を乱暴に投げ捨て、戦斧をゆっくり振り上げ、そして…
『ク…ククク…ハハッ…ハハハハハハ…ハァアアアアアア…!!』
『『『ギャウ…!?』』』
『『『ガファッ…!!』』』
-一閃…ヘラクレスの身長の倍もあろう巨大な戦斧にも関わらず、それをコボルト(ハウンド)達が迫るよりも速く、信じられないスピードで周囲を薙ぎ払う様に振り回す、この戦斧のたった一振りによりコボルト(ハウンド)達の大半がヘラクレスによって乱暴に断ち斬られた自身の生首や臓物、手足などが混じる血の雨を降らせる結果となった
『フフフ…ハハハハハハッ…アハハハハハハ…』
『な…っ…!?』
『『『ヒッ…ヒィイイイイイイイイイッ!!?』』』
-嗤っている…ヘラクレスは自分のほぼ全身が返り血で染まった事やコボルト(ハウンド)達が面白い様に簡単に死んでいく事に対して実に愉快そうに眼を細めて、気づけば底知れない狂気を孕んだ声で嬉々として嗤っている…あまりの不気味さにコボルト達はゾッとした、そして意識がしばらく飛んでしまい、気づけばヘラクレスが目の前に…
『フハハハハハハ!!ハッハッハッハッハッ!!アーハッハッハッ!!』
『うっ…うわあああああああ!?や…やめ…!!助け…べぇえええええッ!?』
『く…来るな!来るな!来るッ…ア゛ァア゛アア゛アアアアアァッ!!?』
『痛ギャア゛アァアア゛アアァアア゛アアア!!?』
-それは一方的な虐殺だった、ヘラクレスは高らかに嗤いながら一切の慈悲も容赦も無くコボルト(ハウンド)達を戦斧で真っ二つにする、首を掴んで力ずくで捩切る、爪を腹へ突き刺して腸を刔るなど凶悪極まりない殺し方をする…最早、獣を通り越して狂戦士であった
『ば…化け物…!!』
『冗談じゃねえ!!嫌だ!もう嫌だ!!』
『『『うわああああああああああああああ!!』』』
『まっ…待て!キサマら!どこに行く!?逃げるなッ!!戻れッ!オイッ!!戻れと言ってるだろッ!この馬鹿共ッ!!』
-コボルト(ハウンド)達は恐らく本能的に悟ってしまったのだろう…『自分達はあの化け物に勝てない』、と…完全に戦意喪失したのか、隊長であるコボルト(犬飼)の制止を無視して全員、武器を投げ捨て、情けない悲鳴と涙声を響かせながら敵に背中を見せて戦闘放棄…逃走を始めた
-しかしそれを簡単に許してやる程、ヘラクレスは甘く無かった
『コォオオオ…オ゛ァアアアア゛アアア゛アアア゛アアッ!!』
『『『ヒッ…ヒィイイイイイイイイイ!!?』』』
『ぬぁああああ!!?』
-ヘラクレスは戦斧を振り上げて、それを地面へ向かって思い切り叩きつけ、大地を揺るがし、激しい震動でコボルト達を足止めしたのだ…その一撃のパワーは恐ろしく強く、地面を走るかの様に大な亀裂が出来てしまった程だ
『なんて馬鹿力だ!地面を割るなんっ…いかん!!逃げ…!?』
『『『ギャバァア゛アアアア゛アアアア゛アア!!』』』
『『『アァア゛アアア゛アア゛アア!!』』』
-コボルト(犬飼)が部下達にそう言った時にはもう遅かった…亀裂から火山が噴火したかの様に紅蓮の炎を噴き上げながら大爆発を起こし、爆風でコボルト(ハウンド)達は全身を炎に焼かれて吹き飛んだ
『『『熱イ゛!!アヅィイイ゛イイ゛イイイイ!!』』』
『『『水ヲ…水ヲグレェエ゛エエ゛エエエ!!』』』
『あ…ああっ…あがっ…!!』
-公園中はおろか、夜をも焼き尽くす程辺り一面に広がる赤・赤・赤…赤の大群は真っ赤な炎に包まれながら、踊り狂い、そして醜い断末魔を上げては黒い消し炭となって果てていく…事実上、『猟犬部隊』はコボルト(犬飼)一人を残し、全滅した
『お…お前…お前ェエエエエエエエエエエエエッ!!』
-コボルトは一瞬で部下達全員を殺された事で怒りの感情に駆られながら、ティンダロスとカニスマヨルを持って、ヘラクレスに向かって単身で飛び掛かる
『アハハハハハハ…ハハハハハハ…ハァアアアアアア!!』
『クソッ…そんなものでェエエエエエエエエエエエエ!!』
-ヘラクレスは狂笑しつつも自分に向かって感情剥き出しで襲い掛かるコボルト(犬飼)に冷静に対処…戦斧を振るって応戦するがコボルト(犬飼)はいち早く反応し、ティンダロスでガード…だがそれがいけなかった
『ギャア゛アア゛アアアアアアアア!!?顔が!!顔が焼けッ…ァア゛アア゛アアアアアアアアア!!』
-爆ぜた…ヘラクレスの戦斧『ヴォルケーノ』がティンダロスとカチ合った瞬間に突如、赤い閃光を放ちながら爆発し、それに巻き込まれてしまったコボルト(犬飼)の顔の右半分が右眼と共に吹き飛び、己の顔を焦がし、焼く痛みにコボルト(犬飼)は身を悶えさせながら喚き散らす
『死ネ』
『ぶしっ』
-ヘラクレスはハッキリと…相手への死以外何一つ込められていない死刑宣言を吐き捨ててヴォルケーノをギロチンの如く振り降ろし、コボルト(犬飼)の首を撥ねた…コボルト(犬飼)の首は根本から血を撒き散らしながら何度かバウンドし、そのまま狩り取られた命が終わるかの様に動きが静かに止まった…
『フハハハハハハハハハハハハハハハッ!!死ネェエエエエェエエエエエエエェエエエエエエエエエエエエェーッ!!』
-ヘラクレスは戦いに悦びを…敵を殺す事に至上の悦びを感じていた…
-…彼が殺戮の快楽を知り、愉悦に浸っている最中だった、遠くからバイクのエンジン音が…
『…』
-バイクに乗った何者か…二本の角を生やした水牛の頭に全身を覆うカブトガニの甲殻を鎧の様に身に付けた大柄なキメラが現れ、ヘラクレスと対峙し、両者、睨み合う…
『フゥウウウ…!!』
『…ヘラクレス…今はキサマと闘り合うつもりは無い…』
-ヘラクレスは低く唸りながらヴォルケーノを向けて溢れんばかりの殺気を放つが、牛のキメラは動じる事無く、無様に転がったコボルト(犬飼)の首を鷲掴みしてバイクのエンジンを掛ける
『…このマヌケがァアア…オレに無駄な労力を使わせるなッ…!』
-どうやらコボルト(犬飼)とは知り合いらしいのか?だが、ヘラクレスに挑んだ挙げ句に惨敗し、文字通りの『負け犬』と化した姿に牛のキメラはゴミか何かを見る様な侮蔑の視線を物言わぬ生首に向けて怒りを露わにする
『…キサマ、この負け犬程度に勝った気でいるようだが…たかが、ムシケラ如きが…調子に乗るなよ?次は、殺す…!!』
-牛のキメラはヘラクレスに吐き捨てる様に言うと、コボルト(犬飼)の生首と共にそのまま爆音を轟かせて、猛進する牛さながらにバイクで走り去っていく…
(な…なに…あれ…?)
-犬飼に連れられた御影を探して、此処まで追いかけてたカケルが目にした光景…あちこちにこびりついた赤い液体、黒く焼け焦げたナニカ、そして最も信じられないものは今…目の前にいる黒いカブトムシと先程バイクで走り去った大柄な牛に似た人型の異形…それら全ては一介のタダの人間の少女に過ぎない心を未知なる恐怖で凍りつかせるには充分だった
(…御影さん…は…御影さんは…ど、こ…?)
『…』
「…あ…う…!?」
-身を震わせながら、御影の名を何度も心で呼ぶが、代わりに現れたのはいつの間にか目の前に立っている夜の闇に溶け込む漆黒の甲冑、冷たい月の輝きを思わせる不気味な金色の眼をした異形…ヘラクレスだった
『…グルルル…ウウウ…ゴァア゛アアア゛アア゛アアアア!!』
「やぁああああああああああああ!!?」
-神嶋御影としての心の無いヘラクレスは怯えるカケルの姿を見ても新しい獲物が来た程度にしか思っておらず、いきなりカケルの胸倉を乱暴に掴み、ビリビリ音を立てて彼女の服を縦に引き裂き、その未成熟で華奢な身体を晒されたカケルは悲鳴を上げた
『フゥ…フゥウウウッ…!!』
「嫌…いやっ…やめて…やめて…ッ!!」
-ヘラクレスはカケルの露わになった体と恐怖にうち震える弱々しい姿に興奮と嗜虐的な快感を覚えたか?獣欲の思うままに、カケルの折れてしまう程にか細い両腕を片手だけで押さえ付けた状態で、嫌がりながら必死に抵抗する彼女を地面に押し倒し、これからどうしてやろうか…頭の中で考えていた
「…ッ…!!」
『…フンッ…』
-だが…カケルは一匹のケダモノに蹂躙されようとしようとしてるにも関わらず、せめて心だけは負けじと震えながらも涙一つ流さずに気丈にヘラクレスを睨むが、そのヘラクレスは気にも留めてないのか、鼻で笑い、構わずカケルの下半身を包む物に手をかけ…
『…ガッ…』
「…え…わあっ!?」
-…ようとした時、ヘラクレスは急に力無く崩れ落ち、カケルにのしかかる様に倒れ込む…
「んっ…くっ…お…重いよ〜…って…え…?」
-ヘラクレスの図体に押し潰されてカケルは懸命に身体を動かして這い出ようとしたがあまりにも重過ぎてビクともしなかった…そして彼女はまたも信じられないものを見てしまった、完全に意識を失ったヘラクレスが段々と人間の、それも見覚えのある人物の姿に変わっていく…
「御影…さん…?」
-ヘラクレスの正体…それこそカケルが探してた神嶋御影本人であった…
-御神鎌記念病院
「大変な一日だったな…」
-狂策は院長室で一人…ポツリとそう言い漏らしていた
-カケルが出て行ったその後、カイは悔しそうな悲しそうな表情を浮かべて無言で帰り、沙霧はただただそんなカイにオロオロしながら涙を浮かばせていた…狂策は泣きじゃくる沙霧をなだめるのにかなり苦労したそうな
「…あの青年の鞄…見覚えがあると思ったら…やはり、遠野君の物だったか…」
-狂策は現在、御影が持っていた鞄を失敬し、眺めてる内にようやくそれが遠野遥…かつて、院長をする傍らで医大での講師をしてた際の自分の教え子だった女性のことを思い出した
「…しかし、何故あの青年が遠野君の鞄を…んん?なんだこれは?」
-…と、鞄の中身を漁っていると中から一つのUSBメモリが…
「…!」
-狂策は何故かは知らないが無意識の内に冷や汗を垂らし、手を震わせながら無言で息を飲みながら自分のパソコンにメモリを挿入し、中に入ってる保存された記録の内、画像ファイルを見る…
「なんだ…この『生物』は…!?」
-そこには人知を越えた驚くべきものが写っていた…画像に鮮明に写るのはどれもこれも、人間ではないナニカ…獣の顔や身体、中には鳥の翼を生やした者、昆虫の様な複数の脚を生やした者、魚の様な鱗で全身が包まれた者、植物に覆われた者など…まともな人間の姿をした者など誰一人いなかった
「…!?」
-その画像ファイルを見た後、レポートらしきものがあったので見てみると狂策にとってそれは驚愕の内容だった…
『この記録をどこかで見ているであろう神嶋御影…あなたがこれを見ている頃には私…遠野遥は恐らくもう生きてはいないでしょう…』
「遠野君が…馬鹿なッ!!」
-狂策は机を叩き、激昂した…自分の教え子が死んだかもしれない内容に気づけば怒りが沸き上がっていたのだ
『この画像ファイルに写る者達も、そしてあなたも…人間ではありません、この異形達…地球上に存在する様々な動植物の遺伝子を合成して生み出された事から私達はギリシャ神話の怪物の名を取り、「合成魔獣」と名付けました』
「な…!?」
-狂策は愕然とした…どういう理由か?傷だらけになり、自分の事が全く解らないと言ってた青年・御影がこの画像の怪物・合成魔獣である事に…無理も無い、見た目は完全に人間の姿だったため、全く気づけなかったのだから…
『彼らは全てにおいて人知を越えた存在・「究極生物兵器」、人間への擬態能力を持ち、人間社会に溶け込み、人間の血肉を喰らい、ゆくゆくは人間に代わって世界を支配しようとしている…医者や生物学者…ありとあらゆる分野に精通した私達はこの恐るべき怪物達を生み出すためにある男の「野望」の元、拉致されました…』
「…なんだって…?」
-狂策は合成魔獣達に関するレポートにて、この驚異の怪物達を生み出すためだけに遥が拉致され、そして…死んだのではなく『殺された』事を知り、戦慄を覚えた…
『その男の名は…』
-???
「はい、はい…解りました…では…」
「どうしたのかね…?」
「『会長』、どうやら…犬飼さんがヘラクレスの確保に失敗したようです…」
「ほう…?」
CORD-3…遅筆ながらもなんとか無事投稿、しかし中身が如何せん突飛過ぎる急展開・超展開が目立ちますね(汗)そしてなによりグロとエロが…
御影「作者キサマァアアアアアアアアアアアア!!オレに何を喰わせたァアアアアアアアアアアアア!!女将を呼べェエエエエエエエ!!」
…ナニって…お肉と女の子のはじめてを…
カケル「…う〜…///」←破れた服のまま真っ赤な怒り顔
カイ「貴様の人生から明日を消してやろうか?」←日本刀装備
…すんませんしたー(震)
以下、キメラ&キャラの簡単な紹介を
ヘラクレス:カブトムシの遺伝子を元に合成されたキメラで神嶋御影の正体、パワータイプに見えて軽快な動きや空中飛行も可能、爆戦斧『ヴォルケーノ』(←名前の由来は「火山」から)という武器を駆使して戦う
コボルト:ドーベルマンやシェパードなど猟犬種の犬の遺伝子を元に合成されたキメラで犬飼崇人や彼直属の戦闘部隊『猟犬部隊』の正体、犬特有の素早い動きで敵を翻弄する戦闘スタイルを持つ、武器は鋭い爪牙とフレイル型の『カニスマヨル』(おおいぬ座)と猟刀型の『ティンダロス』(『ティンダロスの猟犬』)
???:水牛とカブトガニの遺伝子を元に合成されたキメラ、現時点ではまだ犬飼と繋がりがある者としか解っていない
遠野遥:死亡ほぼ確定(汗)後に狂策の教え子と判明したと同時に合成魔獣や黒幕について重大な事を明かす
『あの方』:合成魔獣を世に放った黒幕たる存在、性別は遥のレポートの記述により男と判明
次回は『あの方』をはじめとした合成魔獣サイド、そして御影のその後について書いていきますのでお楽しみに、それではまた!槌鋸鮫でした!