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CORD-2:覚醒の咆哮

皆様、長い間お待たせしてすみませんでした!!(待ってないかもしれませんが…)最新話です!(泣)

-???


「…こ…こ…は…?」


-何処とも解らぬ場所…天井や壁一面に無数の配線(コード)やパイプなどが走る、何かの研究所の様な所の手術台の上で全身が包帯だらけの姿で男は目覚めた…。


「…オレ…は…一体…。」


-自分は誰だ?此処はどこだ?何故こんな所に居る?男の頭の中は瞬く間にそんな疑問で一杯になった…何故なら、いくら周りを見渡してもこの場所には見覚えがまるで無く、彼自身にも自分に関する記憶が全くといっていいほど、カケラも無かった。


「…最終調整よし…これで…彼は『自由』になれる…!」


「…?」


-…と、人の声が聞こえたため男がその方を見つめるとそこには、名前だろうか?胸に『HARUKA-TOONO』と書かれたネームプレート付きの白衣を纏い、ボーイッシュな淡い水色のショートヘア、蒼い海を思わせる様な美しい瞳を持つ女性がデスクに座って何やら呟きながらパソコンの画面に向き合い、カタカタと手慣れたブライドタッチで操作していた。


「…目覚めたのね!?よかった…やっと…やっと、成功したのね…!!う、うぅ…。」


「…あ…え…ええと…?」



-ここでようやく男が目覚めたことに気づいた白衣の女性は身体を小刻みに震わせ、余程嬉しかったのだろう…歓喜の余りに涙をボロボロと零しながら彼に近づき、優しく抱き締めた…男は何故この女性が泣いてるのか?と、疑問で一杯の頭にさらなる疑問が追加されて困惑し、どうすればいいか解らずにただただ狼狽するばかりであった。


「…ッ!突然泣き出してごめんなさい…私、嬉しくて…貴方を…人類を救う『最後の希望』として生まれ変わらせることに成功したのが…。」


(…『希望』…?一体、この人は何を言ってるのだろうか…?)


-女性は自分が今やってることに気づき、顔を赤らめて慌てて男から離れ、涙を拭う…男はどうやら彼女にとって何かの『希望』と呼ばれる存在らしいが生憎男にはそれがなんの意味を指し示すのか解らない…。


『遠野博士、そこに居るのは解ってるんですよ…?開けてくださいな…!!』


「…いけない!もう追っ手が…早く、こっちよ!!」


「…!?」


-突如、乱暴に部屋のドアが外側からガンガン叩かれる音が響き、何者かが丁寧口調ながらも声を荒げて中へ押し入ろうとしている…『博士』と呼ばれた女性・遠野遥は余程相手に見つかるのがマズイのか、男を起き上がらせて手を取り、部屋の隅まで連れて行くと、床に自分の手を押し当て始めたのだ…すると、床の一部分がスライドし、どこかへと通じ合う階段が現れる、どうやらこれは予め登録しておいた指紋の情報をカギ代わりに認識させることで開かれる非常用緊急脱出路の仕掛けの様だ。


「ここを使えば外へ出れるわ!これを持って早く!」


「うわああああああああっ!?」


-遥は男に鞄を渡し、彼を半ば強引に階段へ押し込んだ、その際に男は階段から転げ落ちて全身のアチコチを痛めてしまった。


「あたた…待て!アンタは…ッオイ!?何してる!!」


-男は痛む身体をなんとか起き上がらせ、上にいる遥に呼びかける…だが、遥はというと仕掛けを操作し、脱出路の入口を塞いでしまったのだ。


「私に構わないで!!いい!?鞄の中にはあなたに必要な物がある、無事外に出れたら確認を…きゃッ!?いや!離して!!」


「ッ!?何があったんだ!クソ…開かないッ…!!」

-遥が切羽詰まった様に声を荒げて渡した鞄について説明するが途中、どうやら彼女が何者かに捕まったらしい…男は閉じられた入口を叩くが全くビクともしない…それもそのはず、この隠し通路の入口は一度閉じると内側からは勿論、外側からも簡単には開かないのだ。


「…クッ…ソォオオオオオ…!!」


-男はギリッ…と、歯を強く噛み締め、自分の無力さに対する悔しさをぶつけるように床を叩いた後、後ろ髪引かれる様に躊躇いつつも意を決し、足を動かし始めた。


(すまない…!!)


-男は心の中で遥に謝罪しながら、理由は解らないが自分を逃がしてくれた彼女の犠牲を無駄にしないために隠し通路を疾風の如く走り抜けて外へと脱出した…。




-この後、無事に謎の施設から脱出出来た…しかし。


「死ねェッ!!」


「ぐあッ!?」


-街中を宛てもなくさまよっていた男だったが、それから毎日が地獄だった…いきなり車が突っ込んできたり、頭上から彼目掛けて看板や鉄骨が落下してきたり…そして現在、銃などの明らかに殺傷力満載な凶器を持った物騒な連中に追われ、放たれた銃弾によって彼の右耳と左肩、脇腹の一部が刔られる。


(何故だ!何故こいつらはオレを狙うんだ!?オレが一体何をしたというんだァアアアアッ!!)


-記憶の無い、名前すら解らない自分が何故狙われるかという疑問、走る激痛に苦しむ暇もなく死に逃げて逃げて逃げて…絶えることなく増え続ける傷と記憶が無い故に誰にも頼れず、助けも呼べない孤独に耐えながらの逃走の日々を過ごしてきたが、命を狙われ続けた結果…。




-遂に彼は限界に達してしまっていた…。






「ぐうう…クハッ…もう、ダメ…だ…。」


-ある日の夜、追っ手から受け続けた傷が悪化し、フラフラと危ない足取りで男は朦朧とする意識の中、どこかのマンションの近くで地に伏し、もがき苦しむ…。



「大丈夫ですか!?しっかり!!」


「…ッ…ぐぅうう…がッ…!」


「…よかった…でも動いちゃダメですよ!その怪我じゃ…!!」


-意識が徐々に消えゆく中…最後に確かに聞こえた、懸命に自分に声をかけてくれる誰かの声が…。






-???


「…知らない天井だ…。」


-…と、目覚めた途端、記憶が無いくせに某アニメの内気な主人公の少年の言葉を無意識で発していた、気づけばベッドの上であり、サングラスが取れた状態の吸い込まれる様な黒燿石にも似た黒い輝きが宿る瞳から見えた光景は見覚え無い白い空間といつの間にか傷も包帯などが巻かれて手当てされている自分の身体だった。


「ヒャッハァアアアアアアアア!!さてと、生きのいい死体が入った入ったァッ♪明日の解剖をして心臓を…いやまてよ?その前に味見をしておこうかなぁ?」


「…オイイイイイイイイイ!!待て待て待て待て待てェエエエエエエ!!まだオレは生きてるぞォオオオオオ!!?」


-だが、起きて早々に両手にメスやらノコギリなどの医療道具を持つ、白衣姿の紫の長髪にどことなく狂気を孕ませた眼を光らせる、如何にも危ないマッドサイエンティスト、或いは死神といった印象の男性がこれまた危ない発言をしながら男にメスを近づけたが、激しいツッコミを入れる形で起き上がって彼はマッド野郎の狂行を阻止した。


「おーやぁ?生きてたのか…チィッ、惜しいな…折角医大生用の教材にしようと思ってたのに…。」


「フザケンナ!!てか此処何処だよ!?アンタ誰ッ!?」


「私は御神鎌狂策、この御神鎌記念病院の院長さ。」


-御神鎌狂策、と名乗るこれまた危なそうな名前の死神…ではなく院長によると此処は彼が経営している病院の病室らしい、どうやら狂策はマッドサイエンティストではなくさしずめマッドドクターだろうか…ここで男が目覚めなかったら確実に医大生達の手術用教材にされていたところだった。


「ところで…何故オレは病院なんかに…?何も覚えてないんだが…。」


「ああ、そのことかい?いやぁ夜中に娘の友人達が君を担いでいきなり押しかけてきてね、必死な様子で『助けてくれ』と頼まれてね…まあ私も医者の端くれ、やるべきことをやったまでさ。」


「…そうだったのか、すまない。」


「なぁに、気にしなくていいさ♪それにその言葉は君を病院に運んできた子達に言うべきだろう、もっとも…仮に治療に失敗してたらしてたで君を教材にするのには変わりなかったしな♪フハハハハハハ!!」



「…撤回ッ!前言撤回するッ…!」


-男は気を失っていたため覚えがないが、誰かがここまで運び、狂策に治療を頼んでくれた様だ…改めて御礼を言うが、狂策がイロイロ台無しにする様な発言をしたため、男はより一層彼に対して身の危険を感じたのは言うまでもなかった…。


「お父さん、カケルちゃん達がそこの人と会っていいかって…。」


「む?ああ、構わんよ♪みんな入りたまえ♪」


-…と、二人して漫才みたいなやり取りをやってる最中、コンコン…と、ドアの外側から小さなノック音と誰かの声が聴こえてきたため、狂策は軽いノリで入室を許可すると、心配そうな顔のカケル、逆に警戒してる様子なカイ、そしてもう一人、首にチョーカーを付け、腰まで長い紫がかった黒髪をベルトで二つ結びにした、モデルばりにスタイルがいい長身にどこか気弱そうな印象の少女…狂策の娘・御神鎌沙霧が入室する。


「先生、あの…あの人は大丈夫ですか?」


「やあカケルちゃん、安心したまえ♪治療は無事に終了したし、それにたった今、目覚めたところだよ♪」


「いや待て!危なくまた眠らされると思ったぞ!永久に!!」


「お父さんったら…また患者さんをバラバラにしようとしたんだね…」


「また!?」


-…どうやら沙霧(むすめ)曰く、狂策(ちちおや)は今までの患者にも男にしたような本気か冗談か解らないドクタージョークをしてたようだ、仮に本当にやらかしていたらカケルは卒倒していただろうし男もこうして元気にツッコミなんて出来やしなかっただろう…。


「よかった…無事で…。」


「ああ、本っ当っにっ…無事でよかったさ…もしかして君達が、オレを…?」


「あ…はい!ボク、大空カケルっていいます!」


「…矢坂カイだ…。」


「そうか…ありがとう、助かったよ…。」


-無事の認識が違うカケル、そして何故かこちらを睨んでるカイに気づいた男は頭を下げる形で二人に礼を言う。


「いきなりこんなこと聞くのはなんですけど…。」


(おい、カケル…そいつは…。)


(いくら悪い人でもあんな傷だらけだったんだよ?何か事情はあるんじゃないかな?)


(しかし…むぅ…)


「…なんだ?」


「あ、すみません…どうしてあんな傷だらけで倒れてたんですか?あの…ええと…名前、は…。」


-カケルは横で注意を促すカイや昼間『エクリプス』に来た犬飼が言うように男が危険(?)なのは承知だった…しかし、あんな無惨で痛々しい姿を晒してたのだ、例え彼が悪人だとしてもこうして病院に連れていく優しい性格故になんだか放ってはおけず、どうしてそうなったか尋ねようとしたがここで彼の名前が解らなかったため言い淀んでしまった


「…名前…か…ええと…」


-男はカケルに言われて改めて気づいたが彼は自分の名前すら思い出せずに困惑するが、ふとここで遥に渡された鞄を開き、何か無いか探した…すると免許証、遥が用意してくれた自分を証明出来る物が見つかった。


(おや?あの鞄どこかで見た様な、見なかった様な…うーん…)


-この時、狂策が男の持ってた鞄を見て何か心当たりがあるのか自分の記憶を引き出して思い出そうとしてたが残念ながら余りにも昔のことなため忘れてしまったようだ…


「…神嶋、御影…。」


「え?」


「…それがオレの名前らしい…。」


(((…らしい?)))


-何故か疑問形、実に引っ掛かる様な言い方だったが免許証により男の名は神嶋御影と判明した。


「…なんであそこで倒れてたか、か…実は…ッ!!」


-御影は自分が倒れてた理由をこの場に居る者達に言おうとした途端、自分が今…如何に迂闊なことをしようとしているのか気づいた。


(ダメだ、この娘達を巻き込むワケにはいかない…)


-謎の施設を出て以来、誰かに命を執拗に狙われてる身…こんなこと話したら最悪カケル達にも危害が及ぶ、自分を助けてくれた恩人達なら尚更だ


「…悪いが、それは言えない。」


「…やましいことがあるなら話せるハズだが…?」


「…知らなくてもいいことがあると言っているんだ…。」


「なんだと…!?」


「…解らない奴らだな…余計な事に首を突っ込むな。」


「…こ…こいつッ!!」


「カ…カイちゃん…御影さんも…。」


「ふ…二人共、落ち着いて…」


-こうなれば、御影は知らぬ振りを通そうと思い、敢えて彼女達を突き放す様な冷たい言い方をしたが、それがカイの気に障ったらしく、お互いの間に険悪な雰囲気が流れた時だった…




「クク…見つけましたよ、まさか呑気に病院で寝ていたとは…ねぇ。」


「…い、犬飼…さん?」


-いつの間に居たのか?入口の陰から不敵な笑みを浮かべながらユラリと現れた犬飼の登場にその場に居た者達全員に戦慄が走る…


「そこの黒髪のお嬢さん、情報提供ありがとうございます♪クックックッ…」


「「「…!?」」」


「カ…カイ…ちゃん…?」


「…」


-どうやら彼を招き入れたのはカイらしい、犬飼が口端を釣り上げてニタリと笑い、その場に居た者は…特にカケルは衝撃受け、カイはそんなカケルの顔を見て黙ったまま表情を暗くして俯く


「…すまない、私は…どうしても…御影(ソイツ)を…信じられなくて…」


-カイが御影を信用出来ないのは無理も無い…今日会ったばかりで、先程まで自分の名前もロクに言えない…刑事である犬飼が警告するような危険人物、何よりカイはそんな御影を親友であるカケルの側になど居させる訳にはいかなかったのだ


「…そんな…なん、で…?」


「それ…は…」


-カケルは友達(カイ)の予期せぬ行動に動揺した、カイは今すぐにでも自分の思ったことを伝えたかったが…カケルの悲しげな眼を前にした途端、どうしても出来なかった


「…さて…フフッ…」


-犬飼は視線を御影に移し、ツカツカと彼のベッドへと近寄り、御影の耳元にそっと何かを囁く


(今すぐ病院を出て私と来てもらおう、さもないと…解りますよねぇ…?)


(まさか…お前…!!)


-犬飼はカケル達には見えない角度で御影に自身の鋭い『牙』を剥き出しにし、横目で彼女達を見つめる…犬飼の要求に従わなければカケル達に危害を加えるつもりらしい


(…表へ出ろ、あの娘達は関係無い…!)


(おお!怖い怖い…では御同行下さいませ、クフフフフフフ…)



-牙と視線の意味を瞬時に察した御影は無意識の内に…黒い瞳を一瞬だけだが妖しく煌めく『金色』に輝かせて犬飼を威嚇、犬飼は臆すことなくオーバーリアクション混じりで愉快そうにほくそ笑みながら御影の肩に馴れ馴れしく手を置く


「…では…」


「…チッ」


「待ちたまえ!その患者はまだ…」


-犬飼に連れられ、まだ痛む身体を無理矢理起こしてベッドから立ち上がる御影、だが狂策は完治して無い状態の患者である彼を外に出す訳にはいかなかったためそれを制止した、が…


(…すまん、どうやらオレが出て行かないとあんたの娘やその友達であるあの二人が危ないんだ…)


(…な!?し…しかしッ…!!)


(…恩人だからこそ尚更巻き込みたくないんだ)


(…すまない…!)


-御影は狂策の耳元で犬飼に何を言われたかを話すと狂策の顔はみるみる青褪めていく…それを聴いた狂策は歯を噛み締めながら顔を伏せ、病室から犬飼と共に出て行く御影に謝罪した



(…御影さん…!!)


「…カケルちゃん!?」


「待て!どこへ行くんだッ!?」


「まさか…!?行くんじゃない!!戻ってきたまえ!!」


-その直後…御影の後ろ姿と擦れ違い様の辛さを押し殺した彼の顔を見て何かを感じたカケルは堪らず、沙霧・カイ・狂策の制止を振り切って追いかけてしまった…




-月海市・市民公園。


「さて…此処ならば邪魔は入りませんね…ククククク…」


「…お前は一体…」


「焦らない焦らない、話は雰囲気(ムード)ってものが大切ですからねぇ…」


「病院の時といい今といい…人の神経逆撫でる様なことばかりしやがって…!!」


-深夜の公園に御影を連れて来た犬飼は勿体振った言い方で御影をジワジワとイラつかせていく…病院の時の脅迫めいた犬飼の耳打ちで既に怒り心頭の御影は今にも犬飼に殴り掛かかねないくらいに拳を強く握り締めていた


「さて、じゃあ本題に移りましょうか?神嶋御影…いいえ…『ヘラクレス』」


「…ギリシャ神話がどうした?」


-さっきまでふざけていた犬飼は急に真面目な顔でいきなり御影を『ヘラクレス』などと呼んだ…聞き覚えが無いワードだが御影はそれでも冷静に聞き返す


「…おや?どうやら記憶回路に一部、障害があるみたいだな…まあいい、ヘラクレス…私はねぇ、本来は君の回収を命じられて月海市(こんなところ)に来たんだよ…あのお方の命令で、ね」


「…あのお方…誰だそれは?」


-段々調子が乗ってきた犬飼は頼まれもしないのに自分に課せられた任務…何者かから御影の確保のことを話すが、自分の名前すら覚えてないような男である御影にはまるでついていけない内容だった…そして本当に覚えてないため仕方ないが、思わず犬飼の話した自分に何らかの関わりを持つ人物のことも『知らない』と言ってしまった、しかし、それがいけなかった


「まさか貴様…あのお方の…崇高なる我々の『王』たるあのお方の名まで忘れたのか…!?脳味噌の代わりにプリンでも入ってんのか!?クソがァアアアアアアアアアアアア!!」


「ぐっ…!?がっ…!!」


-次の瞬間、御影の言葉が相当に頭にきたのか、犬飼は今までの紳士的な態度から一変、口の『牙』を剥き出しにしながら荒々しい口調で怒鳴り散らしながら、御影の胸倉を掴んで地面に叩きつけたのだ


「…ふざけるな…ふざけんじゃねえぞ!ゴラァアアアアアアアアアッ!!」


「ゴボッ!?ゲッ…グッ…!!」


「あのお方の名を忘れただぁ!?意味解って言ってんのか!?カス!!死罪だ!重罪だ!許されざる大罪だァアアアアアアアアアア!!」


「ぐぼっ…かはっ…!!」



「このウジ虫!ゴミ虫!クソ虫!便所虫がァアアアアアアアアアアア!!」


「ブッ…あ…が…!!」


-犬飼は汚い罵声と怒涛の勢いの蹴りを怪我人であるにも関わらずに御影に容赦無しにお見舞いしまくる…最早今の犬飼は紳士ではない、獲物をなぶりものにする餓えた『野獣』そのものである


「あのお方はテメェを生きたまま連れ戻せと言ったがなぁ…!オレは前々からテメェの事が気に食わなかったんだよ!!オレよりも優れた『力』を持つテメェがなァ!!だから今まで散々テメェを殺そうと兵隊使ってここまで追い詰めてきたんだッ!!」


(やはり…コイツ…だったのか…オレを付け狙ってきたのは…!!)


-…そう、謎の施設からの逃亡以来の御影を瀕死の重傷に…いや、それどころか命さえも奪おうとしていた連中を操ってきたのは犬飼だったのだ、本来ならば犬飼は単に御影をあるお方なる人物の元へ連れ戻す任務を受けてたが、犬飼はどうやら御影に秘められた力に嫉妬し、私情最低の独断で彼の殺害に変更したのだ


「ハァー…ハァー…!!フゥー…さてと…では、そろそろ本気で殺すとしよう…コハァアアア…」


-犬飼は叫び過ぎてたためか、舌をだらし無く出しながら息切れを起こした、呼吸を整えると同時に、その舌に血の様な鮮やかな赤で輝く犬の様な形をした紋様(タトゥー)が浮かび上がる…すると犬飼は恐るべき変化を始める…




『アア゛ァアア゛アアオオォオオオオオオオオオオン!!』


「…!!?」




-犬の様な遠吠えと共に身体をのけ反らせると、犬飼は人間の姿から、全身を赤い体毛で覆われ、尚且つ、鋭い爪牙を携えた狼男を彷彿とさせる『異形の獣人』の姿へと変わったのだ


「な…なんだ…こいつは…!?」


『何を驚いている?ああそうか…貴様は記憶回路がイカレたどうしようもない…我々「合成魔獣」のことさえ忘れてしまっている愚か者だったよなぁッ!?』


-『合成魔獣(キメラ)』、ギリシャ神話に伝わる、異なる複数の獣達の合成体たる怪物のことであるが…どういうわけか、今御影の目の前で信じられない変身をした犬飼もその内の一体らしい



『二種以上のありとあらゆる動植物の遺伝子を元に生まれた…ウブッ…史上最強にして究極の…ヴォエッ…!エハッ…!!生物兵器(バイオウェポン)…それが我々、合成魔獣…!!』


「!!」


-犬飼…否、猟犬型のキメラ・コボルトは自分の口に手を突っ込み、中からフレイル型の武器を取り出してブンブン振り回し、御影の頭に向かって振り下ろす…御影がそれをすんでのところでかわすが、背後にあった公園の滑り台がバラバラになり、タダのスクラップと化した、その破壊力に冷や汗が零れ落ちる…


『全てにおいて人間以上に優れた我々こそが真の支配者だ!!人間に代わっていずれこの世を制する「合成魔獣」の王たるあの方のために!我々のために相応しい理想郷(セカイ)に変えることが私達の使命…だが、その理想郷に貴様は必要無い…グブッ…ハァッ…何故ならッ…!!』


(…しまっ…!?)


-コボルトが自分を含めた全ての合成魔獣の目的を御影にベラベラ話しながら、今度は口から鉈に似た形状をしてる猟刀をゲロリと吐き出し、御影目掛けて…


「私は貴様のことがァッ!大ッ嫌いだからだァアアアアアアアアアア!!」


-己の制御不能な狂気と殺意を乗せた刃を振り下ろす




(死ぬ…?ここで?オレが…?)


-自らに確実な『死』が迫るのを感じる御影にとっては猛スピードで振るわれるコボルトの猟刀のことは勿論、コボルトのことなど最早頭に無かった…そのため、動きが何故かゆっくり、ゆっくりとしたスローモーションに見えた…


「…チッ!こいつ…往生際が悪い奴…このッ!!」


-コボルトは御影が自分の斬撃を回避したため、イライラしながら舌打ちし、もう一度猟刀を振るが…


「自分のことが解らないまま死ぬ…?」


「な!?」


「…けるなよ…」


-なんと、何を思ったか、御影は猟刀を右手で受け止めた、当然ながら掌から鮮血が滴り落ちる…予想外の行動にコボルトは驚愕した…




「ふざけるな!!オレは…生きる!!オレ自身が何者か解るまで…」


「ヒッ!?」


「死んで…たまるか…ハァー…ハァー…うううう…ガァアアア…!!」


-御影の猟刀を掴む右手の甲に赤い輝きを放つカブトムシに似た紋様が浮かび上がり、加えて御影の眼も病院の時にも見せた金色に変わり、猟刀に力を入れて刃をバキンッと砕くと同時に、心臓の鼓動が早く…そして大きく脈打ち…生へのもがきを思わせる唸りを上げ、遂に『真の姿』を見せる…




『グォオ゛オオオオオォオオオ゛オオオ!!ア゛アアアアァアア゛アアアア゛アアアアァアアアアアアアアア゛アアアアアアアアアアアア!!』


-漆黒の甲冑を纏ったカブトムシを彷彿とさせる合成魔獣…ギリシャ神話に登場する十二の偉業を達成した偉大なる英雄の名を冠する者、その名は…『ヘラクレス』、夜をも引き裂く激しい咆哮と内に秘められた獣性と共に覚醒を遂げた…


CORD-2…どうも皆様、幻龍改め槌鋸鮫です!三月に書いた作品なのに今はもう十一月…遅いとかそんなレベルじゃない遅筆ぶりで本当に申し訳ありません!!思いの外長くなった上に仕事で忘れて放置…罪悪感が半端無いィイイイイ…!!御影の覚醒までの道のりがこんなに長いなんて…


御影「嘘みたいだろ?嘘みたいな話だろ?まだ二話目なんだぜ?これで…」


やめて!これ以上人の傷口に塩を塗り込まないでちょうだい!!


御影「うるさい、黙れ、よくも人に長い間埃かぶらせやがったな(怒)」


コホン、そ…それはさておき(←よくないだろ)またもや軽くキャラ紹介をばしていきましょう


・神嶋御影/ヘラクレス(イメージCV:速水奨):コートの男→本作主人公かつ人外と作者のせいで非常に遅〜い判明をした男、え?主人公はカケルだろって???そう思った人はおやつ抜きです(←意味解らん!)


・遠野遥(イメージCV:浅野真澄):冒頭で御影の逃亡を手伝った方、しかし現在は生死不明に…


・御神鎌狂策(イメージCV:成田剣):本来は別作品のキャラですが思い切って出してみました(汗)ぶっちゃけこんな医者いてたまるか!!


・御神鎌沙霧(イメージCV:能登麻美子):お父様と共に出演しました、本作においては彼女はカケルやカイの友達という立ち位置です


・『あの方』:犬飼/コボルトが名を出した人物であり崇拝してやまない(←歪んだ愛ともいう)合成魔獣の『王』、現時点では全てが謎に包まれている


次回はヘラクレスとしての御影が犬飼と激突…それではまた、槌鋸鮫でした!

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