第5話「魔力測定」
「きゃー!イケメンじゃなぁい!」
「プ、プッシェル…!静かにして…!」
「編入生………よく分からない………眠い…。」
「朝礼中だぞ、寝るな!」
この反応、どう解釈すれば良いのか分からない。
ただ、少なくとも悪い印象ではないだろう。
「トラキニオンは、昨日の編入試験の唯一の合格者だ。」
「イケメンでさらに強いなんて…っ!」
「ほう?どんなか漢か見極め甲斐がありそうだな。」
「いやいや、言い過ぎだよ。俺なんかよりみんなの方がよっぽど強いだろうさ、魔法に関しては、全くの素人だしね。」
これは本音だ。
魔法について、今まで考えた事も無かった。
ここでは人間社会以外にも、学べる事が多いだろう。
「それでは編入生も入ったことだし、みんなにも改めて自己紹介をしてもらおうか。
名前と自分の魔法属性を言ってくれ。まずは――」
魔法属性、そういった分類があるのか。
俺の属性は分からない。
「はいはーい!あたしは『ソフィア・ノクティブ』!魔法属性は火!よろしくね!」
「俺は『ジェンス・ハドル』だ。属性は物理。よろしくな!」
「先生の話を遮ってはいけませんよ。......と言いつつ僕も自己紹介を...。
僕は『ウール・デンジェルト』です。魔法属性は氷です。よろしくお願いします。」
「私は『プッシェル・フレイディ』。魔法属性は夢よ。よろしくね、デバス君。」
「わ、私はエンゼル......。『エンゼル・カウアス』です......。属性は毒です...。よろしく......。」
「僕は『ダッツ・ノレイジア』、魔法属性は木だよ。よろしくね。」
「......『リズビリー・ルーズネス』。水属性......よろしく。」
「俺は『ディストニー・ゴット・ルック』。光属性だ。よろしく頼む。」
「みんな自己紹介ありがとう。俺の魔法属性は、なんて言ったら良いのかな。分からないんだ。」
「分からない?どういう事?」
「トラキニオンの魔法属性は非常に特殊ゆえ、分類が難しい。
実技試験を見た限り、破壊属性と分類するのが最もしっくりくるだろう。」
なるほど、破壊属性か。
...教室全体の魔力が微かに揺らいでいる。
「破壊属性...?そんな属性、いくら特殊とはいえ聞いた事がないわ。血統属性なのかしら。」
「かっけー名前の属性じゃねえか!どんな魔法を使うのか、ますます興味が湧いたぜ。」
血統属性とは何だ。人間は何かと分類するのが好きなのか。
いや、この概念も圧倒的弱小種族なりに築き上げた体系。
容易に好きという言葉だけでは言い表せないか。
「自己紹介は全員終わったな。トラキニオンは登校初日だが、お前達は2日目。
例年通り、これから新学期最初の魔力測定を行なってもらう。トラキニオンも同様だ。」
「げっ!魔力量増えてなかったら、ちょー萎えなやつ!」
「ぎ、逆に減ってたりして......。」
魔力測定か。実技試験のように、上手く制御する必要がありそうだ。
「この水晶型の測定装置に手を触れると、体内の魔力量が水晶の中に数値として表示される仕組みだ。
名簿順に1人ずつ行なう。それではカウアスから始めてくれ。」
「頑張ってエンゼルちゃん!気を張るのよ!」
「気を張るも何もあるかよ。」
カウアスが水晶に触れると、水晶は白く光りだした。
そして数値が表示される。
「よ、476......。増えてた...。」
「よかったね!エンゼルちゃん!」
「次、ゴット・ルック。」
ディストニー・ゴット・ルック、といったか。
他の者と違い名が3節ある。家格が高いのだろう。
「ディストニー様!頑張ってください!」
「だから何を頑張るんだよ。」
ゴット・ルックが水晶に触れると、先と同様水晶は白く光りだし、数値が表示された。
生徒達はどよめいている。
「670...。流石ディストニーだね。」
「すげえな!流石皇帝陛下ってとこか!ガハハ!」
なるほど...現皇帝か。予想の範囲外だった。
「ジェンス...!いちいちその呼び方をするな!」
「次は―――」
測定は順調に行なわれている。
「次はデバス・トラキニオン。測定を開始しろ。」
今のところ平均数値は500程度。700前後を出せれば良い方だろう。
だが俺が水晶に触れた途端、水晶は黒く光りだし、小刻みに震え始めた。
「なんなの...?色も変だし、天井の魔法灯も点滅しているわ...。」
―――ピキピキ...
「水晶に亀裂が...!」
「...割れそうだよ。」
―――パリンッ...!!
想定より漏れたか。
意識的に力を制御するのは難しいものだな。
「測定装置を破壊してしまったようだ、面目ない。」
「...あれ...、割れた瞬間、一瞬何かが見えた気が―――」
「気のせいだ。
魔力の性質によっては、稀に水晶が割れる事がある。
...替えの測定器があるはずだ。持って来よう。
トラキニオンの魔力量は測定不能とする。」
「測定不能!?前代未聞ですよ...。」
カイダ・オーダー、何かを察したか。
一瞬、視線を俺に向けた。
「他にも測定出来なかった人は居るのかい?ディストニー。もっと昔にとかさ。」
さっきよりも空気が重い。
特にディストニー・ゴット・ルック。この男に目を付けられたら面倒だ。
「...いや、数多くの文献、記録書を読んだが、測定不能になった人間は見た事が無い。」
数分後、カイダ・オーダーが持って来た替えの測定器によって、測定は終了した。
全員の数値をまとめよう。
エンゼル・カウアス:魔力量476
ディストニー・ゴット・ルック:魔力量670
ジェンス・ハドル:魔力量514
プッシェル・フレイディ:魔力量567
ウール・デンジェルト:魔力量483
ソフィア・ノクティブ:魔力量480
ダッツ・ノレイジア:魔力量453
デバス・トラキニオン:魔力量??
リズビリー・ルーズネス:魔力量504
「以上で新学期最初の魔力測定は終了だ。
学年末にも再測定をするので、自分の今の数値を覚えておくように。
それと、トラキニオンの座席をまだ決めていなかったな。
そうだな、ちょうどゴット・ルックの隣が空いている。そこに座れ。」
「なっ...!そんな勝手に...!」
現皇帝の隣、運が良いのか悪いのか。




