第4話「編入」
学生寮に着いた。
レンガ調の外壁、屋根は本棟と同じく青い。
窓の数は40前後、生徒数に比例して部屋数も少ないのだろう。
規模は、本棟と比べて3分の1ほどの大きさしかない。
なんの因果か、俺の部屋は『851号室』らしい。
「今日からこの部屋で一緒に住むんだよ。
明日からは、俺が学校に行ってる間はそばに居てあげられない。
近くに公園があったから、そこで遊んでいるといいよ、お友達もできるだろうしね。
学校が終わったらすぐに迎えに行くよ。」
「わかった。こうえんであそぶ。まってる。」
部屋は至ってシンプル。
木製の勉強机、椅子、本棚、時計、ベッドがあるのみ。
天井には魔法灯が赤く灯っている。
気に入った。
「さ、夜ももう遅いし、お風呂に入ろうか。
1階に大浴場があるらしいんだ。」
部屋を出ようとしたその時、背後から覚えのある魔力を感じた。
「――今日は楽しかった?どう?ジク。」
振り返ると、開けた覚えのない窓際に白髪の悪魔が座っている。
「コズか。あまり俺に干渉するな。」
「俺は楽しかったよ?一緒に楽しもう。」
そう言いながら不敵な笑みを浮かべた悪魔は、
俺が瞬きをすると、もうそこには居なかった。
全く、自己中心的な奴だ。さっさと風呂を済ませて明日を迎えよう。
――翌朝――
「おはよう。今日もいい朝だね。」
「おはよう。まぶしい。」
一緒に歯を磨き、顔を洗う。
毎朝のルーティン。
腹が空いたが、金がない以上我慢するしかない。
食堂のような制度があれば良いのだが。
それに、昨日からずっとこの部屋からも魔力を感じていた。
天井の魔法灯か考えたが、制服だったとは。
魔力が一緒に編み込んであるようだ。
防御系の魔法も付与されている。
サイズも、着る人間によって自動で変化するらしい。
「準備も済んだし、公園に行こうか。」
「うん。」
公園は学校から5分ほど歩いた場所にあり、遠くはない。
恐らく本棟から視認出来るだろう。
子供らしい遊具が複数。何の変哲もない公園。
「じゃあ俺は学校に行かなきゃだから、ここで遊んで待ってるんだよ。行ってくるね。」
この距離ならば魔力で位置等は把握出来るし、
何かあったらすぐ戻れる。問題は無いだろう。
「うん。まってる。」
公園に預けたあとに向かうのは魔法学校本棟。
学生寮と違い、縦長く尖った屋根の頂上からは青い炎が吹き出ている。
雰囲気作りのための、一種の演出だろうか。
俺の教室は地上4階にあるらしい。3年1組だ。
もうすぐ朝礼が始まる時間。
教師の紹介を待って入った方が良いのか、最初から教室に入っていた方が良いのか分からない。
扉の前で立ち尽くしていた。
「来たか、デバス・トラキニオンだな。
昨日ぶりだが、改めて自己紹介させてもらう。
私は『カイダ・オーダー』。このクラスの担当教師だ。知っているだろうが、編入試験の試験官も担当している。1年間、よろしく頼む。」
昨日の男が担任教師か。
この男は観察価値が高い。都合が良いな。
「オーダー試験官殿ではないか、これは良い。
こちらこそよろしく頼むよ、先生。」
「私が今日の朝礼で編入生を紹介する流れになっている。入って来て良い、と言われたら教室に入れ。」
「了解した。」
正解は前者だったか。立ち尽くしていたのは正解だったな。
「昨日も伝えていた通り、今日から編入生がこのクラスに1人来る。紹介しよう、入って来て良いぞ。」
人間社会では初対面の印象が最も大事だと聞く。
良い印象を残せれば良いが。
「初めまして、デバス・トラキニオンだ。
ふつつか者だが、今日からよろしく頼むよ。」




