第3話「筆記試験と結果発表」
会場は広い石造りの構造。講堂のようだ。
椅子と机が等間隔に並べられており、天井には赤い魔法灯が灯っている。
この場所もまた、魔力を感じる。
そして会場内は異様な静けさに包まれている。
「それでは時間になったので筆記試験を開始する。
制限時間は1時間。無断で席を立った者は即不合格とし、筆記用具を落とした、または尿意等がある場合は必ず挙手をし私に報告をしてから動く事。」
筆記用具、言われてみれば持ってきていない。
滑り込みだった故、試験内容は広場で初めて知った。これは盲点。
「それとトラキニオン。魔法または目視でのカンニング、不正行為補助の可能性を否めないため、その少女は同席できない。」
真っ当な理由だ。
だからと言って外に置いてくる訳にはいかない。
「そういう事なら、オーダー試験官殿が筆記試験中、預かってくれないかい?あなたなら、そばで魔法が発動したらすぐに感知できるはず。
どうしても、目が離せないんだ。」
「……本来なら規則違反だ。だがお前の言う通り魔法はすぐに感知できる。その少女の事情は知ったことでは無いが、今回に限り私が預からせてもらう。野放しにするよりはマシだ。」
「助かるよ。あの男の人の横で静かにしているんだよ。」
「うん。」
この男、カイダ・オーダーと言ったな。
人間のわりには能力値が高い。
同時に観察対象にする価値も高い。
「何か質問がある者は居るか。
……居ないようなので筆記試験を開始とする。
始め。」
筆記試験の内容は実にくだらないものだった。
・神が最初に降臨したのは何年前か?
・現クルーウェル帝国の礎を築いた王の名前を答えよ。
・魔力濃度について、ロズテリー大森林から採取できる薬草、鉱石の名称を答えよ――
…どうでもいい。
俺が理解しているのは本質的な内部構造。
表面上しか学ばない、理解出来ないような問題は意味が無い。
――1時間後――
「やめ。そこまでだ。答案用紙を回収する。
トラキニオン、少女を連れて行け。」
「世話になったね。大人しかったろう?」
「……合否についての結果は、実技試験を行なった広場で公開する。採点は数分で終わる。ただちに広場に集まるように。」
これで全行程は終了か。
筆記試験は用具が無かったのでゼロ点になるのは目に見えている。
実技試験が重要だ。武器屋の男は合格率が10%以下と話していた。本当だとすれば、採点方式、点数上限によっては合格が出来るか怪しくなる。
「終わったことだし、広場に行こうか。」
「うん。」
広場に来て5分も経たないうちに、試験官がやってきた。
本当に採点はすぐ終わったようだ。
採点時に何かしらの魔法を使っているのだろうか。
気になるところだが、今はどうでもいい。
「それでは結果発表を行う。
まずは実技試験と筆記試験の点数発表だ。」
やはりか。
《デバス・トラキニオン》
《実技:100/100 筆記:0/100》
「あちゃ。筆記試験はゼロ点だ。」
「ジク、あたまわるい。」
やれる事は全てやった。
他の受験者の点数に目を向けてみると、
実技20・筆記50、実技45・筆記15……
まぁ、そんなものだろう。
「実技試験でやばかった奴、実技100点!?」
「それ以前に筆記が0点ってどういう事?」
「名前でも書き忘れたんじゃないか?」
「最後に合格者の発表を行う。受験者の諸君、今日はご苦労だった。」
実技試験は完璧だった。
これでどう転ぶ。
《合格者:1名》
《デバス・トラキニオン》
「合格者はトラキニオンだけ!?」
「はぁ…今回もダメだった…。」
「筆記がゼロ点なのに合格出来るの…!?」
合格できれば、それで良い。
点数なんて、所詮実力を可視化したものに過ぎない。
「合格基準に関しては秘匿事項ゆえに、話す事はできない。異論は認められない。
では解散してくれ。ただし合格したトラキニオンは、編入手続きをするので残るように。」
「終わったね、受かっていて良かったよ。」
「よかった。」
不合格だった受験者からは、何やら不満そうな目線を向けられたが、現実を素直に受け止められないようでは、この先も合格することは難しいだろう。
編入手続きの際、この学校の制度をいくつか知ることができた。その中でも、
全寮制であること。
生活費は全額学校から支給されること。
特にこの2点が大きい。手っ取り早く住居と食事を手に入れる事が出来た。
逆に言えば、それだけ生徒の育成に力を入れているということ。どんな人間が居るのか興味が湧く。
「編入手続きの際、入寮手続きも完了したが、
今日は帰るか?今からでも寮に住む事は可能だが、どうする。」
その前に、1番重要な事を確認しなければならない。
「俺の部屋と生活費は支給されるとして、この子はどういう待遇になるのかな。一人暮らしさせるにはまだ早いし、事情があって、別々で暮らすことは出来ないんだ。」
「その少女も一緒に寮で暮らして構わない。生活費も2人分支給されるだろう。」
「本当か!助かった。」
「……実技試験100点の特別待遇だ。本来、規則違反だという事に変わりはない。
筆記試験前にも言ったが、野放しにされるよりマシなだけだ。上には私から話を通しておく。」
警戒しているのか?
一瞬、この男の魔力が揺らいだ。
そんな素振りをさせた覚えはないが、まぁ、今はこれで良いとしよう。
「ありがとう、試験官殿。
今から寮に入りたい。案内してくれないかい?」




