第1話「侵入」
「―――やっと着いた。
ここがクルーウェル帝国………。」
「―とおかったね。」
そう言いながら俺の手を握る『クロ』。
「そうだね、疲れていないかい?」
「ううん。」
俺の名前はデバス。『デバス・トラキニオン』
ひょんなことから、このクルーウェル帝国、
別名『最後の砦』を目指してクロと2人でやってきた。
本当に疲れた。だが休む暇もない。
「せっかくだし、宿を探す前に街を歩いて見て回ろうか?」
金も無いしな。
「うん。」
街を照らす青い炎、帝国上空を薄ら覆う結界、すれ違う兵士らしき男の防具は魔力を帯びている。
ぱっと見た感じ、この帝国は魔法によってかなり発展している。
街ゆく人にも活気が溢れている。
街道は石垣で綺麗に整備されていて、商店や武器屋らしき店、民家が数多く建ち並んでいる。
街を歩いていると、整った景色とは裏腹に、物騒な貼り紙がいたる所に貼ってあるのが目に入る。
その中で1つだけ異質な貼り紙があった。
《悪魔討伐依頼》
《報酬金:1体20万ゼニー〜50万ゼニー》
《場所:北廃墟街》
《募集人数:5名》
悪魔1体討伐するだけで最低20万ゼニーも貰えるなんて、かなりの好条件だ。
ただ、備考欄が気になる。
《備考1:王立魔法専門学校卒業生は優先的に雇入れ》
《備考2:同学校の卒業生の場合は倍額支払いとする》
王立魔法専門学校。
そんな教育機関がここにはあるのか。
それに倍額支払いなんて、好待遇にも程がある。
近くの武器屋らしき店の男に話を聞くか。
「おっちゃん、いい筋肉してるね。
聞きたい事があるんだけど、良いかい?」
褒めたつもりだったが、何やら不服そうだ。
「何だ若造。値下げ交渉なら無駄だ。さっさと帰んな。」
「そんなんじゃないさ。この貼り紙に書かれている『王立魔法専門学校』が何なのか知りたい。
知っているかい?」
どうやら値下げ交渉を持ちかけられると思い、
不服そうな態度をしたようだ。
違うと分かると、何故か驚きながらも詳細に説明してくれた。
「お前、そんな事も知らねぇで今まで生きてきたのか?珍しい奴も居るもんだな。
王立魔法専門学校はこの国に1校しかない魔法学校で、帝国が運営している。
なんでも合格率が10%以下ってのが有名だ。合格出来たらエリート人生まっしぐらだろうぜ。
まさかお前、今日の編入試験の受験生とか言わねぇよな?」
編入試験、丁度いい。
金も立場も同時に手に入る。
それに、タイミングが良すぎる。
―――奴の仕業だな。
「そうさ。場所が分からなくて困っているんだ。
教えてくれたら助かるのだが…。」
「おいおい、もう試験開始まで時間がねぇぞ。
この道を真っ直ぐ行って、左側に大きな青い屋根の建物があるだろ、あれが魔法学校だ。」
「アレだね。助かるよ。」
時間がないようだ。走るか。
「抱っこするよ。走って行くから。」
「うん。」
抱きかかえながら走った事はなかったが、
案外走りやすいものだ。
「頑張って来いよ〜若造!!まっ、受かんねぇと思うがな。」
――試験会場前――
「受験者の方は広場に入って待機してください。辞退をする方は必ず試験開始時間までに申し出てください。」
試験官らしき男が案内をしている。
時間には間に合ったようだ。
「俺も受験したいのだが、飛び入り参加は可能かな?」
「構わん。一般の入学試験は事前に手続きが必要だが、これは編入試験だ。必要ない。
だがお前が抱えている少女は安全の都合上、中には入れられない。」
面倒だ。
「俺が近くに居ないと泣いて止まないんだ。危険は承知、2人で中に入れてもらえないだろうか。」
「では少女に何かあった場合、学校は責任を一切取らない。それでも良いなら好きにしろ。」
「承知した。礼を言うよ。」
広場はかなり広い。構造も頑丈だ。
この広場全体に魔力を感じる。
防御系の魔法が張られている、と言った所だろう。
魔法専門の学校ならば、実践用の設備も備わっているのも当然か。
「では試験開始時間になったので、編入試験を開始する。
筆記試験と実技試験のうち、まずはここで実技試験を受けてもらう。
名前を呼ばれた者は前に出てくること。」
実技試験か。
どんな内容なのか、見物だ。
「その前に自己紹介をしよう。
私は、カイダ・オーダー。今回の編入試験の試験官を務める。受験者の諸君には死なない程度に頑張ってもらいたい。では名前を呼ぶ。
デバス・トラキニオン、前へ。」
トップバッターとはな。
まぁいい。
「デバス・トラキニオンだ。よろしく頼む、試験官殿。」
この世界のゼニー(円)は、日本円1円=1ゼニー
という設定です。




