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破壊の観察者  作者: 紫 緋色
編入試験編
1/8

第1話「侵入」

「―――やっと着いた。

ここがクルーウェル帝国………。」


「―とおかったね。」


そう言いながら俺の手を握る『クロ』。


「そうだね、疲れていないかい?」


「ううん。」


俺の名前はデバス。『デバス・トラキニオン』

ひょんなことから、このクルーウェル帝国、

別名『最後の砦』を目指してクロと2人でやってきた。

本当に疲れた。だが休む暇もない。


「せっかくだし、宿を探す前に街を歩いて見て回ろうか?」


 金も無いしな。


「うん。」


 街を照らす青い炎、帝国上空を薄ら覆う結界、すれ違う兵士らしき男の防具は魔力を帯びている。

ぱっと見た感じ、この帝国は魔法によってかなり発展している。

街ゆく人にも活気が溢れている。

街道は石垣で綺麗に整備されていて、商店や武器屋らしき店、民家が数多く建ち並んでいる。

 街を歩いていると、整った景色とは裏腹に、物騒な貼り紙がいたる所に貼ってあるのが目に入る。

その中で1つだけ異質な貼り紙があった。


《悪魔討伐依頼》

《報酬金:1体20万ゼニー〜50万ゼニー》

《場所:北廃墟街》

《募集人数:5名》


 悪魔1体討伐するだけで最低20万ゼニーも貰えるなんて、かなりの好条件だ。

ただ、備考欄が気になる。


《備考1:王立魔法専門学校卒業生は優先的に雇入れ》

《備考2:同学校の卒業生の場合は倍額支払いとする》


 王立魔法専門学校。

そんな教育機関がここにはあるのか。

それに倍額支払いなんて、好待遇にも程がある。

近くの武器屋らしき店の男に話を聞くか。


「おっちゃん、いい筋肉してるね。

聞きたい事があるんだけど、良いかい?」


 褒めたつもりだったが、何やら不服そうだ。


「何だ若造。値下げ交渉なら無駄だ。さっさと帰んな。」


「そんなんじゃないさ。この貼り紙に書かれている『王立魔法専門学校』が何なのか知りたい。

知っているかい?」


 どうやら値下げ交渉を持ちかけられると思い、

不服そうな態度をしたようだ。

違うと分かると、何故か驚きながらも詳細に説明してくれた。


「お前、そんな事も知らねぇで今まで生きてきたのか?珍しい奴も居るもんだな。

王立魔法専門学校はこの国に1校しかない魔法学校で、帝国が運営している。

なんでも合格率が10%以下ってのが有名だ。合格出来たらエリート人生まっしぐらだろうぜ。

まさかお前、今日の編入試験の受験生とか言わねぇよな?」


 編入試験、丁度いい。

金も立場も同時に手に入る。

それに、タイミングが良すぎる。

―――()の仕業だな。


「そうさ。場所が分からなくて困っているんだ。

教えてくれたら助かるのだが…。」


「おいおい、もう試験開始まで時間がねぇぞ。

この道を真っ直ぐ行って、左側に大きな青い屋根の建物があるだろ、あれが魔法学校だ。」


「アレだね。助かるよ。」


 時間がないようだ。走るか。


「抱っこするよ。走って行くから。」


「うん。」


 抱きかかえながら走った事はなかったが、

案外走りやすいものだ。


「頑張って来いよ〜若造!!まっ、受かんねぇと思うがな。」


――試験会場前――


「受験者の方は広場に入って待機してください。辞退をする方は必ず試験開始時間までに申し出てください。」


 試験官らしき男が案内をしている。

時間には間に合ったようだ。


「俺も受験したいのだが、飛び入り参加は可能かな?」


「構わん。一般の入学試験は事前に手続きが必要だが、これは編入試験だ。必要ない。

だがお前が抱えている少女は安全の都合上、中には入れられない。」


 面倒だ。


「俺が近くに居ないと泣いて止まないんだ。危険は承知、2人で中に入れてもらえないだろうか。」


「では少女に何かあった場合、学校は責任を一切取らない。それでも良いなら好きにしろ。」


「承知した。礼を言うよ。」


 広場はかなり広い。構造も頑丈だ。

この広場全体に魔力を感じる。

防御系の魔法が張られている、と言った所だろう。

魔法専門の学校ならば、実践用の設備も備わっているのも当然か。


「では試験開始時間になったので、編入試験を開始する。

筆記試験と実技試験のうち、まずはここで実技試験を受けてもらう。

名前を呼ばれた者は前に出てくること。」


 実技試験か。

どんな内容なのか、見物だ。


「その前に自己紹介をしよう。

私は、カイダ・オーダー。今回の編入試験の試験官を務める。受験者の諸君には死なない程度に頑張ってもらいたい。では名前を呼ぶ。

デバス・トラキニオン、前へ。」


 トップバッターとはな。

まぁいい。 


「デバス・トラキニオンだ。よろしく頼む、試験官殿。」

この世界のゼニー(円)は、日本円1円=1ゼニー

という設定です。

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