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正しかった気がする  作者: kinpo


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第6話

 通路の自販機が、一台だけ点いていなかった。


 壊れている、という感じではない。

 表示が消えているだけだ。


 隣の自販機は、普通に稼働している。

 値段も、冷却も、問題ない。


(電源の系統が違うのか)


 考える。

 答えは、出ない。


 彼女は、点いていない方を見ている。


「前、ここにありましたっけ」


 判断が、遅れる。


「……あった気がします」


 気がする、という程度だ。


 彼女は、頷いた。


 確信が欲しいわけではないらしい。


 点いている方で、飲み物を買う。


 取り出し口の扉が、少し固い。


 強めに引く。


 音が、大きい。


 中の缶は、ぬるかった。


(温度設定、変わったか)


 考える。


 答えは、出ない。


 彼女は、買わない。


「喉、乾いてないんですか」


「さっき、飲んだので」


 いつの話かは、言わない。


 歩き出す。


 床の模様が、途中で変わっている。


 線が、ずれている。


 意図的なのか、

 貼り替えの途中なのか。


(前は、揃っていた)


 気がする。


 彼女は、線をまたがない。


 無意識の動き。


 こちらも、つられてまたぐ。


 理由は、分からない。


 角を曲がる。


 案内板がある。


 「出口」の矢印が、二つ。


 向きが、少し違う。


 距離も、同じくらい。


(どちらも外に出る)


 そう思う。


 でも、どちらかは、

 外じゃない気もする。


 彼女が、左を見る。


 こちらは、右を見る。


 目が合う。


「どっちだと思います?」


 判断が、遅れる。


「……左、ですかね」


 根拠は、ない。


 彼女は、右に行く。


 否定ではない。


 ただ、選択が違う。


 少し歩いて、

 立ち止まる。


 右の通路は、

 途中で工事用の壁に塞がれていた。


 突き当たりに、

 小さな貼り紙。


 「通行止め」


 理由は、書いていない。


 彼女は、引き返す。


 何も言わない。


 合流する。


(左だった)


 判断は、正しい。

 一手遅れて。


 左の通路は、

 普通に続いている。


 出口は、まだ見えない。


 人の流れが、少し変わる。


 多くもなく、

 少なくもない。


 時間が、止まっている感じはしない。

 進んでもいない気がする。


 彼女が、歩きながら言う。


「さっきの、自販機」


「はい」


「点いてなかった方、

 前に見た覚えがなくて」


 こちらは、考える。


 判断が、遅れる。


「自分は、あった気がします」


 どちらが正しいかは、

 分からない。


 彼女は、少し考えてから、


「じゃあ、

 点いてない方が新しいですね」


 推理だ。


 確認は、しない。


 納得も、しない。


 ただ、そう置く。


 歩き続ける。


 外の光が、見えてくる。


 夕方に、近い。


《これは、誰も生き残る必要のない話である。》


(点いてない自販機の方が、

 ちゃんとあった気がする)


 出口のガラスに、

 二人分の影が、重なっていた。

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