番外編 王女と勇者のまったり休日
朝の帝都は穏やかで、鳥のさえずりが城下に響く。
今日は久しぶりに、公式行事も任務もない休日だ。
「ふふ、久しぶりにこうしてゆっくりできますわね」
庭のベンチで紅茶を飲みながら、私は笑う。
「そうだね。でもセレナさん、君って休日も緊張してる気がする」
勇者は無邪気にそう言いながら、庭の花を眺めている。
「それは……王女だから仕方ありませんのよ?」
少し照れながら答えると、勇者は大きく笑った。
「じゃあ今日は王女じゃなくて、“セレナさん”として一日過ごそう!」
──その言葉に、胸がちくりとする。
戦いも任務も終わった今、二人きりの自由な時間。
でも、私たちの関係はもう、任務の枠を超えている。
勇者は花壇の花を摘み、私に差し出す。
「セレナさん、この花、君に似合いそうだから」
赤い花を受け取り、私は微笑む。
「ありがとうございますわ……でも、こうして私を褒めると、また任務と勘違いしません?」
「ふふ、もう任務じゃなくて、本当に好きだからだよ」
胸が熱くなった。
その瞬間、遠くで城の鐘が鳴る。
任務を思い出すような音だったが、今日は無視。
「じゃあ今日は、一緒に庭でピクニックでもしましょうか」
私は籠にお菓子と果物を詰める。
勇者は嬉しそうに、それを手伝うふりをして、果物を一つ口に放り込む。
「……あっ、ダメ! それは私が食べる分ですの!」
私は慌てて果物を取り返し、勇者は笑い転げる。
こうして、帝国の王女と異世界勇者の休日は、静かに、しかしとても幸せに過ぎていった。
戦いの緊張も、国の重圧も、今は遠い話。
ただ二人で笑い合う時間が、何よりも尊く感じられた。
──小さな日常の一瞬が、私たちの未来を確かに支えている。
任務も恋も、すべてを超えた“今”の幸せが、二人の絆をさらに強くしていた。




