第十四話 運命の夜
夜空は血のように赤く染まり、帝都全体を包み込む。
城壁の上から見ると、魔王の巨大な影が街を覆っていた。
しかし、私の手には勇者の手がある。
「セレナさん、怖くない?」
勇者は微笑む。
その笑顔に、心の奥がぎゅっと熱くなる。
「怖くありませんわ。あなたと一緒なら」
剣を握り、私は決意を込める。
恋も、任務も、すべて守る──その覚悟で立つ。
魔王が咆哮を上げ、地面を揺らす。
闇の魔力が波のように城を襲う。
兵士たちは恐怖に押され、数人が倒れた。
「セレナさん、俺たちで止めるんだ!」
勇者が笑顔で言い、剣を高く掲げる。
その姿に、私も力がみなぎる。
二人で一歩前に出た瞬間、魔王の力が炸裂する。
光と闇がぶつかり合い、城の塔が揺れる。
しかし、勇者の無邪気で真っ直ぐな力が、闇を打ち破る光となった。
「あなたとなら……!」
私は声を張り、魔王の影に剣を突き立てる。
同時に、勇者も斬撃を放ち、光の力が二人を中心に渦巻く。
そして──魔王がついに崩れ、闇は夜空に溶けて消えた。
街に平穏が戻る。
帝国は、勇者と王女の力によって救われた。
息を整えながら、勇者が私の手を握る。
「セレナさん……ありがとう。君がいてくれたから、勝てたんだ」
胸の奥で、涙がこみ上げる。
戦いの緊張が解けた瞬間、全ての感情が一気に溢れる。
「私も……あなたと一緒で良かったですわ。
任務としての恋も、心からの恋も……全部、あなたと守りたい」
勇者は微笑み、そっと私の額に触れた。
「俺もだよ、セレナさん。これからも、ずっと一緒に」
──夜空に残る月明かりの下、
二人は手を重ね、未来を誓った。
戦いも任務も終わり、二人の恋は静かに、しかし確実に始まった。
帝国の民は眠れぬ夜に、王女と勇者の勇姿を胸に刻む。
世界はまだ完全に平穏ではない。
だが、二人なら、どんな困難も乗り越えられる──そう確信できた夜だった。




