第十話 王女、ついに告白の時?
戦いが終わり、帝都は静かだった。
城下の街灯が、月明かりと混ざり、柔らかな光を放つ。
夜風が、疲れた身体と心を撫でる。
私は自室で、胸の奥のもやもやを整理していた。
任務として勇者を落とす──だけではもう足りない。
胸の奥で芽生えた感情は、任務を超えてしまった。
「……勇者様、私……」
言葉を口に出す勇気は、まだ出ない。
けれど、戦いの夜に彼の笑顔を守れた自信が、少しだけ背中を押してくれる。
その時、扉がそっと開いた。
「セレナさん……眠れないの?」
勇者の声。
いつもの無邪気な笑顔。
でも、その瞳は真剣で、私をまっすぐに見つめていた。
「え……その、少し……」
言葉に詰まる私。
勇者は近づき、柔らかく座る。
「セレナさん、戦いの後でも、ずっと思ってました。
俺、君がいると安心するんです。怖くても、君がいると平気になる」
──胸が、ぎゅっとなる。
こんなに率直に言われたら、心が揺れないわけがない。
「勇者様……」
私は深呼吸して、全身の力を込めて言った。
「私……勇者様のこと、任務としてだけではなく、心から大切に思っていますの」
勇者の目が、大きく見開かれる。
そして、次の瞬間──
「……セレナさん、俺もです。
君がいると、世界の怖さも全部、少しだけ優しくなるんです」
互いに視線が交わる。
その距離は、一瞬で縮まり、世界が静止したように感じられた。
──そして、月明かりの下、二人はそっと手を重ねた。
任務としての恋は、ついに、心からの恋へと変わった瞬間だった。
しかし、世界は静かに動き続ける。
国々の思惑、魔王復活の予兆、そして聖女リオナの存在……
すべてが、この恋をさらなる試練へと導いていく。
それでも、私は心の中で誓った。
「勇者様となら、任務も世界も、全て乗り越えられる──」
月明かりの下、王女と勇者の新たな物語が、静かに始まった。




