ホラーゲーム
俺は生まれた時から目が見えなかった。
しかし、このゲーム機、オモチャバコを始めてから世界には色がある事を知った。
漠然と建物や乗り物、あらゆる物質には形があり、ぼんやりとしか見えない僕にはゲームを通して、それを繊細に内部まで理解できた。
ゲーム内では声や肉体、性別を自由に変更出来たので、現実の気まずさとは無縁であった。
凄いゲームだと思う。
このゲームの運営会社、オモチャニキセンパイという会社。
……社名どうにかしてよ。
ゲーム業界に閃光の様に現れて、その革新的技術を第一位と第二位のゲーム会社に即座に奪われた。
つまり、この会社は現在、日本市場では業界第五位ぐらいなのである。
果たして、この情報はいるのだろうか?
ギルドに戻ってきた。
巨大な城の入り口に降り立つ。
ゲームギルドというやる気の無いカタカナ文字の看板が見える。
手抜きで、手描き感が凄い……
周りを見渡すと城の外の園庭にはパラソルで休憩しているゲーマーがいる。
今は夜、その中に先程ゲームを一緒にプレイしていた人を見つけた。
タマゴは配信をしているので追っかけのファンが背景に沢山いるのでわかるのだ。
何やら、ああいう業界は休日もファンが観戦したり見守りたい? という事でファンが付いてきているのだ。
二人は椅子でくつろいでいる様だ。
俺「ドラゴンに食われていたタマゴと、腕が本体になったリオリオ」
タマゴ「シミズだって溶けて無くなる前にあんな声出してたじゃん」
リオリオ「情けないなぁw」
先程のヤモリっぽいドラゴンに燃やされた事を思い出す。
俺「アハハハッ」
乾いた笑いで誤魔化す。二人も笑う。じゃあ次はこれ行こうとパンフレットをタマゴが取り出し指さした。
それって…… ホラーじゃん。
パンフレットを同時に押すとゲーム内へ出発する。俺も押す。
□
小学校にいる。この小学校には妖怪が取り付いていて、それを祓うのがゲームの趣旨らしい。
上履きを履いて校舎を歩く。
皆、自分が子供だった頃の姿をしている。
学校は何もかもが大きい。
俺も目が見えていたら、こんな所で勉強していたのだろう。
?「ケケケケケ」
廊下の奥に何かがいる。
良く理科室にある。
内蔵の……パーツが見える。
それは人体模型だった。
ガシャガシャと人体模型がこちらへ走ってくる。
リオリオ「逃げろぉおおお」
タマゴ「キャー」
俺「うおっ!」
おじさんのリオリオはぽっちゃりとした少年だ。
タマゴはフリルの可愛らしい女の子だ。
俺はガリガリの眼鏡少年だ。
笑いながら反対方向へ走る。
一斉に階段を駆け上がるも、
俺だけ走りなれていないので、
徐々に遅れ始めた。
そして離れ離れになってしまった。
「マジか…」
俺は呟く。
目の前には図書室があった。
俺は漢字だけは、この世界で勉強していたので何とか読めるのだが取りあえず部屋に入る。
部屋の真ん中に何かが浮いている。
御札と書かれていた。
ゲームだからかエフェクト? 光の柱の中心に御札と書かれたアイテムが浮いていた。
御札か……何かの罠か。
とりあえず手で触れる。
シミズは御札を手に入れた。
と視界内に表示された。
俺「これで人体模型倒せそうだな」
◇
「こんにちは!」
俺は廊下で大声を出した。
人体模型を呼び寄せる為だ。
「こんにちは!」
何度も呼ぶ。
何分か経つと
カタカタカタカタと、
音が聞こえてきた。
目の前の廊下の奥から、
先程の人体模型が現れた。
学校の廊下って隠れられる所が、
ロッカー以外無いので、
廊下は待ち伏せには便利なのだ。
「アイテム欄、オープン」
アイテム欄が手元に出てくる。
俺はその中の御札を押す。
御札が手の中に出てきた。
紙の肌触りが伝わる。
「御札使用!」
御札が消える。
ピカッピカとスペクトル光が点滅して、
人体模型に御札が貼られた。
ジューン。
謎の効果音がしている。
「ギョエエエエエエ!」
人体模型の体が下から上に向かって素早く消えていった。
俺「成仏した。やったぜ!」
人体模型を倒したり。とVサイン。
誰もいないのに俺はポーズをした。
「ケケケケケッ?」
音楽家の絵が前方から突如現れる。
やべぇ逆へ、と振り返った。
逆側には廊下一杯に膨らんだ女の人の顔がある。
「み~つけた」
巨大顔はニヤリと笑った。
えっ……
絵と巨大顔に両側から挟まれている。
これって、つまり…
絵「ケケケケッ♪」
巨大顔「かわいいね♪」
俺「ぐわあああああああああああああああああああああああああああ!!」
GAMEOVER