天界の騒ぎ
こあという少女と、魔女のドロシーが寺院を調査している最中、黒雲が上空で渦巻く薄暗い庭の破壊された大きな入り口の門付近でただ伸びている、雷太とドクターグレー。気絶した男二人、何も起きるはずもなく、ボーイがラブラブするわけでもなく、戦いも起きない。静かなひと時であった。
しかし、そこに一筋の細い光が差す。黄色い稲妻が光に沿って降りてきて、雷太の元に白い髪、白い衣装の男の娘の天使が現れた。名前はツカサと言う。
「まあ!!! 雷太様と、憎き科学者が同時に倒れてます! きっと激しい戦いをして相打ちになったのでしょう。雷太様だけ天界に連れて帰って治療しなければ! それとあんな事も。ふふ」
雷太は天に召されて、それから少しして調査を終えた、こあとドロシーが談笑しながら出てきた。雷太がいない事に気づく。
「一人で帰ったのでしょうか」
「そうだね。こあちゃんの打撃も余裕で耐えれるもんね」
「はい。頑丈さだけは褒めたいと思います……あと、この寺院って地下に大きな空間があるのは風音さんから申し出があって、それっぽい入り口はありましたね。今度また開けに来ましょう」
「うん。って私も!?」
「お兄さんは使い物にならないので」
「あ、うん。変な事する的な意味でね。うん」
やや困惑した表情で大きな箒を取り出し、思考を放棄する。後ろ側に抱きつく形でこあも乗り込み、共に大都市第1区域へ飛び立つ。風を切りながらドロシー達は空を眺め、青い野鳥の群れが同じ方向へ一緒に滑空。
ドロシーの後ろでとても幸せそうな表情をしているこあだが、気づかずに必死に魔力が途絶えないよう、魔力をコントロールする。
「そういえば、この辺に天界があるんだよ! こあちゃんも行ってみる?」
「はい! お願いします」
ここで青い野鳥達とお別れをし、別の軌道へ。
地上の地域で言えば、大都市から北方向へ外れた海の上、天界があった。ドロシーは顔パスで通り、こあは少し天界へ入る聞き取り調査の為、一度別々の行動になった。そのまま天界へ入り、近くの、慣れた雰囲気で箒片手に露店街を練り歩く。地上の人間が売っている物とは違い、高そうな光る金属のアクセサリー類、食器などが沢山あった。
ふと見かけた書店に立ち入り、様々な書類を眺める。雰囲気としてはこちらはあまり地上と変わらず、立ち読みしている天使も多くいる。ドロシーもふと見かけた漫画に手を伸ばす。
白龍と狐の絆を描かれた作品で、最終的には三人で幸せに暮らす内容のもの。
「天界で狐? まあ、無いもの求めてるのも人間と変わらないのかな?」
「あああ、すみませんそこの魔女さん。うっかり売り物ではない作品が混ざってました」
横から、店主の男性の天使がやってきて、申し訳なさそうにペコペコお辞儀。
「ダメならいいですけど、これ私に売ってくれませんか?」
「そう、ですね。分かりました。特別にお売りしましょう。こちらへどうぞ」
レジの元へ。天界の通貨を使って購入を済ませ、自分のバッグへ財布と一緒に忍ばせる。お礼を言って書店を出ると、何やら野次馬が出来て大騒ぎになっていた。天使の大群をかき分けて行くと、ツカサにベッタリ腕を組まれて嫌々歩いている雷太の姿があった。
「ったく! 離れろお前! 俺は帰る」
「いいじゃないですかー。もっとうふふしましょー」
「雷太くん!? ああ、あの子、男の子と付き合う趣味があったなんて。いつも女性の胸揉んでるのに……」
こっそり紛れてスマートフォンで撮影してしまう。すぐにそれもバッグに戻し、悟られないようコソコソ天界入り口の門へ。雷太の妹、こあを迎えに行く。丁度聞き取り審査を終え、入る事が出来たこあが待ちぼうけしていた。
「とても賑やかな場所なんですね! 露店街とかあります」
「うん!!! ちょっと工事中だから一緒に女神様の宮殿見学はどうかな!!!!」
「いいですね。案内お願いします」
「わかった!!!」
と、内心ほっとしていた。