表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/42

【番外編】サリーが選ぶ婚約指輪




ルイからとっても素敵な婚約指輪をもらった。



私の瞳の色のピンクダイヤモンドの指輪とそれを半分囲むようになっている半円状に小さなブルーサファイアが連なる指輪。



『僕が君を守っているかのようだろう?』


そう甘く微笑みながらルイに言われたのを思い出す。






「サリエラ幸せそうね」


「うん。私、幸せだわ」


「サリエラは何かルイに送ったりした?」



ローレンナとのお茶会中にそう言われて私はハッとした。



「そう言えば……私……何も返してないわ」


「まぁ男性からの贈り物に女性はお返しする必要はないけれどね。

そんなにサリエラは自分のだと主張するようなものを贈られたんだから。

あなたもいろんな意味でお返しをしてもいいかもね」



ローレンナの言葉に確かにと思い立つ。

王命での婚約は公にされていない。

私たちの婚約は学園卒業後に結んだということにしている。

私の男爵位としての仕事のために発表を遅らせたとなっている。



しかし、発表したタイミングがタイミングだったので、どれだけ私たちが仲睦まじくしようとも諦めない令嬢はまだ一定数いる。


社交界では

『筆頭公爵家を守るための仮初の婚約なのではないか』

という希望を含んだ憶測が飛び交っている。


あながち間違ってはいないのだが、それは過去の事で今はお互い想い合っての『本当の婚約』だ。




私がルイの色を二色使ったドレスを着ようと、ダンスを三回踊ろうと憶測や噂は広がる。


なぜなら、ルイは筆頭公爵家嫡男で容姿も良い。

そして国王の補佐でもあるので、令嬢も簡単に諦められないことも分かる。


けれど分かるのと納得するのとは話が違う。


想いが通じ合う前から、私はルイに意味ありげな視線を送る令嬢たちに密かに嫉妬していた。

ルイにもばれないように押し隠していた嫉妬。


それを思えば、この指輪はルイの独占欲と嫉妬から選ばれたものだと嬉しいと思ってしまう。



「何か私もルイに贈りたいわ」


「そうよね! そうよね! 

そう思って私、色々準備したの」



そう言ってメイドにカタログと石のサンプルを持ってくるようにお願いするローレンナ。



「私もね、サリエラから左手の薬指の指輪の話を聞いてアレクに贈ろうと思っているの。

一緒に考えましょう。

久しぶりだわ。こういうの」



左手の薬指の愛の血管の話を、指輪を贈られた後に話してからローレンナはこの話がお気に入りだ。

メイドに持ってきてもらったカタログを二人で見る。



「ローレンナはどんなものを考えているの?」


「私? 私はね……シトリンとペリドットにするつもりよ」


「それは……陛下が喜びそうね」


「シトリンの『繁栄・富・成功』はアレクにぴったりでしょう?

それに隠すようにペリドットをつけるの……。

あまりペリドットが見えてしまうと……ね……」



ペリドットの石言葉には『夫婦の愛』が含まれている。

ローレンナは側妃となる王女に気を使っているのだろう。



「割り切っているつもりなのよ? これでも……。

でもまだ時間は必要そうだわ……。

サリエラもあまりこのことに気を使わないで?

腫れものに触るようにされちゃうと私も割りきるのに時間がかかってしまうわ」



そういって困ったように笑うローレンナに私は

「分かったわ」と言って微笑む。


安心したようにローレンナが微笑むのを見て私は少し胸が苦しくなる。



「泣きたい時や怒りたい時があればいつでも呼び出して?

私はずっとローレンナの味方よ」


「ありがとう」



サンプルのペリドットを指でつんつんとつつきながらローレンナが返事をする。



「サリエラはどの石にするの?

その指輪と一緒にする? それとも違うものにする?」


「私は……私もローレンナと同じようにするわ。

私のルイだもの。私の色を2色使うわ!」


「そうよ! そうよ!

あなたのルイなんだもの遠慮する必要はないわ。

じゃあピンクダイアモンドは使いたいわよね。

あなたの髪も金色だけれど……

光に当たるとプラチナというか銀色みたいに輝くのよね……」



2人で顔を突き合わせうーんと悩む。



「……もうピンクダイヤモンドとダイヤモンドにしようかしら……」



私が少し恥ずかしく思いながらそう言うと、ローレンナは少女の様にはしゃぎだす。



「いいじゃない!!

永遠の愛と完全無欠の愛! 

いいわ! いい感じに独占してるわ!」


「重すぎないかしら?」



「ルイは絶対喜ぶわよ。

周りが知らないと言っても私たちは王命の婚約と知っていたのよ?

それなのに二色のドレスをサリエラに贈って、当たり前のような顔をしてダンスも三曲踊るような人なのよ?

そのくらいしても受け入れるだけじゃなく絶対喜ぶわ」



ローレンナの押しに私も勇気をもらって2色のダイヤにすることにした。



「さぁ次はデザインよね……。

私はこれにしようと思ってるの」



そう言ってカタログを数ページめくって、ローレンナが指さすデザインを見る。

雫型にカットされたシトリンに二粒のプリベットが飾られたものだった。

控えめでけれど存在感を見せるシトリンが陛下に良く似合いそうだった。



「陛下にお似合いだわ。

それにプリベットが二粒なのがいいわね。

ローレンナの瞳のようだわ」



ローレンナが「そうでしょう?」とクスクスと笑う。



「私がいつもあなたを見ているわって感じでしょう?

重くってもいいと思って……。

側妃を娶るんだもの。

アレクは私の重い重い愛を受け取る義務があるわ」



そういっていたずらっ子の様に笑うローレンナ。

私も同じ表情を作る。

顔を見合わせて笑い合う。



「そうよ。当り前よ」



2人で少女の頃の様に顔を見合わせてクスクス笑う。

私はデザインをすぐに決めた。

決めたというよりは決めていたという方が正しいかもしれない。



「数日後にできると思うからまたできたら連絡するわね」





数日後ローレンナから連絡が来て私は王宮でローレンナから出来上がった指輪を受け取った。




その日の夜。

王命で婚約をしてから私たちはルイが王宮から帰れなかった日を除いてほぼ毎日、ルイの帰宅後に応接室で少し話すことが日課となっている。


お互い想いが通じ合った日からその日課に少しだけ変化があった。

それは隣に座るようになったことだ。


今までは向かい合わせで座っていたのが隣に座るようになり、心の距離も物理的な距離も近くなりドキドキする毎日だ。

しかし今日はいつもより更に緊張している。



「サリーどうしたの?

なんかいつもと違うね?

何か隠してない?」



察しの良すぎるルイに思わずギクリとする。

ルイは私の頬に手を伸ばしさらりと撫でながら目を合わせるように私の目を覗き込む。

そして真剣な表情で口を開いた。



「僕の妖精はまた何か危ない事でも考えているのかな?」


「いえっ! 隠し事!

そうっ隠し事はあるのだけれど! 違うの!」


「へぇ隠し事があるんだ……」



ルイが醸し出す空気が変わり私は更に焦る。

最初は甘い雰囲気だったのに、私の頬を撫でたときは真剣な雰囲気になっていた。

それが一瞬にして猛禽類のような厳しい雰囲気に変わる。



「ちっちがう!! あの! ええっと!!

もういい!! これ! ルイに!」



ルイがそうしてくれたように私も素敵に渡したかったのに……。

と思いながらも、もう出した手は引けそうになかった。


恐る恐る顔を上げルイの表情を確認すると指輪を入れた箱を見て呆気に取られている。

そんなルイの表情が珍しくて私は少し落ち着きを取り戻す。



「あのね……ルイにも……。。

ルイは私のだって分かる印をつけてほしくて……」



そう言ってルイの左手を取り、箱から指輪を出してそっとつける。

私がルイの手を離すとルイはじっと指輪を見はじめた。

それから徐々に頬が染まっていく。

先ほどまでの厳しい雰囲気がまたもや一瞬で霧散する。



私が「ルイ?」と言おうとしたがそれは言葉にならなかった。

なぜならルイにきつく抱きしめられたからだった。

 

ルイはそっと私を抱きしめる腕を緩め私の額と自分の額をコツンと合わせる。

私の左手を自分の左手でそっとつかみお互いの指輪を見比べる。



「おんなじだね。でも僕の指は全部サリーの色だ。

このリングの色は室内で見るサリーの色。

君のつけているサファイヤの部分はダイヤだね。

太陽の下で見る君の色だ。

ピンクダイアモンドはお揃いだね」



そう言って私の目を見ながら「チュッ」っと指輪にキスをする。

その色気に思わず顔が熱くなってしまう。

そして私の頬に右手を添えて唇にそっとキスをする。



「これで僕はいつでも君にキスを贈ることができる」



そう言って再び指輪に愛おしそうにキスをするルイをみて私はルイの唇にそっとキスをした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ