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13 ローレンナの婚約

公爵邸でのお茶会から数日後、私はローレンナから大事な話があると昼食に誘われた。


人が来ないひっそりとした学園の東屋でローレンナが口を開く。



「あのね……えっと……正式な発表の前にサリエラに話したいことがあるの」



ローレンナの言葉に私は一つだけ思い当たることがあり思わず口角が上がる。

両手を膝のうえで握り下をむくローレンナの耳は真っ赤だ。


いつも凛としたローレンナからは想像つかないその様子がとてもかわいらしく思った。



「昨日、アレク様からね……。正式に婚約者になってほしいと言われたの……」


「おめでとう! ローレンナ!!

勉強もものすごく頑張ったものね!!」



伺うようにそっと顔を上げるローレンナに思わず抱き着いてしまった。


最初のお茶会の後、定期的に公爵家で4人のお茶会が続いた。

変に噂が流れないようにマグネ公爵家を隠れ蓑にしていた。




毎回、お茶会の終わりには王太子殿下とローレンナが二人で公爵邸の庭を散歩する。

2人は学園では挨拶する程度にとどめていたが、私とルイは二人がさりげなくアイコンタクトを交わしているのも知っていた。


そしてローレンナはその後から更に勉強に励むようになり前回の定期テストではついにライオネルを抑え3位の成績を収めていた。



「ルイ様とサリエラのおかげだわ……」


「そんなことないわ。もともとローレンナは魅力的だったもの。

さらにその魅力を磨き上げたんだから、他の男性にとられる前にと殿下も焦ったのよ」



私に腕を回しながらささやきながら言うローレンナ。

ローレンナに言ったこの言葉は事実で、自由な家風のサベッジ侯爵家は爵位にこだわることなく本人の意思が尊重される。


それは結婚も同義で、ローレンナが好きになり相思相愛であれば爵位関係なく嫁ぐことができる。

それにより爵位関係なく、たくさんの令息たちがローレンナを求めることは当たり前の事だった。


更には語学の面、淑女教育の面、勉学すべてにおいて好成績を収めるローレンナを求める令息はどんどん増えていっていた。


実際何度か令息に呼び出され告白めいたことをされたり、侯爵家に送られてくる釣書が分かりやすく増えて行った。




そしてその話を私がルイにし、ルイから話を聞いた殿下はかなり焦ったようだ。

私が話した次の日、大きなバラの花束と共に直接サベッジ侯爵家に赴きローレンナに婚約を請うたらしい。


ローレンナがうなずくとそのまま現サベッジ侯爵に婚約の許しをもらいその日のうちに王宮での手続きを自ら行い二人の婚約が成った。


これはルイとカラスからの情報だが、ローレンナから聞く話も幸せに満ち溢れていた。




私がローレンナから話を聞いた次の日正式に王太子とローレンナの婚約が発表された。

私たちの協力の事は公には伏せられたが、学園では噂の的になっていた。



ローレンナの実家の侯爵家はローレンナが王太子妃に確定したところで態度も変わることなくただ愛娘の婚約に喜ぶだけだった。


王太子殿下の婚約者は国内の高位貴族、もしくは他国の姫が理想であるのでローレンナは問題ないはずだ。

しかしやはり何かにつけて言うものは言う。



ローレンナの見目。主に髪と瞳の色を平民と揶揄してくるものがいる。

しかしそのような者達には目もくれずローレンナは多彩な語学力と聡明なことを見せつけ黙らせていった。


そしてなにより殿下のローレンナへの溺愛と言っていいほどの様子に文句を言いたくても言えなくなる状態になっていった。



ローレンナが殿下の婚約者となったことで私とルイも自然と学園内で関わることが増えて行った。

そのことで殿下とローレンナの婚約に口がはさめなくなった令嬢たちの矛先は私に向いて行った。




ある日の昼食時、最近は殿下とルイとローレンナと私の4人でとることが増えていっている。



「ごめんね。私のせいでサリエラにまで矛先がむいてしまって……」


「どういうことだい? ローレンナ。サリエラ嬢に何か迷惑がかかっているのだろうか?」


「そんな! 謝らないで……。

そもそも私は男爵位なのにマグネ公爵家の後ろ盾の件や2クラスになっていることで不満に思う生徒は多いのだから」



ローレンナが令嬢からの嫌がらせについて話し出してしまったことによって殿下にも知られてしまう事態になる。

私の言葉を聞きつつも殿下は詳しい話をローレンナに求めローレンナが説明を始める。



「確かに前から3クラスや4クラスの令嬢たちから嫌な態度や言葉をとられる事がサリエラは多かったの。

けれど最近はそれが輪にかけてひどくなっていて……。

足をかけたり、ぶつかってきたり……。

私が殿下と過ごす時間が増えたことで自然と4人で過ごすことが増えたせいでルイ様との関係を疑って嫉妬から……」


「なんということだ!!」


「殿下!! 私は大丈夫ですのでお気になさらずに……」



憤る王太子殿下をなだめながらちらりとルイを確認する。

ルイの眉間にはこれでもかというほど皺が深く刻まれている。



「ルイ様……。ルイ様もお気になさらず……」


私はなんとかルイもなだめつつ自分の考えを話し出す。



「もし私が嫌がらせに屈して皆さんと時間を過ごすことを諦めればおそらく令嬢方の溜飲を下げることはできるでしょう。

けれど私のわがままで、皆様と時間を過ごすことを選んでいるのです。

ローレンナとの友情守りたいという気持ちもお二人の婚約中の時間を近くで見たいというのも私のわがままなのです」



ローレンナは私の言葉に涙を浮かべ私の手をとり

「ありがとう……」という。

殿下とルイは眉間の皺をすこしだけ和らげる。



「対処は私におまかせください」



私の最後の言葉に二人はしぶしぶながらも納得をしたようにうなずいた。


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