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”元”悪役令嬢達による戦車開発史  作者: シャチ


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兵器開発局所属の少佐の感想

「やぁグスタフ。最近可愛いお嬢様方と戦車を開発してるって聞いたぞ?

 随分羨ましいじゃないか」

俺が戦車研究会から戻り事務所の自席で書類を整理していると同期のヘルマンが声をかけてきた。

「久しぶりだなヘルマン。

 たしかに貴族のお嬢様方に交じって仕事をしているが、羨ましいなら変わってやろうか?」

「なんだい?変わってくれるのか?」

「その代わり、あいさつや立ち振る舞いには気をつけろよ?

 相手は少将のお嬢さんに鉄鋼令嬢に大砲令嬢、それに自動車令嬢だ。

 下手に目をつけられた一生昇進できないぞ?」

「うへぇおっかねぇ。

 それでも楽な仕事だろう?学生の嬢様方の相手なんて」

戦車研究会の実態を知らなければそういいたくなるだろうな。

俺は既に学生にもかかわらず、恐ろしい知識量のご令嬢達に圧倒されっぱなしだというのに。

冷静さを保つのが大変なぐらいだ。

「お前、海軍の8.8cm高射砲で貫通できない曲面形状の鋳造板厚を暗算計算できるか?」

「暗算は無理だろう…」

「アルセロール嬢は出来るぞ」

「まじかよ…」

「それに、帝国が考えているらしい電撃戦に対するカウンター機動防御を語りだしたのはダルムシュタット嬢だ」

「あれを考えたのが、貴族のご令嬢?

 ダルムシュタット少将の娘さんだからとはいっても、よくあんなこと考えついたな」

今現在、兵器開発局では参謀本部と合同で、この機動防御について研究を進めている。

仮に相手が戦車ではなかったとしても、歩兵が自動車と同じ速度で攻めてきたとき、悠長に塹壕を掘っていては完成したとき、すでに首都陥落なんて可能性も否定できない。

それに、エアボーンと呼ばれる戦術も王立国家から聞こえ始めている。

輸送飛行機に人と兵器を積み込み空中投下することで、敵戦線を突破し本隊と連携し包囲殲滅をするという内容らしい。

帝国は前大戦の制約上戦車は作れないが、武器を搭載しない航空機の製造に制限がない。

上記のような戦術を発展させ、突然都市部に歩兵を大量に投入されると塹壕戦は起こらないかもしれないのだ。

「うちの国は防衛主体とはいえ、前大戦のままって訳にはいかねーだろうなぁ」

「だからこそ、この機動防御とそれに伴う戦車の開発は重要だというのが参謀本部の考えだ。

 おかげでかなりの予算が付いた。

 試作2号の製造も順調に進むことだろう」

「もうそんなに設計が煮詰まってるのか?」

「トランスミッション周りで苦戦しているが、車体の大まかな設計と砲塔周りは出来てきている。

 8.8cm砲の後端短縮の変更が上手いこと行かなくて、開発が完了した45mm対戦車砲を乗せる予定だがな」

「まぁ45mm砲で十分じゃないか?」

「それが、どうもダルムシュタット嬢は納得いかないらしい」

「なんでだ?45mm対戦車砲の威力は60mmの鉄板は貫通できるんだろう?

 そんな分厚い装甲の陸戦兵器なんてないだろう?」

「それが、45mm対戦車砲を板厚30mmでも防ぐ方法があると言い張るんだ。

 何を根拠に言っているのかまだはっきりと答えを聞けていないが…それを考えると45mm砲は対戦車砲としてはゴミになる可能性すらある。

 45mm砲は既に各国配備されていることを考えると、それに耐える戦車が出てくることは容易に想像がつくからな。 鈍足でも歩兵と共に動ければよいと割り切れば60mmだって搭載可能だろう。

 それを撃破する砲が欲しいというのがダルムシュタット嬢の考えのようだ」

どうも彼女は、今現存するものだけでなく、今後出てくるであろう兵器に対する優位性まで頭の中に入っているように感じる。

まぁ実際、我が国で開発できるものが他国で開発できないなんて思えないからな。


「しっかし、話に聞くと恐ろしいお嬢様方だな」

「そうだろう?

 俺のほうが知識をつけないと話についていけない。

 なかなか骨が折れる」

ただ、彼女たちの作ろうとしている戦車については軍上層部も乗り気だ。

なにせ塹壕戦は前大戦時の教訓から湯水のごとく人的資源を使うことになることが分かり切っている。

周辺国に比べ国土も狭く、人口も多くない我が国にとって、人的資源をいたずらに損耗することは敗北を意味するのだ。

それを抑制でき、かつ確実に防御できる方法があるならすがりたくもなるだろう。

わが軍が共和国の様に保守的でなくてよかったと感じるよ…

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