表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
”元”悪役令嬢達による戦車開発史  作者: シャチ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/26

私の考える理想の戦車

試作1号となる豆戦車は陸軍による研究用として少数生産されることが決まりましたの。

カーデンロイド豆戦車の履帯と駆動システム系のライセンスを王立国家より限定購入して20両ほど製造するらしいです。


そのため、試作1号は陸軍に接収されましたわ。

まぁお父様の名義で持っていかれたので特に気にしておりません。

既に「車内が狭い」というコンプレーンが入っておりますし、正面以外は帝国のK弾と呼ばれる小銃用徹甲弾で抜けるとのことで、実戦では使えないだろうとのこと…とはいえ、戦車とはどんなものかという研究には使えるとのことです。


「というわけで、本日から私たちの研究室は陸軍兵器開発局と合同ということになりますの」

「私たちまだ学生ですのにねぇ」

ニーナ様の言う通りですね。

まだ学生ですのに、ずいぶんと大きな話になってまいりました。

「本日より度々お邪魔することなるグスタフ・シュルマン少佐であります。

 お嬢様方よろしくお願いいたします」

少佐さんはご丁寧に挨拶してくださいましたわ。

貴族ではないようですがしっかりされた方のようです。

「早速ですがダルムシュタット嬢、貴方の考える戦車の理想形をお伺いしても?」

「私は、重量30t前後で85mm程度の主砲を備えた4~5人乗りの整地速度50km/h程度の戦車が必要と考えておりますの」

「それはまた…なぜそのようなお考えを?」

これはもらった例の本を総合的に読んだ結果、T-34-85と呼ばれる存在が最も優れた戦車と認識したからです。

本にはすべてに優れていたわけではないとも書いてありましたが、それは改良すればよい話。

ですが素直にこれを伝えるわけにはいきませんので、本に書かれていた内容などからなぜ必要に至ったのかを話すことにいたします。


敵の電撃戦に対応するための機動力とその戦車を撃破するための攻撃力、同等の攻撃力を持つものに対する防御力の3本柱の最適解を目指すことです。

これによって、機動防御…つまりは敵が機甲師団にてその快速性を持った進軍に対して即座に展開し防御するのです。

そのための戦車には、以下のものが必要です。


1.500馬力程度のエンジン

  こちらは航空機用エンジンを転用すれば現在でも手に入る可能性があることが分かりました。

2.不整地での速度もある程度確保するため、より車重を分散するための幅の広い履帯の開発。

3.85mm以上の対戦車砲 

  こちらは海軍の高射砲を転用したほうが早いかもしれません。

4.85mm前後の対戦車砲に耐えられる装甲

  これが一番問題です。単純計算で150mmの装甲が必要ですが、そんなものを全周にわたって採用しては重くて動きません。

「これは中々開発難易度が高そうですね」

「そう思います。とくに履帯と装甲が問題かと。

 なるべく軽量化しながらも防御力の高い装甲の開発と、走破性の良い履帯の開発が重要になると思います」

「砲とエンジンに関しては何とかなるだろう。こちらで手配してみよう」

「ありがとうございます」

このシュルマン少佐はなかなか話が分かる人のようです。

陸海軍の垣根を越えて砲を融通できるとは、我が国の軍は意外とまとまりがあるのですね。


「アルセロール嬢、申し訳ないが現在アルセロール社にて開発中の装甲は何がありますか?」

「艦艇用の装甲はあります。鉄板に浸炭処理を施した鉄板です。

 ただ、先ほどユーディ様がおっしゃられた通り、8.8cm砲を確実に防御するためには150~200mmの板厚が必要となりますわね」

「戦車は側面を向いて戦うことってありますの?正面を一番厚く、側面と背面はこないだと同じようにある程度薄くすればよろしくなくて?」

ニーナ様からの言う通り、試作1号についても同じ考えで製作されています。

戦いにおいて車体の横っ面をさらして砲を真横に向けて撃つことなんてほとんどないと思われます。

本には、あえて車体を斜めに構えることで、真正面よりも防弾性能が上がるともありましたが、やはり正面が一番防御力が高くなるようにしたいところです。

「ざっと計算しても、正面の装甲だけで3tを超えるだろう。

 周りを軽くしてエンジン重量と正面をバランスさせたとしても、車両もアンバランスになるのではないかい?」

仮に全周を45㎜程度に抑えたとして、ざっと計算しても装甲だけで18tに達してしまいます。

(t=45mm、w=2.5m、h=2.5m、L=8mの角パイプとして計算)

砲塔の重さが9tと仮定して、それだけで27tです。

目標車重の90%…そこに装備と人をのっけて30tに収まるのでしょうか…

重くなればなるほど、エンジンパワーとの兼ね合いで機動力は低下します。

何処かは妥協する必要があるのかもしれません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ドイツだと昼メシ刻にいれるヤツですね。斜辺を使い装甲の厚みをもたせパリィさせる考え。出来る事を最大利用。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ