お父様達による検証と新たな戦術
お父様はご自身の他に、陸軍の方を連れてきました。
なんでも、機甲師団なるものの設立を目指す方々のようです。
今は私達が作った試作1号のまわりで、実車を確認してもらっております。
「お父様、ずいぶん人がいっぱいいますわね」
「あぁ、ユーディが”戦車は戦車で撃破すべき”といっていただろ?
同じ考え方の陸軍将兵と技官達を連れてきたんだ。
彼らは各国の戦車の開発状況についても詳しい」
「そうなんですのね」
「申し訳ないが、こちらにダルムシュタット嬢はいらっしゃるか?」
皆が見終わり試乗が始まると、一人の軍人さんが私と父を見つけます。
「グスタフ少佐、こっちだ紹介しよう」
「少将、お隣のお嬢さんが?」
声をかけられ少佐さんが小走りでこちらにつか付きビシッと敬礼をする。
なかなかのイケメンさんだ。長身でがっしりしている。
もしかすると試作1号に乗れないのではないだろうか・・・
「紹介しよう。ユーディットだ」
「ご紹介に賜りましたユーディット・フォン・ダルムシュタットと申します」
「私は、グスタフ・シュルマンといいます。ダルムシュタット嬢があの豆戦車を開発したと聞きましたが?」
「そうです、私達戦車研究会が今後必要となりうる国防用戦車を開発するために、今ある技術で完成できる実車をと思いまして、あの豆戦車を開発いたしました」
「ということは、貴方が”戦車には戦車を”を考えた方ですか」
実際には本に乗っていたことではあるが、私しか知らないのだからそうなってしまいますわね。
ここは私が考えたということにしておきましょう。
「えぇ、そうですの。
野砲で戦車が倒せた前大戦の教訓をもとに対戦車砲が開発されておりますが、戦車は今後より高速化していくのではないでしょうか?
騎兵の代わりを果たす戦車がすでに開発され始めていることを考えますと、それに対抗する兵器が必要でしょう?」
「私も同じ考えだ。今回の豆戦車をもとに今後さらなる改良を加えると?」
「そうなります」
「ぜひ、ユーディ。少佐は技官でな、今回の研究に手を貸してくださるとのことだ」
「そうなのですね!」
これは朗報だ。
私達だけでは集められる情報も技術も限られるため、目指したい中戦車がいつになれば完成するのかとおもっていたのです。
「今回の試作1号を見せてもらった限り、カーデン・ロイド豆戦車よりは戦闘向きではあるだろうと思う。
全周に装甲が施されていることからも歩兵支援には最適だろうが、対戦車戦となると・・・」
「私もそう思いますわ。
本当に私が目指したいのは、時速30km以上の快速性と75mm以上の対戦車砲を搭載した戦車ですわ!」
「なるほど、それは私も必要だと思っている性能だ。
ぜひ君たちの知識も貸してほしい」
「えぇ、お願い致しますわね。
ところで、陸軍はどのような戦略でもって戦車の運用を考えているのですか?」
そう、兵器開発は戦術に沿ったものでなくてはならないのです。
どんな兵器が高性能と呼ばれるかは、その戦術にどれだけ沿っているかが重要ですから。
「近年、周辺国・・・特に帝国では電撃戦というのが研究されている」
「電撃戦・・・ですか?」
「だから、君の言う”機動防護”というのが対抗策になると思ったんだよ」
電撃戦、たしかⅢ号戦車の解説にもあった単語です。
そこから私は”機動防護”というものが今後必要になると考えたのです。
ざっくりした認識は”機械化された歩兵と戦車が等速で戦線の弱いところを突破してくる”というもの。
塹壕戦でも浸透戦術というものが開発された。
その浸透戦術を歩兵ではなく、機械化歩兵と戦車で行うという考え方と書いてあった。
機械化歩兵と戦車等速で攻めてくる。
それが時速30kmともなれば、歩兵では追いつく方法がない。
第一次大戦と同じように塹壕による防衛が破られれば即都市部に敵軍が流れ込むことも考えなくてはいけない。
「ぜひ今度、詳しい戦術について教えてほしいと、同僚のアッバス・フォン・ケンティキアン大佐がいっていたよ」
「機会があればよろしくお願いいたしますわ」
こうして、私達の研究室はより本格的な戦車の開発とその戦術について議論する場になっていくこととなりました。
私は最終的にT-34-85と呼ばれる50年以上も現役でつかわれた最優秀戦車を再現したいのです。
強いことは正義です。
ただ、あの車両は弱点も多かったことが書かれていました。
せっかくならその辺を改良した上で、我が国でも使いやすい車両を開発したいものです。
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5月中には再開いたしますのでお待ち下さい。




