89:ライアビリティー
「と、統合?」
エルダが口をぽかんと開けて言った。
「あぁ。統合。カルロスト連邦国とアルゾナ王国が一つになるって事。」
マグダが、平然と言った。
「で、でも、そんな事したら…………」
ある事に気付いたエルダが、心配そうにマグダに訊いた。
「そうだ。もしそんな事したら、サルラス帝国が黙っていないだろう。」
マグダが考え込む様動作をし、エルダから視線を下へ向けた。
「だが、国王が死んだ以上、アルゾナ王国が引き取ってやらねば、カルロスト連邦国はサルラス帝国の領地となり、ビルクダリオの扱いはより卑劣なものになるだろう。
するほかない。
いや。
するしかない。」
マグダは腕を下ろし、真剣な表情で、再びエルダの瞳を見た。
エルダはその目に、第二王子としての執念を見た。
幸い、第二次帝国侵攻の、アルゾナ王国内の戦後処理は粗方終わって来ていたので、カルロスト連邦国の受け入れも、不可能では無いだろう。
それに、父さんの言う通り、此処でアルゾナ王国がビルクダリオを助けなければ、サルラス帝国がこの国を牛耳り、ビルクダリオへの扱いは、より卑劣を極めるだろう。
そんな未来だけは、絶対に阻止せねばならない。
だが問題は、それに対するサルラス帝国の動向と、カルロスト連邦国に居住している帝国人の対処についてだ。
どうせ、『余所者が勝手に……』とか、『敵国人の言葉など……』とか言い出すのだろう。
尤も、ビルクダリオからしたら帝国人も余所者なのだが。
まぁそれは置いておいて。
マグダの事だ。
何か策があるのだろう。
あぁ見えてもマグダは、何かと頭が回る。
エルダはあまり心配していなかった。
「こんな事訊かれても困るだろうが……」
そう言いながらマグダは、サラナとギニルの方を向いた。
「サラナさんとギニルさんは、アルゾナ王国とカルロスト連邦国が統一されても良い?」
「ま、まぁ。私は全然…………ギニルは?」
「あっ、私も…………ビルクダリオが皆んな助かるのであれば何でも………………」
未だ理解が完了していない様子で、サラナとギニルは返事した。
言葉に詰まりながら、ビルクダリオが助かるならと、エルダの父を信頼した。
と言っても当人であるマグダも、未だ完全に、統一までのアプローチが構築しきれていない様子だった。
だが今は、グリリア達のビルクダリオ集合完了の報を待つ他無かった。
約五時間後。
ギニル、サラナ、エルダの三人は、全員が集まる為の会場設営(瓦礫掃除)を行い、マグダは、演説内容を考えた。
そして五時間が経過した今。
驚くべき事に、連邦国内ほぼ全ての住民が、この王城前に集まった。
最南端に居住している人々までは未だ情報がリークしていない様だが、それでも連邦国人口の約八割は此処に集結した。
エルダ達の設営した会場は、帝国人エリアとビルクダリオエリアの二つの区画を作り、それぞれのエリアでマグダの演説が聞きやすい様に、瓦礫をどけたり地面を平らにしたりと、兎に角話だけは聞けるであろう環境を整えた、と言うだけのもの。
兎に角広い。
エルダの浮遊魔法があったからそこまで時間は掛からなかったが、もしなければ間に合っていなかっただろう。
集まった聴衆の内訳は、ビルクダリオが聴衆の90%、帝国人が10%といった具合だった。
それぞれの区画の間には、壁を一つ造ってある。
若し帝国人とビルクダリオの間で暴動や喧嘩が起きても、壁で阻止できる。
そしてその壁を破壊、又は乗り越えたりすれば、エルダが飛んで出て、暴動や喧嘩を仲裁する。
まぁ仲裁と言っても、ビルクダリオに触れない様にその帝国人を吹き飛ばすだけだが。
「えー、本日は皆さん、ご多忙の中此処へ来てくださり、最上級の感謝を申し上げます。」
自身の水魔法で浮き上がったマグダが、通信魔法の応用で拡声しながら、話した。
皆が視線をばっとマグダの方へと向け、場はしんとした。
「今回私がお話しいたしますのは、国王が崩御なされたその経緯につきましてと、それに対する我が国の対応について。この二つを、僭越ながら私がお話しさせて頂きます。
申し遅れました。
私、アルゾナ王国第二王子、マグダ・フレーラと申します。」
場は騒めいた。
アルゾナ王国。
町ごと駆り出された先の第二次帝国侵攻で、サルラス帝国と戦った王国。
ビルクダリオの認識は、その程度であった。
「先の第二次帝国侵攻では、幾人かのビルクダリオを殺してしまうという失態を、我が国は犯してしまった。本当に申し訳ない。
だが、今こうして、この国の指導者たる国王がお亡くなりになられた以上、私達部外者が何もしなければ、貴方達は帝国の管轄下に置かれ、今よりもより苦しい生活を送る事となるのは必至です。」
マグダは一つ、深呼吸をした。
「単刀直入に申し上げます。
私達アルゾナ王国は、そうなるであろうビルクダリオの皆さんを援助する為、この国を貰います。」




