86:王城崩落
第三章の終わりが見えて来たこの頃です。
追記(2022/10/4)
第三話のサルラス帝国皇帝の名前を変更しました。
「………………拙いな。」
マグダの額から、冷や汗が流れる。
まるで、何かに怯えている様な。
エルダには、その理由が解らなかった。
話の流れ的に、ジャーナが死んだことが関係していそうだが、そこまでしか考えが行き届かない。
「エルダ。お前は、ジャーナの死を視認した可能性のある兵の拘束を。サラナさんとノールさんは、直ちに此処から離脱を。よろしくお願いします。もし暴動が起きた際、私とエルダは自身を守れますが、貴方方の安全までは保証出来ません。」
マグダは、冷静のフリをして、全員に指示を送った。
何故なのかが一切理解できていない一同だったが、マグダの様子を見るに、そんな問いに答えている余裕などない様に感じた。
誰も、その理由を追求しなかった。
「離脱と言っても何処に行けば……………」
「兎に角、グリリアさん? の家まで。サラナさんなら道を知っていると思ったので。」
サラナの問いに対して、冷静にマグダは答えた。
そんな時。
パラパラパラ…………
天井から、砂の様なものが落ちて来た。
サラナがふっと天を見上げた瞬間、天井が崩れ落ち、サラナの頭上に落ちて来た。
「危ない!!!」
それをいち早く察知したマグダは、地面にヒビが入る程に力強く蹴り、サラナを抱えて救出した。
天井の一部が地面に落ち、轟音が響く。
マグダは咄嗟に、サラナを横抱きした。
「大丈夫か?」
マグダのその問いを聞いて、サラナはふっとマグダの方を見た。
「は、はい………………」
サラナは、ぽっと頬を赤らめた。
「あ、ありがとうございました…………」
少し小さな声でサラナはそう言い、マグダから視線を逸らした。
マグダはサラナを地面に下ろした。
サラナは顔を真っ赤にし、両手を頬に合わせていた。
(か、顔が……あんな近くに………………っ……)
そう考えた瞬間、サラナはより一層照れた。
「ノールさんとミロルとサラナさんは、脱出を急いで! 恐らくこの城は長く持たない! 崩れ落ちる前に早く!」
マグダは突然そう叫んだ。
その瞬間エルダは、激しい頭痛に襲われた。
地面にへたり、呻いた。
………………………………
「やめろ! やめてくれ!!」
脳裏に、助けを乞うジャーナの姿が浮かんだ。
「己の罪を悔いよ。」
そう言いながらジュルカは、持っていたナイフをジャーナの腹へを突き刺し、抜いた。
「グハッ!」
ジャーナは吐血し、腹からは血がダラダラと流れた。
「糞っ!」
掠れた声でジャーナがそう言った瞬間、天井付近から、連続で何度も爆発音がした。
「これでもう暫くすれば、この城は崩壊する。皆ペシャンコじゃ。」
そう言ったあと、ジャーナはもう一度血を吐いた。
「面倒くさいことしやがって。」
呆れ口調でジュルカがそう言ったあと、もう一度ナイフを腹へ突き刺し、ジャーナを絶命させた。
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「これより、サージュ・オームルの公開死刑を行う!」
「罪人サージュは、近隣の村の人々を徴兵し、徴兵村民へは課程修了の褒美を自身の解放とするなどと戯言を吐き、いざ解放となればその人物を殺す様に命じた。これは、オームル王国の品位を冒涜する非道なる行為であり、私たち聖者は、この罪を許してはならない!
非道なる女王に鉄槌を!」
「「非道なる女王に鉄槌を!」」
「「非道なる女王に鉄槌を!」」
「「非道なる女王に鉄槌を!」」
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エルダは頭痛がおさまり、再び立ち上がった。
「エルダも。早く避難しよう。」
そう言ってマグダは、エルダの手を引っ張った。
「父さん! まだこの城の地下牢に人が!」
「誰だ?」
「さっき言っていたグリリアさんって人! 助けに行かないと死んでしま…………」
「…………駄目だ! このままだとエルダも潰されてしまう!」
「でも俺には浮遊魔法が!」
「使えないだろう! 先の戦いでお前は疲弊している! そんな状態で、大量の瓦礫から身を守るなど、出来る訳がない! 」
「…………でも…………!」
そんな時。
タタタタタタタタッ
背後を横切る様な足音が聞こえた。
エルダがふと後ろを振り向くと、地下牢に入って行く人影が見えた。
誰だ。
まさかグリリアを殺しに?
いや、それなら城の崩落を待っていれば良い。
ならば誰が…………何故………………
「行くぞ!!」
マグダの言った通り至極疲弊していたエルダは、マグダに引かれるまま、王城を後にした。
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「…………グリリア…………」
第三階層で未だ放心状態でいるグリリアを見つけた。
「も、もう直ぐこの城は崩落するんだ。早く逃げないと………………」
「………………ギニルか………………」
頭蓋骨を抱き抱えたグリリアは、窶れた、生気の感じられない目で、ギニルの顔を眺めた。




