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84:夢







「ジュルカ・デラフト………………?」


 エルダは、その名を復唱した。

 それと同時に思い出した。


 ジュルカ・デラフト。

 何処かで聞いた名だと思ったら、そうだ。

 オーザックに剣を教えた人物だ。

 そして何故かエルダの名を知っていた。

 その上、オーザックに伝言を残していた


()()()()()()()()()の事が知りたければ、ガルム諸島にこい。』


 どう言う意味なのか。

 今でも見当は付かない。

 だが、その人物が目の前に居る。

 一体、どういう風の吹き回しなのか。



「エルダ・フレーラ…………だね?」

「は、はい………………」


 色々と訊きたい事があるが、今の状況的に、とても訊けなかった。


 ジュルカは、エルダに名前を確認し、そのまま何も言わず、壁にめり込み失神しているジャーナの方へと歩いて行った。

 エルダはその背中を、静かに眺めていた。

 それしか出来なかった。



「はぁ。」


 ジュルカは、ジャーナの前でため息を一つ吐いた。


「やり過ぎたな。」


 未だ眠るジャーナに、失望したような声でジュルカは言った。


「殺して、殺して、殺して、殺して。お前のせいで、どれだけの人が死に、どれだけの人が悲しみ、どれだけの人が恨んだか。

 貴様は、この世に居てはならない不純物じゃ。観察者として、排除する。」


 そう言ってジュルカは、腰からナイフを抜いた。


「首に刺したんじゃ即死だろう? それじゃぁ面白く無い。そうじゃな、腹が良いか。」


 ジュルカは、ナイフをジャーナの腹に当てた。

 エルダはそれを見て、走り出した。

 ジュルカは、ジャーナを殺す気だ。

 嫌だ。

 嫌だ。


 エルダは咄嗟に、浮遊魔法でそのナイフを取り上げた。


「…………エルダ。何をしておる。此奴は、この国を困窮に貶めた当事者じゃぞ? 死んで当然。そっちの方が、この世の為なのじゃ。」

「………………嫌だ。」

「何故。」

「俺は、沢山の人を殺しました。母の薬を盗んだ人。オーザックを殺した人。エルレリアに攻めてきた数十人の兵。もう嫌なんです。殺人を解決の道具にしたく無い。もう沢山だ。」

「じゃぁエルダは、この男(ジャーナ)を恨んで居ないのか? お主の母の薬を盗んだヒリーとやらも、他ならぬこの王の命令なのだぞ? この王は卑劣だった。それに比べて、ヒリーは未だ優しかった。

 お主に薬を返したのじゃ。

 返す必要など全く無い。でも彼は返した。自分の罪悪感を払拭したかったのだろう。彼は、お主の母を殺した。殺人を犯した。普通、人一人殺すだけでも、相当な罪悪感が生まれこびりつく。そしてそれは、呪いとして離れない。

 だがエルダは、これまでに幾人もの人間を殺してきた。ここで一人ころしたとて、そう変わるまい。

 それに、殺すのは我じゃ。其方は見るだけで良いのじゃろ。」

「…………それでも嫌だ。」


 エルダは、握っていたジュルカの手をそっと離した。


「まぁ良いわい。

 じゃが、一つだけ忠告しておく。

 この選択をした自分を、怨まないように。」


 そう言い残し、ジュルカは、ジャーナの元を去った。



 ジュルカの姿が見えなくなり、場は再び静寂に包まれた。


黄泉帰り(ヨミガエリ)。」


 ジュルカがそう言った瞬間、サラナの体が発光した。

 ジュルカ曰く、暫くしたら意識を取り戻すらしい。


 転生魔法。


 そんな魔法系統。

 見た事も聞いた事もない。

 極魔法にも含まれていない。


 一体ジュルカは何者なのだろうか…………



 そんな事を考えていると。


「んっ、ん〜………………」


 倒れているサラナの下から、声がした。

 エルダは、サラナを抱き上げ、移動させた。


「あっ、ありがとうございます。」


 優しい声が聞こえた。

 ふっと声の聞こえた方を向くと、そこには、途轍も無く美人な女性が座っていた。


「貴女は………………」

「申し遅れました。私、ノール・ルリと申します。えーっと………………貴方は………………」

「こちらこそ申し遅れました。エルダと申します。」


 そう言いながらエルダは、右手を胸に当て、膝を立てて座った。

 ノールはふっと、視線をサラナの方へを向けた。


「サラナさんは…………生きているのですか?」


 少し震えた声で、ノールは訊いた。

 恐らくノールは、先の水蒸気爆発の衝撃波で失神していた。

 だが、サラナが自身を庇ってくれたという事は理解していたのだろう。


「大丈夫…………らしい。さっき来た老人が、生き返らせてくれた。」


 エルダはサラッと言ったが、当然ノールは、理解できていない。

 辛うじて理解できたのは、サラナが生きていたという事のみ。


「良かった………………」


 ノールは、自身の肩を撫で下ろした。



 その時。


「お母さん!!」


 ノールの背後から、女児の声がした。

 その声を聞き、ノールは涙を流した。


 生きていてくれたのだと。

 私が居なくても頑張っていたのだと。


 もう一度抱きしめられる。

 夢が叶う。




「ミロル………………!!!」


 ノールは立ち上がって走り、ミロルに抱きついた。



「ごめん……ごめんね……………………」



 ノールは大粒の涙を洪水の様に流しながらミロルを抱き、そう言った。



 よく見ると、ミロルの目からも、小さな涙が流れようとしていた。

















 




 

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