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81:祈願












 




「……………………」


 サラナは黙り込んだ。




「その後、屋敷に来て私が母を殺している現場を目撃した国王は、私を第一秘書に勝手に任命しました。”()()()“。“()()()”であれば、国王を殺せたのかもしれませんね…………………………」


 サラナは、自分でも何を言っているのかよくわかっていない様子だった。


「………………そうか。サラナは王政の人間だったのか。」

「…………驚いたりはしないのですか?」


 サラナが、少し拍子抜けをした。


「あぁ。別に。

 サラナが王政の人間だとすると、今までの不明点の辻褄が合う。

 何故俺がカルロスト連邦国(ここ)に来ると判っていたのか。

 何故サラナが、事前に俺の名を知っていたのか。

 何故サラナは、会ってすぐの俺に、国家転覆の協力を求めたのか。

 何故あの時、ギニルはグリリアに刃を向けたのか。


 簡単な話。

 どうせ俺の母さんも、王政に消されたのだろう? 『俺の魔法の力が、統治の上で邪魔だったから』。尤も、浮遊魔法なんて厄介な魔法を発現させた少年を、自分達の権威を第一に考えているお貴族様が、無視をする筈もない。だが、浮遊魔法を使いこなせていないとはいえ、俺を行き成り殺しに襲うのはリスクが大き過ぎる。なら先ず俺の身内を狙う。

 だが俺は生き、数年の時を経て、連邦国へ帰って来た。サルラス帝国と繋がっているこの国の事だ。俺が連邦国へ向かっている事くらい、既に周知していただろう。

 だからサラナを向かわせた。

 俺が来るであろう、無に帰した我が故郷に。」

「……………………そこまで判っていたとは。」


 サラナは、諦めの表情を見せた。


「図星だったか。」

「ええ。その通りです。私は王城で国王から。『エルダ・フレーラを王城(ここ)へ連れてくる』様、命を受けていました。方法は特に指定されなかったので、私は、この国の撲滅をエルダ様に提案しました。

 私の過去を言えば。幼子の母を何の躊躇もなく奪うこの国の理念を言えば、貴方はついてくると、私は勝手に思いました。

 ですが私は、『協力する』と言って下さったエルダ様の顔を見て、思い出しました。

 私は不自由なんだと。

 私は、この“偽善に包まれた界隈”から解放されたいのだと。」



 サラナは、体をエルダの方へ向けて、真剣な面持ちで言った。


「エルダ様。改めてお願いします。この国を、困窮に陥っているビルクダリオ達を。救済へと導いてはくれませんでしょうか。王に加担し、エルダ様の命を狙おうとした私に言えた事ではありませんが、どうか。()()()の雪辱を。この国の腐った常理を変えて…………………………



 どうか。


 どうか。




 私を…………助けて下さい。」




 サラナは、深々と頭を下げた。



「国王には誤算が一つある。それはな、敵に回した()の強さだ。

 大丈夫。その国家反逆に加担してやる。


 その代わり………………」



 エルダは、体をサラナの方に向けて言った。


「解放されたいんだったら、サラナ。お前が国王に反逆しろ。俺が国王を痛ぶったとて、サラナ自身が解放される訳じゃない。

 一度で良い。

 主君に歯向かってみろ。

 何かあれば俺が守ってやる。」

「はい、勿論。覚悟の上です。」


「…………とかカッコつけたけど、守れなかったら面目ねぇな。」


 そのエルダの言葉に、少し肩の荷が降りた様に、サラナは口角を緩めた。




「まぁお互いに頑張ろうぜ。」

「はい。よろしくお願いします。エルダ様。」


 そう言ってサラナは、頭を下げた。


「…………あのさ、サラナ。」

「はい。」

「その、『エルダ様ー』っての止めてくれ。これから国を変える仲間だ。敬語も無し! 名前は呼び捨て!」

「ですが………………」

「オッケー?!」

「……………………はぃ……………………うん。」

「良し。じゃぁこれから暫く、宜しく!」

「……よ、よろしく………………。」


 そう言って二人は、ぎこちないグータッチを交わした。







 ――――――――――――――――――






「ジャーナ・カルロスト…………!!」



 エルダはそう言いながら、ジャーナを睨んだ。

 サラナは、呆然と立ち尽くした。

 足を折られた兵達は、安堵の表情を浮かべた。


 ジャーナ・カルロスト。


 この国を地獄にした張本人。

 厄介な事に、基本三属性魔法(炎.水.雷)全てを使える。

 その力で国を統治していると言っても過言では無いらしい。

 何より、その三属性魔法を組み合わせて使用されると厄介だそう。

 水と雷だと一定範囲に放電させたり、炎と水で小規模な水蒸気爆発を起こさせたり。

 雷で体を麻痺させている間に攻撃を加えたり。

 一見厄介そうな相手である。

 だが……………………




「ほほぅ。まさか(エルダ)の方から寄ってくるとは。何とも奇怪。でもまぁ、手間が一つ省けて、こちらとしては好都合じゃな。」

「そっちこそ。自分から死ににくるとは、良い度胸じゃねぇか。」

「ふん。誰が餌になんか殺されるか。」



 ジャーナは、二階からの階段を降り終え、腕に雷を纏わせた。


「ゴミは掃除せなの。」

「ふっ、勝手に言っとけ。」



 二人は、強く睨み合った。




 場に静寂が流れた。




 まるで、嵐の前の静けさの様に。
















 














 

伏線回収が済んで、安心安心。

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