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79:アジェンダ







 ――――――――――




 カツン…………カツン…………



 ノールの手錠の鍵を奪う為、サラナは第二階層まで戻っていた。

 そして、その螺旋階段を登り終えた時。

 元々自分達が入っていた牢から、物音がした。


 サラナは足音を立てない様にゆっくりと歩き、その物音の正体を知った。

 看守が一人、私達の牢の片付けをしていたのだ。

 地上は「サラナとグリリアが脱走した!」と大騒ぎになっているが、エルダが地上の人間を足止めしているおかげで、その情報は地下には伝わっていない。

 なので恐らく、この看守は、サラナが側にいる事も知らずに、「今頃はもう殺されているのだろう」とか思いながら牢を片しているのだろう。


 そちらの方が都合良い。

 看守(こいつ)がノールの手錠の鍵を持っているかは不明だが、一応調べておこう。




 カツン


「誰だ!!」


 サラナがわざと立てた足音に看守は反応し、その足音のした方を向いた。


「…………何だよ。驚かせんなよ………………」


 ゴンッ!


 気を抜いた看守の背後に回ったサラナは、つま先で思いっきり看守の顳顬(こめかみ)を蹴り飛ばし、気絶させた。



 その後念の為サラナは、その看守の持っていた鞭で手足を縛った後、鍵を探した。


 探し始めて少々。

 解り易く「ノール、手錠」と書かれた鍵が見つかった。

 何故書いたのか。

 忘れっぽかったのか。

 まぁ今は、この看守の衰えた記憶力に感謝だな。


 そんな事を考えながらその鍵をギュッと握り締め、追いかけてこられない様に、看守をサラナ達が入っていた牢の中に入れて施錠した後、足早にその場を去った。







「グリリア! 鍵奪ってきたぞ!!!!」








 ――――――――――――――










 エルダは、サラナやグリリアがちゃんと潜入できた事を確認した後、視線を前へ向けた。

 目の前では、エントランスに居た兵全員が抜刀してエルダを囲み、その後ろでは、見物人達が慌てふためいている。

 エルダの任務は、地下牢への侵入を拒む事。

 そしてエントランスの興奮状態を、出来るだけ長く継続させる事。



 さて、どうするか。


 そんな事を考えていた時。


「全員! 突撃!!!」


 兵の内の一人がそう叫んだ。

 その瞬間、囲んでいた兵全員が、一斉にエルダに向かって走ってきた。



 エルダは呆れた。


 しょうがなくエルダは、両手を横に広げた後、浮遊魔法で全員を軽く吹き飛ばした。

 別に腕を広げる必要は無いが、そうした方が演出的にも、「ザ・強者」っぽい雰囲気が出るのでは無いかというエルダの遊び心。

 だがその演出による効力は意外に大きく、エルダが両手を広げた瞬間、見物人の全員が、ビクッと驚いていた。

 エルダは少し、面白くなった。


「貴様等は馬鹿か。一斉に飛びかかってくるなど、赤子でもあるまいし。もう少し頭を使ったらどうだ? しかも、『突撃!!!』って叫んだだろ? その時点でこっちは幾らでも対処できるってーの。」


 エルダが、少し煽り口調で、吹き飛ばされて床に尻をつけている兵に言った。

 兵が起き上がり、今度は、左右に分かれて襲ってきた。


「ふっ、来るが良い!!」


 エルダが、内心羞恥の念に駆られながら、そう叫んだ。






 ――――――――――――――――








 数分後。




 タッタッタッタッタ!!!!



「エルダ!!!」


 地下牢の入り口から、サラナの声が聞こえた。

 咄嗟にエルダが振り向くと、そこには、息切れが激しいサラナと、ボロボロの布を纏った女性が居た。

 ………………あれっ?


「サラナ! グリリアは?」


 エルダが訊くと。


「第三階層で座り込んで動かないから、置いてきた!」

「何で?」

「判らない!」


 エルダは少し慌てた。

 当初の予定では、此処でグリリアとサラナがノールを連れて出て、グリリアはノールを連れて逃走、サラナは王城(ここ)に残ってエルダと居る筈だった。

 恐らく、あの布を纏った女性は、ノールだろう。

 だが、グリリアが居ないとなると大分拙い。

 ノールをこの王城(危険区域)から逃す事が出来ない。

 一人で逃すにしろ、あまりにも不安材料が多すぎる。

 しかも、碌に体調も良く無いであろうノールが、全力で此処から逃げられる訳がない。



 さて、如何するか。

 今出来るのはこれだけだった。


「サラナ、その女性を連れて、俺の側に来い!」


 エルダの側にいれば、二人とも守る事が出来る。

 離れていたとて守る事は出来るだろうが、完全に守りきれる自信が無い。


 その指示を聞いたサラナは、その女性(ノール)の手を引っ張りながら、エルダの元へと走った。

 走って来る二人を見つけてエルダは、浮遊魔法で二人を引き寄せた。


「サラナ。今から俺は、此処に居る兵を行動不能にして、逃げる隙を作る。その瞬間、二人は此処から逃げろ。逃げる時は、俺が浮遊魔法で背中を押してやる。そんでもって、グリリアの救出は、サラナ達が去った後に俺一人で行う。判ったな。」

「でもそれじゃぁ、国王と………………」

「それはまた今度だ。取り敢えず今は、彼女(ノール)を家に帰す事を考えよう。」

「…………了解」


 そう言ってサラナは、ノールの手を引っ張って引き寄せ、出来るだけエルダの近くに入れる様努めた。


「サラナ。行くぞ。」


 エルダのその言葉を聞いて、サラナは拳をより強く握った。


「…………3…………2……………………1………………!」


 その瞬間エルダは、浮遊魔法で兵全員の足の骨を折った。

 兵は全員地面に倒れ、激痛のあまり、叫喚した。


「今だ!」


 その言葉を聞き、サラナはノールの手を目一杯引っ張り、王城の出口を目掛けて走った。


 ハァ ハァ


 サラナの息切れが微かに聞こえる。

 もう少し。

 もう少しで出口だ。

 あともう少しで、ミロルの笑顔が見られる。

 もう少し。

 あともう少し。













「サラナ。その奴隷を如何するつもりじゃ?」





 その声を聞いた瞬間、サラナは足を止め、硬直した。


 エルダも、その声の方を向いた。


 足を折られて倒れている兵も、全員その言葉の主に視線を向けた。



 エルダは、その男の顔を見た瞬間、歯を噛み締めた。





「ジャーナ・カルロスト…………!!」








 

なんだかんだでこの第三章。30部分超えそうですね。

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