表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/267

68:策

追記:(2022/10/9)

最後の二文を追加しました。




 


「ギニルが……………………?」


 場は騒然とした。

 さっきまで此処にいたギニルが、そんな事をしていたとは。


 それを聞いたサラナは、はっとした。


 (()()()言っていた『()()()()()』って………………まさか……………………)


 サラナは、冷や汗がつーっと流れた。


 それに対しエルダとグリリアは、その事実を信じたく無かった。

 ビルクダリオ救出の為にカルロスト連邦国(ここ)に来たのにも関わらず、救出すべき対象の腹を刺し、攫うなど。

 グリリアには信じ難かった。



「ほ、本当にその男の人は、自身の名を『ギニル』と名乗ったのかい?」


 動揺を隠せないまま、エルダはミロルに訊いた。


「うん。確かにそう言ってた。だって、忘れる訳ないもん。あんな人。」


 少しずつ下がっていく声のトーンに、その男の正体を信じざるを得なかった。


「…………そうか……………………ありがとう………。辛かったよね………………」


 そう言いながらグリリアは、引き攣った笑顔をミロルに見られないようにしながら、ミロルの頭を撫でた。

 撫でられたミロルは、一気に感情が込み上げて来たのか、右目から涙が一筋落ちた。

 場は、重い空気に包まれた。



 その夜。

 男性と女性、別々の部屋に寝た。

 男に母を攫われた事による、男性への恐怖があるかも知れないと危惧したグリリアの案だった。

 実際、あのサラナであれば、ミロルをあやす事が出来るだろう。

 男性陣の出る幕は、一切無かった。



 その夜、ミロルはずっと泣いていたそうだ。

 サラナがずっと抱きしめ、慰めた様だが、かなり参っていた様子であったそう。

 まぁ、当然の事である。

 未だ4歳の頃に母と攫われるという、途轍もなく苦しい経験をした中、その思い出を掘り返してしまったのだから。

 それも未だ5歳の女児に。

 夜中に泣きじゃぐるのも、無理はない。

 寧ろ、申し訳がない。


 そんな中、ミロルは、サラナにあるお願いをしたらしい。

 そのお願いは――――――――





「ノール・ルリの救出?」


 グリリアとエルダが、同時に言った。


「そうです。昨夜ミロルちゃんが、私にそうお願いしたんです。私も幼い頃に母を亡くしました。なので、同じような境遇の、ミロルちゃんの気持ちは十分に理解出来ているつもりです。なので…………助けてあげたいのです。私のように、悲しんで欲しく無いのです。どうか、よろしくお願いします。」


 そう言ってサラナは、深々と一礼した。


「……断る理由が無いな。」


 グリリアがそう言った。


「まぁ、此処で断ったら男じゃ無いし。」


 エルダも、少し自信あり気にそう言った。


「ありがとうございます。お願いします…………です。」


 そう言ってミロルも、可愛いお辞儀をした。





 サラナは、「作戦をたてる」と言って、皆をちゃぶ台の周りに呼んだ。


「私に1つ案があります。」


 皆が座り終えた後、サラナは、少し食い気味にそう言った。



 サラナの案はこうだ。


 五日後の昼。

 国王の所有している奴隷のオークションが、ジズグレイス南部のホール(王城から低速馬車で十五分)で行われるらしい。

 そこにノールも出品される。

 ホールの中に入れるのは、正面一般入り口と、裏の部隊関係者入り口の2つのみ。

 正面入り口は先ず論外だとすると、侵入出来るのは、必然的に裏口からとなる。

 裏口を入ると、短い一本の廊下があり、そこを進んだところの扉の奥が、出品される奴隷全員の控室()があり、そこにノールもいる。

 当然、牢の前には看守がいるが、三十分毎に交代する。

 その隙を狙って、看守を拘束し、牢を解錠する。



 そういったものであった。


「これであれば、ノールさんのみならず、国王所有の奴隷の大半を、帝国貴族の束縛から解放出来ます。」


 サラナが、至極真剣な面持ちでそう言った。

 こんなサラナは、今まで見たことが無かった。

 ミロルが、自分と同じ境遇の、その上自分よりも年下だから。

 自分と同じ思いをさせたく無いから。

 そう云った事が、サラナを動かしているのだろう。


「…………サラナ、一つ聞きたいんだが…………」


 エルダが、一つ質問した。


「そんなオークションがあるなんて情報、何処で手に入れたんだ?」


 その質問を聞いて、少しとぎまぎしながら、サラナは答えた。


「そ、そういう噂を耳にしたもので。ですが、その情報に関しては、信頼しても良いかと。」


 サラナのその面持ちを見て、「本当にそうなのか?」と訊けなかった。

 そんな勇気、エルダには無かった。


「よし。詳しい事はゆっくり決めていこう。取り敢えず、朝ご飯にでもするか。」


 そう言ってグリリアは、さっさと厨房の方へと消えてしまった。


「そうだな。先ず朝食だな。ミロルちゃんは、何か嫌いなものある?」

「椎茸が………………」

「あっ、そうなんだ。実は、俺も。」


 エルダのその言葉を聞いて、厨房にいたグリリアも反応した。


「おっ、エルダも嫌いなのか。実は、私も。」

「奇遇だな! ミロルちゃんは、椎茸の何が嫌い?」

「……食感があまり………………」

「そうだよねー! 俺も。グリリアは?」

「全て。食感も味も。」


 それを聞いて、エルダは少し動きを止めた。

 まさか、グリリアの椎茸嫌いがそこまでだったとは。


「逆に、椎茸好きな人とか居るの?」


 エルダがそう質問すると。


「居ないんじゃない?」


 グリリアがそう答えた。



 その時。


「黙って聞いていれば、ペチャクチャペチャクチャ。椎茸好きな人も居るんです! 全く。女子(おなご)の気遣いの出来ない男は最低です。」


 そう言いながら、サラナは、エルダの頭を一発叩いた後、厨房に行って、グリリアの事も叩いた。

 そのままサラナは、グリリアを厨房から叩き出し、エルダとグリリアのスープにだけ、椎茸を大量に入れた。


「あっ、なんて事を!!」


 思わずグリリアがそう叫ぶと、


「ぐちゃぐちゃほざくな。黙って食え。」


 今までにない程に目を開き、その眼力でグリリアを圧倒した。


「………………はい。」


 それに逆らえない小心者のグリリアは、黙って席につき、椎茸が大量に入っているスープを覗き込んだ。


「エルダも。」


 低い声で、サラナが言った。


 (よ、呼び捨て?!)


 エルダが少し困惑しながらも、席についた。




「いただきます。」


 ミロルとサラナは普通に、エルダとグリリアは冷や汗を掻きながら、そう言った。



 スプーンに、スープと椎茸を乗せて、エルダとグリリアは、お互いの顔を見合った。

 そして、一つ頷いた後、同時に口に入れた。





 ――――――――――――――――――――――





「ご、ご馳走様でした……………………」




 その後エルダとグリリアは、原因不明の精神的疲労によって、暫く立ち上がる事すら(まま)ならなかったという。





 



 それを見たミロルは。


 数年ぶりに笑った。







 



 

※椎茸をもっぱら批判している訳では断じて御座いません。そこだけはご留意下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ